ローマン クロックは、デンマークを代表する建築家アルネ・ヤコブセンが1942年にオーフス市庁舎のために設計した壁掛け時計である。古典的なローマ数字を配したクロックフェイスは、機能主義建築の傑作と称されるオーフス市庁舎の60メートルの時計塔に設置され、直径7メートルという壮大なスケールで市のシンボルとなった。現在はローゼンダール社によって忠実に復刻され、家庭用の壁掛け時計として世界中のデザイン愛好家に親しまれている。
特徴・コンセプト
ローマン クロックの最も際立った特徴は、古典的なローマ数字と現代的な機能主義デザインの見事な融合にある。ヤコブセンは、フランスやイタリアへの旅で出会った歴史的な時計塔や古い時計からインスピレーションを得て、それを独自のモダニズムの文脈で再解釈した。アーカイブには、1920年代に描かれた17世紀の時計のスケッチや、1937年のカプリ島の広場を描いた水彩画など、ローマ数字の時計に対する長年の関心を示す資料が残されている。
時計の構造は、アルミニウムケースに収められた凹面の文字盤と、二重凸面のミネラルガラスレンズで構成される。この独特のケース設計により、時計は壁から浮いているかのような軽やかな印象を与える。白い文字盤に黒で描かれたローマ数字と針のコントラストは、視認性を確保しながらも、装飾を極力排した北欧機能主義の美学を体現している。
ヤコブセンのデザイン哲学である「トータルデザイン」の思想もこの時計に色濃く反映されている。建築、家具、照明、そして時計に至るまで、すべての要素が統一されたデザイン言語で語られるべきだという信念のもと、ローマン クロックはオーフス市庁舎という総合芸術作品の不可欠な一部として構想された。
エピソード
オーフス市庁舎の誕生と時計塔
1937年、アルネ・ヤコブセンはエリック・ムラーとともにオーフス市庁舎の設計コンペティションに勝利した。当初の設計案には時計塔は含まれておらず、民主主義の精神を象徴する簡素で威圧感のない建築を目指していた。しかし、1941年の竣工間近になって、市民から時計塔を求める声が高まり、建築家たちは最終的にその要望を受け入れることとなった。
興味深いことに、この市民の声への対応そのものが民主的なプロセスとなった。結果として誕生した60メートルの時計塔は、伝統的な形式を踏襲しながらも、骨格構造を外部に露出させるというモダニズムの手法を採用した。時計は塔の頂部ではなく中央より下に配置され、建物に不要な威圧感を与えないよう配慮された。直径7メートルの巨大な時計盤にはローマ数字が刻まれ、今日までオーフスの街並みを見守り続けている。
ドイツ占領下での完成
オーフス市庁舎の建設は、第二次世界大戦中のドイツ占領という困難な時代に進められた。1941年6月2日の落成式は、ナチス占領下のデンマークにおいて、民主的統治の象徴となる建築物の誕生を告げるものであった。ヤコブセンとムラーは、この逆境の中でも妥協することなく、内装から家具、サイン、そして時計に至るまで、あらゆる細部を自らの手でデザインした。ハンス・J・ウェグナーとの協働による家具デザインも、この総合芸術作品の重要な要素となった。
ローゼンダールによる復刻
2009年、デンマークのデザインブランドであるローゼンダール社が、ヤコブセンの時計デザインの製造権を取得した。それまで海外のメーカーによって製造されていた時計は、こうしてデンマークに「帰還」することとなった。復刻にあたっては、ヤコブセンのスタジオで長年製品開発を担当し、後にディシング+ウェイトリング事務所でも活躍した建築家テイト・ヴァイラントとの緊密な協力のもと、オリジナルの図面に忠実な再現が追求された。現在、ローマン クロックは4つのサイズで展開され、ヤコブセンの遺産を現代の住空間に届けている。
評価
ローマン クロックは、アルネ・ヤコブセンの30年以上にわたるキャリアを代表する時計デザインの一つとして、高い評価を受けている。1939年のテーブルクロック、1940年代のステーション・クロックとローマン クロック、1956年のシティホール・クロック、そして1971年のバンカーズ・クロックと続くヤコブセンの時計シリーズは、各時代のモダニズムの変遷を映し出す貴重な作品群として認識されている。
オーフス市庁舎は2006年にデンマーク文化遺産「カルチュールカノン」に選定された12の建築作品の一つとなり、ローマン クロックはその総合芸術作品の不可欠な要素として評価されている。また、1994年にはオーフス市庁舎全体が保存建築に指定され、ヤコブセンとムラーの設計思想が後世に継承されることとなった。
現代においても、ローマン クロックは北欧デザインの精髄を体現する製品として、世界中のデザイン愛好家やインテリア専門家から支持を得ている。古典的なローマ数字という普遍的な意匠と、機能主義の明快さを融合させたこのデザインは、80年以上を経た今日なお、時代を超えた魅力を放ち続けている。
基本情報
| 製品名 | Roman Clock / ローマン クロック |
|---|---|
| デザイナー | アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen, 1902-1971) |
| デザイン年 | 1942年 |
| メーカー | ローゼンダール(Rosendahl) |
| 製造国 | デンマーク |
| 素材 | アルミニウムケース、ミネラルガラスレンズ |
| ムーブメント | 日本製 RHYTHM(大型モデルはSKP) |
| 電源 | 単3形乾電池 1.5V |
| サイズ展開 | 直径16cm / 21cm / 29cm / 48cm |
| カラー | ホワイト×ブラック |
| オリジナル設置場所 | オーフス市庁舎時計塔(デンマーク) |