ケタル ― 地中海の光と風を纏うアウトドアファニチャーの先駆者

Kettal(ケタル)は、1966年にスペイン・バルセロナで創業されたアウトドアファニチャーの専門ブランドである。創業者マヌエル・アロルダが、ドイツ旅行中にスペイン市場における高品質なアウトドア家具の不在に着目したことを契機に誕生した同社は、半世紀以上にわたり、屋外空間を室内と同等の美意識で設えるという信念のもと、時代を超えて愛される家具を生み出し続けている。

パトリシア・ウルキオラ、ジャスパー・モリソン、ロナン&エルワン・ブルレック、ロドルフォ・ドルドーニ、深澤直人、アントニオ・チッテリオなど、世界を代表するデザイナーたちとのコラボレーションにより、ケタルのコレクションは単なる屋外用家具の枠を超え、建築と自然の対話から生まれる現代的なライフスタイルの提案として、世界80カ国以上で高い評価を受けている。バルセロナから45キロメートルに位置するタラゴナ県の自社工場において、すべての製品の設計から製造までを一貫して行うことで、ヨーロッパ品質の維持とクライアントごとのカスタマイズを可能としている。

ブランドの特徴とコンセプト

地中海的生活様式の体現

ケタルのデザイン哲学の根幹には、地中海沿岸に息づく豊かなアウトドアライフの文化がある。屋外空間を室内の延長として捉え、機能性と美しさを兼ね備えた家具を通じて、日常のなかに寛ぎと歓びをもたらすことを使命としている。その製品群は、テラスや庭園、プールサイドといった屋外空間のみならず、ホテルのロビーやレストラン、さらにはオフィス環境にまで展開され、現代の多様な生活シーンに応える幅広いソリューションを提供している。

世界的デザイナーとの協働

ケタルの卓越したコレクションを支えるのは、国際的なデザイナーたちとの継続的な協働関係である。各デザイナーの独自の視点と美学が、ケタルの高度な技術力と融合することで、屋外空間に新たな可能性をもたらすプロダクトが誕生する。デザイナーの選定にあたっては、ブランドの価値観を共有し、各コレクションのコンセプトにふさわしいスタイルを有することが重視されている。この姿勢こそが、エクレクティックでありながら統一感のある、ケタル独自のデザインランゲージを形成する基盤となっている。

サステナビリティへの取り組み

環境への深い敬意は、ケタルのものづくりの根幹をなす価値観である。現在、使用する塗料のほぼ100パーセントがエコロジカルかつリサイクル可能なものに転換されており、木材にはペルフタニ認証を取得した管理林から調達されたものを使用している。さらに、製品の100パーセントがリサイクル可能な設計とされており、科学的・技術的研究を製品開発の最前線に据えることで、高品質と環境配慮の両立を実現している。

ヨーロッパ自社生産によるクオリティ

ケタルのすべての製品は、バルセロナ近郊のタラゴナ県ベルベイに構える自社工場で設計・製造されている。ヨーロッパ生産を堅持することで、素材の選定から仕上げの細部に至るまで厳密な品質管理が可能となるほか、クライアントの要望に応じたカスタマイズにも柔軟に対応できる体制を整えている。この一貫した自社生産体制こそが、ケタルの製品に宿る精緻さと独自性の源泉である。

ブランドヒストリー

創業期 ― ビジョンの萌芽(1960年代)

ケタルの物語は、創業者マヌエル・アロルダの慧眼から始まる。オランダ人の妻ハネケ・デルクセンとともに暮らすアロルダは、1964年のドイツ旅行中、スペイン市場にデザイン性の高いアウトドア家具がほとんど存在しないことに気づいた。この着想を契機として、1966年にバルセロナでケタルを創業。当初はアルミニウム製のキャンプ用家具の製造からスタートし、折りたたみ式の「ミッキー」チェアは、週末旅行ブームのなかでたちまち人気を博した。

成長と進化(1970年代〜1990年代)

創業以来、ケタルは国際的な視野とデザインへの情熱を原動力に、アルミニウムを基軸としながらも使用素材の幅を着実に拡大していった。機能性、耐久性、そして美的完成度を兼ね備えたアウトドアソリューションの追求は、同社を欧州のアウトドアファニチャー市場における重要な存在へと押し上げた。この時期、社内デザインチーム「ケタルスタジオ」がバンブー、モンドラル、パークライフなどの初期の代表的コレクションを手がけ、それぞれがブランドの新たな方向性を示す転機となった。

飛躍の世紀 ― グループ化と国際的評価(2000年代)

21世紀の幕開けとともに、ケタルは大きな飛躍を遂げる。フランスのアウトドアファニチャーブランド、ユゴネとトリコンフォールを買収し、ケタルグループを形成。ポートフォリオの拡充とともに、国際的なプレゼンスを一層強化した。

そしてブランドの歴史における転換点となったのが、2005年に発表されたパトリシア・ウルキオラによる「マイア」コレクションである。革新的な編み技法がもたらす動的で三次元的な表情は、アウトドアファニチャーの概念を根底から覆すものであり、国際的なデザイン界においてケタルの名を確固たるものとした。

受賞と世界展開(2010年代〜現在)

2010年、ケタルはスペインの科学技術革新省が主催するプレミオ・ナシオナル・デ・ディセニョ(国家デザイン賞)を受賞した。その授賞理由として「企業戦略におけるデザインの模範的活用、環境とサステナビリティへの取り組み、製品と生産工程における革新への積極的姿勢」が挙げられている。翌2011年には、Wallpaper*デザインアワードも獲得し、国際的な評価をさらに確かなものとした。

現在、ケタルはバルセロナ、ニューヨーク、パリ、カンヌ、ロンドン、マイアミ、マルベーリャなど世界各地にフラッグシップストアを展開し、80カ国以上で製品を販売している。創業者の息子であるアレクサンダー・アロルダが経営の舵を取る第二世代のもと、家族経営の精神を守りながら、アウトドアファニチャーの領域にとどまらず、オフィス環境やコントラクト事業へと活動の幅を広げている。

主なインテリアコレクション

Maia(マイア)― Patricia Urquiola

2005年に発表されたマイアコレクションは、ケタルの歴史を語るうえで欠かすことのできない作品群である。パトリシア・ウルキオラが手がけた革新的な編み込み技法は、素材に動的で三次元的な表情を与え、アウトドアファニチャーの美学に新たな地平を切り拓いた。ダイニングアームチェア、ソファ、テーブルなど幅広いアイテムで構成され、アルミニウム脚とチーク脚の選択肢が用意されている。このコレクションの成功は、ケタルがトップデザイナーとの協働を本格的に推進する契機ともなった。

Bitta(ビッタ)― Rodolfo Dordoni

ロドルフォ・ドルドーニによるビッタコレクションは、ケタルを代表するベストセラーのひとつである。その名称はイタリア語で「係留柱」を意味し、船を係留するロープの編み込みからインスピレーションを得ている。アルミニウムフレームに密に編まれたポリエステルロープ、チークや石材の天板を組み合わせた構成は、軽やかさと居心地の良さを絶妙に両立させている。ドルドーニ自身が「通気性を保ちながらも密な編み込み」を意図したと語るその意匠は、ニュートラルカラーの温かみとともに、沿岸の暮らしを想起させるリラクシングな空間を創出する。

Park Life(パークライフ)― Jasper Morrison

ジャスパー・モリソンがデザインしたパークライフコレクションは、世界の主要都市に点在する公園の家具に着想を得た作品群である。軽量かつスタッキング可能なアルミニウム製のチェアやラウンジャーは、耐久性と長期にわたる美しさを両立させ、モリソンの真骨頂ともいえるミニマルで洗練されたフォルムが、コンテンポラリーなアウトドア空間に静謐な気品をもたらす。

Cala(カラ)― Doshi Levien

ロンドンを拠点とするデザインデュオ、ドシ・レヴィエンによるカラコレクションは、映画『エマニュエル夫人』で知られるピーコックチェアからインスピレーションを得た作品である。高く立ち上がったオープンウィーブのバックレストが生む彫刻的なシルエットは、劇的な存在感と快適な座り心地を兼ね備え、インド文化とヨーロッパ文化の融合という同デュオの特質を見事に体現している。

Giro(ジロ)― Vincent Van Duysen

2021年に始まったヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンとの初のコラボレーションから生まれたジロコレクション。スコットランドのオークニーチェアにインスピレーションを得つつ、伝統的な手工芸をケタルの先端技術で再解釈した本作は、リサイクルポリプロピレンロープを縫い合わせて形状そのものを構成するという革新的な手法を採用している。素材への深い敬意と現代的なサステナビリティが見事に融合した意欲作である。

Vimini(ヴィミニ)― Patricia Urquiola

パトリシア・ウルキオラがウィッカー(籐)という素材に焦点を当てたヴィミニコレクション。素材の持つ温かみと手仕事の味わいを最大限に引き出しながら、現代的なプロポーションとディテールを与えることで、伝統と革新の融合を実現している。ダイニングチェア、ソファ、コーヒーテーブルなど、多彩なアイテムが揃う。

Roll(ロール)― Patricia Urquiola

従来のラウンジチェアの概念を軽やかに覆すロールコレクション。背もたれに代えて二本の円筒形クッションをカラフルなファブリックストラップで束ねるという遊び心に満ちたデザインは、ウルキオラならではの彫刻的かつユーモラスな造形言語を体現している。

Pavilion(パビリオン)シリーズ

ケタルの建築的アプローチを象徴するパビリオンシリーズは、モジュラー構造のアルミニウムフレームにより、屋外空間に柔軟なリビングエリアやオフィス環境を創出する。防水、ポリカーボネート、ヴェネチアンブラインド、バイオクリマティック、木材など多様な天井パネルから選択可能で、建築環境に溶け込むような統合を実現している。パビリオンO、パビリオンH、パビリオンVなど複数のモデルが展開されている。

その他の注目コレクション

ケタルの豊かなカタログには、ナオト・フカサワによる陶磁器素材のアウトドアランプ「ハーフドーム」、籐細工へのオマージュとして生まれた「トゥ」チェア、さらにオフィス向け無垢木材コレクション「A」をはじめ、ロナン&エルワン・ブルレックの「スタンパ」や2024年発表の「パッサージュ」、コンスタンティン・グルチッチの「ネット」「メッシュ」、マイケル・アナスタシアデスの「スーパーファン」、アントニオ・チッテリオの「エオリアス」「ティロス」、そしてウルキオラが手がけたアラビアのマジュリスを再解釈した「インスラ」など、多層的なコレクション群が展開されている。

主なデザイナー

Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)
スペインを拠点とする建築家・デザイナー。2005年のマイアコレクションによりケタルのデザイン方針を大きく転換させた立役者。ヴィミニ、ロール、バンド、インスラなど、同ブランドとの協働作品は多岐にわたり、革新的な素材使いと遊び心あるフォルムでアウトドアファニチャーの表現領域を拡張し続けている。
Rodolfo Dordoni(ロドルフォ・ドルドーニ)
イタリアの建築家・デザイナー。ビッタ、ボーマ、モロなどのコレクションを手がけ、明快で力強いラインと高い快適性の両立により、ケタルのベストセラーを数多く生み出している。
Jasper Morrison(ジャスパー・モリソン)
イギリスを代表するプロダクトデザイナー。パークライフ、リヴァコレクションを通じて、ミニマルかつ普遍的なデザインの価値をケタルのアウトドアラインにもたらしている。
Ronan & Erwan Bouroullec(ロナン&エルワン・ブルレック)
フランスのデザインデュオ。スタンパチェアや2024年発表のパッサージュコレクションにおいて、室内と屋外の境界を流麗に溶解させるデザインを展開している。
Vincent Van Duysen(ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン)
ベルギーの建築家・デザイナー。ジロコレクションおよびランドスケープコレクションにおいて、ヴァナキュラーデザインの伝統を現代の素材技術で再解釈する手法を示している。
Naoto Fukasawa(深澤直人)
日本を代表するプロダクトデザイナー。2018年のハーフドームランプに始まり、トゥチェア、オフィス向けAコレクションなど、簡素にして深遠な美意識をケタルの製品群に注入している。
Doshi Levien(ドシ・レヴィエン)
ニパ・ドシとジョナサン・レヴィエンによるロンドン拠点のデザインスタジオ。カラコレクションにおいて、インドとヨーロッパの文化的交差を彫刻的なフォルムに昇華させた。
Antonio Citterio(アントニオ・チッテリオ)
イタリアの建築家・デザイナー。エオリアスコレクションではシチリア島の風景を、ティロスコレクションでは1950〜60年代のラタン家具を、それぞれ現代的な生産技術で再解釈している。
Konstantin Grcic(コンスタンティン・グルチッチ)
ドイツの工業デザイナー。ネット、メッシュコレクションやパラディンパラソルなどにおいて、構造的明快さと工業的美学を屋外空間に持ち込んでいる。
Michael Anastassiades(マイケル・アナスタシアデス)
キプロス生まれ、ロンドン拠点のデザイナー。スーパーファンなどのプロダクトで、詩的なミニマリズムをケタルの世界に添えている。
Kettal Studio(ケタルスタジオ)
社内デザインチーム。オブジェクトシリーズをはじめとするオリジナルコレクションの開発に加え、キッチンやアクセサリーなどのカテゴリー拡張を牽引している。

アロルダ・デルクセン財団 ― 芸術への情熱

ケタルの創業家であるアロルダ・デルクセン家は、1966年の創業と時を同じくして美術品の収集を開始した。家長マヌエル・アロルダとハネケ・デルクセン、そして四人の子どもたちに受け継がれる現代美術への深い情熱は、やがてバルセロナにアロルダ・デルクセン財団として結実する。同財団は、国際的な現代美術への関心と理解を促進することを目的に設立され、ケタルの支援のもと、バルセロナの中心部において国際的な現代美術を紹介する拠点として機能している。デザインと芸術が不可分であるというケタルの信条を象徴する存在といえる。

基本情報

ブランド名 Kettal(ケタル)
創業年 1966年
創業者 マヌエル・アロルダ(Manuel Alorda)
本社所在地 スペイン・バルセロナ(Aragó, 316, Barcelona)
製造拠点 スペイン・タラゴナ県ベルベイ(バルセロナから約45km)
現経営者 アレクサンダー・アロルダ(Alexander Alorda / 第二世代)
事業領域 アウトドアファニチャー、インドアファニチャー、オフィスファニチャー、パビリオン、アクセサリー
展開国数 80カ国以上
フラッグシップストア バルセロナ、タラゴナ、マルベーリャ、パリ、カンヌ、ロンドン、ニューヨーク、マイアミ
主要受賞歴 プレミオ・ナシオナル・デ・ディセニョ(スペイン国家デザイン賞、2010年)、Wallpaper* Design Award(2011年)
公式サイト https://www.kettal.com/