パシャ ラウンジチェア 購入ガイド ─ この名作が長く愛される理由

パシャ ラウンジチェアは、フランスの巨匠ピエール・ポーラン(1927–2009)が1975年にデザインした、モダンファニチャーデザイン史における画期的なラウンジチェアである。「雲の上に座る感覚」というポーランの詩的なビジョンを物質化したこの椅子は、従来の椅子脚を完全に排した革新的な構造と、豊満で有機的なシルエットにより、「ローレベル・リビング」── 床に近い位置で寛ぐ新しい生活様式を提唱した。当初Mobilier International社から発表されたが、発表当時のフランスでは大胆すぎると評され、十分な評価を得られなかった。

約半世紀の時を経た2018年、デンマークの名門デザインハウスGUBI(グビ)が、ポーランの息子ベンジャミン・ポーランの全面的支援のもとパシャ コレクションを復刻。ラウンジチェア、アームレスト付きバージョン、モジュラーソファ、オットマンへと展開されたコレクションは、現代のインテリアシーンにおいて新たな評価を獲得している。本ガイドでは、GUBI版パシャの仕様と価格帯、張り地とベースの選び方、座り心地と空間への取り入れ方、そして日本国内での購入ルートを包括的に解説する。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

パシャ ラウンジチェアは、デンマークのGUBI(グビ)から復刻・製造されている。GUBIは1967年にコペンハーゲンで創業し、現オーナー兼クリエイティブディレクターのヤコブ・グビのもと、過去100年に生み出された名作デザインの発掘・復刻と、新進デザイナーとのコラボレーションを両軸に、グローバルデザインシーンにおける確固たる地位を築いている。パシャの復刻にあたっては、ポーラン家の家族企業「Paulin, Paulin, Paulin」と緊密に連携し、オリジナルの哲学に忠実な再現が実現されている。

正式名称 Pacha Lounge Chair(パシャ ラウンジチェア)
デザイナー ピエール・ポーラン(Pierre Paulin、1927–2009、フランス)
デザイン年 1975年
オリジナル製造 Mobilier International(フランス)
現行製造 GUBI(デンマーク、2018年復刻)
内部構造 曲げ合板(ベントプライウッド)
パディング 高反発カットフォーム(座面・背もたれとも高密度フォーム)
ベース ラッカー塗装MDF(マットブラック / パールゴールド)
ベースタイプ 固定式 / スイベル式(自動復帰機構付き回転ベース)
張り地 Kvadrat、Dedar、Enzo Degli Angiuoni、Gabriel、Glamour Group、GUBI、JAB、Kvadrat Raf Simons、Kvadrat Sahco、Leder Reinhardt、Limonta、Nevotex、Sunbrella各社ファブリック / Sørensen社レザー
サイズ(ラウンジチェア) W770mm × D850mm × H650mm / 座面高370mm / 座面奥行540mm
サイズ(アームレスト付き) W850mm × D770mm × H650mm / 座面高350mm / 座面奥行540mm / 背もたれ高420mm / アームレスト高430mm
重量 約11.8kg(梱包時)
組立 不要(完成品納品)
保証 ワークマンシップ:2年 / ファブリック:1年
参考価格帯(税込目安) ラウンジチェア:約500,000〜600,000円 / アームレスト付き:約550,000〜700,000円(ファブリック・ベースにより変動)
収蔵美術館 ポンピドゥー・センター国立近代美術館(パリ)、MoMA(ニューヨーク)、V&A博物館(ロンドン)

パシャ コレクションのバリエーション

パシャ ラウンジチェア
コレクションの中核モデル。アームレストなしのコンパクトなフォルム。W770mm × D850mm × H650mm、座面高370mm。固定ベースまたはスイベルベースを選択可能。
パシャ ラウンジチェア ウィズ アームレスト
アームレストが一体成型されたバージョン。両腕を自然に預けられ、より深い包容感を提供。アームレスト間の内寸320mm。固定ベースまたはスイベルベースを選択可能。
パシャ ソファ(2人掛け〜5人掛け)
モジュラー構成により、2人掛けから最大5人掛けまで拡張可能。ラウンジチェアと組み合わせることで、さらに多彩な構成を実現。ポーランが当初構想した「変幻自在な雲のように多様な形へ変化する」というビジョンを具現化。
パシャ オットマン
ラウンジチェアに合わせた低いフットレスト。足を上げた状態でのリラクゼーション、または単独のサイドシートとしても機能。
パシャ アウトドア コレクション
2024年に追加された屋外仕様。ステンレススチールベース(モスグレー)、耐候性内部構造、防水インターレイヤーを採用。Sunbrella等の屋外用ファブリック対応。

カスタマイズの選択肢

パシャ ラウンジチェアの最大の魅力の一つは、張り地の豊富な選択肢にある。GUBIのアップホルスタリーコレクションから、Kvadrat(クヴァドラ)のVidar(ウール94%)、Dedar(デダール)のKarakorum(ウール42%、ヴィスコース33%、コットン24%)やKarakorum Stripe(GUBI独占開発ブークレ)、GUBI Harp(コットン70%)、Glamour GroupのMumble(リサイクルポリエステル72%)等、多彩なテクスチャーと色彩から選択可能。レザーはSørensen社の上質な天然レザーが用意されている。ベースはマットブラックとパールゴールドの2色から選択でき、空間の雰囲気に合わせた組み合わせが楽しめる。

類似作品・競合との比較

パシャは現行のGUBI復刻品のみが正規品であり、リプロダクト製品は流通していない。ここでは、同じローレベル・ラウンジチェアのカテゴリにおける名作との比較を通じて、選択の指針を示す。

比較項目 パシャ ラウンジチェア(Pierre Paulin / GUBI) トーゴ(Michel Ducaroy / Ligne Roset) マレンコ(Mario Marenco / arflex)
デザイン年 1975年 1973年 1970年
構造 曲げ合板 + カットフォーム + MDFベース ウレタンフォームのみ(フレームレス) スチールフレーム + ウレタンフォーム
座面高 約370mm 約350mm 約380mm
特徴的フォルム 雲のような有機的曲面、台座式 褶曲した波のような連続面 ふくよかなクッションの集合体
モジュラー性 2〜5人掛けソファ、オットマンとの組み合わせ コーナー、1〜3人掛け、オットマン等の多彩な組み合わせ 1〜4人掛け、モジュラー構成
スイベル機能 あり(自動復帰機構付き) なし なし
参考価格帯(税込目安) 約500,000〜700,000円 約300,000〜500,000円 約400,000〜600,000円

パシャの独自性は、台座によって床面からわずかに浮遊する構造にある。トーゴやマレンコが床面に直接置かれるのに対し、パシャはMDFベースによる数センチの浮遊感が視覚的な軽やかさを生み出している。また、スイベルベースの選択肢は、この価格帯のラウンジチェアとしては稀有な機能である。トーゴのフレームレス構造による身体を包み込む感覚、マレンコのクッション集合体による柔らかな存在感とは異なる、彫刻的な造形美と高反発フォームによる構造的な快適性がパシャの本質といえる。

使用感と暮らしへの取り入れ方

座り心地

パシャ ラウンジチェアの座り心地は、ポーランが描いた「雲の上に座る感覚」という比喩そのものである。高密度カットフォームが身体を優しく受け止めつつ、しっかりとしたサポートを提供する。沈み込みすぎない構造化された柔らかさは、長時間の着座でも疲労を感じにくい。座面高370mmというローポジションは、膝を曲げてリラックスした姿勢をとることを促し、ソファとは異なる自由な座り方── あぐら、横座り、脚を前に投げ出す── を許容する。

スイベルベースを選択した場合、自動復帰機構付きの滑らかな回転により、会話の相手に向きを変えたり、テレビと読書を切り替えたりする動作が自然に行える。固定ベースは安定感があり、チェアの向きが定まった配置に適している。

空間別の提案

リビングルーム
パシャの最も自然な配置場所。ソファと組み合わせてリビングの対面シーティングとして配置すれば、会話を促す親密な空間が生まれる。パールゴールドベース×ベルベット張りの組み合わせは、空間に華やかさを与え、マットブラックベース×ウール張りはモダンで落ち着いた印象を演出する。ローポジションの特性を活かし、ラグの上に配置するとフロアリビングのような寛ぎの空間が構築される。
ベッドルーム
低い座面高はベッドの高さに近いため、寝室のアクセントチェアとして視覚的な調和が得られる。就寝前の読書やくつろぎの時間に最適。オットマンを足元に加えれば、脚を上げた状態でのリラクゼーションが可能。
モジュラーソファとしての展開
パシャ コレクションの真価は、ラウンジチェアとソファモジュール、オットマンを組み合わせた自由な構成にある。2人掛けから5人掛けまでの多彩な組み合わせにより、ポーランが当初構想した「変幻自在な雲のように多様な形へ変化する」というビジョンが実現される。広いリビングルームにコの字型やL字型のソファ構成を展開すれば、まさに雲の上のラウンジ空間が出現する。
コントラクト空間
ホテルのラウンジ、ブティックのフィッティングエリア、ハイエンドオフィスの待合スペースなど、商業空間においてもパシャの彫刻的フォルムは強い存在感を発揮する。コンパクトな設置面積(ベース直径560mm)のため、複数脚をクラスター状に配置することが可能。

張り地の選択ガイド

Dedar Karakorum / Karakorum Stripe
GUBI独占開発のブークレ。ウール、ヴィスコース、コットンのブレンドによる三次元的なテクスチャーが、パシャの有機的曲面を最も美しく強調する。アストラカンラムスキンを模した豊かな触感。パシャの代名詞的な張り地といえる。
Kvadrat Vidar
ニューウール94%の高品質ウール地。マットな質感と豊富なカラーバリエーションが特徴。耐久性に優れ、日常的な使用に適する。
Sørensen レザー
天然レザーによる張り地。パシャの彫刻的フォルムにレザーの光沢が加わり、よりフォーマルで重厚な存在感を生み出す。経年によるパティナの形成も楽しめる。
GUBI Harp
コットン70%の軽やかなファブリック。カジュアルで親しみやすい印象を与え、明るい色味が空間を軽快にする。

経年変化とメンテナンス

ファブリック張り地のケア

日常メンテナンス
定期的に掃除機がけを行い、ほこりや細かなごみを除去する。ブークレ素材(Karakorum等)はループ状の糸が特徴のため、引っ掛けに注意。毛玉が生じた場合は毛玉取り器で丁寧に処理する。
シミ抜き
液体がこぼれた場合は速やかに吸い取り、シミの拡大を防ぐ。頑固なシミには専用のステインリムーバーを推奨。クリーニングは必ず目立たない部分でテストしてから、シミに向かって円を描くように優しく拭き取る。
直射日光の回避
ファブリックの退色を防ぐため、直射日光が長時間当たる場所への設置は避ける。

レザー張り地のケア

Sørensen社レザーは定期的なコンディショニングにより、柔らかさと光沢を長期間維持できる。3〜6ヶ月ごとにレザークリームを塗布し、乾燥やひび割れを防ぐ。直射日光や暖房器具の近くへの設置は避ける。

ベースのケア

ラッカー塗装MDFベースは柔らかい乾いた布で拭く。水分の付着は塗装の劣化につながるため、速やかに拭き取る。フローリングの上に設置する場合は、付属のポリエチレンフットグライドにより床面を保護する。フェルトグライドへの交換も可能(別料金)。

どこで買うか:正規販売店と購入方法

GUBI公式

GUBI公式オンラインストア(gubi.com)では、パシャ コレクション全モデルを全張り地オプションから選択して注文可能。受注生産品は標準リードタイム16〜20週間。一部の張り地・カラーの在庫品は即時出荷可能な場合もある。受注生産品は返品・キャンセル不可となるため、張り地の選択は慎重に行いたい。

日本国内の正規取扱店

TRISHNA JIVANA(トリシュナ・ジバーナ)
GUBIの主要正規取扱店。パシャ ラウンジチェア(¥504,900〜)、パシャ アウトドア ラウンジチェア(¥548,900〜)等を取り扱い。全張り地オプションからの受注生産にも対応。店舗での実物確認が可能な場合がある。
FLYMEe(フライミー)
日本最大級のデザイナーズ家具通販サイト。GUBIの正規取り扱いがあり、パシャを含むGUBI製品をオンラインで注文可能。
DOPA(ドーパ)
世界のトップインテリアを取り扱う正規販売店。GUBI本国メーカー取扱商品のほぼ全てが注文可能。サイト掲載のない商品についても問い合わせにより対応。
The Conran Shop(コンランショップ)
GUBIの正規取り扱いがあり、店頭での実物確認が可能な場合がある。
Y's DAY(ワイズデイ)
熊本に拠点を持つGUBI正規取扱店。オンラインショップでも購入可能。

購入時チェックリスト

  • モデルの選択(ラウンジチェア / アームレスト付き / ソファモジュール / オットマン)
  • ベースタイプの選択(固定式 / スイベル式:自動復帰機構付き回転ベース)
  • ベースカラーの選択(マットブラック / パールゴールド)
  • 張り地の選択(ファブリック各種 / レザー ── GUBIアップホルスタリーコレクションから選択)
  • 張り地サンプルの確認(受注生産品は返品不可のため、実物サンプルでの色味・質感確認を推奨)
  • 設置場所の確認(W770〜850mm × D770〜850mm、座面高370mm ── ローポジションへの対応)
  • モジュラー構成の場合:ソファとの組み合わせプランの検討
  • 搬入経路の確認(完成品納品、W580mm × D590mm × H920mm梱包)
  • リードタイム確認(受注生産品は16〜20週間が標準)
  • 床面保護の確認(フットグライド付属、フェルトグライドへの交換可能)

コーディネート事例

70年代リバイバル ── ポーランの時代精神

テラコッタやマスタードイエローのKarakorum Stripe張りパシャを、ヴィンテージのシャグラグ、ガラスと真鍮のコーヒーテーブル、大型の観葉植物とともに配する。パールゴールドベースが70年代のグラムロック的華やかさを添え、ポーランがデザインした時代の享楽的で自由な精神が現代の空間に蘇る。同じポーランによるArtifort社のTongue ChairやOrange Sliceとの組み合わせは、デザイン史上の対話として特に意義深い。

ソフト・ミニマリズム ── 雲の浮かぶ白い空間

クリーム色またはオフホワイトのウール張りパシャを、マットブラックベースで仕立て、白を基調とした空間に配する。GUBIのTS Coffee Table(ガムフラテージ)やMulti-Lite ペンダントランプ(Louis Weisdorf)との組み合わせにより、北欧ミニマリズムの文脈にフレンチモダンの柔らかな造形が溶け込む。パシャの有機的曲面が空間の唯一の装飾として機能し、ポーランの「雲」のビジョンが最も純粋に体現される。

エクレクティック ── 時代と国境を越えた対話

ディープグリーンやバーガンディのベルベット張りパシャを、ミッドセンチュリーのサイドボード、アフリカンテキスタイルのクッション、現代アート作品とともに配する。パシャの彫刻的フォルムは、異なる時代・文化のアイテムを結びつけるハブとして機能する。カニエ・ウエストやヴァージル・アブローといった現代の文化的アイコンがポーランのコレクターとして知られるように、パシャはハイカルチャーとストリートカルチャーの交差点に位置する作品である。

よくある質問

正規品の価格はどのくらいですか?
パシャ ラウンジチェアは約504,900円〜、アームレスト付きモデルは約550,000〜700,000円が税込目安です(張り地・ベースにより変動)。Karakorum等のハイエンドファブリックやレザー張りは上位価格帯となります。最新価格はGUBI公式サイトまたは正規取扱店でご確認ください。
どこで購入できますか?
GUBI公式オンラインストア(gubi.com)、日本国内ではTRISHNA JIVANA、FLYMEe、DOPA、The Conran Shop、Y's DAY等の正規取扱店で購入可能です。
実物を確認できますか?
TRISHNA JIVANA、The Conran Shop等の正規取扱店で展示がある場合があります。また、GUBIの張り地サンプルを取り寄せて色味や質感を確認することも可能です。受注生産品は返品・キャンセル不可のため、実物確認を強くお勧めします。
納期はどのくらいですか?
受注生産品の標準リードタイムは16〜20週間です。一部の張り地・カラーは在庫品として即時出荷可能な場合もあります。納期はご注文時にご確認ください。
スイベルベースと固定ベースはどちらが良いですか?
スイベルベースは自動復帰機構付きの滑らかな回転機能を備え、会話やテレビ鑑賞の向き変えが自然に行えます。固定ベースは安定感があり、チェアの向きが定まった配置に最適です。リビングの中央に配置する場合はスイベル、壁際や窓辺に配置する場合は固定が一般的な選択ですが、使い方や好みに応じてお選びください。
座面が低いですが、立ち座りは大変ですか?
座面高370mmはラウンジチェアとしてはやや低めですが、高密度フォームのしっかりとしたサポートにより、沈み込みすぎずに立ち上がることが可能です。ただし、膝や腰に不安のある方は、実際に座ってみてから購入されることをお勧めします。
メンテナンスは大変ですか?
ファブリック張りの日常メンテナンスは定期的な掃除機がけが基本です。完成品納品のため組立の手間もありません。ブークレ素材は引っ掛けに注意が必要ですが、適切なケアにより長期間美しい状態を維持できます。
他に検討すべきラウンジチェアはありますか?
同時代のローレベル・ラウンジチェアとして、ミシェル・デュキャロワのトーゴ(Ligne Roset)、マリオ・マレンコのマレンコ(arflex)が比較対象となります。また、ポーラン自身の他の名作であるOrange Slice(Artifort)やTongue Chair(Artifort)も検討に値します。各製品の紹介ページもご参照ください。