概要
セブンチェア3107は、アルネ・ヤコブセンが1955年に発表したスタッキングチェアである。3年前のアントチェア (3100)と同じ成形合板の製法を用いながら、シェルを大きくとり、脚を4本に改めた。フリッツ・ハンセンが現在も製造している。
特徴・コンセプト
1枚のシェルで背と座をつくる
座面と背もたれは、二方向に曲がる曲面をもつ1枚の成形合板で成形される。二重の曲率が板そのものに剛性を与えるため、背と座をつなぐ枠や金物を置かずに済む。シェルはビーチ材を芯とする9層の積層で、各層の木目を交差させて圧着する。荷重がかかると背もたれがわずかにしなり、力を抜けば戻る。
アントチェアに比べてシェルは大きく、腰まわりのくびれも浅い。背もたれの幅が広がったことで、背中の当たる範囲が増えている。
4本脚への変更
アントチェアの3本脚は、テーブルの下での納まりに利点がある一方、着座時に横方向へ傾きやすい。セブンチェアは脚を4本とし、シェルの外側へわずかに開かせている。接地点が広がることで安定が増し、脚が斜めに伸びる分だけ床に近い部分の輪郭は軽く見える。
脚部は座面下のディスクに取り付けられる。シェルの裏側で接合が完結するため、横から見たときに金物が現れない。積み重ねができ、使わないときにまとめて収められる。
アームレストの扱い
ヤコブセンはアームレストまでを一体で成形することを構想したが、当時の技術では実現しなかった。現行のアームチェア仕様は、スチールのアームに木のアームレストを組み合わせている。
エピソード
フリッツ・ハンセンでは、創業者の孫にあたるソーレン・ハンセンが1920年代から1930年代にかけて合板のプレス成形技術を進めていた。アントチェアとセブンチェアは、その蓄積の上に生まれている。
1963年、イギリスのプロフューモ事件に関連して撮影されたクリスティーン・キーラーの写真は、椅子に跨る構図で広く知られることになった。撮影に使われたのはセブンチェアではなく、写真家ルイス・モーリーがロンドンの百貨店で購入した安価な模造品である。背もたれに粗い手掛け穴が開けられており、正規品とは形が異なる。この模造品はヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に収められている。
ヤコブセン自身の建築でも用いられており、1956年に完成したロズオウア市庁舎では、直線で構成された空間に対してシェルの曲面が置かれた。筆記板付きの仕様は講堂や教育施設で使われている。
評価と影響
背と座を1枚のシェルで成立させる方法は、以後の量産椅子に広く用いられるようになった。模倣品が多く流通していることでも知られる。シェルの仕上げは天然木の突板、着色アッシュ、ラッカー、前面のみのパディング、全面のパディングから選べ、脚部には標準の4本脚のほか、回転ベース、カウンターとバーの高さ、アームレスト付き、筆記板付きの仕様がある。
美術館コレクション
ニューヨーク近代美術館は、クロームメッキ鋼管と黒ラッカー仕上げの成形合板による2脚を収蔵番号24.1997.1-2で登録している(1997年、ジャック・ダトカ夫妻からの寄贈。同館の記録では制作年は1952年頃とされる)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は1967年の一脚を収蔵番号W.6-2017で「Model 3107」として登録している。
アルネ・ヤコブセンの設計思想や経歴について詳しくはアルネ・ヤコブセンプロフィールページをご覧ください。
フリッツ・ハンセンの歴史や他の製品について詳しくはフリッツ・ハンセンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | セブンチェア 3107 / Series 7 Chair |
|---|---|
| デザイナー | アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen) |
| ブランド | フリッツ・ハンセン(Fritz Hansen) |
| 発表年 | 1955年 |
| デザインの成立国 | デンマーク |
| 分類 | ダイニングチェア/スタッキングチェア |
| シェル | 9層の積層による成形合板(芯材ビーチ) |
| 脚部 | スチールパイプ4本脚(クロームメッキまたは粉体塗装) |
| サイズ | 幅50cm × 奥行52cm × 高さ76〜82cm、座面高43〜48cm |
| スタッキング | 可 |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(24.1997.1-2)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(W.6-2017) |
Reference
- Chair Series 7 (3107) | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/128688
- Model 3107 | Victoria and Albert Museum
- https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=W.6-2017
- The Ant | Arne Jacobsen Design
- https://arnejacobsen.com/works/the-ant/