概要
タピオ・ヴィルッカラ(1915-1985)は、フィンランドのデザイナーである。ガラス、木、金属、陶器と扱う材料が広く、イッタラでのガラス器のほか、紙幣、切手、展示の設計も手がけた。型そのものに痕跡を残す方法をとり、1968年のウルティマ・トゥーレは氷の融けた面を型で写した系列にあたる。
バイオグラフィー
1915年6月2日、フィンランドのハンコに生まれた。ヘルシンキの中央工芸学校で彫刻を学び、1936年に修了している。
1946年、イッタラのガラス器の競技設計で一等を得た。以後、同社との関係が生涯続いている。
1951年と1954年のミラノ・トリエンナーレで複数の賞を受け、国外で知られるようになった。1955年から1956年にかけてはニューヨークでレーモンド・ローウィの事務所に在籍している。
1956年にヘルシンキで自身の事務所を開いた。ガラス器のほか、紙幣、切手、展示、食器、照明を手がけている。1985年5月19日に没した。
デザインの思想と方法
ヴィルッカラの仕事は、型をどう作るかという問題に集中する。ガラスも積層合板も、型または刃物の形が製品の形を決める。彼は型の側に痕跡を残すことで、成形された物にその跡が現れるようにした。
型に痕跡を残す
ウルティマ・トゥーレは、木の型を焼き焦がしてから溶けたガラスを吹き込む。木が炭化した凹凸がガラスの表面に写り、氷が融けかけたような面になる。装飾を後から加えるのではなく、成形の工程そのものが表面をつくる。
積層合板を削り出す
異なる向きに積層した合板を彫刻的に削ると、断面に縞模様が現れる。削る深さと角度で模様が変わるため、形と模様が同時に決まる。彫刻を学んだ経緯が、この方法の前提にある。
自然物の形を型で写す
カンタレッリは、きのこの襞の形をガラスの器に移したものである。自然物の形をそのまま模すのではなく、型と吹きの工程で成立する範囲に収めている。
分野を限定しない
ガラス、木、金属、陶器のほか、紙幣、切手、展示の設計も手がけた。いずれも型か版が形を決めるという点で共通し、扱う材料が変わるだけになる。
イッタラの歴史や他の製品について詳しくはイッタラ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
カンタレッリ(1946年、イッタラ)
きのこの襞の形をガラスの器に移した花器である。1946年の競技設計に応募したもので、ヴィルッカラの名を知らせた最初の製品にあたる。1951年のミラノ・トリエンナーレで賞を受けた。メトロポリタン美術館が収蔵している(収蔵番号56.31.1)。→カンタレッリ花瓶
積層合板による器物(1950年代)
異なる向きに積層した合板を削り出し、断面の縞模様を表面とした一連の器物である。削る深さと角度で模様が変わるため、形と模様が同時に決まる。1951年のミラノ・トリエンナーレで賞を受けた。
プーッコ ナイフ(1961年)
フィンランドの伝統的な小刀の形式による製品である。柄と鞘を含めて設計されている。ニューヨーク近代美術館とV&Aが収蔵している。
ウルティマ・トゥーレ(1968年、イッタラ)
木の型を焼き焦がしてから溶けたガラスを吹き込む器の系列である。木が炭化した凹凸がガラスの表面に写り、氷が融けかけたような面になる。装飾を後から加えるのではなく、成形の工程が表面をつくる。V&Aが収蔵している。→ウルティマツーレ
紙幣・切手の設計
フィンランドの紙幣と切手の図案を手がけた。版が形を決めるという点で、型を用いる仕事と共通する。
評価と影響
ヴィルッカラは一般に、20世紀フィンランドのデザインを代表する制作者の一人と評価されている。型の側に痕跡を残すことで表面をつくるという方法が、特に言及される。
イッタラとの関係は1946年から没するまで続いた。カンタレッリとウルティマ・トゥーレはいずれも現在まで生産が続いている。
ガラス、木、金属、陶器、紙幣、切手と扱う対象が広い。いずれも型か版が形を決めるという点で共通しており、材料が変わるだけという構成をとる。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、計115件が確認できた。以下は主要なものの抜粋である。
- Met カンタレッリ 花器(モデル3280、1947年設計) 収蔵番号 56.31.1
- MoMA イェカラ 花器(1950年) 収蔵番号 131.1957
- MoMA プラター(1951年) 収蔵番号 241.1953、242.1953
- MoMA ボウル(1951年) 収蔵番号 466.1956
- MoMA 花器(モデル3580、1955年) 収蔵番号 339.1960
- MoMA ボウル(1957年) 収蔵番号 243.1958、244.1958、1431.2001
- MoMA オヴァリス 花器(1958年) 収蔵番号 539.1977
- MoMA 白熱電球(モデル85、1959年) 収蔵番号 257.1962
- MoMA プーッコ ナイフと鞘(1961年) 収蔵番号 345.1966.a-b
- MoMA コンポジション カトラリー(1963年) 収蔵番号 1341.2001.1-12
- V&A パーデルの氷(1960年) 収蔵番号 CIRC.262-1963
- V&A ティー・フォー・トゥー(1963年) 収蔵番号 CIRC.393&A-1973
- V&A プーッコ(1965年) 収蔵番号 CIRC.7-1968
- V&A ウルティマ・トゥーレ(1968-70年) 収蔵番号 C.205-1987、C.205A-1987
- V&A フィンランディア(1969-70年) 収蔵番号 C.114&A-1988
- Met ディッシュ(1951年) 収蔵番号 1980.236
- Met デキャンタ(1955年頃) 収蔵番号 1988.31.14
- AIC テーブルランプ TW001(2011年) 収蔵番号 2011.720.1、2011.720.2
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1946年 | ガラス器 | カンタレッリ花瓶 | Iittala |
| 1950年代 | 器物 | 積層合板による器物 | — |
| 1958年 | ガラス器 | オヴァリス | Iittala |
| 1959年 | 照明 | 白熱電球 | Airam |
| 1961年 | 刃物 | プーッコ ナイフ | Hackman |
| 1963年 | カトラリー | コンポジション | Hackman |
| 1968年 | ガラス器 | ウルティマツーレ | Iittala |
| 1969-70年 | ガラス器 | フィンランディア | Iittala |
| 1978年 | ガラス器 | エステート、プリマヴェーラ | Venini ほか |
| 1950-80年代 | グラフィック | 紙幣・切手の図案 | フィンランド |
| 1950-80年代 | 展示 | 万博等の展示設計 | 各地 |
プロフィール
| 生没年 | 1915年6月2日〜1985年5月19日 |
|---|---|
| 出身地 | フィンランド・ハンコ |
| 国籍 | フィンランド |
| 活動拠点 | ヘルシンキ |
| 分野 | ガラス、木工、金属、陶器、グラフィック、展示 |
| 主な協働ブランド | Iittala、Artek、Hackman、Rosenthal、Venini |
Reference
- Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation
- https://www.twrb.fi/en/
- Tapio Wirkkala | Iittala
- https://www.iittala.com/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection