MRチェア 購入ガイド:バウハウスの理念を体現するカンチレバーの名作が愛され続ける理由

MRチェアは、20世紀を代表する建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)が1927年に発表した、カンチレバー(片持ち)構造のスチールチューブチェアである。ドイツ・シュトゥットガルトで開催されたヴァイセンホーフ・ジードルング展における発表から約1世紀を経た現在も、Knoll(ノル)社によって製造が続けられており、近代家具デザイン史における最も重要な作品のひとつとして揺るぎない地位を確立している。

ミースの設計哲学「Less is more(より少ないことは、より豊かである)」を純粋に体現したMRチェアは、継ぎ目のないスチールチューブが一筆書きのように優美な弧を描き、後脚を持たない革新的な構造によって着座者の身体の動きに合わせてしなやかに揺れる。座面にはインテリアデザイナーのリリー・ライヒとの協働によって生まれた籐編み、または牛革が用いられ、冷たい工業素材と温かみのある天然素材の調和がこの椅子の詩情をなしている。

本ページでは、MRチェアの購入を検討されている方に向けて、正規品の仕様・素材・価格帯から、リプロダクトとの違い、座り心地、メンテナンス方法、正規販売店情報まで、購入判断に必要なすべての情報を網羅的にお伝えする。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

MRチェアの正規品は、1948年にミース・ファン・デル・ローエ自身がKnoll社に独占的な製造ライセンスを付与して以来、同社が唯一の正規製造者として生産を続けている。各脚のフレームにはKnollStudioのロゴとミース・ファン・デル・ローエのサインが刻印され、正規品であることの証明となっている。以下に、購入検討時に把握すべき基本仕様をまとめる。

正式名称 MR Chair / MRチェア(MR10:アームレスサイドチェア / MR20:アーム付きアームチェア)
別称 ヴァイセンホーフチェア(Weissenhof Chair)
デザイナー ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)/ ドイツ(後にアメリカに帰化)/ 1886年–1969年
協働デザイナー リリー・ライヒ(Lilly Reich)/ 座面デザイン
デザイン年 1927年
発表 1927年 ヴァイセンホーフ・ジードルング展(ドイツ工作連盟主催、シュトゥットガルト)
製造ブランド Knoll(ノル)/ 1948年よりライセンス生産。Knollが唯一の正規ライセンス製造者
製造国 イタリア
フレーム素材 直径約25mm(1インチ)の継ぎ目のないスチールチューブ
フレーム仕上げ ポリッシュドクローム(標準)。ウルトラマットパウダーコート仕上げも選択可(オニキス、ホワイト、ダークレッド)
座面・背もたれ 天然籐(ラタン)手編み+ラッカー仕上げ、またはSpinneybeck社製牛革ベルティングレザー
レザーカラー ブラック、ライトブラウン、ホワイトベージュ(3色展開)。革紐でフレームに結着
サイズ(MR10:アームレス) 幅(W)490mm × 奥行(D)690mm × 高さ(H)790mm / 座面高(SH)460mm
サイズ(MR20:アーム付き) 幅(W)530mm × 奥行(D)825mm × 高さ(H)790mm / 座面高(SH)460mm / アーム高(AH)685mm
重量 約7.7kg(サイドチェア籐仕様)
付属品 クリアプラスチック製フロアグライド4個(ツインピンスナップイン構造)
認証マーク フレームにKnollStudioロゴおよびミース・ファン・デル・ローエのサインを刻印
環境認証 GREENGUARD Gold(Clean Air Gold)室内空気品質認証取得
保証 5年間メーカー保証
参考価格帯 サイドチェア(MR10):牛革仕様 約28万円〜、籐仕様 約34万円〜(税込目安)。アームチェア(MR20):約45万円〜(税込目安)。為替レートにより変動するため正規販売店への確認を推奨
関連製品 MR Lounge Chair(MRラウンジチェア)、MR Chaise Lounge(MRシェーズラウンジ)、MR Adjustable Chaise Lounge、MR Stool(MRスツール)、MR Table
所蔵美術館 ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、セントルイス美術館 ほか
スタッキング 不可
組立 完成品での納品(組立不要)

正規品とリプロダクトの違い

MRチェアはバウハウス時代のデザインアイコンとして世界的に知られるため、多くのリプロダクト(レプリカ)製品が流通している。正規品とリプロダクトの間には、素材の選定、仕上げの精度、耐久性において明確な差異が存在する。ここでは、両者の違いを客観的に整理する。

素材と仕上げの違い

正規品のフレームには、直径約25mmの継ぎ目のないステンレススチールチューブが用いられ、ポリッシュドクローム仕上げが施される。溶接痕が見えない滑らかな表面処理は、ミースが追求した「一筆書き」の流線美を実現するための不可欠な要件であり、Knoll社の厳格な品質基準によって担保されている。

リプロダクトでは、スチールチューブの径や肉厚にばらつきが見られ、クロームメッキの品質に差が生じることがある。メッキ層の厚みが不十分な場合、経年使用による剥離や錆の発生リスクが高まる。フレームの曲げ加工においても、正規品の滑らかな弧線と比較して角度にわずかな不整合が見られることがある。

座面の違い

正規品の籐仕様では、天然の籐(ケイン)が職人の手によって丹念に編み込まれ、クリアラッカーで保護仕上げが施される。リリー・ライヒの美意識を反映した、籐編みとスチールフレームの接合部に設けられた微細な膨らみなど、細部へのこだわりが正規品の特徴である。2018年に籐仕様が再導入されて以降、2023年11月からは籐シートの色味が「ライトブラウン」から「ダークブラウン」に変更されている。

正規品の牛革仕様では、Spinneybeck社製のベルティングレザーが使用され、革紐がフレームに巻き付けられて座面スリングとフレームを結着する。表裏ともに革を重ねてベルティングの厚みに加工されており、端面はカラーに合わせて染色されている。

リプロダクトでは、PUレザー(合成皮革)やポリプロピレン製の模造籐が用いられる場合がある。天然素材特有の経年変化による風合いの深まりは、これらの代替素材では得られない体験である。

構造とカンチレバーの弾性

MRチェアの座り心地の核心は、カンチレバー構造が生み出す独特の弾性にある。正規品では、スチールチューブの素材特性、曲げ半径、肉厚が厳密に管理されており、着座時に適度な「バウンス」が得られるよう設計されている。ミースがマルト・スタムの直角的なデザインに対して前脚部分を優美な曲線に置き換えたのは、美的理由だけでなく、素材の疲労を防ぎながら弾力性を確保するためでもあった。

リプロダクトでは、スチールの素材強度や曲げ加工の精度によって弾性が異なり、硬すぎたり柔らかすぎたりする場合がある。長期使用に伴うフレームの変形リスクも正規品に比べて高い傾向にある。

価値と保証の違い

正規品にはKnoll社による5年間のメーカー保証が付帯し、フレームにはKnollStudioロゴとミース・ファン・デル・ローエのサインが刻印される。GREENGUARD Gold認証を取得しており、室内空気品質への配慮もなされている。中古市場においても、正規Knoll製品は安定したリセールバリューを維持しており、1stDibsでは平均約4,000ドル(約60万円)前後で取引されている。

リプロダクトは初期投資を大幅に抑えられるものの、保証期間が短く、アフターサービスも限定的であり、中古市場での資産価値はほぼ期待できない。

正規品とリプロダクトの比較表

比較項目 正規品(Knoll) リプロダクト一般
フレーム素材 直径約25mm継ぎ目なしステンレススチールチューブ。溶接痕のない滑らかな仕上げ スチールチューブ(径・肉厚にばらつき)。溶接痕が残る場合あり
フレーム仕上げ ポリッシュドクローム(高品質メッキ)またはウルトラマットパウダーコート クロームメッキ(メッキ層が薄い場合、経年で剥離・錆のリスク)
座面(籐仕様) 天然籐の手編み。クリアラッカー仕上げ。接合部の繊細な膨らみ処理 天然籐または模造籐。編み込みの密度や仕上げに差異
座面(革仕様) Spinneybeck社製ベルティングレザー。表裏両面革、端面染色仕上げ。革紐によるフレーム結着 PUレザー(合成皮革)の場合あり。革質・縫製にばらつき
カンチレバーの弾性 素材特性と曲げ半径を厳密に管理。適度な「バウンス」を実現 弾性にばらつき。長期使用による変形リスクが高い傾向
認証刻印 KnollStudioロゴ+ミース・ファン・デル・ローエのサインをフレームに刻印 なし
環境認証 GREENGUARD Gold認証取得 認証なしが一般的
保証 5年間メーカー保証 1〜2年程度の限定保証
リセールバリュー 中古市場で安定した価値を維持(1stDibs平均約60万円前後) 大幅な価値低下が一般的
参考価格帯 サイドチェア:約28万円〜34万円(税込目安) 約2万円〜5万円程度
製造国 イタリア 中国・東南アジアほか

類似商品・競合との比較

MRチェアと同じカンチレバー構造を持つバウハウス期の名作チェア、および同時代のスチールチューブ家具との比較を通じて、ご自身のニーズに最適な選択肢を見つけていただきたい。

比較項目 MRチェア(Knoll) チェスカチェア(Knoll) S 33 チェア(Thonet)
デザイナー ミース・ファン・デル・ローエ(1927年) マルセル・ブロイヤー(1928年) マルト・スタム(1926年)
デザイン方向性 優美な曲線。装飾を排し、構造そのものが美となる「Less is more」の具現。カンチレバーを最も美しく仕上げた到達点 スチールフレームとケインシートの軽快な融合。ウッドフレームを組み合わせた親しみやすい造形 カンチレバー構造の原点。直角的な構成による構成主義的な美学。機能に徹した直線的フォルム
主要素材 ステンレススチールチューブ(ポリッシュドクローム)、天然籐または牛革 クロームスチールチューブ、ケインシート、ブナ材またはオーク材フレーム スチールチューブ(クロームメッキ)、牛革または籐
サイズ(W×D×H) 490×690×790mm 470×560×800mm 490×660×820mm
座面高 460mm 450mm 460mm
参考価格帯(税込目安) 約28万円〜45万円 約15万円〜30万円 約15万円〜30万円
空間への適性 モダンリビング、ダイニング、オフィスカンファレンスルーム。建築的空間との調和に秀でる ダイニング、書斎、カフェ。木部の温かみにより幅広いインテリアに馴染む ダイニング、会議室。構成主義的空間やミニマルインテリアに最適

選び方の指針

ミースの建築思想と「Less is more」の哲学を最も純粋な形で空間に取り入れたい方、特に近代建築やインターナショナル・スタイルの空間との調和を重視する方にはMRチェアが最適である。カンチレバーの曲線美は3者の中で最も優雅であり、スチールと籐(または革)のコントラストが空間にモダンかつ詩的な趣を与える。

木の温もりとスチールのモダンさの両立を求め、日常のダイニングチェアとして幅広いインテリアに合わせたい方にはチェスカチェアが推奨される。ブナ材フレームの親しみやすさと、比較的手の届きやすい価格帯が魅力である。

カンチレバー構造の歴史的原点に立ち返り、構成主義的な直線美とミニマルな空間設計を志向する方にはマルト・スタムのS 33チェアが興味深い選択肢となる。直角で構成されたフォルムは、MRチェアの曲線とは対照的な美学を提示する。

使用感と暮らしへの取り入れ方

座り心地

MRチェアの座り心地を決定づけるのは、カンチレバー構造が生み出す独特の弾性である。後脚を持たないこの構造は、着座した瞬間にスチールフレーム全体がしなやかにたわみ、身体の動きに合わせて穏やかに揺れる。これは、従来の4脚チェアでは得られない、ロッキングチェアにも似た心地よさであり、ミースが19世紀の鉄製ロッキングチェアからインスピレーションを得たとされる所以でもある。

籐仕様では、手編みの天然籐が着座時にわずかにしなり、通気性の良い座面が季節を問わず快適な着座体験を提供する。牛革仕様では、ベルティングレザー特有のしっかりとしたホールド感が得られ、使用を重ねるにつれて革が柔らかくなじんでいく過程を楽しむことができる。

座面高460mmはダイニングテーブル(天板高700〜720mm程度)との相性が良く、ダイニングチェアとしての使用に適している。幅490mmのコンパクトな座面は、テーブル周りに複数脚を配置する際にも省スペースで収まる。ただし、体格の大きな方にはMR20(アーム付き)のほうがゆとりのある着座感を提供する。

空間別のコーディネート提案

MRチェアはダイニングチェアとして最も広く活用されている。ガラス天板のダイニングテーブルや、同じくミース・ファン・デル・ローエによるMRテーブルと組み合わせることで、バウハウスの美学を忠実に再現した食卓空間が実現する。クロームフレームの輝きと籐の自然な色調が、清潔感と温かみを兼ね備えたダイニングを演出する。

リビングにおいては、サイドチェアとしてソファセットに添えるか、リーディングコーナーにサイドテーブルとともに配置する使い方が考えられる。特にミースが手がけた建築作品(ファンズワース邸、レイクショアドライブ・アパートメントなど)に代表されるガラスとスチールの建築空間との親和性は極めて高い。

オフィスやカンファレンスルームにおいても、MRチェアは高い適性を持つ。複数脚を会議テーブルの周囲に配することで、バウハウスの理念に基づく知的かつ洗練された会議空間が生まれる。GREENGUARD Gold認証の取得は、商業空間における使用にも安心感を与える。

生活スタイル別の提案

一人暮らしのコンパクトな空間では、ダイニングチェアと書斎チェアを兼ねる多目的な1脚としてMRチェアが活躍する。幅490mm・奥行690mmという控えめなフットプリントは、限られた床面積の中でも無理なく収まり、カンチレバー構造の視覚的な軽やかさが空間を広く見せる効果をもたらす。

ファミリー世帯では、ダイニングテーブルの周囲に4〜6脚を配するセット使いが基本となる。籐仕様は通気性に優れるため季節を問わず快適であるが、小さなお子様がいるご家庭では、拭き取りが容易な牛革仕様を選択することも実用的な判断である。

デザイン事務所やクリエイティブスタジオにおいては、MRチェアの持つデザイン史的な権威性が空間の文化的品格を高める。バルセロナチェアやブルーノチェアなど、ミース作品を統一的に配することで、20世紀モダニズムの精髄を体験できるオフィス空間が構築可能である。

経年変化とメンテナンス

素材別の経年変化

ポリッシュドクロームのスチールフレームは、適切な手入れを施すことで長期にわたり光沢を維持する。指紋や水垢が付着しやすい素材ではあるが、定期的な拭き上げにより新品同様の美しさを保つことが可能である。

籐は使用とともにやや色味が深まり、自然な飴色へと変化していく。適切な保湿管理を行うことで、硬化やひび割れを防ぎ、長期間にわたって良好な弾性と風合いを維持できる。

牛革は着座によるパティナ(艶)の発達とともに表情を変え、柔らかさを増しながら深みのある色合いへと育っていく。特にライトブラウンのベルティングレザーは、経年変化が最も顕著に現れ、使い込むほどに個性的な風合いを獲得する。

日常メンテナンス

スチールフレームの手入れ
柔らかい乾いた布で定期的に指紋や埃を拭き取る。汚れが気になる場合は、中性洗剤を薄めた微温水で湿らせた布で拭いた後、乾いた布で水分を完全に除去する。研磨剤を含むクリーナーの使用はクローム表面を傷つけるため避ける。
籐(ラタン)座面の手入れ
3ヶ月に1回を目安に、水とグリセリンの混合液で籐の保湿処理を行う。これにより籐の乾燥とひび割れを防止する。日常的には柔らかいブラシで編み目に溜まった埃を除去する。直射日光の長時間照射や暖房器具の直接的な熱は、籐の硬化・変色を促進するため避ける。
牛革座面の手入れ
柔らかい乾いた布で定期的に埃を除去する。掃除機の柔口を使用する場合は革を傷つけないよう注意する。液体をこぼした場合は直ちに吸い取る。定期的にレザーコンディショナーを使用し、革の柔軟性と光沢を維持する。

専門メンテナンスと修理

籐の張り替えが必要になった場合は、正規販売店を通じてKnoll社に相談することを推奨する。牛革のスリング交換についても正規ルートでの対応が可能である。フレーム自体は非常に頑丈であり、通常の使用においてメンテナンスを要することは稀である。ただし、フロアグライドは消耗品であるため、床面の保護状況を定期的に確認し、摩耗が見られた場合は交換する。

どこで買うか:正規販売店と購入方法

国内正規販売店

Knoll社の製品は、日本国内の正規取扱店を通じて購入可能である。正規販売店では製品の真正性が保証され、メーカー保証およびアフターサービスが受けられる。代表的な取扱店は以下のとおりである。

FLYMEe(フライミー)
Knoll正規取扱店。MRチェアの籐仕様・牛革仕様ともに取り扱い。オンライン購入可
MAARKET(マーケット)
Knoll Studio正規取扱。MRサイドチェアの展示・販売を実施
designshop(デザインショップ)
Knoll正規取扱店。MRチェアの籐仕様を中心に取り扱い
H.L.D.
デザイナーズ家具正規品専門通販。Knoll MRチェアを含む全商品がメーカー保証付き
SHINWA SHOP(新和建設ショップ)
Knoll Studio正規取扱。MRチェアの牛革仕様を中心に展示・販売

上記以外にも正規取扱店が存在するため、Knoll社の公式ウェブサイト(knoll.com)またはMillerKnoll(millerknoll.com)のディーラー検索機能を通じて最寄りの販売店を確認されたい。

公式オンラインストアと海外正規ディーラー

Knoll社の公式ウェブサイト(knoll.com)では直接購入が可能であり、米国向け販売価格はサイドチェア牛革仕様$1,868、籐仕様$2,280、アームチェア$3,035(いずれもUSD)となっている。海外の正規ディーラーとしては、Design Within Reach(DWR)、hive modern、2Modern、smow、Palette & Parlor、CA Modern Homeなどが知られている。

実物を確認できるショールーム

MRチェアの実物確認は、Knoll製品の展示を行っている正規販売店にて可能である。東京エリアでは、FLYMEeのショールーム等でKnoll製品の展示を行っている場合がある。Knoll社はMillerKnoll傘下のブランドとして世界各地にショールームを展開しており、事前にウェブサイトで展示状況を確認のうえ訪問されたい。

中古・ヴィンテージ市場

MRチェアはKnoll社による長期間の生産実績があるため、中古市場にも比較的多くの流通がある。1stDibsでは平均約4,000ドル(約60万円)で取引されており、価格帯は225ドル〜18,000ドルと幅広い。ヴィンテージ品にはStendig社製など、Knoll以前のライセンシーによる製品も含まれる。中古品購入時には、フレームのKnollStudioロゴとミース・ファン・デル・ローエのサインの刻印を確認し、クロームメッキの剥離・錆、籐のひび割れ・変色、革の劣化状態を入念にチェックされたい。

購入時チェックリスト

  • 正規品であることの確認(フレームのKnollStudioロゴおよびミース・ファン・デル・ローエのサイン刻印)
  • モデルの選択確認(MR10アームレス / MR20アーム付き)
  • 座面素材の選択確認(天然籐ラタン / 牛革ベルティングレザー。牛革の場合はカラー:ブラック、ライトブラウン、ホワイトベージュ)
  • フレーム仕上げの選択確認(ポリッシュドクローム / ウルトラマットパウダーコート)
  • 設置場所の実測(サイドチェア:幅490mm×奥行690mm以上のスペース+動線確保)
  • 複数脚購入の場合:テーブル周囲のスペース確認(椅子間600mm以上推奨)
  • 搬入経路の確認(完成品での納品のため、玄関・廊下の幅を確認)
  • 納期の確認(在庫品は即納可能な場合あり。受注生産品の場合は数週間〜数ヶ月)
  • 保証内容の確認(5年間メーカー保証の適用範囲)
  • 床面の保護(付属フロアグライドの使用確認。フローリングへの傷防止)

配送・設置に関する注意事項

MRチェアは約7.7kg(サイドチェア籐仕様)と比較的軽量であり、取り扱いは容易である。完成品での納品となるため組立は不要。ただし、クロームフレームは傷がつきやすいため、搬入時に壁面や扉枠との接触に注意が必要である。特にポリッシュドクロームの光沢面は、わずかな擦り傷でも目立ちやすい。籐仕様の場合は、搬入中に編み面を硬い角に当てないよう慎重に扱われたい。設置後は、直射日光の長時間照射を避け(特に籐仕様)、適度な湿度環境を維持されたい。

コーディネート事例

バウハウスモダン

籐仕様のMRチェアをガラス天板のダイニングテーブルに合わせ、ミースのバルセロナデイベッドやブルーノチェアとともに配置するスタイル。白壁とコンクリート床を基調とした空間に、クロームの輝きと籐の温かみが映える。ヴァイセンホーフ・ジードルングの室内空間を現代の住まいに再解釈した、知的で禁欲的なインテリアが実現する。マルセル・ブロイヤーのワシリーチェアやラッカスツールを加えれば、バウハウス黄金期の家具群による空間構成が完成する。

ミニマルコンテンポラリー

牛革ブラック仕様のMRチェアを、ウォールナット無垢材のダイニングテーブルと合わせるスタイル。クロームスチールの工業的な冷たさと、木と革の天然素材の温もりが高いレベルで調和し、現代的でありながら落ち着きのあるダイニング空間が生まれる。ルイスポールセンのPH5ペンダントライトやイサム・ノグチのAKARIランプとの組み合わせも効果的である。

モノトーンエレガンス

ウルトラマットのオニキス(マットブラック)仕上げフレームに黒革座面のMRチェアを選び、ブラック基調のダイニング空間を構築するスタイル。マットな質感がポリッシュドクロームとは異なる静謐な印象を生み出し、モノトーンのインテリアに深い奥行きを与える。大理石天板のテーブルやスモーキーガラスの照明との組み合わせが、洗練された夜のダイニングシーンを演出する。

相性の良いデザイナーズ家具

Barcelona Chair / Barcelona Daybed(Knoll)
ミース・ファン・デル・ローエによるもうひとつの代表作。リビングにバルセロナチェアを、ダイニングにMRチェアを配することで、同一デザイナーの作品群による統一感のある空間を構築
Brno Chair(Knoll)
同じくミースによるカンチレバーチェア(1930年)。MRチェアより直線的で格式高い佇まいは、会議室やフォーマルダイニングに最適。MRチェアとの併用で空間に変化を持たせる
Wassily Chair / Cesca Chair(Knoll)
マルセル・ブロイヤーによるスチールチューブ家具の名作。バウハウスの同志たちの作品を組み合わせ、戦間期ドイツの前衛デザインの世界を空間に出現させる
PH5 / PH Artichoke(Louis Poulsen)
同時代の北欧モダンを代表するペンダントライト。MRチェアのクロームフレームと白い光が美しく呼応する

広さ別の配置ガイド

MRチェアはサイドチェア仕様(MR10)で幅490mm×奥行690mmとコンパクトなフットプリントを持つため、4〜6畳のダイニングスペースにも4脚を無理なく配置可能である。テーブル周囲に各椅子間600mm以上のスペースを確保すれば、着座・離席の動作がスムーズに行える。

8畳以上のダイニングでは、MRチェアを6脚以上配置し、テーブルの両端にMR20(アーム付き)を配するレイアウトも可能である。アーム付きをヘッドチェアとして強調する配置は、フォーマルなダイニングシーンに適している。

リビングダイニング一体型の空間では、ダイニング側にMRチェアを配しつつ、リビング側にバルセロナチェアやバルセロナデイベッドを配する構成が、ミースの家具デザイン哲学を空間全体で体験できる理想的なレイアウトとなる。

よくある質問

MRチェア正規品の価格はどのくらいですか?
サイドチェア(MR10)は、牛革仕様で約28万円〜、籐(ラタン)仕様で約34万円〜が参考価格帯(税込目安)となります。アームチェア(MR20)は約45万円〜です。Knoll社の公式サイトでの米国向け価格は、牛革サイドチェア$1,868、籐サイドチェア$2,280、アームチェア$3,035(USD)です。為替レートにより日本国内価格は変動するため、正規販売店にお問い合わせください。
どこで購入できますか?
日本国内ではKnoll正規取扱店(FLYMEe、MAARKET、designshop、H.L.D.、SHINWA SHOPなど)で購入可能です。Knoll社の公式サイト(knoll.com)からの直接購入や、Design Within Reach(DWR)などの海外正規ディーラーからの購入も選択肢です。Knoll社またはMillerKnoll社のウェブサイトでディーラー検索が行えます。
実物を確認してから購入したいのですが、どこで見られますか?
FLYMEeのショールームや各正規販売店にて展示を行っている場合があります。展示品の仕様(籐 / 牛革、カラー等)は時期や店舗により異なるため、事前にお問い合わせのうえご確認ください。MillerKnoll傘下のショールーム情報も参照されると良いでしょう。
注文してからどのくらいで届きますか?
在庫品の場合は比較的短期間で納品される場合があります。Knoll社の公式サイトでは「In stock and ready to ship」と表示される仕様もあります。受注生産の場合は数週間〜数ヶ月の納期がかかることがあるため、正規販売店にて最新の在庫・納期状況をご確認ください。完成品での納品となるため、到着後すぐにお使いいただけます。
メンテナンス方法を教えてください。
スチールフレームは柔らかい乾いた布で定期的に拭いてください。籐仕様の場合は、3ヶ月に1回、水とグリセリンの混合液で保湿処理を行い、籐の乾燥を防いでください。牛革仕様は乾いた柔らかい布で埃を除去し、定期的にレザーコンディショナーで手入れします。いずれの仕様も、直射日光の長時間照射や暖房器具の直接的な熱は避けてください。
リプロダクトでも十分な品質ですか?
リプロダクトは初期費用を大幅に抑えられる選択肢ですが、正規品とはスチールの品質、クロームメッキの耐久性、座面素材(籐の編み込み品質や革の質)、カンチレバーの弾性において本質的な差異があります。正規品のフレームにはKnollStudioロゴとミースのサインが刻印され、5年間のメーカー保証と GREENGUARD Gold認証が付帯します。中古市場でのリセールバリューも正規品は安定しています。「Less is more」の哲学が込められた仕上げの精度を体感されたい場合は、正規品を十分にご検討ください。
籐仕様と牛革仕様はどちらを選べばよいですか?
籐仕様は通気性に優れ、温暖な季節にも快適です。1927年の発表時に採用されたオリジナルの仕様であり、スチールと籐の対比がMRチェアの歴史的な姿を最も忠実に再現します。ただし、籐は定期的な保湿処理が必要であり、飲食物のシミにもやや敏感です。牛革仕様は手入れが比較的容易で、経年変化によるパティナの深まりを楽しめます。ダイニングでの頻繁な使用にはメンテナンス性に優れた牛革仕様が、デザイン史的な純粋さを重視する方には籐仕様がそれぞれ推奨されます。
他に検討すべき名作チェアはありますか?
同じミース・ファン・デル・ローエの作品としては、より格式高いブルーノチェアや、リビング向けのバルセロナチェアも比較検討の対象となります。同じバウハウスの系譜に属するカンチレバーチェアとしては、マルセル・ブロイヤーのチェスカチェア(Knoll)やマルト・スタムのS 33チェア(Thonet)も歴史的名作です。