ポーラーベアソファ(Ours Polaire)は、フランスを代表する装飾芸術家ジャン・ロワイエールが1940年代後半に生み出した、20世紀デザイン史における記念碑的作品である。1947年、母親のアパルトマンの改装を機に誕生したこのソファは、ホッキョクグマの柔らかな毛皮を想起させる有機的なフォルムと、包み込むような座り心地によって、瞬く間に時代を超越した名作としての地位を確立した。
1949年の「Art et Industrie」展における公開以降、ポーラーベアソファは1950年代から1960年代にかけてロワイエールの室内空間において象徴的な存在となり、現代においてもなお、世界中のコレクターや愛好家から熱烈な支持を受け続けている。その普遍的な魅力は、2016年にニューヨークのPhillipsオークションにて75万4千ドルで落札されたことからも明らかである。
デザインの特徴
有機的なフォルムと構造
ポーラーベアソファの最大の特徴は、バイオモルフィック(生物形態的)デザインの完璧な体現にある。優雅に湾曲した輪郭は、伝統的な木材曲げ技術によって成形されたブナ材のフレームから生まれている。ロワイエールの卓越した技術は、構造体を完全に隠蔽することで、まるで骨組みが存在しないかのような視覚的軽さを実現した点にある。
合成フォームの層を重ねることで創出された豊かなボリューム感は、座面と背もたれに至るまで一体化されており、見る者に柔らかな彫刻作品のような印象を与える。わずかに後退した5本の円筒形オーク材の脚部のみが視認できる構成は、ソファ全体を空中に浮かび上がらせるような軽やかさをもたらしている。
素材と仕上げ
オリジナル作品において、ソファは上質なウールベルベットまたはモヘアベルベットで張地されており、その柔らかな質感はぬいぐるみを思わせる触覚的な快楽を提供する。白色の張地が「ホッキョクグマ」という名称の由来となったが、実際の作品では赤、緑など多様な色彩で製作されており、それぞれの空間に独自の個性を付与している。
張地の選択は単なる装飾的要素ではなく、ロワイエールの「指先を刺激し、つま先を誘惑する表面で自らを包む」という哲学を具現化したものである。素材の豪華さと職人技の精緻さが融合することで、視覚と触覚の両面から使用者を魅了する家具が完成した。
デザインコンセプト
ポーラーベアソファは、ロワイエールのデザイン哲学を象徴する作品である。彼はバウハウスの厳格な機能主義を拒絶し、「機能的」「スタイル」「現代的」といった言葉を無意味だと断じた。その代わりに追求したのは、形態とボリュームの永続性、そして装飾のための装飾を排した本質的な美しさであった。
1963年のインタビューにおいて、ロワイエールは「装飾家として、私は装飾に反対する。なぜなら、厳密に装飾的なものこそが最も早く時代遅れになるからだ」と語っている。この信念は、ポーラーベアソファの簡潔ながらも豊かな造形に結実している。構造を完全に覆い隠すことで、純粋な形態の美しさと包容的な快適さを両立させたのである。
また、このソファには「巣」や「アルコーブ」としての役割が託されている。ミラノを拠点とするインテリアデュオ、Dimore Studioのエミリアーノ・サルチが述べたように、ポーラーベアソファは「視覚的な快適さすら空間に伝達する、時代を超越した」存在なのである。
制作の背景
1947年、ジャン・ロワイエールはパリのフォーブール・サントノレ通り234番地にある母親のアパルトマンを改装する際、自身の居室のためにこのソファを初めてデザインした。当初は私的な空間のための特注品であったが、その卓越した造形美は瞬く間に注目を集めることとなる。
1949年、パリで開催された「Art et Industrie」展の「La Résidence Française」部門において公式に披露されたポーラーベアソファは、当初は限定的な成功に留まった。しかし1950年代に入ると人気が急上昇し、ロワイエールの室内装飾プロジェクトにおいて不可欠な要素となっていった。
顧客は単体のソファ、2脚のアームチェア、あるいはソファと2脚のアームチェアのセットを特注することができた。それぞれの作品はロワイエールの厳格な監修の下で製作され、1947年から1967年まで限定的に生産された。公式なリエディションは一切許可されておらず、オリジナル作品のみが市場に流通している。
文化的影響と評価
ポーラーベアソファは、20世紀デザインの最も重要なアイコンの一つとして、現代に至るまで高い評価を受けている。パリのディーラー、パトリック・セガンはこの作品を「ロワイエールの完全に自由な創造性の精神を象徴し、いかなる誇示もない真の優雅さを反映している」と評している。
著名な所有者には、女優ジェニファー・アニストン、コメディアンのエレン・デジェネレス、アートディーラーのラリー・ガゴシアンなどが名を連ねる。音楽アーティストのカニエ・ウェストは、愛車のマイバッハを売却してこのソファを購入し、「私たちが所有する家具の中で最もお気に入りの作品」とツイートしたことでも知られている。
ソザビーズのヨーロッパデザイン部門責任者フローラン・ジャニアールは、ロワイエールの家具について「真剣さと喜びの組み合わせが、今日の美意識に訴える」と分析している。ポーラーベアソファは、この両極性を完璧に体現する作品として、時代を超えた普遍的魅力を放ち続けているのである。
市場価値
ポーラーベアソファの市場価値は、過去十年間で著しい上昇を見せている。2014年、Phillipsオークションにおいてソファと2脚のアームチェアのセットが84万2500ドルでジャン・ロワイエール作品の世界オークション記録を樹立した。この記録は2016年にニューヨークのPhillipsにて単体のソファが75万4000ドルで落札されたことで更新されている。
2017年には、パリのクリスティーズにおいてアームチェアのペアが99万5000ドルで落札された。パトリック・セガンは2010年代にソファと2脚のアームチェアのセットを100万ドルで販売しており、彼の推定によれば同様のセットは現在120万ドルの価値を持つという。
市場における希少性は年々高まっており、セガンは「オリジナルの所有者からセットを入手することは極めて困難になっており、すでに所有しているコレクターが売却することは稀である」と指摘している。アジア、米国、ヨーロッパからのグローバルな需要の高まりが、この傾向をさらに加速させている。
基本情報
| デザイナー | ジャン・ロワイエール(Jean Royère) |
|---|---|
| デザイン年 | 1947年 |
| 製造期間 | 1947年 - 1967年 |
| 素材 | ブナ材フレーム、合成フォーム、ウールベルベットまたはモヘアベルベット張地、オーク材脚部 |
| サイズ(おおよそ) | 高さ78cm × 幅230-240cm × 奥行130-138cm |
| 特記事項 | 公式リエディション不可、オリジナル作品のみ流通 |