概要

ランディ チェアは、ハンス・コレーが1938年に設計した、全体がアルミニウムでつくられた椅子である。1939年にチューリッヒで開かれたスイス国民博覧会(通称「ランディ」)の公式椅子として1,500脚が製作され、博覧会の呼び名がそのまま椅子の名になった。現在はヴィトラが製造している。

特徴・コンセプト

二つの部品で成立する

ベースは、溶接したクロスビームで結んだ一対のU字型アルミニウム押出材で、自立するフレームであると同時に脚と低いアームレストを兼ねる。その上に、アルミニウム板をプレス成形したシェルが載る。部品はこの二つだけで、三次元に成形したシェルを独立したベースに載せるという構成が、ここで明快なかたちをとった。この型は、のちにチャールズ&レイ・イームズがイームズ プラスチック サイドチェア DSWなどで展開するシェルチェアの前提になった。

穴が担う三つの役割

シェルに開けられた91個の丸穴は、装飾ではない。重量を約3kgに抑え、シェルにたわみを与えて座り心地を確保し、屋外で溜まる雨水を落とす。三つの要請が同じ処理で満たされており、その結果としてこの穿孔パターンが椅子の見た目そのものになっている。

アルミニウムという選択

1930年代の家具においてアルミニウムはまだ例外的な素材だったが、スイスにとっては主要な輸出品目であり、工業力を示す材料でもあった。コレーは硬化処理を施したアルミニウム合金を用い、屋外に置いたまま使える軽量な椅子を目指した。素材はスイスの大手アルミニウム会社が供給し、製造は椅子づくりの経験を持たなかったP.&W.ブラットマン金属製品会社が引き受けたが、設計変更なしに量産にこぎつけている。

積み重ね

最大6脚まで垂直に積み重ねられる。博覧会の会場に1,500脚を配置し、天候や催しに応じて動かすことを前提とした設計であり、軽さと積み重ねやすさは最初から要求に含まれていた。

エピソード

1938年夏、バウハウス出身の建築家ハンス・フィッシュリが、翌年の国民博覧会のための椅子を設計するようコレーに勧めた。求められたのは、あらゆる点で新しい椅子である。コレーは短期間のうちに、垂直に積み重ねられるオールアルミニウムの椅子という案をまとめ、同年の選定を通過した。

1939年5月6日から10月29日まで開かれたスイス国民博覧会は、チューリッヒ湖の両岸に会場を設けた。会期中の9月1日に第二次世界大戦が始まっている。閉幕後、椅子は1脚15スイスフランで一般に売られた。工場出荷価格は28フランで、手の届く工業製品をつくるというコレーの意図がここに表れている。

チャールズ&レイ・イームズ夫妻は、パシフィック・パリセーズの自邸の庭でランディ チェアを使っていた。耐候性と軽さ、そしてシェルとベースを分離する構造上の着想は、1950年代の夫妻のシェルチェアに引き継がれていく。

製造の変遷

当初はP.&W.ブラットマン金属製品会社(MEWA)が製造し、1950年頃にはゴム製のグライドが付いて屋内でも使えるようになった。1962年から1998年にかけては、費用を抑えるために穿孔が7×7の配列から6×6に変更されている。1970年代にはイタリアのザノッタが類似のモデルを製造した。

2014年、ヴィトラがハンス・コレーの妻アンリエット・コレーの協力を得て、91個の穴を持つ当初の仕様での生産を再開した。現行品は現在の生産技術で作られながら、1938年の寸法と構成を踏襲している。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、曲げ加工とプレス成形によるアルミニウムとゴムによる1938年のランディ チェアを収蔵番号519.1998で登録している(1998年、ガブリエルおよびマイケル・ボイドからの寄贈。寸法77.5×54×56.2cm)。2004年には、スイス郵便がデザインクラシックの切手にこの椅子を採用した。

基本情報

名称 ランディ チェア / Landi Chair
デザイナー ハンス・コレー(Hans Coray)
ブランド ヴィトラ(Vitra/2014年〜)/P.&W.ブラットマン金属製品会社(当初)
発表年 1938年設計/1939年 スイス国民博覧会で使用
デザインの成立国 スイス
分類 チェア(屋内外兼用)
主要素材 シェル:プレス成形アルミニウム(アルマイト仕上げ)/ベース:曲げ加工アルミニウム押出材+溶接クロスブレース
サイズ 幅51.5cm × 奥行65cm × 高さ79.5cm、座面高47.5cm(ヴィトラ現行品)
重量 約3kg
穿孔 91個(当初仕様。現行品も同数)
スタッキング 最大6脚
収蔵 ニューヨーク近代美術館(519.1998)

Reference