Diesis:モダンデザイン史に刻まれた不朽の金字塔

1979年、イタリアデザイン界に革命的な一脚のソファが誕生した。アントニオ・チッテリオとパオロ・ナヴァという二人の才能が融合し、B&B Italiaから世に送り出された「Diesis」である。このソファは単なる家具という枠を超え、革新的な技術と洗練された職人技が完璧に調和した芸術作品として、モダンファニチャーの伝統における絶対的なアイコンとなった。2024年に45周年を迎えた今なお、その先進性と美学は色褪せることなく、デザイン史における輝かしい1ページを形成し続けている。

デザインの哲学:技術と美学の完璧なる融合

Diesisの本質は、技術、優雅さ、人間工学、そして快適さという四つの要素が緻密に統合された点にある。このソファは、イタリアンデザインが誇る洗練された職人技と、当時最先端であった素材技術が見事に融合した結晶である。チッテリオは後年、このプロジェクトを振り返り「Diesisは、私の美学的シグネチャーを定義した道程の頂点を体現している。パオロ・ナヴァと共に創り上げたこの作品によって、私の進むべき道は明確に刻印された」と述懐している。この言葉は、Diesisが単なる初期作品ではなく、チッテリオのデザイン哲学の核心を形成する記念碑的存在であることを物語っている。

構造の革新性

Diesisの最も顕著な特徴は、精密に定義された金属製の荷重支持構造にある。ダイカストアルミニウムと鋼管を組み合わせた基盤構造は、従来のソファ設計とは一線を画す建築的アプローチを示している。特筆すべきは、調和鋼によって形成されたコーム型の背もたれである。この独創的な構造要素は、レザーで丁寧に覆われており、機能的な支持体であると同時に、視覚的な特徴として作品に独自の個性を付与している。また、通気性を確保するために施された微小穿孔レザーは、当初実用的な要求から生まれた技術的解決策でありながら、後に装飾的なモチーフとして認識される特徴的な要素へと昇華した。このように、Diesisにおいては機能と美学が不可分に結びついているのである。

快適性への探求

座面、背もたれ、アームレストには、異なる密度のポリウレタンフォームを成形し、滅菌処理されたダウンとポリエステル繊維を組み合わせた柔らかなクッションが配されている。この多層構造のクッショニングシステムは、身体を優しく包み込みながらも適切な支持を提供する、高度に計算された快適性の証である。ファブリックまたはレザーで覆われたこれらのクッションは、視覚的な柔らかさと触覚的な心地よさを両立させており、モダニズムが時に陥る冷たさとは対極の、人間中心の温かみを体現している。

特徴とコンセプト:空間における彫刻としての存在

Diesisの最も画期的な特徴の一つは、背面からの視覚的美しさにある。分厚いレザーで装飾された背もたれは、その柔軟な構造を露わにしながらも、あらゆる角度から鑑賞に堪えうる完成度を誇る。この全方位的な美学によって、Diesisは壁際に配置される従来のソファという概念を覆し、空間の中央に堂々と据えられる彫刻的な家具として機能することを可能にした。これは、家具が空間を区切り、定義するという新しいインテリアデザインの思想を先取りしたものであった。

ダイカストアルミニウムの精密な加工部品、ブラッシュ仕上げの金属フレーム、そしてレザーで覆われた調和鋼の背もたれといった細部への執拗なこだわりは、作品全体に強烈な個性と洗練された品格を付与している。これらの装飾的要素は、単なる意匠ではなく、構造的必然性と美的完成度が一体となった結果である。チッテリオとナヴァは、モダニズムの機能主義を尊重しながらも、それを超える表現的な豊かさを追求したのである。

創造の背景:二人の巨匠による協働

Diesisの誕生は、1972年に設立されたチッテリオ・ナヴァスタジオにおける創造的パートナーシップの結実である。ミラノ近郊のメダに生まれたアントニオ・チッテリオは、ミラノ工科大学で建築を学び、1975年に卒業した。しかし彼の情熱は、学位取得の3年前、1972年にすでに自身のデザインスタジオを開設させていた。一方、セレーニョ出身のパオロ・ナヴァは、その卓越した技術的洞察力でチッテリオを補完する存在であった。

1970年代後半、ブリアンツァ地域は伝統的な家具製造業の中心地でありながら、ミラノからの革新的なアイデアを吸収する新興デザインの拠点へと変貌しつつあった。この文化的・産業的環境において、チッテリオとナヴァは既存の家具類型を徹底的に分析し、現代の生活様式の変化を見据えた新しい解決策を模索していた。彼らの探求は、1978年のFlexformのためのAriaソファで最初の成果を結び、そして翌1979年、その頂点としてDiesisが完成したのである。

エピソード:美学的シグネチャーの確立

チッテリオは後年、自身のデザイン哲学について次のように語っている。「初期のプロジェクトでは、私自身の表現言語を模索していた。その後、デザイン史における特定の参照点からの要素を分析し、再構成する方向へと移行した」。Diesisは、この転換期における決定的な作品であった。それは単なる実験作品ではなく、チッテリオが追求する「類型学」――対象物の共通する基本形態――に対する深い洞察と、進行中の生活様式の変化への応答、そして生産プロセスの戦略的再考が三位一体となった成果であった。

Diesisの設計過程において、チッテリオとナヴァは技術プロセスへの深い理解を不可欠なものとして重視した。チッテリオが述べるように、「私のデザイン研究において、技術プロセスの知識は極めて重要である」。この信念は、Diesisの構造的な革新性に明確に反映されている。彼らは素材の可能性を限界まで探求し、ダイカストアルミニウムの精密性、鋼管の強度、そしてレザーの柔軟性を最適に組み合わせることで、機能と美学が不可分に結びついた作品を創造したのである。

評価:時代を超える普遍性

Diesisは発表以来、デザイン史における不朽の名作として確固たる地位を築いてきた。B&B Italiaとの長期にわたる協働関係の起点となったこのソファは、チッテリオのキャリアを決定づけただけでなく、1980年代以降のイタリアンデザインの方向性にも大きな影響を与えた。ロンドン・デザイン・ミュージアムの元館長デヤン・スジックは、チッテリオについて「彼は自身の世代において最も成功した家具デザイナーであるだけでなく、私たちの住宅と職場の新しい使用方法に責任を持つ人物である」と評している。Diesisは、まさにその先駆的な実験の場であった。

45年の時を経てもなお生産が続けられているという事実は、Diesisが単なる時代の産物ではなく、真に普遍的な価値を持つデザインであることを証明している。ニューヨーク近代美術館やパリのポンピドゥー・センターといった世界有数のデザインミュージアムにその作品が収蔵されているチッテリオにとって、Diesisは彼の美学的遺産の礎石となる作品なのである。洗練された控えめなモダニティと、細部への徹底したこだわりを併せ持つ彼の様式的コードは、Diesisにおいて初めて完全な形で表現されたと言えるだろう。

現代における意義:持続する影響力

2024年、B&B ItaliaはDiesisの45周年を祝賀し、このタイムレスなアイコンが現代においても持つ意義を再確認した。半世紀近くを経てもなお、Diesisは最も洗練された国際的な趣味に応える製品として存在し続けている。その秘密は、流行に左右されない構造的な完成度と、時代を超越した美学的純粋性にある。

Diesisは、技術革新が単なる機能性の追求ではなく、新しい美学的可能性を開くものであることを示した先駆的な作品である。この思想は、後にチッテリオが手がけるB&B ItaliaのSityシステム(1986年、コンパッソ・ドーロ受賞)やCharles、Richard、AC Loungeといった一連の革新的なソファシステムへと継承されていく。Diesisは、イタリアンデザインが誇る職人技と工業技術の融合という伝統の中で、決定的な役割を果たした記念碑的作品として、デザイン史に永遠に刻まれることとなった。

基本情報

製品名 Diesis
分類 ソファ
デザイナー アントニオ・チッテリオ(Antonio Citterio)
パオロ・ナヴァ(Paolo Nava)
ブランド B&B Italia(ビーアンドビー・イタリア)
発表年 1979年
構造 ダイカストアルミニウム、鋼管、調和鋼
クッション素材 異なる密度のポリウレタンフォーム、滅菌ダウン、ポリエステル繊維
張地 ファブリック、レザー(通気性のための微小穿孔加工)
座面高 約40cm
生産状況 現在も生産継続中
収蔵 ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリ・ポンピドゥー・センター等