テーブル80Aが長く愛される理由

テーブル80A(Table 80A)は、フィンランドを代表する建築家・デザイナー、アルヴァ・アアルトが1933年に設計したダイニングテーブルである。フィンランドの家具メーカー、アルテック(Artek)が90年以上にわたり生産を続ける現行商品であり、世界中の住宅や公共施設で使われている。

最大の特徴は、アアルトが1933年に特許を取得した「L-レッグ」にある。無垢のバーチ材に縦方向の切り込みを入れ、薄い突き板を挿入して接着し、90度に曲げる。金属部品も複雑な仕口も使わずに、脚を天板へ直接取り付けられる。アアルトが「建築柱の妹」と呼んだこのL-レッグは、スツール60をはじめアルテックの多くの製品に共通する部品となっている。

120cm×60cmのコンパクトな長方形天板は、ダイニングテーブルとしてはもちろん、デスクやコンソールテーブルとしても使用可能な汎用性を持つ。本ページでは、テーブル80Aの購入を検討されている方に向けて、正規品の仕様・素材・価格、類似商品との比較、暮らしへの取り入れ方、経年変化とメンテナンス、購入方法、よくある質問まで、購入判断に必要な情報を網羅的にお伝えする。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

テーブル80Aは、アルテック(2013年よりヴィトラ社傘下、独立ブランドとして活動)の現行商品である。生産は半工業的に行われ、手仕事の比率が高い当初の製法をほぼ引き継いでいる。

正式名称 テーブル80A / Aalto Table 80A
デザイナー アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto, 1898–1976) / フィンランド
デザイン年 1933年(L-レッグ特許取得年)
ブランド Artek(アルテック)/ 2013年よりVitra傘下、独立ブランドとして継続
製造国 フィンランド。ただしバーチ突板天板はフィンランドおよびドイツで製造される(HPL・リノリウム天板はフィンランド製)
サイズ L120 × W60 × H74cm
脚部・エッジバンド 無垢バーチ材(ラッカー仕上げ)。L-レッグ(曲げ木技術、1933年特許)
天板芯材 無垢バーチ、チップボード、ハニカムコア
天板仕上げ バーチ突板(ラッカー仕上げ)、ホワイトHPLラミネート、ブラックリノリウム
低天板高バージョン HL1レッグを用いた H52cm / H60cm 仕様が流通する(取扱店により異なる)
組み立て フラットパック配送。脚部の取り付けが必要(簡易組み立て)
オプション フェルトグライド(フローリング用)別売
環境情報 アルテック公式が Table 80A の環境製品宣言(EPD)・環境製品パスポート(EPP)を公開
美術館収蔵 アアルトの家具はニューヨーク近代美術館(MoMA)、ヴィクトリア&アルバート博物館、フィンランド・デザイン博物館などに収蔵されている
参考価格帯(税込目安) 日本国内で税込 ¥130,000〜200,000 程度(天板仕上げ・販売店・時期により変動する参考価格)
関連モデル 80B(L100×W60cm)、81B(L120×W75cm)、81A(L150×W75cm)、82B(L135×W85cm)、82A(L150×W85cm)、83(L182×W91cm)、86(L210×W100cm)、86A(L240×W100cm)。同じL-レッグ構造で展開

天板仕上げの違い

バーチ突板(ラッカー仕上げ)は、木目と色味がそのまま出る。アアルトの選択に最も近い仕上げでもある。

ホワイトHPLラミネートは耐久性と清掃性に優れる。白い天板と、バーチのエッジバンドおよび脚部との色差がはっきり出るため、明るい空間になる。日常の汚れに強く、家族の食卓やワークデスクにも向く。

ブラックリノリウムは亜麻仁油ベースの天然素材で、表面がソフトである。筆記感が良く、デスクとして使う場合に適する。

アアルト・テーブルのサイズシステム

テーブル80Aは、規格化されたテーブルシステムの一部である。同じL-レッグを共有するテーブルは80B(L100×W60cm)から86A(L240×W100cm)まであり、丸型、半円型、正方形、伸長式、折りたたみ式も揃う。異なる形状とサイズを組み合わせて空間に合わせる、というのがアアルトの家具システムの考え方である。

類似商品・競合との比較

テーブル80Aは「北欧モダニズムのコンパクトなダイニング/デスクテーブル」に分類される。同サイズ帯のデザイナーズテーブルとの比較を示す。

比較項目 テーブル80A(アルテック) CH327(カール・ハンセン&サン) CPH90 デスク(HAY)
デザイナー アルヴァ・アアルト(1933年) ハンス・J・ウェグナー(1962年) ロナン&エルワン・ブルレック(2013年)
素材 フィンランド産バーチ材(L-レッグ曲げ木)+バーチ突板 / ラミネート / リノリウム天板 オーク / ウォールナット無垢材 オーク無垢材脚+リノリウム / ラミネート / オーク突板天板
特徴 L-レッグ曲げ木技術(1933年特許)。90年以上の生産継続。コンパクト。バーチの温もり 伸長式。ウェグナー後期の代表作。手仕事の精度。大型ダイニング A字型傾斜脚。リノリウムのカラー展開。コントラクト対応
サイズ L120×W60×H74cm(コンパクト。2〜4名向け) L190〜310cm(伸長式。6〜12名向け) L130×W65×H74cm 等(デスクサイズ。1〜2名向け)
デザイン史的位置 1933年以来の生産継続。イームズに先駆する曲げ木技術 デンマークモダンの黄金期。ウェグナーの代表作の一つ 現代北欧デザイン。コペンハーゲン大学プロジェクト由来
価格帯(国内参考) 約¥130,000〜200,000 約¥800,000〜 約¥150,000〜

選び方の指針

バーチ材の質感とL-レッグの構造に惹かれる方、コンパクトな空間でダイニングとデスクを兼ねたい方には、テーブル80Aが有力な選択肢となる。ほぼ同じ製法で作り続けられていながら、価格は名作家具としては手の届く範囲にある。

大人数での食事を主目的とする大型ダイニングテーブルを求める方には、同じアアルト・テーブルシステムの大型モデル(81A、82A、83、86等)、またはウェグナーのCH327が適している。現代的なリノリウムのカラー展開やコントラクト対応を重視する方にはHAYのCPHシリーズも検討に値する。

使用感と暮らしへの取り入れ方

コンパクトダイニングとしての使用感

L120×W60cmは、2名の日常使用にちょうど良い。向かい合って料理を共有するだけの奥行きはあり、それ以上には広がらない。短辺側にも座れるので、来客時は6名程度まで対応する。高さ74cmは標準的なダイニングチェアと合う。

奥行60cmという細さは、壁際やキッチンカウンターの横にも収まる。一人暮らしの食卓にも、小さなキッチンの作業台にもなる。フラットパック配送のため、搬入経路が狭い住居でも問題は少ない。

デスクとしての使用感

アルテック自身がホームオフィス用途を挙げている。120×60cmの天板は、ノートPC、マウス、ノート、飲み物を置くのに足りる。ブラックリノリウム天板はソフトタッチで筆記感が良く、手書き作業が多い方に向く。

空間別のコーディネート提案

ダイニングルームでは、アアルトのチェア66やチェア69、スツール60と組み合わせられる。いずれも同じL-レッグ構造を共有するため、バーチ材の統一感が空間全体に及ぶ。アルテックのペンダントライトA330S「ゴールデンベル」を加えれば、フィンランド・モダニズムの一室になる。

北欧ミックスのインテリアでは、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーのデザイナーズチェアとの組み合わせも美しい。ウェグナーのCH24(Yチェア)やヤコブセンのセブンチェアなど、北欧モダンの名作チェアとテーブル80Aは、バーチとオーク、直線と曲線の対話を生む。

コンパクトなワンルームや書斎では、壁際に置いてデスクとダイニングを兼ねさせる。窓辺にAKARIランプ(イサム・ノグチ)を添えれば、フィンランドと日本、二つの近代が同じ部屋に並ぶ。

他のテーブルとの組み合わせ

半円型を隣接させてL字型のデスクにする、丸型を添えてサイドテーブルとする、複数の80Aを並べてミーティングテーブルにする。どのモデルも同じL-レッグとバーチのエッジバンドを共有するため、混ぜても見た目が破綻しない。

経年変化とメンテナンス

バーチ材の経年変化

バーチ突板の天板は、時間とともに淡い蜂蜜色から飴色へと深みを増す。L-レッグの無垢バーチ脚部も同じように色味が深まるため、天板と脚のずれは生じにくい。長く使われることを前提としたアアルトの選材が、そのまま日々の変化として現れる。

日常メンテナンス

バーチ突板天板は、柔らかい布で木目に沿って拭くだけの基本的な手入れで十分。水分をこぼした場合は速やかに拭き取る。ラッカー仕上げの保護層が日常の汚れから天板を守る。ホワイトHPLラミネート天板は耐久性が高く、水拭きで容易に清掃可能。ブラックリノリウム天板は天然素材のため、定期的なリノリウム用メンテナンスオイルの塗布で表面の保護と風合いの維持が可能。いずれの仕上げでも、熱い鍋やカップの直置きは避け、コースターやトリベットの使用を推奨する。

修理・パーツ対応

アルテックは修理やパーツ交換に対応している。L-レッグは天板にネジで直接取り付ける構造のため、脚部の交換は比較的容易である。フェルトグライド(フローリング用)も別売品として用意されている。長期にわたり同一構造で生産が続いていることは、パーツ供給の面でも利点となる。

どこで買うか:正規販売店と購入方法

公式サイトと正規ディーラー

アルテック公式オンラインストア(shop.artek.fi)にて各バリエーションを購入できる。海外正規ディーラーとしては、Finnish Design Shop(フィンランド)、smow(ドイツ)、haus London(英国)、twentytwentyone(英国)、Connox(ドイツ)、AaltoUSA(米国)などがある。MoMAデザインストアでもバーチ突板モデルとホワイトモデルが取り扱われている。

日本国内での購入

日本国内では、アルテックの日本向けオンラインストア(webstorejapan.artek.fi)および国内の正規取扱店で購入できる。アルテックはヴィトラ傘下であるため、ヴィトラの日本販売網も活用できる。北欧デザイン家具専門店での取り扱いも広い。

ヴィンテージ市場

L-レッグのテーブルは生産歴が長く、ヴィンテージ市場にも多数流通している。1stDibs、Pamono、フィンランドの中古デザイン家具市場(Franckly等)で見つかる。経年変化の進んだ個体を好むコレクターも多い。ただし天板の状態(傷、染み、ラッカーの摩耗)と脚部の構造的な健全性は確認が必要である。

購入時チェックリスト

  • 天板仕上げの選択(バーチ突板:自然な木目と経年変化 / ホワイトHPLラミネート:耐久性と清掃性 / ブラックリノリウム:ソフトタッチと筆記適性。用途と好みに応じて選定)
  • サイズの確認(80A:L120×W60cm。より大きなテーブルが必要な場合は81A(L150×W75cm)、82A(L150×W85cm)等の上位モデルを検討。より小型は80B(L100×W60cm))
  • 設置スペースの確認(テーブル本体120×60cm+周囲の椅子引き出し・通行スペース)
  • チェアとの組み合わせ(アアルトのチェア66、チェア69、スツール60との統一。またはウェグナーCH24、ヤコブセン・セブンチェア等との北欧ミックス)
  • フェルトグライドの要否(フローリングへの傷防止。別売品として用意)
  • テーブルの組み合わせ計画(将来的に半円型や丸型を追加してシステムを拡張する可能性の検討)
  • 正規品の確認(アルテック正規販売店からの購入。ヴィンテージ品の場合はアルテックの製造ラベル確認)

コーディネート事例

アアルト・ワールド

バーチ突板天板のテーブル80Aを中心に、スツール60(ナチュラルバーチ)を2脚配置し、チェア66を2脚合わせる。テーブル上にはアアルトのサヴォイ・ベース(イッタラ)にグリーンを生け、天井にはゴールデンベル A330Sペンダントランプを吊り下げる。壁面にはアルテックのシエナ・テキスタイル(アルヴァ・アアルトデザイン)をフレームに入れて飾る。バーチ材の色調が全体を静かにまとめる。

北欧モダン・ミックスダイニング

ホワイトラミネート天板のテーブル80Aに、ウェグナーのCH24(Yチェア、ナチュラルオーク)を2脚、ヤコブセンのセブンチェア(ブラック)を2脚ミックスして配置する。テーブル上にはマリメッコのテキスタイルをテーブルランナーとし、ルイスポールセンのPH5ペンダントを吊る。バーチの白い天板が中立的なベースとなり、各チェアの個性を引き立てる。

コンパクト・ワークダイニング

ブラックリノリウム天板のテーブル80Aを壁際に配置し、日中はデスク、夕食時はダイニングとして使い分ける。アルテックのドムスチェア(イルマリ・タピオヴァーラ)を1脚、アルテックのスツール60を1脚添える。テーブルの片端にアルテックのA810フロアランプを配置し、もう一方の壁面にはアルテックの壁面シェルフ112B(アアルトデザイン)を取り付けて収納を確保する。120×60cmのテーブルを中心に、仕事と生活が一室に収まる。

よくある質問

正規品の価格はどのくらいですか?
日本国内では税込¥130,000〜200,000程度が参考価格帯(天板仕上げ・販売店・時期により変動)。バーチ突板天板がやや高く、ラミネート天板が手頃な傾向にある。
どこで購入できますか?
アルテック公式オンラインストア(shop.artek.fi)、日本向けオンラインストア(webstorejapan.artek.fi)および国内の正規取扱店、MoMAデザインストア。海外ではFinnish Design Shop、smow、haus London、AaltoUSA等の正規ディーラー。
実物を確認できる場所はありますか?
アルテック・ヘルシンキストアや国内の正規取扱店で実物を確認できる。常設展示があるとは限らないため、来店前の確認を推奨する。フィンランド・デザイン博物館(ヘルシンキ)やMoMAでアアルトの家具コレクションを鑑賞できる。
80Aと80Bの違いは何ですか?
80Aは120×60cm、80Bは100×60cm。奥行は同じ60cmで長さのみ異なる。2名での使用が中心であれば80Bのよりコンパクトなサイズも選択肢となる。いずれも同じL-レッグ構造、同じ天板仕上げオプションを持つ。
メンテナンスはどのようにすればよいですか?
柔らかい布で木目に沿って拭く。バーチ突板はラッカーで保護されており、通常の汚れには十分耐える。ラミネート天板は水拭き可能。リノリウム天板は定期的なメンテナンスオイル塗布を推奨。熱い鍋やカップの直置きはいずれの仕上げでも避ける。
他のアアルト・テーブルと組み合わせて使えますか?
可能。すべてのアアルト・テーブルが同じL-レッグ構造とバーチ材エッジバンドを共有するため、異なるモデルの組み合わせでも視覚的統一感が保たれる。半円型テーブルを隣接させてL字デスクを構成する、丸型テーブルをサイドテーブルとして添えるなどの展開が可能。
ヴィンテージ品と新品の違いは?
アルテックは90年以上ほぼ同じ製法で生産を継続しているため、構造的な違いは少ない。ヴィンテージ品は美しい経年変化(パティナ)を持つが、天板のラッカー摩耗や傷の蓄積がある場合も。新品なら、経年変化を最初から自分で引き受けられる。
他に検討すべきアアルトの名作は?
スツール60(1933年、L-レッグの代表作)、チェア66(ダイニングチェア)、チェア69(アームレスチェア)、パイミオ・チェア41(曲げ木技術の原点)、サヴォイ・ベース(1936年、イッタラ)、ゴールデンベル A330Sペンダントランプ。いずれもテーブル80Aと同じ設計者の手による。それぞれの作品について詳しくは、当サイトの各紹介ページをご参照いただきたい。