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トムバックチェアは、ロン・アラッドが設計しヴィトラが1999年から製造した椅子である。波状のリブを持つポリプロピレンシェルを、スチールパイプの脚が支える。背面に開口があり、5脚まで重ねられる。現在は生産を終了している。

このページでは、仕様と選べるバリエーション、同時期の樹脂製の椅子との比較、座り方と設置の条件、経年変化と手入れ、中古で入手する際の確認箇所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

トムバックチェアの起源は、1997年のミラノ・サローネ・デル・モービレにおいて、イタリアのデザイン誌『Domus』の依頼で制作された「Totem」と名付けられたアートインスタレーションに遡る。約70〜100脚とされるチェアを垂直に積み上げた彫刻作品のために、アラッドは真空成形アルミニウムの技術を探求し、わずか4ヶ月でプロトタイプを完成させた。デザインの原型はテルアビブの住宅ダイニングルームのためにスケッチされた初期アイデアに基づいている。その後、ヴィトラとの協働により素材が真空成形アルミニウムから射出成形ポリプロピレンへと変更され、1999年に量産化が実現した。アラッドの作品の大半が一点物のアートピースである中で、トムバックチェアは工業製品化の成功という異例の位置づけを持つ。「Tom Vac」の名称は「Vacuum Forming(真空成形)」に由来する。

正式名称 Tom Vac Chair(トムバックチェア)
製造ブランド ヴィトラ(Vitra)/ スイス
シェル ポリプロピレン。波状のリブを持ち、樹脂に紫外線対策の添加剤を加えて退色を抑える
脚部 スチールチューブ(クロムメッキ仕上げまたはパウダーコート仕上げ)
サイズ 幅648mm × 奥行648mm × 高さ750mm / 座面高440mm
カラー展開 ブラック、ホワイト、オレンジ、ブルー等(生産時期により変動)
スタッキング 最大5脚。シェル背面の開口に、上に重ねる椅子の脚が通る
屋外使用 可(UV耐性ポリプロピレン、耐候性あり)
バリエーション 標準4脚スタッキングチェア、ロッキングチェア版(木製ロッカー脚、クロムロッドサポート)、スウィベル版(回転脚+キャスター、極めて希少)
刻印 座面裏に「Tom Vac, Design Ron Arad, Vitra」のエンボス刻印
美術館収蔵 AIC トムバックチェア(1997年) 収蔵番号 2009.61
生産状況 生産終了。現在は中古・ヴィンテージ市場でのみ入手可能
参考価格帯 生産を終了しているため、メーカーの公表価格はない。中古の相場は状態と色、出品の数で幅があり、一定していない

波状リブの構造的意味

トムバックチェアの座面・背もたれ全体に施された波状のリブは、デザインの核心を成す要素である。この凹凸は、薄いポリプロピレンのシェルの断面を実質的に厚くする。平らな板は面に垂直な力で撓むが、波形にすれば山と谷の高低差がそのまま断面の高さになり、同じ厚みの材でも撓みにくくなる。軽量でありながら身体を確実に支える耐荷重性が確保されている。同時に、光と影の豊かな表現を生み出す視覚的効果も計算されており、見る角度や照明条件によって異なる表情を見せる。アラッドはこの波形を、形態と機能、美と工学を結びつける要素として設計した。

生産終了の経緯と現在の入手状況

トムバックチェアは1999年の量産開始から約20年にわたりヴィトラのカタログに収録されたロングセラーだったが、その後、生産終了となった。ヴィトラ・デザイン・ミュージアムではミニチュアコレクション(1:6スケール)が引き続き販売されている。現在、実物のトムバックチェアは中古・ヴィンテージ市場でのみ入手可能であり、1stDibs、Pamono、eBay、Etsy、Bonhams等のオークションハウス、日本国内ではヤフオク・メルカリ等で出品されることがある。生産時期やカラー、状態により価格は大きく変動するが、ヴィトラ正規品であることは座面裏のエンボス刻印で確認できる。

類似商品・競合との比較

樹脂のシェルと金属の脚で構成する椅子は複数ある。重ねられるかどうかと、屋外で使えるかが分かれ目になる。

比較項目 トムバック パントンチェア ルイゴースト
構成 樹脂のシェル+金属の脚 樹脂の一体成形(脚もシェルの一部) 樹脂の一体成形(脚もシェルの一部)
重ねられるか 5脚まで。背面の開口に上の椅子の脚が通る 重ねられる 重ねられる
屋外での使用 可(樹脂に紫外線対策の添加剤) 型番による 想定されていない
シェルの形状 波状のリブが表面に現れる 平滑な曲面 平滑な面(透明)
生産状況 終了 現行 現行

選び分けの目安

使わないときに片付ける場合
トムバックは5脚まで重ねられる。背面の開口に上の椅子の脚が通るため、同一寸法のまま高さが増えにくい。
屋外に置く場合
トムバックは樹脂に紫外線対策の添加剤を含み、屋外での使用が想定されている。パントンチェアは型番によって条件が異なり、ルイゴーストは屋外での使用が想定されていない。屋外向けではリ・トゥルーヴェのように水が抜ける構造の製品もある。
新品で購入したい場合
トムバックは生産を終了しており、中古での入手になる。現行品を求める場合は他の二者が該当する。重ねられる椅子ではスタッキングチェア 40/4ヒー・チェアも選択肢になる。

使用感と設置条件

座り方

座面高440mm。シェルは詰め物を持たないが、ポリプロピレンが荷重で撓むため、硬い板の上に座る感触にはならない。波状のリブは表面の凹凸として現れ、身体が接する面に線が並ぶ。

肘掛けはシェルの縁が兼ねる。独立した部材として立ち上がっていないため、腕を置く位置が一点に定まらない。

重ねて片付ける

シェルの背面に開口があり、上に重ねる椅子の脚がここを通る。脚が開口を貫くため、重ねたときに嵩が増えにくい。5脚までを想定する。

重ねる際にシェル同士が擦れる。中古の個体では、この擦れによる細かい傷が背面に残っていることが多い。

設置に要する寸法

幅648×奥行648×高さ750mm。幅と奥行が等しく、上から見るとほぼ正方形の範囲を占める。テーブルに寄せる場合、天板の下端に肘掛けが当たらないかを確認する。

屋外で使う場合、樹脂は退色が抑えられているが、脚のめっきは環境によって錆びる。粉体塗装の仕様のほうが屋外には向く。

経年変化とメンテナンス

素材ごとに起きること

ポリプロピレンには紫外線対策の添加剤が加えられており、屋外でも退色が進みにくい。ただし添加剤の効果は永続しないため、長年の屋外使用では色が変わる。

脚のクロームめっきは、湿気の多い環境で点錆が出る。粉体塗装の仕様は擦れると下地が出る。

シェルと脚の接合部には荷重が集中する。緩みが出た場合、締め直しで対応する。

日常の手入れ

シェル
水拭きできる。リブの谷に汚れが溜まるため、布を押し当てて拭き取る。研磨剤入りのものは表面を曇らせるため用いない。
めっき面は水気を残さないよう乾いた布で拭く。屋外で使ったあとは特に留意する。
重ねる前
砂や埃が付いたまま重ねると、シェル同士が擦れて傷が付く。拭いてから重ねる。

どこで買うか

生産終了について

ヴィトラは現在この製品を扱っていない。同社が販売しているのは1/6スケールのミニチュアのみである。実物の入手は中古市場に限られる。

相場は状態、色、出品の数によって幅があり、一定していない。複数脚をまとめた出品と1脚単位の出品では、条件が異なる。

個体の識別

シェルの裏面に「Tom Vac, Design Ron Arad, Vitra」のエンボス刻印がある。中古で選ぶ場合、この刻印の有無で判別できる。

状態の確認

確認箇所は、シェルの割れとひび(とくにリブの谷と脚の取り付け部)、重ねた際の擦り傷、退色の程度、脚のめっきの点錆、シェルと脚の接合部の緩みである。

複数脚を揃える場合、生産時期によって色味が異なることがある。同じ出品からまとめて入手するほうが揃いやすい。

購入前チェックリスト

  • シェル裏面のエンボス刻印の有無
  • シェルの割れとひび(リブの谷、脚の取り付け部)
  • 退色の程度(屋外で使われた個体では進んでいる)
  • 脚の仕上げ(クロームめっき/粉体塗装。屋外なら後者)
  • 脚のめっきの点錆
  • シェルと脚の接合部の緩み
  • 複数脚を揃える場合、生産時期による色味の差
  • 設置場所の寸法(幅648×奥行648mm。テーブルの天板下端と肘掛けの干渉)

よくある質問

現在も購入できますか?
ヴィトラは生産を終了しており、同社が販売しているのは1/6スケールのミニチュアのみです。実物の入手は中古市場に限られます。
中古の相場はどのくらいですか?
生産を終了しているためメーカーの公表価格はありません。相場は状態、色、出品の数によって幅があり、一定していません。複数脚をまとめた出品と1脚単位の出品では条件が異なります。
本物かどうかはどう見分けますか?
シェルの裏面に「Tom Vac, Design Ron Arad, Vitra」のエンボス刻印があります。中古で選ぶ場合はこの刻印の有無で判別できます。
何脚まで重ねられますか?
5脚までを想定しています。シェルの背面に開口があり、上に重ねる椅子の脚がここを通るため、重ねたときに嵩が増えにくくなっています。
屋外で使えますか?
使えます。ポリプロピレンに紫外線対策の添加剤が加えられており、退色が進みにくくなっています。ただし脚のクロームめっきは湿気の多い環境で点錆が出るため、屋外では粉体塗装の仕様のほうが向きます。
座り心地はどうですか?
座面高440mmで、詰め物は持ちません。ポリプロピレンが荷重で撓むため、硬い板の上に座る感触にはなりません。波状のリブが表面の凹凸として現れ、身体が接する面に線が並びます。肘掛けはシェルの縁が兼ねます。
手入れはどうすればよいですか?
シェルは水拭きできます。リブの谷に汚れが溜まるため、布を押し当てて拭き取ってください。研磨剤入りのものは表面を曇らせるため使えません。脚のめっき面は水気を残さないよう乾いた布で拭きます。重ねる前に砂や埃を拭き取ると、シェル同士の擦り傷を防げます。
複数脚を揃えるときの注意点はありますか?
生産時期によって色味が異なることがあります。同じ出品からまとめて入手するほうが揃いやすくなります。