Beolit 600およびBeolit 707は、デンマークのオーディオメーカー、バング&オルフセンが1970年代に手掛けたポータブルラジオである。いずれもデザイナーのヤコブ・イェンセンが担当し、Beolit 600は1970年、Beolit 707は1975年に登場した。回転式ダイヤルに代えたスライド式のチューニングと、直方体を基調とした簡潔なフォルムが、当時のポータブルラジオのなかで際立った存在感を放った。
両モデルはスカンジナビアン・デザインを代表するプロダクトとして知られ、近縁モデルは美術館のデザインコレクションにも収められている。
デザインの特徴
Beolitシリーズは、無駄を削いだ形態と、直感的に扱える操作性を両立させた設計で知られる。角に施したわずかなラウンド処理が、手なじみのよさを生んでいる。
素材と構造
筐体はプラスチックとブラッシュド・アルミニウムを組み合わせて構成される。アルミのフレームに、前後2枚のプラスチックのトレイをはめ込む「サンドイッチ構造」で、トレイを外して電池を交換できる。プラスチックには、さらりとした独特のテクスチャーが与えられている。
スライド式チューニング
イェンセンがこのシリーズで採り入れたのが、水平にスライドさせて選局するスライドルール式のチューニングである。Beolit 600では、外側のスライドに仕込んだ磁石で、目盛りの内側にある金属の球を動かして選局位置を示すという仕組みが用いられた。この方式はもともと同社のアンプ、ベオラボ 5000(1967年)のために考案されたもので、視覚的にも操作の面でも分かりやすいインターフェースとして評価された。
音響と使い勝手
Beolitシリーズは、ニュースだけでなく音楽鑑賞にも耐える音質を目指して設計された。コンパクトな筐体ながら十分な出力を備え、レコードプレーヤーやテープデッキなどの外部機器、外部スピーカーを接続する端子も設けられていた。電池駆動に加えて電源への接続にも対応し、屋内外を問わず使えるようになっていた。
Beolit 600 と Beolit 707
Beolit 600は、1970年に登場したこの一連のポータブルラジオの中心的なモデルである。軽量でコンパクトながら音がよく、バング&オルフセンの大ヒット商品のひとつとなった。1970年にはデンマークのID賞とドイツのiF賞を受賞している。
Beolit 707は、Beolit 700を改良して1975年に登場した、このシリーズの最後のモデルである。金属パーツを黒くアノダイズし、白い文字を配したことで外観を一新。前後の着脱式パネルには、スエード調で拭き取りやすく傷に強いネクステル(Nextel)仕上げが採り入れられ、新色で展開された。1970年代後半まで生産が続けられた。
美術館での評価
Beolitシリーズと同じヤコブ・イェンセンによる近縁モデル、Beolit 400(1971年)は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに収蔵されている(メーカーからの寄贈、受入番号52.1972)。1972年にMoMAは、イェンセンが手掛けたバング&オルフセンの製品群をデザインコレクションに加えており、Beolitはその代表例のひとつに数えられる。またBeolit 707は、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)のコレクションに収められている。こうした収蔵は、Beolitシリーズが20世紀後半の工業デザインにおいて確かな位置を占めていることを示している。
基本情報
| 製品名 | Beolit 600 / Beolit 707 |
|---|---|
| デザイナー | ヤコブ・イェンセン(Jacob Jensen) |
| メーカー | バング&オルフセン(Bang & Olufsen) |
| 製造国 | デンマーク |
| 発表年 | Beolit 600:1970年 / Beolit 707:1975年 |
| 製品カテゴリー | ポータブルラジオ |
| 主要素材 | プラスチック(樹脂)、アルミニウム(707のパネルはネクステル仕上げ) |
| 受賞 | Beolit 600:デンマークID賞・ドイツiF賞(ともに1970年) |
| 主な収蔵先 | ニューヨーク近代美術館(MoMA、近縁のBeolit 400)、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA、Beolit 707) |