概要
マルセル・ワンダース(1963年生まれ)は、オランダのデザイナーである。ドローグ・デザインの企画から生まれた1996年のノッテッド・チェアで国際的に知られるようになった。手で結ぶ、型に流すといった素朴な工程と、航空宇宙分野の繊維や3次元スキャンのような先端の材料・技術を組み合わせる。2001年にカスパー・フィッサーとモーイを共同で設立した。
バイオグラフィー
1963年7月2日、オランダのボクステルに生まれた。アイントホーフェン・デザイン・アカデミーで学んだのち、アーネム美術学校を1988年に修了している。同年のセットアップ・シェードが初期の仕事にあたる。
1990年代にはドローグ・デザインの初期の参加者の一人として活動し、自身のスタジオも設立した。1996年のノッテッド・チェアは、ドローグとデルフト工科大学の航空宇宙工学の研究室が組んだ「ドライテック」の企画から生まれ、のちにカッペリーニが生産した。
2001年、カスパー・フィッサーとともに家具ブランドのモーイを設立し、アートディレクターを務めた。アムステルダムのスタジオでは家具、照明、食器のほか、ホテルや店舗の内装も手がけた。2022年、スタジオの活動を無期限で停止すると発表し、モーイには引き続き関わるとした。
デザインの思想と方法
ワンダースの製品は、手作業や身近な素材による工程と、工業的な材料・技術を一つの製品の中で組み合わせることが多い。手作業の跡や素材の偶然の形を残しながら、製品として繰り返しつくれる状態にする。
柔らかい素材を樹脂で固める
ノッテッド・チェアは繊維の紐を結んでから樹脂で固め、クロシェ・テーブルはかぎ針編みの綿を樹脂で固めて、編み物そのものを構造にしている。本来は荷重を受けない手芸の素材が、家具の骨組みの役割を担う。
自然物や偶然の形を写し取る
スポンジ・ヴェースは天然の海綿の形を、エッグ・ヴェースはゆで卵を詰めた袋の形を磁器に写した。エアボーン・スノッティ・ヴェースは、くしゃみで飛ぶ粒子を3次元で記録し、レーザー焼結で造形している。
見慣れた原型を使う
セットアップ・シェードは、誰もがランプと聞いて思い浮かべる円錐形の笠を重ねた照明である。見慣れた原型を用いることで、新しい製品でも使う人が受け入れやすくなるという考えに基づく。
モーイの歴史や他の製品について詳しくはモーイ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ノッテッド・チェア(1996年)
炭素繊維の芯にアラミド繊維を巻いた紐を手でマクラメ状に結び、エポキシ樹脂を含浸させてから、上下を逆にして型にかぶせ、座と背の形を得る。見た目は手結びの紐細工だが、硬化後は椅子として荷重を受ける。最初の数脚はワンダース自身が製作し、のちにカッペリーニが生産を引き継いだ。→ノッテッドチェア
スポンジ・ヴェース/エッグ・ヴェース(1997年)
ドローグ・デザインがドイツの磁器メーカー、ローゼンタールと組んだ企画で制作された花器である。スポンジ・ヴェースは天然の海綿に液状の磁土を含ませて焼成し、海綿が焼失したあとに形だけを残す。エッグ・ヴェースは、ゆで卵を詰めたラテックスの袋の形を白磁で鋳込んだもので、伝統的な型では得にくい形を磁器にしている。
クロシェ・テーブル(2002年)
かぎ針で編んだ綿のレースを単純な直方体の型に巻き、エポキシ樹脂で固めたのち、内側の型を取り除いた卓である。残るのは編み物だけでできた箱で、ノッテッド・チェアと同じ考え方を面に適用している。
カーボン・チェア(2004年、モーイ)
ベルトヤン・ポットとの共同設計による。エポキシを含ませた炭素繊維を手で巻いてつくる脚と、型で成形した座の殻の二つの部分からなり、イームズのエッフェル・チェアの構成を炭素繊維に置き換えている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。カーボン・チェアはベルトヤン・ポットとの共同名義で登録されている。
- MoMA ノッテッド・チェア(1995年) 収蔵番号 434.1996
- MoMA カーボン・チェア(2004年) 収蔵番号 880.2007
- V&A セットアップ・シェード(1988年) 収蔵番号 W.62-2002
- V&A スモール・エッグ・ヴェース(1997年) 収蔵番号 C.131-2009
- V&A フォーム・ボウル(1997年) 収蔵番号 C.132-2009
- V&A スポンジ・ヴェース(1997年) 収蔵番号 C.133-2009
- V&A ワン・ミニット(2004年) 収蔵番号 C.226-2009、C.227-2009
- V&A ノッテッド・チェア(1996年) 収蔵番号 W.49-2005
- Met シャドウ フロアランプ(1998年) 収蔵番号 2001.358ab
- AIC ノッテッド・チェア(1996年) 収蔵番号 2007.60
- AIC エアボーン・スノッティ・ヴェース(2001年) 収蔵番号 2007.61
- AIC クロシェ・テーブル(2002年) 収蔵番号 2007.62
- AIC カーボン・チェア(2004年) 収蔵番号 2007.400、2011.765
- AIC KLM ワールド・ビジネスクラス用の食器(2011年) 収蔵番号 2011.762
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1988年 | 照明 | セットアップ・シェード | Droog Design / Moooi |
| 1996年 | 椅子 | ノッテッドチェア | Droog Design / Cappellini |
| 1997年 | 花器 | エッグ・ヴェース、スポンジ・ヴェース | Droog Design / Rosenthal |
| 1998年 | 照明 | シャドウ フロアランプ | Cappellini |
| 2001年 | 花器 | エアボーン・スノッティ・ヴェース | Cappellini |
| 2002年 | テーブル | クロシェ・テーブル | — |
| 2004年 | 椅子 | カーボン・チェア(ベルトヤン・ポットと共同) | Moooi |
| 2004年 | 磁器 | ワン・ミニット | De Koninklijke Porceleyne Fles |
| 2011年 | 食器 | KLM ワールド・ビジネスクラス用の食器 | KLM |
| ラグ | エデン・クイーン | Moooi Carpets |
プロフィール
| 生年 | 1963年7月2日 |
|---|---|
| 出身地 | オランダ・ボクステル |
| 国籍 | オランダ |
| 活動拠点 | アムステルダム |
| 分野 | 家具、照明、食器、インテリア |
| 主な協働ブランド | Moooi、Cappellini、Flos、Alessi |
Reference
- Knotted Chair | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O115748/
- Sponge Vase | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O1135362/
- Small Egg Vase | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O1135366/
- Set Up Shades | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O66960/
- Knotted Chair | The Art Institute of Chicago
- https://www.artic.edu/artworks/189812
- Crochet Table | The Art Institute of Chicago
- https://www.artic.edu/artworks/189814
- Carbon Chair | The Art Institute of Chicago
- https://www.artic.edu/artworks/192642
- Marcel Wanders announces design studio will suspend operations | Dezeen
- https://www.dezeen.com/2022/05/25/marcel-wanders-announces-design-studio-suspend-operations/
- About | Moooi
- https://www.moooi.com/en/about