デダル シェルフは、ハンガリー出身のデザイナー、マチュー・マテゴーが1955年にデザインしたウォールシェルフである。金属チューブとパンチングメタルを組み合わせた革新的な技法「リジチュール」を駆使し、金属の堅牢性と布地のような軽やかさを両立させた傑作として知られる。一見シンプルながら複数レベルで構成されるモジュラーデザインは、単体でも、複数を組み合わせても幾何学的な美しさを生み出す。現在はデンマークのインテリアブランド、GUBIによって復刻生産され、半世紀以上を経た今なお現代的な魅力を放ち続けている。

特徴とコンセプト

リジチュール技法の結晶

デダル シェルフの最大の特徴は、マテゴーが独自に開発し特許を取得した「リジチュール」技法の応用にある。この技法は、金属チューブとパンチングメタルシートを組み合わせ、金属を布地のように折り曲げ、成形することを可能にした。第二次世界大戦中、ドイツの捕虜収容所で機械部品工場にて金属加工技術を学んだマテゴーは、戦後この経験を活かし、金属素材に透明性、軽量性、そして永続的なモダニティを与えることに成功した。折り曲げられたパンチングメタルは、レースのような軽やかさと、構造的な強度を併せ持つ独特の表情を生み出している。

モジュラーシステムとしての拡張性

デダル シェルフは、モジュール式のウォールシェルフとして設計されている。単体での使用はもちろん、複数のシェルフを組み合わせることで、新たなデザインパターンを創出することができる。水平・垂直の両方向に設置可能であり、使用者の空間や用途に応じて自由な構成が可能である。複数のシェルフを並置することで生まれる幾何学的パターンは、壁面に動きと律動感を与え、機能的な収納を超えた彫刻的な存在感を発揮する。この柔軟性は、マテゴーが追求した「適応性のある現代デザイン」という理念を体現している。

グラフィカルな造形美

デダル シェルフの造形は、一見シンプルでありながら高度に洗練されている。折り曲げられたパンチングメタルが描く曲線と直線の組み合わせは、グラフィカルな美しさを持ち、壁面に軽やかなアクセントを添える。パンチング加工による無数の小さな穴は、光と影の繊細な戯れを生み出し、時間帯や照明によって表情を変化させる。この視覚的な軽やかさは、金属という素材の持つ重厚さを感じさせず、空間に開放感をもたらす。多彩なカラーバリエーションは、インテリアスタイルに応じた選択を可能にし、ミッドセンチュリーモダンから現代空間まで幅広く調和する。

エピソード

1950年代フランスデザインの象徴

デダル シェルフが誕生した1955年は、マテゴーが家具デザインとインテリアアクセサリーの制作に最も精力的に取り組んでいた時期である。パリとカサブランカに自身の工房「ソシエテ・マテゴー」を構え、最大20名の職人を雇用していたマテゴーは、年間400点までの限定生産により品質管理を徹底していた。この時期、彼はフルーツボウル、ランプ、コートラック、ドリンクトローリーから椅子に至るまで、多岐にわたる家具とアクセサリーをリジチュール技法で生み出した。デダル シェルフは、こうした創造的絶頂期における代表作のひとつであり、戦後フランスデザインの革新性と優雅さを象徴する作品となった。

GUBIによる復刻と現代への継承

マテゴーは1960年代初頭、突如として家具デザインの仕事を終了し、タペストリー制作に専念するため南仏アンジェに移住した。それ以降、彼の家具デザインは長い間生産されることがなかった。21世紀に入り、デンマークのデザインハウスGUBIがマテゴーの遺産に注目し、デダル シェルフをはじめとする名作の復刻を開始した。GUBIによる復刻版は、マテゴーの息子たちであるグザヴィエとパトリスの監修のもと、オリジナルの設計と精神を忠実に再現している。この復刻により、新たな世代がマテゴーの革新的なデザインに触れる機会が生まれ、半世紀以上前の作品が現代のインテリアにおいて再び生命を得ることとなった。

評価

デダル シェルフは、発表から70年近くを経た今日においても、その現代性を失っていない。マテゴーのリジチュール技法がもたらす独特の軽やかさと構造美は、ミニマリズムと機能性を重視する現代のデザイン潮流にも完全に合致している。世界的なデザイン評論家たちは、マテゴーの作品を「時代を超越したフランスモダニズムの傑作」と評し、パリのポンピドゥー・センターや装飾芸術美術館といった主要な美術館がその作品を常設コレクションに加えている。デダル シェルフのモジュール性と拡張性は、現代の多様化する住空間のニーズに柔軟に対応し、単なる収納家具を超えた建築的要素としての価値を持つ。GUBIによる復刻は、デザイン史における重要性の再認識をもたらし、コレクターや愛好家のみならず、新しい世代のデザイン愛好者にも広く支持されている。

基本情報

デザイナー マチュー・マテゴー(Mathieu Matégot)
デザイン年 1955年
ブランド GUBI(復刻版)
製造元 Les Ateliers Matégot(オリジナル)/ GUBI(復刻版)
素材 パンチングメタル、金属チューブ、ラッカー仕上げ
寸法 幅89cm × 奥行19.5cm × 高さ48.5cm(標準サイズ)
特徴 リジチュール技法、モジュラーシステム、水平・垂直両用設置
カラー ブラック、ホワイト、その他複数カラー展開