Eden Queen(エデン・クイーン)は、オランダのデザインブランドMoooi Carpetsを代表するシグニチャーラグのひとつで、2015年に発表された。デザイナーはマルセル・ワンダース。17世紀オランダ黄金時代の静物画、とりわけ花卉画(かきが)の伝統に着想を得て、最先端のデジタルプリント技術で現代に再構成した一枚である。

漆黒の背景に浮かび上がる花束は、フェードした黒い縁取りに包まれている。薔薇やチューリップをはじめとする多様な花々が緻密に描かれた構図は、古典絵画の趣を保ちながら、現代の空間にも自然になじむ。クラシックからミニマル、コンテンポラリーまで幅広いインテリアに合わせやすい点が、Eden Queenが長く支持されてきた理由のひとつである。

特徴・コンセプト

革新的なデジタルプリント技術

Eden Queenの最大の特徴は、Moooi Carpetsが採用する高精細なChromojetデジタルプリント技術にある。従来の製織では難しかった多彩な色数を扱えるため、ほぼ無限ともいえる色彩表現が可能になり、写真と見紛うほどの解像度で花々のディテールを再現する。トロンプ・ルイユ(だまし絵)のような立体感と奥行きが、布の上に生まれる。

とりわけ光と影の表現が際立つ。オランダ黄金時代の絵画に通じる明暗の対比をデジタルで再現し、花弁の質感や葉のディテール、やわらかな陰影までを描き出している。

環境への配慮

Moooi Carpetsは、従来の製法と比べて染料廃棄物が少なく、クリーニングサイクルが短く、エネルギー消費を抑えた製造方法を掲げている。美しさの追求と環境への配慮を両立させようとする姿勢は、ラグジュアリー製品におけるサステナビリティのひとつのあり方を示している。

デザイン哲学

マルセル・ワンダースは「愛に満ちた環境をつくり、情熱を持って生き、夢を実現する」という自らのミッションを掲げてきた。工業化がもたらす冷たさに代えて、異なる時代の詩情やファンタジー、ロマンスを現代に呼び戻し、人間味のあるデザイン——本人のいう「デザインの新しい時代」——を志向する作家である。

エピソード

Eden Queenは、マルセル・ワンダースがMoooi Carpetsのデジタルプリント技術と出会ったことから生まれた。ワンダースはこの技術に、カーペットを写真のように高精細な絵画として再構築できる可能性を見いだしたという。

着想源となったのは、ヤン・ダーフィッツ・デ・ヘームやラヘル・ライス、ヤン・ブリューゲルらに代表される17世紀オランダの花卉画の伝統である。これらの静物画には、咲き誇る花にやがて訪れる枯れを重ねる「メメント・モリ(死を想え)」の主題がしばしば込められた。Eden Queenは、その花々を決して枯れない一枚へと翻案している。

「Eden Queen」という名は、楽園を象徴するエデンの園と、花々の女王という二つのイメージを重ねたものと解釈できる。ラグの上に広がる花畑は、足もとに小さな庭園を呼び込むような趣をもたらす。

評価

Eden Queenは、伝統と最新技術、絵画とプロダクトを横断する点で注目を集めてきた。床材でありながら一枚の絵画のように空間の主役になりうる、「歩けるアート」と評されることもあるラグである。

用途の幅広さも魅力で、住宅から商業空間まで、内装のテイストを問わず取り入れやすい。空間に深みと個性を与える一枚として選ばれている。

環境に配慮した製造プロセスも、ラグジュアリー製品におけるサステナビリティの観点から評価されている。

基本情報

名称 Eden Queen(エデン・クイーン)
デザイナー マルセル・ワンダース(Marcel Wanders)
ブランド Moooi Carpets
発表年 2015年
サイズ展開 ラウンド:Ø250cm、Ø350cm
レクタングル:200×300cm、250×250cm、350×350cm
材質 パイル:100%ポリアミド(ナイロン)
バッキング:フェルト
カラーバリエーション マルチカラー、ブラック&ホワイト
製造技術 Chromojetデジタルプリント
特殊加工 ブラインドヘム仕上げ
カスタマイズ カスタムカット対応、カーペットタイル展開あり