新アッシリアの宮殿や城門の出入口に据えられた、人の頭と翼をもつ牡牛または獅子の姿の守護像。
ラマッス
ラマッスとは、古代メソポタミア、とくに新アッシリア時代の宮殿や城門の出入口に据えられた、人間の頭と鳥の翼をもつ牡牛または獅子の姿の守護像のこと。
解説
紀元前9世紀、アッシュルナツィルパル2世がニムルド(古代名カルフ)に都を移して宮殿を建てたころから、重要な出入口の両脇に一対で置かれるようになった。巨大な石膏質の石材(アラバスター)から彫り出され、高さは3メートルを超える。出入口の側壁そのものを兼ねており、単なる置物ではなく、開口部を守り、支える建築の一部だった。
よく知られる特徴が、脚の数である。正面から見ると4本の脚でしっかり立ち、側面から見ると歩み出しているように見えるよう、脚が5本彫られている。見る位置によって姿が変わるこの工夫は、通路を進む人の視点を前提にしたもので、宮殿の室内を「歩きながら見る空間」として設計していたことをうかがわせる。

ラマッスは、宮殿の壁面を覆った浮彫りのレリーフとともに、王の権威と守護を訪問者に示す装置だった。ニムルドのものはメトロポリタン美術館(収蔵番号32.143.1–2)や大英博物館などに収蔵されている。一方、現地に残っていた像の一部は、2015年の武装勢力による破壊で失われた。
頭に載せた角のある冠は、神的な存在であることを示す印とされる。ラマッスは、出入口という「内と外の境目」を守る存在であり、室内に足を踏み入れる者に、ここから先が王の領域であることを告げる役割を担っていた。
Reference
- Human-headed winged bull (lamassu), 32.143.1(The Metropolitan Museum of Art)
- https://www.metmuseum.org/art/collection/search/322608
- Human-headed winged lion (lamassu), 32.143.2(The Metropolitan Museum of Art)
- https://www.metmuseum.org/toah/works-of-art/32.143.2