概要
マイケル・アナスタシアデス(1967年生まれ)は、キプロス出身でロンドンを拠点とする照明デザイナーである。土木工学を修めたのち設計へ転じ、球・棒・円板といった基本形の組み合わせで照明を構成する。2013年からフロスと協働し、ICライツ、ストリングライト、アレンジメンツなどを手がけた。点灯していない状態でも成立する形を条件に置く点に特徴がある。
バイオグラフィー
1967年12月28日、キプロスに生まれた。1988年にイギリスへ渡り、ロンドンのインペリアル・カレッジで土木工学を学んで1991年に修了している。その後ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで工業デザインを学んだ。
1994年、ロンドンに自身のスタジオを設立する。当初は製品と空間の設計、実験的な制作を並行して行っていた。照明に取り組む契機は、自宅に置きたい照明器具が見つからず自ら設計したことにあると本人が述べている。
2007年、自身の名を冠したブランドを設立し、照明・家具・装身具・卓上の器物を発表するようになった。
2011年、当時フロスの経営者だったピエロ・ガンディーニと出会い、2013年のストリングライトから同社との協働が始まった。以後、ICライツ、アレンジメンツなどを設計している。B&Bイタリア、バング&オルフセン、スヴェンスクト・テンとも協働した。
デザインの思想と方法
照明器具は、点灯している時間より消えている時間のほうが長い。アナスタシアデスが条件として置くのは、光っていない状態でも物として成立するかという点である。この条件は、光源を隠す覆いという発想から離れ、器具そのものの形を主題にすることを要求する。
基本形の組み合わせで構成する
用いる要素は球、細い棒、円板に限られる。球は発光体、棒は支持、円板は反射面という役割を持つが、それぞれの寸法と接する位置を変えるだけで、卓上灯にも壁灯にもペンダントにもなる。要素を増やさずに製品群を構成する方法である。
接点をずらす
ICライツでは、球が棒の先端で止まっているのではなく、棒の側面に接して乗っているように見える。実際には内部で固定されているが、外形からは支持の仕組みが読み取れない。安定した状態と不安定に見える状態のずれが、形の主題になっている。
使い手が構成を決める
ストリングライトは、細いケーブルを空間に張り渡し、その途中に球形または円錐形の光源を配する。取り付ける位置は使い手が決めるため、同じ製品でも空間ごとに構成が変わる。設計者が決めるのは光源の形とケーブルの長さの範囲だけになる。
工房の技術に合わせる
手吹きの乳白ガラス、真鍮の研磨といった工程は、家族経営の工房に委ねられている。それぞれの工房が持つ加工の範囲が、球の直径や表面の仕上げの選択肢を決める。産業的な量産と手作業の工程を組み合わせる構成をとっている。
フロスの歴史や他の製品について詳しくはフロス ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
モビール・シャンデリア(2008年〜)
細い棒と球を、天秤の原理で釣り合わせた吊り照明の系列である。各部が水平を保つよう重量が調整されており、空気の動きで緩やかに回転する。固定された形を持たないため、見え方が時間とともに変わる。自身のブランドから発表された。
ストリングライト(2013年)
フロスとの最初の協働にあたる。細いケーブルを空間に張り、球形または円錐形の光源をその上に配する。天井の一点から吊るすという前提を外し、部屋の対角線上にも光を置けるようにした。取り付け位置は使い手が決める。→ストリングライト
ICライツ(2014年)
細い金属の棒と乳白ガラスの球で構成した照明の系列である。球が棒に接して止まっているように見える構成をとり、卓上灯、壁灯、ペンダント、天井灯へ展開される。要素は二つだけで、寸法と配置の違いが製品の種類になっている。→ICライツ
コピーキャット(2015年)
発光する乳白ガラスの球に、小さな金の球を接して配した卓上灯である。二つの球は大きさも仕上げも異なり、一方は光り、一方は光を受けて反射する。同じ形の要素に別の役割を与えるという操作にあたる。→コピーキャット テーブルランプ
アレンジメンツ(2017年)
円・菱形・棒などの発光する部材を連結し、吊り下げる照明の系列である。部材の種類と連結の順序を選ぶことで構成が決まる。ストリングライトより選択の幅を狭め、成立する組み合わせをあらかじめ限定している。2020年にコンパッソ・ドーロ賞を受けた。→アレンジメンツ
評価と影響
アナスタシアデスは一般に、2010年代の照明において、器具そのものの形を主題とする方向を代表する設計者と評価されている。光源を覆う笠という形式から離れ、消灯時にも成立する構成を条件に置いた点が挙げられる。
フロスとの協働は2013年から続き、ICライツは同社の主要な製品群の一つとなった。少ない要素の寸法と配置を変えて系列を構成する方法は、製品開発の型としても参照される。
照明のほか、B&Bイタリアの書架システム、バング&オルフセンの音響機器も手がけている。自身のブランドでは限定生産の物を継続して発表している。
受賞・収蔵
受賞
- 2020年 コンパッソ・ドーロ賞(アレンジメンツ)
- ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(英国王立芸術協会)
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA ハガブル・アトミック・マッシュルーム「プリシラ」(2004年) 収蔵番号 98.2006
- V&A メッセージ・カップ(1995年) 収蔵番号 W.676-2001
- V&A インテンシブ・ケア(1998年) 収蔵番号 W.74:1, 2-2002
- V&A クリケット・ボックス(1998年) 収蔵番号 W.72:1, 2-2002
- V&A ラスリング・ブランチ(1998年) 収蔵番号 W.71-2002
- V&A モス・ライト(1998年) 収蔵番号 W.79-2002
- V&A トーキング・タブ(1998年) 収蔵番号 W.78-2002
- AIC ハガブル・アトミック・マッシュルーム「プリシラ」(2004年) 収蔵番号 2017.111
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1998年 | 器物 | アンコンフォータブル・オブジェクツ シリーズ | 自主制作 |
| 2004年 | 器物 | ハガブル・アトミック・マッシュルーム | 自主制作 |
| 2008年 | 照明 | モバイルシャンデリア 1 | Michael Anastassiades |
| 2013年 | 照明 | ストリングライト | Flos |
| 2013年 | 照明 | フライト | Flos / Svenskt Tenn |
| 2014年 | 照明 | ICライツ | Flos |
| 2015年 | 照明 | コピーキャット テーブルランプ | Flos |
| 2017年 | 照明 | アレンジメンツ | Flos |
| 2018年 | 収納 | ジャック 書棚システム | B&B Italia |
| 2018年 | 音響機器 | ベオサウンド・エッジ | Bang & Olufsen |
| 2020年 | 照明 | コーディネイツ | Flos |
プロフィール
| 生年 | 1967年12月28日 |
|---|---|
| 出身地 | キプロス |
| 国籍 | キプロス/イギリス |
| 活動拠点 | ロンドン |
| 分野 | 照明、家具、器物 |
| 主な協働ブランド | Flos、B&B Italia、Bang & Olufsen、Svenskt Tenn、Herman Miller |
Reference
- Michael Anastassiades(公式)
- https://michaelanastassiades.com/
- Michael Anastassiades | Flos
- https://flos.com/designers/michael-anastassiades/
- Michael Anastassiades | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325