アンジェロ・マンジャロッティ(Angelo Mangiarotti)
アンジェロ・マンジャロッティ(1921年 - 2012年)は、イタリア・ミラノに生まれた建築家・インダストリアルデザイナー・彫刻家です。建築から家具、照明、時計、ガラス器、そして彫刻まで幅広い領域で仕事を残し、素材そのものの性質から形を導き出すという一貫した姿勢で知られます。マーブルの自重によって天板と脚を固定するエロス・テーブルは、接着剤やネジに頼らない「重力による接合」という彼の探究を示す代表的な仕事です。
バイオグラフィー
1921年2月26日、ミラノに生まれる。1948年にミラノ工科大学(ポリテクニコ・ディ・ミラノ)建築学科を卒業した。1953年から1954年にかけて渡米し、シカゴのイリノイ工科大学デザイン研究所で客員教授を務めるとともに、フランク・ロイド・ライト、ヴァルター・グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、コンラート・ヴァクスマンといった近代建築の担い手たちと交流した。この滞在は、以後の設計思想に大きな影響を与えたと語られている。
1955年に帰国し、建築家ブルーノ・モラッスッティと共同で設計事務所を開いた。ジェノヴァのヴィア・カントーレの高層建築(1955年)や、ミラノ近郊バランツァーテのガラスの教会「ノストラ・シニョーラ・デッラ・ミゼリコルディア」(1957年)などを手がけたこの協働は1960年に解消され、以後は独立して活動を続けた。建築の分野では、ミラノのチェルトーザ駅やロゴレード駅、地下鉄パッサンテのレプッブリカ駅・ヴェネツィア駅といった鉄道施設や、スナイデロ社の本社・展示施設(マイアーノ、1978年)などを残している。1989年には東京にマンジャロッティ・アンド・アソシエイツを設立した。1987年には自らの設計思想をまとめた著書『建築の名において(In nome dell'architettura)』を刊行し、1994年にはその功績に対してコンパッソ・ドーロ功労賞が贈られた。2012年、ミラノにて91歳で没した。
デザインの思想・アプローチ
マンジャロッティのものづくりの根底にあったのは、素材の特性を正しく理解し、それに即した構造を導き出すという考え方でした。彼は建築を実用に根ざした厳密な仕事ととらえ、工業デザインを職人的な手仕事の延長として位置づけていました。そこでは、技術と方法を正しく用いることと、使い手の実際の必要を見失わないことが設計の前提とされます。合理主義に立ちながらも優美さや美しさの追求を手放すことはなく、その仕事は建築と彫刻の境界を静かに行き来しています。
作品の特徴
家具の分野では、マーブルやブロンズ、木といった素材を生かした、彫刻的で構造の明快なテーブルやコンソール、書棚を数多く手がけました。とりわけ1971年にスキッパー社から発表したエロス・テーブルでは、円錐形に加工した脚を天板の開口部に差し込み、天板そのものの重さで固定する接合を考案しています。ネジや接着剤を用いず、重力によって部材を組み合わせるという発想は、彼が長く取り組んだテーマでした。
照明の分野でも仕事は豊かで、アルテミデ社のために手がけたムラノ・グラスの吹きガラスによるレスボ/サッフォのランプや、ヴィストージ社のために設計した、掛け合わせるガラスの部材で光のカスケードを構成するジョガリの照明システムが知られています。このほか、カッシーナ社の1110ラウンジチェア、ベルニーニ社のテーブル、そして時計やガラスの器に至るまで、素材ごとの性質を見極めた仕事を残しました。
功績・評価
マンジャロッティは、イタリア工業デザイン協会(ADI)の創設メンバーの一人に名を連ね、生涯を通じてイタリアの主要な家具・照明メーカーと協働しました。ドムス・フォルミカ賞(1956年)、鉄骨造建築に対するヨーロッパ賞(1979年)、コンパッソ・ドーロ功労賞(1994年)など、デザインと建築の双方で数々の賞を受けています。ミュンヘン工科大学(1998年)やミラノ工科大学(2002年)から名誉学位を授与され、ミラノ・トリエンナーレや東京のギャラリー・間をはじめ、世界各地で作品展が開かれてきました。素材への誠実さと構造の論理を、彫刻的な美しさへと結びつけたその姿勢は、後進の建築家・デザイナーに広く影響を与えています。
主な代表作
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1959年 | テーブル | 302 | Bernini |
| 1964年 | チェア | 1110 | Cassina |
| 1966年 | ライト | Lesbo / Saffo | Artemide |
| 1967年 | ライト | Giogali | Vistosi |
| 1969年 | テーブル | M1 | Skipper |
| 1971年 | テーブル | Eros | Skipper |
| 1978年 | コンソール | Incas | Skipper |
| 1981年 | 収納家具 | Estral | Skipper |
| 1983年 | チェア | Chicago | Skipper |
| 1985年 | テーブル | Central | Skipper |
Reference
- Biography ― Angelo Mangiarotti Foundation
- https://angelomangiarottifoundation.it/en/biography/
- Angelo Mangiarotti ― Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Angelo_Mangiarotti
- Angelo Mangiarotti ― Agapecasa
- https://www.agapecasa.it/en-GB/mangiarotti
- Angelo Mangiarotti ― Casati Gallery
- https://www.casatigallery.com/designers/angelo-mangiarotti/