CH163は、デンマークの巨匠ハンス・J・ウェグナーが1965年にデザインした3人掛けソファである。カール・ハンセン&サンが製造を手がけるこの作品は、ウェグナーが追求した有機的なフォルムと卓越した木工技術の結晶として、北欧モダンデザインの正統な系譜を今日に伝えている。無垢材のフレームが描く優美な曲線と、人体工学に基づいた座り心地は、半世紀以上の時を経てなお色褪せることのない普遍的な魅力を湛えている。

特徴・デザインコンセプト

CH163の設計思想の根幹には、ウェグナーが生涯を通じて追求した「美しい構造」という理念がある。ソファのフレームには厳選されたオーク材またはウォールナット材が用いられ、熟練した職人の手によって一つひとつ丁寧に仕上げられる。背もたれから肘掛けへと連続する流麗な曲線は、木材を曲げる伝統的なデンマークの技法を駆使して実現されたものであり、構造的な強度と視覚的な軽やかさを両立させている。

有機的フォルム

CH163の最も顕著な特徴は、自然界の造形を想起させる有機的な曲線美である。背もたれの優雅なカーブは人体の形状に沿うように設計されており、長時間の着座においても快適な姿勢を保つことを可能にしている。肘掛けの先端に向かって細くなるテーパー形状は、視覚的な軽快さを演出するとともに、立ち上がりの際の自然な手の動きを妨げない機能的な配慮でもある。

素材と仕上げ

フレームに使用される木材は、デンマーク家具の伝統に則りオーク材を標準とするが、より深い色調を求める場合にはウォールナット材も選択可能である。木部の仕上げには、木目の美しさを最大限に引き出すオイル仕上げ、あるいはより保護性の高いラッカー仕上げが用意されている。座面と背もたれのクッションは、高密度のフォームにより快適な座り心地を実現し、外張りには上質なファブリックまたはレザーが選択できる。

エピソード

CH163は、ウェグナーとカール・ハンセン&サンの長きにわたる協働の中で生み出された作品である。1949年に始まった両者の関係は、Yチェア(CH24)の大成功を経て、より大型の家具へと展開していった。1960年代に入り、ウェグナーは椅子で培った木工技術と人間工学の知見をソファのデザインに応用し、CH162(2人掛け)およびCH163(3人掛け)を発表した。

ウェグナーは「椅子は休息のための道具であると同時に、空間を構成する彫刻でもある」という信念を持っていた。CH163においても、この思想は明確に体現されている。ソファでありながら視覚的な重さを感じさせない軽快なプロポーションは、北欧の住空間に調和するよう細心の注意を払って設計されたものである。

評価と意義

CH163は、20世紀デンマークデザインの黄金期を代表するソファとして、デザイン史において重要な位置を占めている。ウェグナーの家具デザインにおける功績は、椅子のデザインに集中的に論じられることが多いが、CH163をはじめとするソファシリーズは、彼の設計思想がより大きなスケールの家具においても一貫して適用可能であることを示す重要な証左である。

現代においてもCH163は、時代を超越したデザインの好例として、世界中のインテリアデザイナーや建築家から高い評価を受けている。ミニマリズムと機能主義を基調としながらも、冷たさを感じさせない温かみのある造形は、現代の住空間やオフィス空間に自然に溶け込む普遍性を備えている。

基本情報

デザイナー ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)
デザイン年 1965年
メーカー カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Søn)
製造国 デンマーク
タイプ 3人掛けソファ
素材 フレーム:オーク材またはウォールナット材、クッション:高密度フォーム、張地:ファブリックまたはレザー
関連モデル CH162(2人掛けソファ)