ベリング・トレイテーブル(Bølling Tray Table)は、デンマークの建築家ハンス・ベリングが1963年にデザインした、デニッシュモダンを象徴するサイドテーブルである。シンプルでありながら機能性と遊び心を兼ね備えたこの作品は、デンマーク家具製造の名門Brdr. Krüger(ブラザーズ・クリューガー)によって、同社の工房があるデンマーク・ヴェアローセにて熟練の職人の手により製作されている。
発表から60年以上を経た現在もなお、その普遍的なデザイン哲学と実用性により、世界中のインテリア愛好家から高い支持を得ている。デンマーク・デザインミュージアムとのコラボレーションによる限定版が制作されるなど、デニッシュモダンの遺産として現代に受け継がれる名作である。
特徴・コンセプト
ベリング・トレイテーブルは、「シンプルで、エレガントで、持ち運びしやすいテーブル」というベリングのデザインコンセプトを体現している。デンマークモダンの黄金期を代表する「遊び心のある機能主義(playful functionalism)」の象徴として、デザイン、機能性、そして楽しさの調和を追求した作品である。
構造と機能
本製品の最大の特徴は、木製のH型フレームと2枚の取り外し可能なリバーシブルトレイによる構成にある。フレームは工具を使わずに折りたたむことができ、フラットパック状態での出荷が可能となっている。これにより輸送時の環境負荷を低減するとともに、使用しない際のコンパクトな収納を実現している。
2枚のトレイはそれぞれ裏返して使用することができ、表裏で異なる色を楽しむことができる。この遊び心あふれる仕様により、使用者は気分やインテリアに合わせて4通りの組み合わせを選択することが可能である。
素材とカラーバリエーション
フレームには、ビーチ(無塗装/オイル仕上げ)、オーク(無塗装/オイル仕上げ/スモーク/ブラックラッカー)、ウォールナット(オイル仕上げ)といった厳選された天然木材が使用される。トレイは高圧ラミネート仕上げまたは天然木突板仕上げから選択可能であり、ラミネート仕様ではEarth(ベージュ/ブラウン)、Stone(ライトグレー/ダークグレー)、Water(ブルー/ダークブルー)、Leaf(グリーン/ダークグリーン)、Clay(コニャック/ブラック)など、木材の自然な色調と調和するよう選び抜かれた配色が用意されている。
サイズ展開
Model 50(直径50cm、高さ55cm)とModel 60(直径60cm、高さ52cm)の2サイズが展開されており、サービングトロリー、バーカート、ベッドサイドテーブル、サイドテーブルなど、多様な用途と空間に対応する。
エピソード
ハンス・ベリングは1931年デンマーク・ブラブランドに生まれ、当初は広告デザイナーを志していた。しかし、後に妻となるソスとの出会いが彼の人生を大きく変えることとなる。ソスの父は高名な建築家アクセル・ヴァンシャーであり、その兄弟には20世紀を代表する家具デザイナー、オーレ・ヴァンシャーがいた。アクセルは若きベリングに建築家への道を勧め、ベリングは王立デンマーク芸術アカデミーで建築を学び、1959年に卒業と結婚を同時に果たした。
ベリングは自宅の地下室に設置した木工旋盤を使い、妻や友人への贈り物として小さな木製フィギュアを制作し始めた。その精緻な造形と愛らしい個性が評判を呼び、デザイン賞を受賞。その賞金で自らの木工機械を購入し、1950年代に「ダック・アンド・ダックリング」などの木製フィギュアシリーズを発表して成功を収めた。
1963年、ベリングは「組み立てやすく、扱いやすい、シンプルで高機能なテーブル」のデザインに挑戦した。その結果生まれたのがトレイテーブルである。デザイン、機能性、そして楽しさの結びつきを愛するベリングの哲学が凝縮されたこの作品は、Brdr. Krügerの「誠実でオリジナルな、長く愛されるデザインを創る」という理念と完璧に調和し、60年以上経った現在も生産が続けられている。
2022年には、91歳となったベリングがトレイテーブルにインスパイアされた新コレクション「HBコレクション」を発表。ラウンジチェア、コーヒーテーブル、スツールで構成されるこのシリーズは、彼の創造性が今なお健在であることを証明した。
評価
ベリング・トレイテーブルは、デニッシュモダン黄金期の「遊び心のある機能主義」を体現する作品として、デザイン史において高い評価を受けている。その単純明快な構造、使いやすさ、そして彫刻的な美しさにより、時代を超えて新たな世代に支持され続けている。
デンマーク・デザインミュージアムは2022年の改装に際し、OEOスタジオの設計により、ミュージアム固有のインディゴブルーをまとった特注のトレイテーブルをカフェ、ライブラリー、ラウンジエリアに設置した。さらに2023年には、このミュージアムブルーを纏った限定版500台が発売され、各テーブルにはベリングのサインと個体番号を刻んだ真鍮プレートが取り付けられている。これは、ベリングのデザインがデンマークのモダニズムデザイン遺産の重要な一部として認められていることの証左である。
Brdr. Krügerの5代目当主ヨナス・クリューガーは、「トレイテーブルは、伝統的な接合技術と革新的なソリューションに基づくデザインの誠実さで知られています。それ自体が強調されるに値する美しさを持っています。ハンス・ベリングはこの分野のマスターであり、機能的で美的な家具をデザインするための純粋で誠実なアプローチと彼の才能を組み合わせ、世代を超えて愛されるデザインを生み出しています」と評している。
基本情報
| 製品名 | Bølling Tray Table(ベリング・トレイテーブル) |
|---|---|
| デザイナー | Hans Bølling(ハンス・ベリング) |
| デザイン年 | 1963年 |
| ブランド | Brdr. Krüger(ブラザーズ・クリューガー) |
| 生産国 | デンマーク(ヴェアローセ) |
| サイズ | Model 50: 直径50cm × 高さ55cm / Model 60: 直径60cm × 高さ52cm |
| フレーム素材 | ビーチ、オーク、スモークオーク、ウォールナット |
| トレイ素材 | 高圧ラミネート または 天然木突板 |
| 仕上げ | 無塗装、オイル仕上げ、ブラックラッカー仕上げ |
| カテゴリー | サイドテーブル / トレイテーブル |