概要

ピエロ・リッソーニ(1956年生まれ)は、イタリアの建築家・デザイナーである。1986年にミラノで事務所を開き、建築、内装、家具、グラフィックを一つの事務所で扱う体制をとった。B&Bイタリア、ボッフィ、リビング・ディヴァーニ、ポロなど複数のメーカーでアートディレクターを務め、製品の設計だけでなくブランドの見え方の管理まで担っている。2024年にコンパッソ・ドーロのキャリア賞を受けた。

バイオグラフィー

1956年7月23日、ミラノ近郊ブリアンツァ地方のセレーニョに生まれた。家具工場が集まる地域である。ミラノ工科大学の建築学科で学び、1985年に修了している。

1986年、ニコレッタ・カネージとともにミラノでスタジオ・リッソーニ・アソシエイティを設立した。この時期からボッフィのキッチンと浴室の設計を手がけている。1996年には、ブランドの見え方・カタログ・広告を扱うグラフィック部門 Graph.x を設立した。

2013年に建築の仕事の増加に対応して事務所名をリッソーニ・アルキテットゥーラへ改め、2015年にはニューヨークに拠点を設けた。現在はミラノとニューヨークのリッソーニ・アンド・パートナーズとして、70名を超える体制で活動している。

アルピ、B&Bイタリア、ボッフィ、リビング・ディヴァーニ、レマ、ルアルディ、ポロ、サンロレンツォのアートディレクターを務めるほか、ミラノ工科大学で教えている。

デザインの思想と方法

リッソーニの仕事は、製品を一点ずつ設計することと、ブランド全体の見え方を決めることの両方を含む。複数のメーカーでアートディレクターを務めるという立場がこれを規定しており、個々の家具の形は、そのブランドの製品群の中でどう働くかという条件のもとで決まる。

体積を減らさずに軽く見せる

彼のソファは、座面の厚みと奥行きを確保しながら、床との関係で軽く見せる構成をとる。座面を低く抑えて水平線を強調する、支持部を細くして床との間に隙間を残す、背もたれの高さを下げて視線を通す——いずれも快適さのための体積は削らずに、部屋の中での占有感だけを減らす操作にあたる。

単位を組み合わせる

ソファとベッドの多くは、単位を連結して構成を変えられる方式をとる。エクストラソフトやエクストラウォールは、座面・背もたれ・肘掛けを個別の要素として扱い、必要な位置にだけ配置する。使い手が最終形を決めるため、設計者が決めるのは単位の寸法と連結の方式になる。

建築と什器を同じ事務所で扱う

ホテル、店舗、企業本社、船舶の内装では、建物の設計と家具・照明・グラフィックを同じ事務所で担当する。個別に発注すれば別々の判断が積み重なるところを、寸法体系と材料の選択を通しで決められる。アートディレクターの職務も、この延長として製品群と展示・カタログの一貫性を保つ仕事にあたる。

素材の質感で差をつくる

色は白・灰・ベージュ・黒を基調とし、形も抑えるため、区別は素材の表面に委ねられる。滑らかな面と粗い面、光沢と艶消し、木の木目と金属の平滑さといった対比が、装飾の代わりに置かれている。

代表作にみる方法

フロッグ(1995年)

リビング・ディヴァーニのために設計した椅子である。細い金属の枠に、幅の広い座面を低く張る構成をとる。枠が細く、座面が枠の内側でたわむため、体積の割に軽く見える。以後この構成が同社の製品群の基調となり、リッソーニのアートディレクションの出発点にあたる。→フロッグチェア

エクストラウォール(リビング・ディヴァーニ)

座面の高さを抑え、奥行きを深くとったモジュール式のソファである。背もたれを低くすることで、部屋の中で視線を遮らない。単位を並べる向きと数によって、長椅子にも寝椅子にも構成できる。同じ部材でベッドの構成も用意されている。→エクストラウォール ソファ / エクストラウォール ベッド

エクストラソフト(リビング・ディヴァーニ)

クッションの厚みを増し、背もたれを低く保ったソファである。柔らかく沈む座面と、床に近い水平線という二つの条件を同時に満たすために、フレームを座面の内側に隠している。単位は継続的に追加されており、後年の部材を既存の構成に足せる。→エクストラソフト

ロッドビーン(2017年)

細い金属のフレームの上に、丸みを帯びたクッションを載せたソファである。骨組みと座面の役割を明確に分け、フレームは外から見える位置に残す。支持と快適さを別々の部材に担わせるという構成が、輪郭の対比としてそのまま現れている。→ロッドビーンソファ

モダン(ポロ)

ポロのために設計した収納システムである。扉と側板の見付けを細く保ち、モジュールを連結して壁面を構成する。取っ手を露出させず、面の分割だけで開閉の位置を示す。収納家具を独立した家具ではなく、壁の一部として扱う考え方にあたる。→ポッロ モダン

評価と影響

リッソーニは一般に、1990年代以降のイタリアの家具において、抑えた形と素材の質感で構成する方向を代表する設計者と評価されている。北欧の戦後モダニズムからの影響を自ら挙げており、幾何学的な構成と素材の扱いにその関係が指摘される。

複数のメーカーで同時にアートディレクターを務める体制は、設計者と企業の関係の一つの形として言及される。製品の設計にとどまらず、展示、カタログ、店舗までを同じ判断で決めることで、ブランドの見え方を長期にわたって管理する立場にあたる。

建築では、ホテルや集合住宅、船舶の内装を手がけている。2024年のコンパッソ・ドーロでは、キャリア賞と、サンロレンツォのために設計した船舶の内装に対する製品賞を同時に受けた。

受賞

  • 2014年 コンパッソ・ドーロ賞(ルアルディ L16 ドアシステム)
  • 2024年 コンパッソ・ドーロ キャリア賞
  • 2024年 コンパッソ・ドーロ賞(サンロレンツォ SP110 の内装設計)

作品一覧

家具・プロダクト

発表年 区分 作品名 ブランド
1995年 椅子 フロッグチェア Living Divani
1990年代 ソファ メックス/メット Cassina
2006年 椅子 PL200(リッソーニ シリーズ) Fritz Hansen
2008年 ソファ アルファベット Fritz Hansen
2016年 ソファ アヴィオ Knoll
2017年 ソファ ロッドビーンソファ Living Divani
2018年 椅子 ピウマ Kartell
2019年 椅子 シーズン Viccarbe
2019年 ソファ シーズン ソファ Viccarbe
2019年 ベンチ シーズン ベンチ Viccarbe
2019年 プーフ シーズン プーフ Viccarbe
ソファ エクストラウォール ソファ Living Divani
ベッド エクストラウォール ベッド Living Divani
ソファ エクストラソフト Living Divani
ソファ ネオウォール ソファ Living Divani
収納 ポッロ モダン Porro

建築・内装(抜粋)

区分 作品名 場所
2009年 劇場 テアトロ・ナツィオナーレ 改修 ミラノ、イタリア
2012年 ホテル コンセルヴァトリウム・ホテル アムステルダム、オランダ
2017年 ホテル カーサ・ファンティーニ オルタ湖、イタリア
2018年 ホテル ザ・ミドル・ハウス 上海、中国
2019年 店舗 カンパリーノ・イン・ガレリア 改修 ミラノ、イタリア
2021年 ホテル シャングリ・ラ 首鋼園区 北京、中国

プロフィール

生年 1956年7月23日
出身地 イタリア・セレーニョ
国籍 イタリア
活動拠点 ミラノ、ニューヨーク
分野 建築、インテリア、家具、グラフィック
主な協働ブランド Living Divani、B&B Italia、Boffi、Porro、Cassina、Knoll、Fritz Hansen、Flos

Reference