ソフトモジュラーソファは、現代デザインの巨匠ジャスパー・モリソンが2016年にVitraのために手がけたモジュラーソファシステムである。低重心で水平方向を強調した佇まいは、モダンクラシックとして定着したローソファを現代的に解釈したものである。モリソンが提唱する「スーパーノーマル」というデザイン哲学を忠実に反映し、装飾的要素を意図的に排除しながら、バランスの取れたプロポーションと卓越した快適性を両立させた逸品である。

その特筆すべき点は、建築的要素として空間に溶け込む洗練された造形にある。サイドエレメント、センターエレメント、コーナーエレメント、シェーズロングといった多様なモジュールの組み合わせにより、住空間の規模や用途に応じた柔軟な構成が可能となる。黒色仕上げのベースフレームは、角を丸めた台座のような形状でソファ本体を支え、アールデコの優美さを想起させる機能美を実現している。

特徴・コンセプト

スーパーノーマルの哲学

ジャスパー・モリソンと深澤直人が共に提唱した「スーパーノーマル」は、奇抜さや装飾性を追求するのではなく、既存の優れた形態を再解釈し、洗練させることで本質的な美を引き出すデザイン哲学である。ソフトモジュラーソファは、この理念を最も純粋な形で示した作品といえる。家庭的なくつろぎと精緻な仕上げ、そして明快な表現力を巧みに融合させ、主張しすぎることなく空間に調和する普遍的なフォルムを実現している。

構造と素材

シート部分には、スチールフレームとウッドフレームを組み合わせた堅牢な骨格に、スチールスプリング、ポリウレタンフォーム、低反発フォームを重層的に配した高品質な内部構造を採用している。アームレストと背もたれには、ウッドフレームにポリウレタンフォーム構造とチャンバークッション重ね(ポリウレタンフォームロッドとポリエステルファイバー充填)を施し、使用後もクッションが本来の形状に復元する優れた復元性を実現している。

張地は着脱可能で、Vitraが誇る多彩なファブリックおよびレザーコレクションから選択できる。精緻に縫製された縫い目は、製品に込められた細部へのこだわりを物語っている。

モジュラーシステム

ソフトモジュラーソファの真価は、その名が示す通り、高度なモジュール性にある。左右のサイドエレメント、センターエレメント、コーナーエレメント、シェーズロングといった基本構成要素に加え、オットマンや各種クッション類を組み合わせることで、2人掛けから大規模なセクショナルソファまで、無限に近い構成が可能となる。アームレストの高さも選択でき、使用環境や好みに応じたカスタマイゼーションが実現できる。

エピソード

ソフトモジュラーソファは、1989年以来Vitraと協働を続けてきたジャスパー・モリソンが、同社との長年の関係のもとで手がけた製品である。実用性と簡潔な造形を飾らない形で統合する姿勢は、モリソンが一貫して追求してきたデザイン観に通じている。

評価

ソフトモジュラーソファは発表以来、デザイン業界において高い評価を獲得している。批評家たちは、このソファがローソファというタイプを最も純粋な形で表現していると称賛し、装飾を排した誠実なアプローチを支持している。建築的要素として機能するという設計思想は、家具をインテリアデザインの一部として捉える包括的な視点を示しており、専門家から高く評価されている。

後世への影響

過剰な装飾やトレンドに依存せず、快適性と簡潔な造形を両立させる設計は、現代のモジュラーソファのひとつの方向性を示している。高いカスタマイズ性と空間への適応力により、個人の住宅からホスピタリティ空間、オフィス環境まで、幅広い領域で用いられている。

基本情報

名称 ソフトモジュラーソファ / Soft Modular Sofa
デザイナー ジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)
製造 Vitra(ヴィトラ)
発表年 2016年
生産国 ドイツ
構造 スチールフレーム、ウッドフレーム、スチールスプリング、ポリウレタンフォーム、低反発フォーム
張地 Vitraファブリック・レザーコレクション(着脱可能)
構成要素 サイドエレメント、センターエレメント、コーナーエレメント、シェーズロング、オットマン
寸法例(2シーター) W2380×D980×H645mm、座面高380mm
特徴 モジュラーシステム、スーパーノーマルデザイン、カスタマイゼーション対応