概要
コンパス・テーブルは、ジャン・プルーヴェが1953年に設計したテーブルである。正式な名称は「カフェテリア512号」。三角形断面の鋼板を折り曲げた脚が斜めに開き、その形が製図用のコンパスを思わせることから呼び名が定着した。教育機関向けの家具として開発された。
特徴・コンセプト
脚を開いて横向きの力に耐える
垂直な脚は上からの荷重には強いが、横方向に押されると倒れやすい。脚を斜めに開けば接地点の間隔が広がり、横向きの力に抵抗できる。二本ずつ組み合わせた脚は横梁に溶接され、全体が一つの枠として働く。
脚の断面は三角形をとる。板は平らなままでは曲がるが、折り曲げて閉じた断面をつくれば曲がりにくくなる。中空にすることで、必要な強度を保ちながら重量を抑えている。
接合部を覆う
脚の上端には三角形の折り曲げ鋼板が配され、天板を受けると同時に脚と横梁の接合部を隠す。溶接の跡が天板の下に現れないため、下から見ても面が整う。
素材と展開
天板には積層プラスチック板や木材が用いられる。食堂や学校での使用を前提としており、汚れを拭き取れることが条件になっていた。天板の長さは120cmから192cmまで用意され、脚部の配置にも対称型と非対称型がある。1955年には費用を抑えるためスチールパイプを用いた仕様も開発された。
エピソード
1950年代のフランスでは、拡大する教育機関のための家具が大量に必要とされていた。政府は幼稚園から大学までの施設向けに家具を供給する公募を実施し、プルーヴェはこれに応じて一連の製品を開発した。コンパス・テーブルはその中核にあたる。
生産は、プルーヴェが1947年に拠点を移したマクセヴィル工場で行われた。折り曲げ鋼板の加工から組み立てまでを一貫して行う体制がとられていた。1953年にプルーヴェが株主との意見の相違により工場を離れた後も、生産は1959年まで続いた。その後はパリのギャラリー、ステフ・シモンを通じて販売されている。
2002年からヴィトラがプルーヴェ家との協力のもとで復刻を進めており、コンパス脚を持つデスクは2003年から生産されている。
評価と影響
鋼板を折り曲げて構造とする手法は、同じプルーヴェによるスタンダードチェアやアントニーチェア、ビューロー・プレジダンスにも見られる。スタンダードチェアが荷重の差を脚の太さに表したのに対し、コンパス・テーブルは脚を開く角度で応じている。
復刻版では、天板にオークやウォールナットの無垢材が用いられ、脚部は粉体塗装で仕上げられる。
コンパス・テーブルの美術館収蔵は、公開情報の範囲では確認できていない。
ジャン・プルーヴェの設計思想や経歴について詳しくはジャン・プルーヴェプロフィールページをご覧ください。
ヴィトラの歴史や他の製品について詳しくはヴィトラブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | コンパス・テーブル / Compas Table(正式名称 カフェテリア512号) |
|---|---|
| デザイナー | ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé) |
| ブランド | ヴィトラ(Vitra/2003年より復刻)/アトリエ・ジャン・プルーヴェ(オリジナル) |
| 発表年 | 1953年 |
| デザインの成立国 | フランス |
| 分類 | テーブル/デスク |
| 構造 | 三角形断面の折り曲げ鋼板の脚を斜めに開き、横梁に溶接する |
| 主要素材 | 脚部:折り曲げ鋼板/天板:積層プラスチック板または木材(復刻版は無垢材) |
| サイズ | 天板長120〜192cm(オリジナル) |
| 生産 | 1953〜1959年(マクセヴィル工場)/2003年〜 復刻 |
Reference
- Compas Direction | Vitra
- https://www.vitra.com/en-us/product/details/compas-direction