エクストラソフトは、イタリアの名門家具ブランド、リビングディバニを代表するモジュールソファシステムである。2008年にピエロ・リッソーニによってデザインされたこの作品は、幾何学的な直線美と柔らかな快適性を両立させた画期的なシーティングシステムとして、現代デザイン史に重要な足跡を残している。その名が示す通り、極上の柔らかさと快適性を追求しながら、同時に建築的な明確さを失わない洗練された造形が特徴である。
本作は2008年のミラノサローネで発表されて以来、国際的な評価を獲得し続けており、リビングディバニのアイコニックなプロダクトとして、世界中のラグジュアリー空間に導入されている。モジュール式の設計により、空間に応じた無限の配置構成が可能となり、住宅からホスピタリティ空間まで、幅広い用途に対応する汎用性を備えている。
特徴・コンセプト
デザイン哲学
エクストラソフトのデザインは、リッソーニの建築的アプローチとイタリアンデザインの伝統が融合した成果である。彼は「カジュアルでありながら洗練された、柔軟で順応性のある快適さ」というコンセプトを掲げ、従来のソファの概念を再定義した。その設計思想の根底には、中東の伝統的な床座の文化からインスピレーションを得た、低く広がりのある座面構成がある。
直線的な幾何学形態でありながら、不規則な輪郭を持つという一見矛盾した特性を併せ持つことで、秩序と自由、構築性と有機性の絶妙なバランスを実現している。この独特な造形言語は、リッソーニが追求し続けてきた「本質的でシンプル」という美学を体現するものであり、装飾を排した純粋な形態美を追求している。
構造と素材
屋内仕様のフレームはポプラとパインの二重パネル構造で構成され、ゴムコーティングされたエラスティックストラップによる弾力性のある座面基部を備えている。パディングは密度の異なるポリウレタンフォームを使用し、その上に前洗浄・殺菌処理されたグースダウンの詰物層を重ねることで、極上の柔らかさと適度な支持性を両立させている。
カバーリングはファブリックまたはレザーから選択可能で、全面的にベルクロファスニングによる取り外しが可能な仕様となっている。調整可能なブラックPVC製の脚部は、モジュール構成の多様性を支える機能的要素として機能する。また、屋外仕様も用意されており、マリングレードの合板フレームと屋外用ポリウレタンフォーム、屋外ファブリックを採用することで、テラスやガーデン空間にも対応している。
モジュール性と構成
エクストラソフトの最大の特徴は、その高度なモジュール性にある。様々なサイズの座面、アームレスト、背もたれユニットを自由に組み合わせることで、L字型、U字型、アイランド型など、空間や用途に応じた無数の配置構成が実現可能となっている。各モジュールはフックシステムによって接続されるため、配置の変更や拡張が容易である。
2022年には、ソフトで包み込むような既存のモジュールとは対照的な、硬質なフォルムを持つ収納ユニット「エクストラソフト・コンテニトーリ」が追加された。2種類の高さと3種類の寸法で展開されるこの木製モジュールは、システム全体のモジュール性を継承しながら、リズムを変化させ、機能性を拡張する革新的な要素として評価されている。
エピソード
リビングディバニとピエロ・リッソーニの協働関係は、1989年に彼がアートディレクターに就任して以来、30年以上にわたって続いている。エクストラソフトは、この長期的なパートナーシップが成熟期を迎えた時期に生み出された作品であり、両者の相互理解と信頼関係の深さを物語っている。リッソーニは自身のミラノの自宅テラスにもエクストラソフトを設置しており、その実用性と美的価値を日常的に体験している。
本作の発表時、リビングディバニ共同創業者のルイージ・ベステッティとレナータ・ポッツォーリは、リッソーニの「純粋で真のデザイン」に対する信念を全面的に支持した。これは、1995年のフロッグチェア発表時に見せた初期の懐疑を乗り越え、デザイナーの革新的なビジョンを信頼するようになった彼らの姿勢を示すものである。エクストラソフトは、こうした創造的リスクを厭わないブランド哲学の結実として位置づけられる。
評価
エクストラソフトは、発表以来、国際的なデザインコミュニティから高い評価を受けている。その評価の核心は、モジュラーシステムとしての機能性と、彫刻的な美しさを兼ね備えた設計の卓越性にある。デザイン専門誌やインテリア雑誌において、「現代のラグジュアリーの新しい形態を提示する作品」として度々取り上げられ、リビングディバニのベストセラーコレクションの一つとなっている。
建築家やインテリアデザイナーからは、その汎用性と空間への適応力が特に評価されており、ホテルのロビーラウンジから個人邸のリビングルームまで、多様な空間に導入されている。ミニマリズムでありながら温かみを失わないデザインは、リッソーニの作品に共通する特質であり、エクストラソフトはその最も成功した実例の一つとして認識されている。
受賞歴
エクストラソフト自体の個別受賞歴については公式な記録が限定的であるが、デザイナーであるピエロ・リッソーニは、日本のグッドデザイン賞、ドイツのレッドドット賞、イタリアのコンパッソ・ドーロADI賞など、数々の国際的デザイン賞を受賞している。これらの栄誉は、エクストラソフトを含む彼の作品群全体に対する国際的評価を示すものである。
また、リビングディバニは2012年にアルタガンマ財団に加盟しており、これはイタリアの最高級ブランドとしての地位を証明する重要な認証となっている。エクストラソフトは、このブランド価値を体現する代表的プロダクトとして位置づけられている。
基本情報
| デザイナー | ピエロ・リッソーニ |
|---|---|
| ブランド | リビングディバニ |
| デザイン年 | 2008年 |
| 発表 | 2008年ミラノサローネ |
| 分類 | モジュールソファシステム |
| フレーム素材 | ポプラ・パイン合板(屋内仕様)、マリングレード合板(屋外仕様) |
| パディング | 多密度ポリウレタンフォーム、グースダウン |
| カバーリング | ファブリックまたはレザー(取り外し可能) |
| 主な用途 | 住宅、ホスピタリティ、コントラクト空間 |
| 製造国 | イタリア |