概要
フェイ・トゥーグッド(1977年生まれ)は、イギリスのデザイナーである。雑誌の編集を経て2008年に独立し、家具、衣服、内装、彫刻を並行して手がけてきた。手で造形した原型の凹凸を消さずに製品へ移す進め方をとり、ロリー・ポリー・チェアがその代表にあたる。作品は「アッサンブラージュ」と番号を付けた系列として発表される。
バイオグラフィー
1977年、イングランド東ミッドランズのラトランドに生まれた。ブリストル大学で美術史を学んでいる。
1998年の卒業後、コンデナスト社の雑誌『ワールド・オブ・インテリアズ』に入り、編集者のミン・ホッグのもとで9年間働いた。誌面の構成と撮影の現場を通じて、物の見せ方を扱う立場にあった。
2008年に独立し、ロンドンで自身のスタジオを設立する。2010年にエレメント・テーブルとスペード・チェアを発表し、家具の設計を本格化させた。
2014年にロリー・ポリー・チェアを発表し、以後この形が広く知られるようになった。衣服の系列も並行して展開し、家具、内装、彫刻を分けずに活動している。2025年にはメゾン・エ・オブジェのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
デザインの思想と方法
トゥーグッドの設計は、手で触れられる大きさの原型をつくることから始まる。粘土や石膏で塊を削り、指の跡や工具の痕が残った状態を確認したうえで、それを製品の寸法へ拡大する。図面上で決めた形を後から材料に写すのではなく、材料を扱った結果を形とする順序である。
原型の痕跡を残す
手で造形した原型には、面のわずかな歪みや工具の跡が残る。通常の製品化ではこれを平滑に整えるが、トゥーグッドは型取りの段階でそのまま残す。結果として、量産された樹脂や金属の製品にも手の跡が現れる。工程で消えるはずのものを、意図して残す処理にあたる。
断面を太くする
彼女の家具は、構造上必要な寸法よりも部材が太い。ロリー・ポリー・チェアの脚は円筒状で、荷重から計算される径を大きく上回る。太さは強度のためではなく、塊としての存在感と、抱えたときの重さを決めるための寸法である。
番号を付けた系列で発表する
作品は「アッサンブラージュ1」から順に番号を付けた系列として発表される。個々の製品ではなく、一定期間の制作をまとめて一つの単位とする形式で、素材や手法の探索がそのまま公開される。2020年のアッサンブラージュ6では、300点の小型模型から家具へ拡大する過程が示された。
分野を分けない
家具、衣服、内装、彫刻を同じスタジオで扱い、それぞれを別の職能として区別しない。衣服も家具と同じく、身体を包む形をどうつくるかという問題として扱われる。素材はファイバーグラス、ブロンズ、鋳造ガラス、石膏、粘土、木、革に及ぶ。
代表作にみる方法
エレメント・テーブル(2010年)
最初期の家具にあたる。ガラスの天板を、シカモアの球、ポートランド石の立方体、真鍮の円柱という3つの単体で支える。それぞれ材質も形も異なり、共通するのは天板を支える高さだけである。部材を統一しないという構成が、以後の仕事にも通じている。
スペード・チェア(2010年)
三本脚の搾乳用腰掛けと、鋤の柄の形を参照した椅子である。背もたれが一枚の板で立ち上がり、座面との接合部だけで支持される。シカモアやアッシュ、真鍮を用い、農具の形式をそのまま家具の構成に移している。
ロリー・ポリー・チェア(2014年)
4本の太い円筒の脚の上に、皿状の座面が載る椅子である。原型は手で削り出され、面のわずかな歪みが型に残る。当初は職人の手による少数生産だったが、のちにドリアーデが回転成形の樹脂で量産している。成形の工程が変わっても、原型の凹凸は保たれている。→ロリー・ポリー
アッサンブラージュ6:アンラーニング(2020年)
300点の小型模型を制作し、そこから家具へ拡大した系列である。ブロンズや鉄を、段ボールやテープを扱うように曲げ、切り、留めた形で成形する。硬い材料に柔らかい材料の扱い方を適用するという操作にあたる。
スカッシュ コレクション(2024年)
ポルトローナ・フラウとの協働による8点の系列である。革を主材とする最初の本格的な仕事で、張り込むのではなく、革そのものの厚みと張力で形を保つ構成をとる。材料が変わっても、塊としての太さという条件は変えていない。
評価と影響
トゥーグッドは一般に、2010年代以降のイギリスのデザインにおいて、手の造形を量産品に持ち込む方向を代表する設計者と評価されている。工程で消える痕跡を残すという処理が、繰り返し論じられる。
ロリー・ポリー・チェアの形は広く知られ、類似の形状の製品も多く出た。原型の痕跡を残すという条件まで含めて成立している点が、この作品の位置づけにあたる。
家具、衣服、内装、彫刻を分けずに扱う活動の形式も、職能の境界をめぐる例として言及される。2025年にはメゾン・エ・オブジェのデザイナー・オブ・ザ・イヤー、ストックホルム・ファニチャー・フェアのゲスト・オブ・オナーに選ばれた。
受賞・収蔵
受賞
- 2025年 メゾン・エ・オブジェ デザイナー・オブ・ザ・イヤー
- 2025年 ストックホルム・ファニチャー・フェア ゲスト・オブ・オナー
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。このほか、デンバー美術館がロリー・ポリー・チェアを収蔵している(収蔵番号2014.158)。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2010年 | テーブル | エレメント・テーブル | 自主制作 |
| 2010年 | 椅子 | スペード・チェア | 自主制作 |
| 2014年 | 椅子 | ロリー・ポリー | Driade |
| 2020年 | 家具 | アッサンブラージュ6:アンラーニング | 自主制作 |
| 2020年 | 椅子 | パフィー・ラウンジ・チェア | Hem |
| 2020年代 | ラグ | cc-tapis のためのラグ | cc-tapis |
| 2024年 | 家具 | スカッシュ コレクション | Poltrona Frau |
| 2020年代 | 家具 | Tacchini/Vaarnii のための家具 | Tacchini / Vaarnii |
プロフィール
| 生年 | 1977年 |
|---|---|
| 出身地 | イギリス・ラトランド |
| 国籍 | イギリス |
| 活動拠点 | ロンドン |
| 分野 | 家具、衣服、インテリア、彫刻 |
| 主な協働ブランド | Driade、Hem、Poltrona Frau、Tacchini、cc-tapis、Kvadrat |
Reference
- Faye Toogood(公式)
- https://t-o-o-g-o-o-d.com/
- Faye Toogood | Driade
- https://www.driade.com/en/designers/faye-toogood
- Faye Toogood | Poltrona Frau
- https://www.poltronafrau.com/en/designers/faye-toogood
- Denver Art Museum Collection
- https://www.denverartmuseum.org/en/collection