バイオグラフィー

1969年、イギリス・オックスフォード生まれ。王立空軍基地近くのオックスフォードシャーの田園地帯で育ち、幼少期から航空機や工業製品の造形美に魅了される。スイス系の祖先は時計職人やカメラ職人、母方の祖父の家系は馬車職人という、ものづくりの血統を受け継ぐ。

オックスフォード・ブルックス大学で基礎課程を修了後、ロンドンのレイヴンズボーン・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでプロダクトデザインを学ぶ(1990-1992年卒業)。ディーター・ラムスの下で働いたデザイナーたちから直接指導を受け、機能主義的デザインの真髄を学ぶ。その後、より深い建築的理解を求めて、1992年に英国王立芸術学院(RCA)の建築修士課程に進学。

RCA入学初日にエドワード・バーバー(1969年シュルーズベリー生まれ)と出会い、即座に意気投合。1994年、建築・インテリアデザイン修士号を共に取得。1996年、ロンドンの象徴的ブルータリスト建築トレリック・タワーの共同フラットで「Barber Osgerby Associates」を設立(2008年より「Barber Osgerby」)。

2001年には建築・インテリア・展示デザインを手がける「Universal Design Studio」を、2012年にはテクノロジーと戦略的デザインに特化した「Map Project Office」を設立。現在、ロンドン東部のクラーケンウェルとショーディッチに拠点を置き、約85名のスタッフと共に、家具から都市計画まで幅広いプロジェクトを手がける。

デザインの思想とアプローチ

「有用な美」という哲学

オズガビーのデザイン哲学の中核をなすのは「有用な美(Useful Beauty)」という概念である。ジャン・プルーヴェや柳宗理といったデザイナーたちの作品に見られる「深い機能性と同時に、人間性を持つ—使用され理解される際の柔らかさ」に強く影響を受けている。単に産業に奉仕するのではなく、「デザインを文化的コメント、実験、コラボレーションのプラットフォームとして捉える」アプローチを貫く。

インタラクション・デザインの重要性

「機能性とインタラクションは別個の関心事ではなく、絡み合っている。バウハウス以降、形態は機能に従うという考えがあるが、しばしば見落とされるのは、人間のインタラクションも機能であるということだ」とオズガビーは語る。技術的パフォーマンスと同様に、人々がオブジェクトに対して持つ感情的、感覚的、行動的反応を重視し、「静かな均衡」を創り出すことを目指す。

時を超えるデザインへの探求

「時代を超越することは、時代を超越しようとすることから生まれるのではない。アイデア、プロセス、そしてデザインする相手に対して正直であることから生まれる」という信念のもと、一時的な流行や新奇性ではなく、長く愛用され、世代を超えて受け継がれる製品づくりに注力。使用による傷や汚れさえも「生活のパターンを築き上げ、記憶と意味の受け皿となる」要素として肯定的に捉える。

作品の特徴

建築的精度と構造美

建築教育を受けたバックグラウンドが、プロダクトデザインに空間的思考をもたらしている。トビイシ・テーブルは「建物のように重量と均衡で遊ぶ」作品であり、ノール社のソファコレクションは座具を「建築的エンベロープデザイン」として扱う。T字型の鋳造アルミニウム脚がクッションの継ぎ目にフィットし、ステッチされた縫い目が建築的プロファイルを強化する。

素材の本質を見せる

構造を隠すのではなく、それを祝福する。ロンドン五輪聖火トーチの8,000個の穿孔は炎の心臓部を露わにし、マリポサ・ソファはメカニズムを隠しながらも、使用者を硬い要素から守る柔らかな室内装飾を表現。素材と製造プロセスの美しさを前面に出すことで、工業製品に詩的な質感を与える。

動きと人間工学の融合

ティップトン・チェア(2011)は前方に9度傾斜し、能動的な座り方と集中力を促進。パシフィック・チェア(2016)は個人の体重に自動的に反応。ミカド・チェア(2024)は後方傾斜メカニズムを備え、姿勢の変化を可能にする。「誰が永遠にじっと座っていたいだろうか?私たちは人間であり、集中するためには動く必要がある」という哲学が、革新的な座具デザインを生み出している。

主な代表作とエピソード

ループ・テーブル(1996年)- キャリアの原点

トレリック・タワーのフラットで制作された処女作。2つの曲線的な樺合板要素が端部でシームレスに接続し、連続的なループを作り出す。1997年のロンドン・デザイン・フェアでジュリオ・カッペリーニの目に留まり、カッペリーニのカタログに採用されたことで国際的キャリアが始動。V&A美術館とメトロポリタン美術館の永久コレクションに収蔵。2021年には25周年記念エディション(青染め仕上げ、限定25台)を発表。

ティップトン・チェア(2011年)- 革新的な動きのコンセプト

ヴィトラ社のために開発された、動きと学習の関連性に基づく革新的な椅子。9度の前傾機能により動的な座り方を促進し、機械的部品なしに単一のポリプロピレン成形から作られる。4脚まで積み重ね可能で100%リサイクル可能。FXデザイン賞年間最優秀製品賞(2011)、D&ADイエローペンシル(2012)など多数受賞。

2020年には「ティップトン RE」として、ドイツの家庭廃棄物プログラムから100%消費後リサイクルポリプロピレンで製造される版を開発。気候に害を与える排出量を54%削減しながら、すべての性能特性を維持。モノクル・デザイン賞2021最も持続可能なデザイン賞を受賞。

ロンドン2012オリンピック聖火トーチ - 英国デザインの象徴

89のエントリーから選ばれた、バーバー・オズガビーの最も認知度の高い作品。三角形のフォームは、ロンドンが3回目のオリンピック開催都市であること、オリンピックのモットーの3つの言葉(「より速く、より高く、より強く」)、3つのオリンピック価値(尊敬、卓越、友情)を象徴。

8,000個のレーザーカット円形穿孔は、70日間で8,000マイルを運ぶ8,000人の聖火ランナーを表現。これらの穴は、炎の中心を直接見ることができる透明性を生み出し、全体重量を軽減し、ハンドルへの熱伝導を防ぎ、触覚的なグリップを提供。航空宇宙産業向けに開発されたアルミニウム合金を使用し、800mmの高さと800gの重量という「800」の数字が象徴的に使用された。

デザイン博物館のデザイン・オブ・ザ・イヤー2012総合優勝、D&ADイエローペンシル2013など多数受賞。V&A美術館、デザイン博物館ロンドン、オリンピック博物館スイスの永久コレクションに収蔵。記録上最も信頼性の高いオリンピック聖火として、全行程でわずか2回しか消火しなかった。

功績と業績

主要な栄誉

2007年 ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(RDI)
英国王立芸術協会による英国デザイナーの最高位。同時に200名のみが称号を保持できる名誉ある地位
2013年 大英帝国勲章オフィサー(OBE)
デザイン産業への貢献により、エドワード・バーバーと共に叙勲
2015年 ロンドン・デザイン・メダル
パネライ公式ロンドン・デザイン・メダル受賞

主要受賞歴

  • 2014年 ADIコンパッソ・ドーロ賞(トビイシ・テーブル)- イタリアデザイン界最高の栄誉
  • 2012年 デザイン博物館デザイン・オブ・ザ・イヤー総合優勝(ロンドン五輪聖火トーチ)
  • 2013年 メゾン・エ・オブジェ年間デザイナー賞
  • 2014年 EDIDA(エル・デコ国際デザイン賞)年間デザイナー賞
  • 2015年 デザイン・ウィーク殿堂入り

美術館収蔵

作品は世界の主要美術館に永久収蔵されている:ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、デザイン博物館(ロンドン)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、シカゴ美術館、インディアナポリス美術館、ヴィトラ・デザイン博物館(ドイツ)、ポンピドゥー・センター(パリ)、オリンピック博物館(スイス)

評価と後世への影響

ニューヨーク・タイムズ紙は「彼らのコンセプトは明確に定義され、ディテールは非常に正確で、彼らの作品には独特のシグネチャーがある。これは少数のデザイナーしか達成できないものだ」と評価。ロサンゼルス・タイムズ紙は彼らを「21世紀ミニマリズムのアステアとロジャース」と称した。

デザイン博物館館長のデヤン・スジックは「明快さ、一貫性、美しさを兼ね備えた」アプローチと評し、特にオリンピック聖火について「オリンピックのためにデザインすることほど難しいことはない。バーバー・オズガビーのロンドン2012オリンピック聖火の軽さとシンプルさは、まさにそれを実現している」と述べている。

産業への影響

製造技術の革新
ゼロイン・テーブル(2005)で自動車産業の溶接・研磨技術を家具製造に初めて導入。アイリス・テーブル(2008)では航空宇宙工学技術を活用。これらの分野横断的アプローチは、業界全体に新しい製造手法の採用を促した
持続可能性のリーダーシップ
ティップトン RE(2020)は100%消費後リサイクルプラスチックから作られた先駆的家具。ミカド・チェア(2024)は接着剤不使用の取り外し可能カバーと個別交換可能な脚を特徴とする。長寿命、修理可能性、循環経済の原則を優先する業界標準を確立
人間工学的思考の変革
ティップトン・チェアの前傾機能は、能動的な座り方と集中力を促進する座具デザインに革命をもたらした。静的な座具の慣習に挑戦し、その後の人間工学的家具デザインに大きな影響を与えた
デザイン教育への影響
家具、照明、工業デザイン、建築、インテリア、インスタレーション、ファインアートにまたがる作品群は、若い世代に従来のカテゴリーを超えた思考を促している。王立芸術学院は彼らを分野横断的実践の模範として挙げている
区分 作品名 ブランド
1996 テーブル Loop Table Isokon Plus / Cappellini
1998 スツール Flight Stool Isokon Plus
2000 テーブル Home Table Isokon Plus
2001 スツール Hula Stool Cappellini
2005 椅子 De La Warr Pavilion Chair Established & Sons
2005 テーブル Zero-In Table Established & Sons
2007 照明 Tab Lamp Flos
2008 テーブル Iris Tables Established & Sons
2011 椅子 Tip Ton Chair Vitra
2012 プロダクト Olympic Torch LOCOG
2012 テーブル Tobi-Ishi Table B&B Italia
2013 ソファ Barber Osgerby Sofa Collection Knoll
2014 ソファ Mariposa Sofa Vitra
2015 椅子 Pilot Chair Knoll
2015 バス AXOR One Hansgrohe/AXOR
2016 椅子 Pacific Chair Vitra
2016 屋外家具 Tibbo Collection Dedon
2017 照明 Bellhop Lamp Flos
2018 システム Soft Work System Vitra
2019 椅子 On & On Chair Emeco
2020 椅子 Tip Ton RE Vitra
2022 椅子 Plan Chair Fredericia
2024 椅子 Mikado Chair Vitra
2024 照明 Bellhop Glass Flos

Reference