概要

ハンス・コレー(1906-1991)は、スイスのデザイナー・彫刻家である。1938年、翌年のスイス国内博覧会のために屋外用の椅子を設計した。アルミニウムの板を三次元に成形し、多数の孔を開けて軽量化と排水を同時に満たす構成をとる。この椅子は開催地の名を取ってランディチェアと呼ばれる。設計者としての訓練は受けておらず、言語学と美術史を修めた経歴を持つ。

バイオグラフィー

1906年6月9日、スイスのヴュルデンスヴィルに生まれた。チューリッヒ大学で言語学と美術史を学び、1929年に博士号を得ている。設計については正規の課程を経ていない。

1930年代から美術と工芸の分野で活動した。1938年、翌1939年にチューリッヒで開かれるスイス国内博覧会(ランデスアウステルング)の屋外用の椅子を設計する。

1939年の博覧会で約1,500脚が使われ、以後もブラットマンによって生産が続いた。1962年に一部の仕様が変更されている。

1950年代以降は彫刻の制作を主な活動とした。1991年に没している。ランディチェアは1999年からヴィトラが生産している。

デザインの思想と方法

コレーが与えられた条件は明確だった。屋外に置く椅子で、多数を用意し、積み重ねて保管でき、雨に濡れても使える。当時のスイスはアルミニウムの生産国であり、材料の指定もこの事情から来ている。

孔で二つの要求を満たす

座面と背に開けた多数の孔は、材料を減らして軽くすると同時に、雨水を抜く。屋外用という条件と軽量という条件が、一つの処理で同時に満たされている。孔の配置は成形時の変形も考慮して決められた。

板を三次元に成形する

平らな板は曲げに弱いが、三次元の曲面に成形すれば剛性が出る。座面と背を一枚の板から作り、身体に沿う形とすることで、詰め物なしで座れる。孔を開けた薄い板でも荷重に耐えるのは、この曲面によるところが大きい。

脚を細い管で構成する

脚部はアルミの管を曲げて構成する。座面の殻と脚を別部材とすることで、それぞれを最適な断面にできる。積み重ねたときに互いが噛み合う形状で、多数を保管できる。

材料を国内で調達する

アルミニウムの選択は、スイス国内で生産されている材料という条件も満たしている。国内博覧会という催しの性格上、材料の出所も設計の条件に含まれていた。

代表作にみる方法

ランディチェア(1938年)

アルミニウムの板を三次元に成形し、多数の孔を開けた屋外用の椅子である。孔は軽量化と排水を兼ね、曲面が薄い板に剛性を与える。脚はアルミの管で構成され、積み重ねられる。1939年のスイス国内博覧会で約1,500脚が使われた。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号519.1998)。→ランディ チェア

ランディチェアの仕様変更(1962年)

当初は孔が91個だったが、1962年の生産分から60個に減らされた。成形時の変形と強度の兼ね合いによる変更で、以後この仕様が標準になっている。孔の数が製造上の条件から決まっていることを示す。

彫刻の制作(1950年代〜)

1950年代以降は彫刻を主な活動とした。金属を扱う点は家具と共通するが、用途を持たない対象へ移っている。

評価と影響

コレーは一般に、20世紀の屋外用家具において、材料と用途の条件から形を導いた例として評価されている。孔が軽量化と排水を同時に満たすという構成が、繰り返し言及される。

設計の専門教育を受けず、言語学と美術史の学位を持つという経歴も特徴として挙げられる。ランディチェアは、材料の性質と用途の条件が明確な場合に、専門の訓練を経ていなくても解が得られる例と扱われることがある。

1999年からヴィトラが生産を引き継いでいる。設計から80年以上を経て生産が続いている家具は多くない。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。

  • MoMA ランディチェア(1938年) 収蔵番号 519.1998

V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。スイス国内の館については照合手段がない。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1938年 椅子 ランディ チェア Blattmann / Vitra
1962年 椅子 ランディチェア(孔の数を変更した仕様) Blattmann
1950年代〜 彫刻 金属による彫刻

プロフィール

生没年 1906年6月9日〜1991年
出身地 スイス・ヴュルデンスヴィル
国籍 スイス
活動拠点 チューリッヒ
分野 家具、彫刻
主な協働ブランド Vitra、Blattmann

Reference

Hans Coray | Vitra
https://www.vitra.com/en-us/product/designer
Landi Chair | Vitra Design Museum
https://www.design-museum.de/en/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325