DLM(Don't Leave Me)サイドテーブルは、デンマークの新進気鋭デザイナー、トーマス・ベントゼンが2007年にHAYのために創作した、現代スカンジナビアデザインを象徴する傑作である。「Don't Leave Me(私を置いていかないで)」という詩的な名称は、この製品の本質を端的に表現している。天板に一体化されたハンドルにより、使用者は飲み物やスナック、書籍などと共にテーブルを自在に持ち運ぶことができる。従来のコーヒーテーブルが持つ「重厚で不動」という概念を覆し、軽やかでありながら安定した新しい家具のあり方を提示した革新的なプロダクトである。
特徴・コンセプト
DLMサイドテーブルの設計思想は、「モビリティ(可動性)」と「ミニマリズム」の融合にある。粉体塗装を施したスチール製の本体は、軽量でありながら堅牢な構造を実現している。三本の傾斜した脚部は、見た目の軽やかさと優れた安定性を両立させており、日常使用における実用性を確保している。
デザインの独自性
最大の特徴は、フレームの一部として構成されたハンドルである。このハンドルは単なる付加機能ではなく、製品のアイデンティティそのものを形成している。トレイのような天板、脚部、そしてハンドルという最小限の構成要素によって、機能美を追求したデザインが完成している。この「引き算の美学」は、デンマークデザインの伝統を現代に継承するものであり、1950年代から60年代の黄金期を彷彿とさせる普遍的な造形美を持つ。
カラーバリエーション
DLMサイドテーブルは、サテン仕上げからハイグロス仕上げまで、多彩なカラーバリエーションを展開している。ブラック、ホワイト、グレー、トフィー、サンイエロー、チェリーレッド、ディープブルー、ミント、パウダー、レーシンググリーンなど、住空間のあらゆるスタイルに対応できる色彩を揃えている。特にチェリーレッドとディープブルーはハイグロス仕上げとなっており、空間に華やかなアクセントを加えることができる。
サイズ展開
製品は二つのサイズで展開されている。スタンダードサイズのDLMは直径38cm、高さ44cm(ハンドル含め58cm)であり、ソファサイドやベッドサイドでの使用に適している。2009年に追加されたDLM XLは直径48cm、高さ49.5cm(ハンドル含め65cm)と、より広い天板面積を持ち、コーヒーテーブルの代替としても機能する。両サイズを組み合わせてネスティングテーブルとして使用することも、現代的なインテリアスタイリングとして推奨されている。
エピソード
トーマス・ベントゼンがDLMを発表した2007年は、彼がまだルイーズ・キャンベル・スタジオのシニアデザイナーとして活動していた時期にあたる。当時、彼は独立への準備を進めながら、自身のデザイン哲学を確立しつつあった。「使用時に人間のニーズを満たし、使用していないときに喜びを生み出すオブジェクトを創りたい」という彼の言葉は、DLMの設計コンセプトにそのまま反映されている。
製品名「Don't Leave Me」は、ユーザーとテーブルの間に生まれる親密な関係性を表現したものである。従来の家具が「据え置き」を前提としていたのに対し、このテーブルは使用者と共に空間を移動することを想定している。リビングルームからテラスへ、書斎からベッドサイドへ——生活のあらゆる場面でユーザーに寄り添う存在として設計されたのである。
評価
DLMサイドテーブルは発表以来、世界中のインテリア愛好家から高い評価を受け続けている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインストアで取り扱われていることは、その芸術的価値とデザインの質の高さを証明するものである。Design Within Reach、Skandium、Architonicをはじめとする世界的な高級インテリアショップでも定番アイテムとして位置づけられている。
本製品の成功は、HAYというブランドの成長にも大きく貢献した。2002年に創業したHAYは、DLMをはじめとする革新的なプロダクトラインによって、2018年には米国の家具大手ハーマンミラー(現ミラーノール)からの出資を受けるまでに成長を遂げた。DLMはHAYの代表作の一つとして、ブランドのアイデンティティを形成する重要な製品となっている。
実用性においても、粉体塗装スチールの堅牢な構造は長期使用に耐え、固く絞った布で拭くだけという簡便なメンテナンス性も高く評価されている。住宅のみならず、オフィス、ホテル、公共空間など、あらゆる環境での使用に適していることから、コントラクト市場においても広く採用されている。
デザイナー紹介
トーマス・ベントゼンは、コペンハーゲンを拠点とするデンマーク人プロダクトデザイナーである。1990年代初頭に家具職人としての訓練を受けた後、2003年にデンマーク王立芸術アカデミー・デザインスクールを卒業した。在学中に設立したデザインコレクティブ「REMOVE」での活動を経て、2005年から2010年までルイーズ・キャンベル・スタジオでシニアデザイナー、のちにパートナーとして活躍した。
2010年に自身のスタジオ「Thomas Bentzen Industrial Design」を設立。2011年から2013年まではMuutoのデザインマネージャー、2013年から2015年までは同社のヘッドオブデザインを務めた。現在はデンマーク家具職人秋季展(SE)の理事を務めるとともに、デンマーク王立芸術アカデミー・デザインスクールで教鞭をとることもある。
彼のデザインは「シンプルさ」「合理性」「機能性」を特徴とし、素材への深い理解、職人技、そして合理的な工業生産プロセスを重視するデンマークデザインの伝統に深く根ざしている。HAY以外にも、Muuto、Louis Poulsen、Royal Copenhagen、Menu、TAKTなど、北欧を代表するブランドとのコラボレーションを展開している。
ブランド紹介
HAY(ヘイ)は、2002年にロルフ・ヘイとメッテ・ヘイ夫妻によってコペンハーゲンで設立されたデンマークの家具ブランドである。「優れたデザインをすべての人に届ける」という理念のもと、1950年代から60年代のデンマークモダンの遺産を現代に蘇らせることを目指して創業された。
2003年にケルン国際家具見本市(imm Cologne)でデビューを果たし、同年コペンハーゲン中心部のピレストレーデに初の直営店をオープン。2007年には旗艦店「HAY House」をアマートーヴの歴史的建造物内に開設した。家具から照明、アクセサリーに至るまで幅広い製品ラインを展開し、ロナン&エルワン・ブルレック、ヒー・ウェリング、ドシ・レヴィエンなど、世界的なデザイナーとのコラボレーションで知られている。
2018年に米国の家具大手ハーマンミラー(現ミラーノール)が株式の過半数を取得し、北米市場への本格展開を開始。現在は50カ国以上で販売されており、コペンハーゲン、ロンドン、ニューヨークなどにショールームを構える世界的ブランドへと成長を遂げている。
基本情報
| 製品名 | DLM(Don't Leave Me)サイドテーブル |
|---|---|
| デザイナー | トーマス・ベントゼン(Thomas Bentzen) |
| ブランド | HAY(ヘイ) |
| 発表年 | 2007年(DLM XLは2009年追加) |
| 素材 | 粉体塗装スチール |
| サイズ(DLM) | 直径38cm × 高さ44cm(ハンドル含め58cm) |
| サイズ(DLM XL) | 直径48cm × 高さ49.5cm(ハンドル含め65cm) |
| カラー | ブラック、ホワイト、グレー、トフィー、サンイエロー、チェリーレッド(ハイグロス)、ディープブルー(ハイグロス)、ミント、パウダー、レーシンググリーン など |
| 生産国 | 中国 |
| お手入れ | 固く絞った布で拭き、乾いた布で水分を拭き取る |