Driade(ドリアデ)

Driade(ドリアデ)は、1968年にイタリア・ミラノ南東部の都市ピアチェンツァで誕生した、イタリアを代表するモダン家具ブランドです。エンリコ・アストリ、その妹であるアントニア・アストリ、そしてエンリコの妻アデライデ・アチェルビという一族三人の卓越した才能によって設立されました。ミラノ国際家具見本市でセンセーショナルなデビューを果たして以来、半世紀以上にわたり、「モダンデザインとは何か」という問いに応え続けています。

Driadeは自らを「芸術の工場」「美的ラボラトリー」と定義し、単なる家具メーカーの枠を超えた存在として、世界中のデザイン愛好家から敬愛されています。その作品は家具というよりもアート作品として評価され、前衛的で挑戦的、アヴァンギャルドな魅力に満ちています。一つひとつの家具が置かれる空間の主役となりうる強烈な個性とパンチ力を持ち、インテリアに芸術的な価値をもたらします。

ブランドの特徴とコンセプト

前衛的なデザイン哲学

Driadeの最大の特徴は、その徹底した前衛性と実験精神にあります。1960年代後半の合理主義的デザインに対する反動の時代に誕生し、ポストモダンの台頭へと至る過激なデザイン論争の渦中で成長を遂げました。しかしDriadeは、その潮流に身を置きながらも、常に冷静に「モダン」の本質的な意味を問い続けてきました。この知的なアプローチが、イタリアの知的アヴァンギャルドとして世界で高い評価を得る所以となっています。

芸術と機能の融合

Driadeの家具は、彫刻的な美しさと実用性を高い次元で両立させています。ユニークな形状、インパクトのあるデザイン、独創的なカラーリングを追求しながらも、人体工学に基づいた快適性や耐久性を決して犠牲にしません。その結果、見る者を魅了する芸術的価値と、日々の生活を豊かにする実用的価値が見事に調和した作品が生み出されるのです。ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界の名だたる美術館がDriadeの作品を収蔵していることは、その芸術性の高さを証明しています。

エクレクティックなデザインアプローチ

Driadeは単一のスタイルに固執することなく、多様性と折衷主義を重視しています。ミニマリズムから有機的なフォルム、ポップアートからクラシカルな意匠まで、幅広いデザイン言語を自在に操ります。この柔軟性により、住宅空間からホテル、レストラン、オフィスまで、あらゆる環境に適応する家具を提供することが可能となっています。異なる文化の出会いと融合を促進するというブランドの哲学は、グローバル化が進む現代において、ますます重要な意味を持っています。

ブランドヒストリー

創業期:革新の始まり(1968年~1970年代)

1968年、「想像力が権力を握った」とされる時代精神のただ中で、Driadeはピアチェンツァ郊外のフォッサデッロという小さな町に誕生しました。ブランド名は、ギリシャ神話に登場する樫の木の精霊「ドリュアス」に由来します。木の精霊でありながら樹木と一体化していないため自由に動き回ることができるというこの神話的存在は、伝統に根ざしながらも自由な発想で革新を追求するブランドの姿勢を象徴しています。

創業者である三人の役割分担は明確でした。エンリコ・アストリが企業経営と商業戦略を統括し、建築家である妹のアントニア・アストリがデザインと空間構成を担当、エンリコの妻アデライデ・アチェルビが広告・広報・ブランドコミュニケーションを管轄しました。この三位一体の体制が、創造性と事業性を高次元で両立させ、Driadeをイタリアを代表するメーカーへと導いたのです。

創業当初から、Driadeはエンツォ・マリ、ナンダ・ヴィーゴ、ジョット・ストッピーノ、ロドルフォ・ボネットといったイタリアの先鋭的なデザイナーたちとコラボレーションを開始しました。彼らの実験的な作品を通じて、Driadeは新しい時代のデザインを先導する存在として頭角を現していきます。

飛躍の時代:国際的評価の確立(1980年代~1990年代)

1982年、Driadeはアレッサンドロ・メンディーニやアキッレ・カスティリオーニといったイタリアデザイン界の巨匠たちとのコラボレーションを開始しました。しかし、ブランドの運命を決定づけたのは、1984年に始まったフィリップ・スタルクとのパートナーシップでした。当時まだイタリアでは無名だったこの若きフランス人デザイナーを起用するというエンリコ・アストリの慧眼は、その後のDriadeの国際的成功の礎となります。

スタルクがデザインした「COSTES(コステス)」チェアは、パリの同名カフェのためにデザインされた作品ですが、その三本の傾斜した脚と包み込むような木製の構造が生み出す独特のフォルムは、瞬く間に世界中で認知されるアイコンとなりました。このデザインによって、スタルクは国際的なスターデザイナーへと飛躍し、Driadeもまた世界的ブランドとしての地位を確立したのです。

1980年代以降、Driadeはイタリアという枠を超え、真にグローバルなデザインブランドへと進化します。スペインのオスカル・タスケッツ、イギリスのデイヴィッド・チッパーフィールド、イスラエルのロン・アラッドなど、ヨーロッパ各国の才能を積極的に起用。さらに日本からは伊東豊雄、妹島和世といった世界的建築家、そして吉岡徳仁、深澤直人という気鋭のプロダクトデザイナーが参画し、東西の美意識が融合した独創的な作品群が生まれました。

新世代への継承と進化(2000年代~現在)

創業から半世紀以上が経過した現在、Driadeは創業家の第二世代へと引き継がれています。エンリコとアデライデの娘エリサ・アストリ、そしてアントニアの息子マッテオ・デ・ポンティが新たな時代のDriadeを牽引しています。彼らは創業者たちの精神を継承しながらも、21世紀のデザイン課題に果敢に取り組んでいます。

現代のDriadeは、コンスタンティン・グルチッチ、フェイ・トゥーグッド、ルドヴィカ&ロベルト・パロンバといった現代を代表するデザイナーたちとコラボレーションを展開。デジタル技術を活用した新しい製造方法や、サステナビリティを考慮した素材選択など、時代の要請に応えながらも、Driadeらしい実験精神と美的探求を決して失っていません。

1996年には、ブランドの文化的活動の一環として、隔月刊誌「Driade Edizioni」を創刊。クリスティーナ・モロッツィの編集とアデライデ・アストリのグラフィックデザインによるこの雑誌は、単なる商品カタログを超えた文化的メディアとして、Driadeのプロジェクトや思想を世界に発信し続けています。

代表的なインテリアコレクション

COSTES(コステス)チェア|Philippe Starck, 1984

Driadeとフィリップ・スタルクのパートナーシップを象徴する記念碑的作品です。パリのカフェ・コステスのためにデザインされたこの椅子は、三本の高度に傾斜した脚と包み込むようなダークウッドのシェル構造が特徴的です。見る角度によって表情を変える有機的なフォルムは、1980年代のデザイン界に衝撃を与え、普遍的なアイコンとして認知されています。この作品により、スタルクはイタリアで無名の存在から一躍スターデザイナーへと昇華し、Driadeもまた国際的評価を確立しました。今日に至るまで生産が続けられており、レストランやホテルなどの商業空間から個人宅まで、世界中で愛用されています。

NEMO(ネモ)チェア|Fabio Novembre, 2010

イタリアの気鋭デザイナー、ファビオ・ノヴェンブレによる最も挑発的な作品の一つです。背もたれが古代ギリシャ彫刻を思わせる人間の顔の形状を成しており、その内部が座る空間となっています。まるで仮面のように、座る人を隠すと同時に明らかにするという両義性を持つこのデザインは、家具というよりも彫刻作品として鑑賞されるべき芸術性を備えています。回転式のベースにより360度どの角度からも異なる表情を楽しむことができ、空間に強烈な存在感をもたらします。ロトモールディング技術による一体成形で製作され、屋内外での使用が可能です。ノヴェンブレは家具デザインを通じて物語を語る作家として知られていますが、NEMOはその才能が最も劇的に表現された傑作といえるでしょう。

SOFT EGG(ソフトエッグ)チェア|Philippe Starck

1950年代の有機的なフォルムからインスピレーションを得ながら、現代的な人体工学と機能性を融合させた画期的なチェアです。卵のような柔らかく包み込むような形状は、視覚的な優しさだけでなく、実際の座り心地においても最高の快適性を提供します。ガラスファイバー強化ポリプロピレンのモノブロック構造により、軽量でありながら高い強度を実現。座面両側に設けられたスリットは雨水を排出するための機能的ディテールであり、屋外使用を可能にしています。スタッキング可能な設計により、カフェやレストランなどの商業空間でも高い実用性を発揮します。シンプルでありながら細部まで計算されたデザインは、Driadeの「形態は機能に従い、そして美に昇華する」という哲学を体現しています。

TOKYO-POP(トーキョー・ポップ)コレクション|Tokujin Yoshioka, 2002

日本を代表するデザイナー吉岡徳仁による、未来的かつ彫刻的なシーティングコレクションです。透明なポリカーボネート素材を使用し、まるで結晶や氷の塊から彫り出されたかのような有機的なフォルムを実現しています。光を通す素材の特性により、照明の変化とともに表情を変え、空間に幻想的な雰囲気をもたらします。東京という都市の持つダイナミズムとポップカルチャーのエネルギーを、デザインという言語で表現したこの作品は、ミラノサローネで発表されるや否や国際的な注目を集めました。吉岡の「見えないものをデザインする」という哲学が結実したTOKYO-POPは、家具の概念を拡張し、空間芸術の領域へと昇華させた革新的作品として、デザイン史に名を刻んでいます。

ROLY POLY(ロリー・ポリー)アームチェア|Faye Toogood, 2015

イギリスの女性デザイナー、フェイ・トゥーグッドによる大胆で彫刻的なアームチェアです。ずんぐりとした量塊感のある形状は、まるで粘土を手で成形したかのような原初的な力強さを持ちながら、洗練された現代的感覚を失っていません。ポリウレタンフォームの構造体をファブリックまたはレザーで包んだこの椅子は、見た目以上の快適性を提供します。トゥーグッドは「Assemblage(アッセンブラージュ)」という独自のデザイン哲学のもと、異なる要素を組み合わせることで新しい価値を創造することを目指しており、ROLY POLYはその思想が具現化された代表作です。芸術的表現と座り心地という相反する要素を見事に調和させたこの作品は、現代デザインにおける重要なマイルストーンとなっています。

SISSI(シシー)チェア|Ludovica + Roberto Palomba

イタリアの著名なデザインデュオ、ルドヴィカ&ロベルト・パロンバによる、自然からインスピレーションを得た繊細なチェアです。背もたれの透かし彫りパターンは植物の葉脈や樹木の枝を思わせ、光と影の美しい戯れを生み出します。日本的な美意識とイタリアンモダンの融合を感じさせるこのデザインは、Driadeが近年追求している東洋的モチーフの探求の成果といえます。構造的強度を保ちながら視覚的な軽やかさを実現する高度な技術が駆使されており、屋内外での使用が可能です。植物的な有機性とモダンな幾何学性が絶妙なバランスで共存するSISSIチェアは、自然と人工、東洋と西洋という対立する概念を超越した、21世紀のデザインを象徴する作品です。

FRATE(フラーテ)テーブル

Driadeを代表するテーブルデザインの一つであり、ミニマリズムと構造美を極限まで追求した傑作です。細身のメタルフレームと天板の組み合わせは、重力に逆らうような軽やかさを表現しながら、実際には高い安定性と耐久性を備えています。シンプルでありながら存在感があり、あらゆるスタイルの空間に調和する汎用性の高さが特徴です。ダイニングテーブル、ワークデスク、会議テーブルなど、用途を問わず使用できる柔軟性により、住宅から商業空間まで幅広く採用されています。装飾を排したピュアなフォルムは、「Less is more」というモダニズムの原則を体現しながらも、イタリアンデザイン特有の優雅さを失っていません。

TOY(トイ)チェア|Philippe Starck

スタルクとDriadeの長期にわたるパートナーシップから生まれた、遊び心に満ちたチェアです。直線的で重厚感のあるデザインが特徴で、まるでおもちゃのブロックを組み合わせたかのような幾何学的構成が印象的です。しかしその見た目の単純さとは裏腹に、座り心地は驚くほど快適であり、長時間の使用にも耐える設計となっています。屋内外での使用が可能で、カラーバリエーションも豊富に展開されており、空間に鮮やかなアクセントをもたらします。スタルクの「デザインは人々の生活を向上させるべきであり、そのためにはユーモアと喜びが不可欠である」という民主的デザイン哲学が凝縮された作品といえるでしょう。

MERIDIANA(メリディアナ)チェア|Christophe Pillet, 2004

フランスのデザイナー、クリストフ・ピレによるDriadeコレクションの象徴的チェアです。背もたれのダイヤモンド型の透かし彫りパターンは、光を屈折させながら複雑な陰影を生み出し、見る角度によって異なる表情を見せます。透明、スモーク、白、黒のポリカーボネートシェル、またはレザー張りから選択でき、多様なインテリアスタイルに対応します。構造体は三種類の仕上げから選択可能で、カスタマイズの幅が広いのも魅力です。含蓄のある美学を備えたこのシートは、ダイニングルーム、書斎、オフィスなど、あらゆる空間に洗練された雰囲気をもたらします。現代的でありながらタイムレスなデザインは、Driadeの「未来の古典」を創造するという理念を体現しています。

主要デザイナーの系譜

Philippe Starck(フィリップ・スタルク)

1949年フランス・パリ生まれ。Driadeとの関係は1984年に始まり、現在に至るまで最も重要かつ長期的なパートナーシップを築いています。航空機エンジニアの父を持つスタルクは、パリのカモンド装飾美術学校で学んだ後、1960年代末に最初のデザインスタジオを設立。1982年にフランソワ・ミッテラン大統領によるエリゼ宮の私的空間の内装デザインを任されたことで一躍脚光を浴び、その翌年にパリのカフェ・コステスの内装を手がけました。このプロジェクトのためにデザインした「COSTES」チェアがDriadeから発表されると、スタルクは国際的スターデザイナーの地位を確立しました。

スタルクのデザイン哲学の核心は「民主的デザイン」にあります。彼は「創造とは、あらゆる形において、できるだけ多くの人々の生活を向上させなければならない」と考え、美しさと機能性、そして手頃な価格を両立させることに情熱を注いできました。家具、照明、家庭用品から建築、ヨット、宇宙工学に至るまで、驚くほど多様な分野でデザインを手がけるスタルクですが、その根底には常に「人間のためのデザイン」という一貫した信念が流れています。ウィットとユーモアに満ちた彼の作品は、ポストモダンデザインを代表するものとして、世界中の美術館に収蔵されています。

Enzo Mari(エンツォ・マリ)

1932年イタリア・ノヴァーラ生まれ、2020年逝去。20世紀イタリアデザインを代表する巨匠の一人であり、Driade創業初期から協力関係を築きました。ミラノのブレラ美術アカデミーで学んだマリは、単なる家具デザイナーの枠を超え、デザインという行為の本質的意味を問い続けた思想家でもありました。彼は「デザインとは、人間と社会の関係を改善するための実践である」と考え、形態の美しさだけでなく、製造プロセス、使用方法、社会的意義まで含めた総合的なアプローチを重視しました。

マリの代表的プロジェクトである「Autoprogettazione(自己設計)」は、ユーザー自身が簡単な工具で家具を組み立てられるキットであり、大量生産と消費主義への批判的メッセージを含んでいました。Driadeとの協働においても、この厳格な思想性は一貫しており、装飾を排した純粋な機能美を追求した作品を発表しています。マリの影響は、Driadeが「美的ラボラトリー」として知的探求を重視する姿勢の形成に大きく貢献しました。

Achille Castiglioni(アキッレ・カスティリオーニ)

1918年ミラノ生まれ、2002年逝去。イタリアンデザインの黄金期を築いた伝説的存在であり、Driadeとは1982年から協力関係を結びました。ミラノ工科大学で建築を学んだカスティリオーニは、兄弟たちとスタジオを設立し、家具、照明、工業製品など幅広い分野で革新的なデザインを生み出しました。彼の作品の特徴は、日常的なオブジェクトを観察し、その機能を巧みに転用することで、まったく新しい用途と美を発見する能力にありました。

カスティリオーニは生涯で16回ものコンパッソ・ドーロ賞(イタリアデザイン界最高の栄誉)を受賞しており、その業績は計り知れません。Driadeとの協働では、ユーモアとインテリジェンスを兼ね備えた作品を発表し、ブランドの知的アヴァンギャルドとしての地位確立に貢献しました。彼の「形態は機能に従うが、同時に驚きと喜びをもたらすべきである」という信念は、Driadeのデザイン哲学と見事に共鳴しています。

Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ)

1931年ミラノ生まれ、2019年逝去。イタリアンデザインの枠を超え、建築、デザイン、アート、評論など多方面で活躍した知の巨人です。Driadeとは1982年から長期にわたる協力関係を築きました。メンディーニは1970年代にラディカルデザイン運動の中心人物として、機能主義デザインへの批判的立場を表明し、装飾性、象徴性、詩的表現の復権を主張しました。雑誌「Casabella」「Domus」「Modo」の編集長を歴任し、理論家としても大きな影響力を持ちました。

メンディーニの作品は、鮮やかな色彩、装飾的パターン、歴史的様式への遊び心ある引用が特徴です。彼は「デザインは詩であり、感情を呼び起こすべきである」と考え、合理主義一辺倒だった戦後デザインに人間性と情緒を取り戻そうとしました。Driadeとの協働においても、この反モダニズム的姿勢は一貫しており、ポストモダンデザインの理論的基盤を提供する重要な役割を果たしました。彼の思想は、Driadeが多様性とエクレクティシズムを重視する姿勢の形成に深く影響を与えています。

Tokujin Yoshioka(吉岡徳仁)

1967年佐賀県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学び、1992年にフリーランスとして活動を開始、2000年に吉岡徳仁デザイン事務所を設立しました。Driadeとの協働による「TOKYO-POP」コレクション(2002年)は、国際的に大きな反響を呼び、吉岡を世界的デザイナーの地位へと押し上げました。2007年にはニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100人」の一人に選ばれています。

吉岡のデザインは「見えないものをデザインする」という独自の哲学に貫かれています。光、空気、時間といった無形の要素を、形あるプロダクトとして結晶化させる彼の手法は、東洋的な精神性とハイテクノロジーを融合させた新しいデザイン言語を生み出しました。透明素材を多用し、素材そのものの美しさを引き出す彼のアプローチは、ミニマリズムを超えた詩的な表現として高く評価されています。Driadeとの協働は、ブランドに日本的美意識という新たな次元をもたらしました。

Naoto Fukasawa(深澤直人)

1956年山梨県生まれ。多摩美術大学卒業後、セイコーエプソンを経て渡米し、IDEO(サンフランシスコ)でデザインを学びました。帰国後の2003年にNaoto Fukasawa Designを設立。無印良品のアートディレクターも務め、日本を代表する国際的プロダクトデザイナーとして活躍しています。Driadeとの協働では、日本的な簡潔さとイタリアンデザインの情熱を融合させた作品を発表しています。

深澤のデザイン哲学の核心は「Without Thought(無意識のデザイン)」にあります。人々が無意識に行う行動や仕草を観察し、それに自然に寄り添う形態を生み出すことで、使用者がデザインの存在を意識することなく快適に使える製品を実現します。この「普通であること」を追求する姿勢は、装飾的で主張の強い作品が多いDriadeコレクションの中で、独特の静謐さと普遍性をもたらしています。深澤の作品は、日本の「引き算の美学」が西洋デザインに新しい可能性を開いた好例といえるでしょう。

Fabio Novembre(ファビオ・ノヴェンブレ)

1966年イタリア・レッチェ生まれ。ミラノ工科大学建築学部卒業後、ニューヨークで映画制作を学ぶという異色の経歴を持ちます。1994年に香港のBlumarine店のインテリアデザインを手がけ、同年ミラノにスタジオを開設。2000年からはイタリアの著名モザイクメーカー「Bisazza」のアートディレクターを務め、2001年からDriade、Cappellini、Meritaliaなどのブランドにプロダクトを提供しています。

ノヴェンブレのデザインは、強烈なビジュアルインパクトと物語性が特徴です。人間の身体や顔をモチーフとした作品が多く、家具というよりも彫刻やインスタレーションアートとして認識されることも少なくありません。2010年のミラノデザインウィークでDriadeのために発表した仮面をモチーフにした椅子「NEMO」は、センセーショナルな反響を呼びました。エキセントリックで挑発的なデザインで常に注目を集める彼は、「イタリアデザイン界の風雲児」と称されています。Driadeの前衛的で実験的な姿勢を最も劇的に体現するデザイナーの一人です。

Faye Toogood(フェイ・トゥーグッド)

1977年イギリス生まれ。ブリストル大学で美術史を学んだ後、ファッション誌のスタイリストとしてキャリアをスタート。その後インテリアデザイン、家具デザイン、彫刻へと活動領域を拡大し、現在はロンドンを拠点に多岐にわたる創作活動を展開しています。Driadeとの協働による「ROLY POLY」アームチェア(2015年)は、彼女の代表作として国際的に高く評価されています。

トゥーグッドのデザインアプローチは「Assemblage(アッセンブラージュ)」と呼ばれ、異なる素材、形態、文化的要素を組み合わせることで新しい価値を創造することを目指しています。彼女の作品は、原始的な力強さと洗練された現代性、手仕事の温もりと工業生産の精度といった対立する要素を見事に統合しています。芸術と工芸の境界を曖昧にする彼女の実験的姿勢は、Driadeが追求する「芸術としての家具」という理念と完全に一致しており、21世紀のデザインに新しい方向性を示しています。

Driadeが体現する現代的価値

芸術と生活の融合

Driadeの作品は、日常生活で使用される家具でありながら、同時に空間を芸術作品へと昇華させる力を持っています。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ヴィクトリア&アルバート博物館、ミュンヘンのピナコテーク・デア・モデルネなど、世界の主要美術館がDriadeのコレクションを収蔵していることは、その芸術的価値の証明です。しかし重要なのは、これらの作品が美術館に収められるだけでなく、実際に人々の生活空間で使用され、日々の暮らしに美と喜びをもたらしているという事実です。

文化の架け橋としての役割

Driadeは、イタリアという枠を超えた真にグローバルなデザインブランドです。フランスのフィリップ・スタルク、イギリスのフェイ・トゥーグッド、イスラエルのロン・アラッド、そして日本の吉岡徳仁や深澤直人など、異なる文化圏のデザイナーたちが一つのブランドのもとで創造活動を展開することで、文化間の対話と融合が実現されています。この多文化主義的アプローチは、グローバル化が進む現代社会において、異なる価値観の共存と相互理解を促進するモデルケースとなっています。

革新と伝統の調和

半世紀以上の歴史を持つDriadeは、創業時の実験精神を失うことなく、常に新しい挑戦を続けています。最新のデジタル製造技術を活用しながら、イタリアの伝統的な職人技を尊重する。前衛的なデザインを追求しながら、タイムレスな美しさを失わない。この革新と伝統の絶妙なバランスこそが、Driadeが時代を超えて愛され続ける理由です。創業家第二世代の経営のもと、ブランドは新しい時代のデザイン課題に取り組みながらも、創業者たちが築いた「美的ラボラトリー」としてのアイデンティティを大切に守り続けています。

持続可能性への取り組み

21世紀のデザインブランドとして、Driadeは環境への配慮を重要な責務と認識しています。耐久性の高い製品を創造することで長期使用を可能にし、リサイクル可能な素材の選択、効率的な生産プロセスの導入など、持続可能な製造を追求しています。同時に、美しく質の高いデザインこそが究極のサステナビリティであるという信念のもと、時代を超えて愛される「未来の古典」を生み出すことに注力しています。

ブランド基本情報

ブランド名 Driade(ドリアデ)
設立年 1968年
創業者 エンリコ・アストリ(Enrico Astori)
アントニア・アストリ(Antonia Astori)
アデライデ・アチェルビ(Adelaide Acerbi)
本社所在地 Via Padana Inferiore 12, 29012 Fossadello di Caorso, Piacenza, Italy
公式サイト https://www.driade.com
ブランドコンセプト 美的ラボラトリー、芸術の工場、モダンデザインの探求
主要製品カテゴリー 家具(チェア、テーブル、ソファ、収納)、照明、テーブルウェア、アクセサリー
デザイン特徴 前衛的、彫刻的、アヴァンギャルド、芸術性と実用性の融合
代表的コレクション COSTES、NEMO、SOFT EGG、TOKYO-POP、ROLY POLY、SISSI、FRATE
主要コラボレーター フィリップ・スタルク、エンツォ・マリ、アキッレ・カスティリオーニ、
アレッサンドロ・メンディーニ、吉岡徳仁、深澤直人、
ファビオ・ノヴェンブレ、ロン・アラッド、伊東豊雄、
妹島和世、フェイ・トゥーグッド、コンスタンティン・グルチッチ