ステアリングホイール クロックは、ジョージ・ネルソン・アソシエイツが手がけた壁掛け時計である。ハワード・ミラー・クロック・カンパニーがモデル番号4756として製造し、自動車のステアリングホイールを想起させる輪とスポークの造形で知られる。
数字を持たず、放射状に伸びるスポークそのものが時刻の手がかりとなる。ネルソンのオフィスが1947年以降ハワード・ミラーのために設計した一連のクロックのなかでも、金属の質感を前面に出した工業的な一作として位置づけられている。
特徴・コンセプト
文字盤を囲む外輪から中心のムーブメントハウジングへ、12本のスポークが放射状に集まる。数字も目盛りもなく、スポークの位置と外輪上の小さな指標だけで時刻を読ませる構成である。
数字を持たない時計
ネルソンのオフィスは、人は時刻を読むとき針の角度を見ているのであって数字を読んでいるわけではない、と考えた。腕時計が普及した当時、壁の時計はむしろ室内を飾る要素になりつつあるとも見ていた。ステアリングホイール クロックの造形は、この前提から導かれている。
素材と構造
真鍮、エナメル塗装のスチールおよびアルミニウムで構成される。スポークと外輪の金属光沢が主役であり、時刻の指標には黒や白のエナメル、あるいはビニールが用いられた。直径は約305mm(12インチ)、奥行は約70〜90mmで、ネルソン クロックのなかでは小型の部類に入る。
自動車文化との距離
1950年代のアメリカでは自動車が生活と消費の中心にあった。ハンドルの輪郭をそのまま壁に掛けるという発想は、その空気を室内へ持ち込むものだった。装飾を加えるのではなく、既存の工業製品の形を引用して時計に置き換えている。
誕生の背景
ハワード・ミラー・クロック・カンパニーは、ハーマン・ミラー社から分かれて設立された時計メーカーである。創業者のハワード・ミラーは、ハーマン・ミラー社を率いたD.J.デ・プリーの義兄弟にあたる。ネルソンのオフィスは1947年に同社からクロックの依頼を受け、1949年に最初の14点が発表された。以後およそ35年にわたり、100点を超えるモデルが生み出されている。
ステアリングホイール クロックのデザインは、ネルソン・アソシエイツに在籍したアーヴィング・ハーパーによるものとされる。ネルソンのオフィスでは個々のデザイナーが表に出ることは少なく、作品はチームの成果として発表された。
ネルソンの遺した資料は1986年以降ヴィトラ・デザイン・ミュージアムに収蔵され、ヴィトラは1999年からネルソン クロックの復刻を開始した。ただしステアリングホイール クロックは、ヴィトラの現行カタログには掲載されていない。
現在の評価と流通
ハワード・ミラー社製のオリジナルは、背面に同社のデカールやモデル番号が残る個体が確認できる。海外のデザインオークションでは定期的に出品され、状態の良いもので数百ドル台後半から千ドル近い落札例がある。
ヴィトラによる復刻が現行では行われていないため、市場に流通するのはヴィンテージ品と、正規のライセンスを持たないリプロダクト品に大別される。前者は真鍮とエナメルの質感、後者は入手しやすさとクォーツムーブメントの実用性という、それぞれ異なる性格を持つ。
基本情報
| 作品名 | ステアリングホイール クロック / Steering Wheel Clock |
|---|---|
| モデル番号 | 4756 |
| デザイナー | ジョージ・ネルソン / George Nelson(ジョージ・ネルソン・アソシエイツ) |
| デザイン年 | 1949年 |
| オリジナルメーカー | ハワード・ミラー・クロック・カンパニー / Howard Miller Clock Company |
| 現行生産 | なし(ヴィトラの現行カタログには未掲載) |
| カテゴリー | 壁掛け時計 / ウォールクロック |
| 様式 | ミッドセンチュリーモダン |
| 主要素材 | 真鍮、エナメル塗装スチール、エナメル塗装アルミニウム |
| サイズ | 直径 約305mm × 奥行 約70〜90mm |
| 原産国 | アメリカ合衆国 |