概要
Roly Poly(ロリー・ポリー)は、英国のデザイナー、フェイ・トゥーグッドが手がけた、家具と彫刻の境界を曖昧にする象徴的なアウトドアチェアである。2014年に発表されたAssemblage 4コレクションの一部として誕生し、その丸みを帯びた官能的なフォルムは、デザイナー自身の妊娠と母性の経験から着想を得ている。
イタリアの高級家具ブランドDriade(ドリアデ)との協業により、2018年から量産化が実現。回転成形によるポリエチレン製モノブロック構造により、屋内外での使用が可能となった。ボウル型の座面と4本の円筒形の脚が特徴的なこのチェアは、遊び心と実用性を兼ね備え、現代デザインの傑作として世界中の美術館のパーマネントコレクションに収蔵されている。
特徴・コンセプト
造形的特徴
Roly Polyの最も印象的な特徴は、アイスクリームスクープのような凹面の座面と、ずんぐりとした4本の脚による愛らしいプロポーションにある。座面は深いボウル状をなし、側面は肘掛けとして機能するほど高く立ち上がっている。この包み込むような形状は、座る人を優しく抱擁し、心地よい座り心地を提供する。
チャンキーな脚部と優雅な曲線を描く座面のコントラストは、重厚感と軽やかさの絶妙なバランスを生み出している。子供の玩具を思わせる丸みを帯びたフォルムは、鋭い角を排除し、あらゆる方向から「転げ落ちても安全」なデザインとなっている。
素材と製造技術
Driadeによる量産版は、回転成形(ロトモールディング)技術を用いてポリエチレンから一体成型されている。この製法により、複雑な曲面を持つ中空構造を効率的に生産することが可能となった。素材の特性上、耐候性と耐久性に優れ、屋内外を問わず使用できる汎用性の高い製品となっている。
オプションとして、ポリエステルファイバーを充填したクッションが用意されており、座面と背もたれを覆うことで、より快適な座り心地を実現。クッションカバーは取り外し不可の仕様で、屋内用にはBonifacio(100%コットン)やBarcellonaなど、屋外用にはPantelleria(100%リサイクルポリプロピレン)やCiproなどのファブリックが選択可能である。
デザイン哲学
フェイ・トゥーグッドは、このチェアのデザインにおいて、彫刻的アプローチと機能性の融合を追求した。「私がRoly Polyをデザインした時、第一子を出産したばかりで、すべてがより柔らかく、丸く、広くなっていた」と語るように、母性という個人的な体験が、普遍的な快適性と安心感を持つデザインへと昇華されている。
素材の本質に対する誠実さ、手仕事の不規則性への敬意、そして過去への鋭い洞察を示しながらも、純粋な自己表現と直感から導き出されたこの作品は、21世紀のフォームギバーとしてのトゥーグッドの地位を確立した。
デザインの進化
Roly Polyは、当初フェイ・トゥーグッドが粘土で小さなモデルを彫刻し、その後ボート製造業者と協力してファイバーグラス製の限定版を制作することから始まった。この手作業による少量生産から、Driadeとのコラボレーションによる大規模生産への移行は、より幅広い層にこのデザインを届けることを可能にした。
その後のエディションでは、ブラッシュドアルミニウムからゴールドリーフまで、異なる素材と仕上げの探求が続けられた。Assemblage 5「Earth, Moon, Water」では、固体コブコンポジット、パティナ仕上げのブロンズ、クリスタルバリウムガラスで鋳造されたチェアが製作され、製造の限界に挑戦した。
4本のぽっちゃりとした脚と皿型の座面を持つRoly Polyの寛大なフォルムは、ダイニングチェア、スツール、引き出し、カンチレバーデスクへと進化し、コレクション全体として展開されている。2018年にはソファも追加され、Roly Polyの美学をさらに探求している。
市場での評価
Roly Polyは発表以来、現代デザインの象徴として即座にヒットを記録した。ニューヨーク・タイムズ紙はこのチェアのシンプルな喜びを称賛し、デザイン界では「過去10年間の象徴的なデザイン」として認識されている。MoMAデザインストアでも取り扱われ、現代デザインの傑作として位置づけられている。
商業的にも成功を収め、住宅から商業施設まで幅広く採用されている。インテリアデザイナーのお気に入りとして知られ、空間に彫刻的な存在感をもたらす家具として高く評価されている。「トゥーグッドより有名」とデザイナー自身が冗談めかして語るほど、このチェアは独自のアイデンティティを確立している。
価格帯は本体のみで790ドルから始まり、クッション付きで1,535ドルまでとなっており、高級家具市場において競争力のある価格設定となっている。受注生産により6〜8週間の納期を要するが、その品質と独自性により、待つ価値のある製品として認識されている。
美術館コレクション
Roly Polyは、その芸術的価値と文化的重要性から、世界中の主要な美術館のパーマネントコレクションに収蔵されている。これらの収蔵は、単なる家具を超えた、21世紀デザインの重要な証言としてのこの作品の地位を確固たるものにしている。
- コーニング・ガラス美術館(ニューヨーク) - ガラスと現代デザインの関係を探る文脈での収蔵
- フィラデルフィア美術館(ペンシルベニア) - 現代デザインコレクションの重要な構成要素として
- デンバー美術館(コロラド) - 2014年にRaw仕上げのファイバーグラス版を収蔵
- ハイ美術館(アトランタ) - 装飾芸術とデザインコレクションの一部として
- ボルティモア美術館(メリーランド) - 現代家具デザインの革新的事例として
- コロンバス美術館(オハイオ) - 21世紀デザインの代表作として
- ダラス美術館(テキサス) - 2019年のWomen + Design展でカップスツールを収蔵
- ビクトリア国立美術館(メルボルン) - オーストラリアにおける国際デザインコレクションとして
製品バリエーション
カラーバリエーション
ポリエチレン版は、多様な空間に調和する6色のカラーパレットで展開されている。オーカー(黄土色)、レッドブリック(赤煉瓦)、ピート(泥炭)、チャコール(炭)、コンクリート(灰色)、フレッシュ(肌色)という自然からインスピレーションを得た色調は、トゥーグッドの風景への深い関心を反映している。
2020年代には、リサイクルポリエチレンを使用したサステナブルな黒色版も追加され、環境への配慮と美的価値の両立を実現している。各色は回転成形プロセスで素材自体に色が練り込まれているため、表面の擦れや傷による色落ちの心配がない。
ファブリックオプション
クッションのファブリックは、使用環境に応じて選択可能である。屋内用には、Bonifacio(16色展開の100%コットン)とBarcelona(7色展開)が用意され、それぞれアンティークレッド、ダークブラウン、サンド、イエロー等の豊富な色彩から選択できる。
屋外用には、Pantelleria(100%リサイクルポリプロピレン)とCipro(防水仕様)が提供され、グレー、アイボリー、サンド、ホワイト等の耐候性に優れた色調が用意されている。これらのファブリックは、撥水性と速乾性を備え、年間を通じた屋外使用に対応している。
技術仕様
| デザイナー | フェイ・トゥーグッド(Faye Toogood) |
|---|---|
| ブランド | ドリアデ(Driade) |
| 発表年 | 2014年(オリジナル)/ 2018年(Driade版) |
| 寸法 | 幅84cm × 奥行57cm × 高さ63cm |
| 座面高 | 32cm |
| 重量 | 約8kg(本体のみ) |
| 素材 | ポリエチレン(回転成形)/ リサイクルポリエチレン(一部モデル) |
| クッション素材 | ポリエステルファイバー(内部)、各種ファブリック(カバー) |
| 使用環境 | 屋内・屋外両用 |
| 製造国 | イタリア |
| 納期 | 6〜8週間(受注生産) |
| 価格帯 | $790〜$1,535(市場により変動) |
デザイナーについて
フェイ・トゥーグッド(1977年英国生まれ)は、彫刻から家具、ファッションまで多様な分野で活動する英国を代表するデザイナーである。ブリストル大学で美術史を専攻し、1998年に卒業後、カルト的人気を誇る雑誌『World of Interiors』で8年間編集者として活動。この経験が、彼女の美的感覚と文化的洞察を育んだ。
2008年にStudio Toogoodを設立し、番号付きの「Assemblage」シリーズとして作品を発表。物質性と実験への関心を示す彼女の作品は、小規模な製作者や伝統的な職人によって手作りされ、選ばれた素材の生々しさと不規則性に対する誠実さを保っている。
2025年にはパリのMaison & Objetで「Designer of the Year」に選出され、「WOMANIFESTO!」と題したインスタレーションを発表。Hermès、Birkenstock、Carhartt、cc-tapis、Poltrona Frauなど、世界的ブランドとのコラボレーションも手がけ、現代デザイン界で最も影響力のある女性デザイナーの一人として認識されている。
Driadeについて
Driade(ドリアデ)は、1968年にエンリコ・アストーリ、アントニア・アストーリ姉弟、アデライデ・アチェルビによってミラノで設立されたイタリアの高級家具ブランドである。「生活空間における美の探求を続ける美的実験室」として、家具と彫刻の境界を曖昧にする革新的な製品を生み出してきた。
創業初期からジョット・ストッピーノ、エンツォ・マリ、デ・パス・ドゥルビーノ・ロマッツィなど、イタリアデザイン界の巨匠たちと協業。1980年代にはフィリップ・スタルクのCostesチェア、アレッサンドロ・メンディーニのSabrinaアームチェアなど、時代を定義する作品を発表した。
Driadeは3つのコンパッソ・ドーロ賞を受賞しており(1979年Delfinaチェア、2001年Legatoテーブル、2008年MT3ロッキングチェア)、イタリアデザインの歴史において重要な位置を占めている。2013年からはItalian Creation Groupの一員となり、ファビオ・ノヴェンブレをアートディレクターに迎え、伝統と革新の融合を続けている。