ウルス・ポレール(Ours Polaire)アームチェアは、フランスの伝説的なデザイナー、ジャン・ロワイエールが1940年代後半に創造した、20世紀デザイン史における最も象徴的な家具のひとつである。「Ours Polaire」とはフランス語で「北極熊」を意味し、その名の通り、ふっくらとした丸みを帯びたフォルムと、北極熊の毛皮を思わせる柔らかな張地が特徴である。

1947年、ロワイエールは母親のパリのアパルトマンの改装を機に、まずソファを制作した。その成功を受けて、同じファミリーに属するアームチェアが誕生し、瞬く間にロワイエールの作品群を代表する名作となった。このアームチェアは、モダニズムの合理性に遊び心と官能性を融合させた、ロワイエールの美学を完璧に体現している。

特徴・コンセプト

彫刻的なフォルム

ウルス・ポレール アームチェアの最大の特徴は、その包み込むような丸みを帯びた造形にある。典型的な椅子の構造部品を排除し、ひとつの連続した曲線によって構成されることで、視覚的な軽やかさと同時に、確固たる存在感を実現している。このバイオモーフィック(生命体的)なシルエットは、1950年代に全盛を迎えた有機的デザインの潮流と見事に調和しながら、ロワイエール独自の遊び心に満ちた美学を表現している。

ふっくらとした張地が内部の構造を完全に覆い隠すことで、まるで構造が存在しないかのような錯覚を生み出す。この手法により、重厚な安定感と視覚的な浮遊感という相反する要素が共存し、彫刻作品としての存在感を獲得している。

卓越した職人技

ウルス・ポレール アームチェアの制作には、最高水準の職人技が要求される。フレームにはオーク材やウォールナット材などの高品質な木材が使用され、伝統的な木材曲げ技術によって優雅な曲線が形成される。その上に幾重にも重ねられたシンセティックフォームと、モヘアやウールベルベットといった最上級の張地が、雲のような柔らかさと深い座り心地を実現している。

張地の仕立てには、伝統的な室内装飾の技法が採用されており、複雑なフォルムを完璧に仕上げるためには、熟練した職人の技術が不可欠である。この妥協のない製作姿勢が、時を超えて愛され続ける理由のひとつとなっている。

デザイン哲学

ロワイエールは「優れた装飾の秘訣は、その不在、あるいは極度のシンプルさにある」と語った。ウルス・ポレール アームチェアは、この哲学を体現している。装飾的な要素を排除しながらも、柔らかさ、官能性、そして喜びを導入することで、単純さを非凡なものへと昇華させている。この作品は、くつろぎと洗練が両立する空間を創造するというロワイエールのビジョンを完璧に表現している。

エピソード

ウルス・ポレールシリーズの誕生は、極めて個人的な経緯から始まった。1947年、ロワイエールは母親のパリのフォーブール・サントノレ通り234番地のアパルトマンを改装する際、自身の居室のためにソファを制作した。この記念すべき最初のソファは、現在パリ装飾美術館の永久コレクションに収蔵されている。同年、雑誌『Art et Industrie』が主催する展覧会「La Résidence française」で発表されると、その独創的なデザインは大きな注目を集めた。

当初、このモデルは限られた顧客層にのみ支持されたが、1950年代に入ると自由な曲線美と柔らかな丸みが時代の美意識と共鳴し、ロワイエールのインテリアプロジェクトにおいて欠くことのできない存在となった。1947年から1967年までの20年間に、わずか150組のセット、150台のソファ、そして150組のアームチェアのみが製作された。この希少性が、現在のコレクター市場における高い評価につながっている。

発表後まもなく、イラン皇帝モハンマド・レザー・パフラヴィーが娘シャフナーズ王女のテヘランの邸宅のために数脚のチェアを購入し、フランス外務大臣がヘルシンキのオフィスのために2脚を発注するなど、国際的な名声を獲得した。現代においても、カニエ・ウェストが「私たちが所有する家具の中で最も気に入っている」と称し、マイバッハを売却してまでソファを購入したという逸話や、ジェニファー・アニストン、エレン・デジェネレス、美術商ラリー・ガゴシアンなど、世界的な著名人に愛用されている。

評価

ウルス・ポレール アームチェアは、20世紀デザインの正典において最も切望される作品のひとつとして高く評価されている。パリの美術商パトリック・セガンは、このシリーズを「ロワイエールの絶対的に自由な創造性の精神を象徴し、いかなる誇示もない真の優雅さを反映している」と評している。

批評家たちは、この作品が機能性と彫刻性、遊び心と洗練を見事に融合させた点を特に称賛している。Town and Country誌は「優雅に丸みを帯び、比類なく心地よい」と表現し、Mobilier et Décoration誌は「守護的なアルコーブ、巣」として、視覚的な安らぎをも空間に伝達すると評した。

オークション市場においても、その価値は揺るぎないものとなっている。2016年には、ニューヨークのPhillipsでソファが75万4000ドルという記録を樹立し、個々のソファは現在50万ドル以上で取引されている。セガンは2010年代にソファとアームチェア2脚のセットを100万ドルで販売したと報告されている。

ミラノを拠点とするインテリアデュオDimore Studioのエミリアーノ・サルチは「ウルス・ポレールの家具は時代を超越している。それらは視覚的な快適さをも空間に伝達する」と語り、現代のデザイン界においてもその影響力は衰えていないことを示している。

受賞歴

ウルス・ポレール アームチェアそのものに対する個別の受賞記録は確認されていないが、このシリーズは1947年の「La Résidence française」展での発表以降、装飾芸術界において即座に高い評価を受けた。ロワイエール自身は、キャリアを通じてサロン・デ・アルティスト・デコラトゥールをはじめとする重要な展覧会に定期的に出品し、フランス装飾芸術界の第一人者としての地位を確立した。

パリ装飾美術館が最初期のソファを永久コレクションに加えたことは、この作品が単なる商業製品ではなく、美術史的に重要な文化遺産として認められた証左といえる。公式な再版が一度も許可されていないという事実も、その芸術的価値と独自性への敬意を示している。

基本情報

デザイナー ジャン・ロワイエール(Jean Royère)
デザイン年 1947年頃
製造期間 1947年-1967年
分類 ラウンジチェア / アームチェア
素材 フレーム:オーク材またはウォールナット材 / 張地:モヘア、ウールベルベット / 充填材:シンセティックフォーム
寸法 高さ:約74cm / 幅:約104cm / 奥行:約100cm
製造数 アームチェアのペア150組(合計300脚)、セット150組
所蔵 パリ装飾美術館(ソファ)、各国の著名コレクション
製造国 フランス