バイオグラフィー

1927年、フランス・パリ生まれ。幼少期より手仕事と造形に強い関心を抱き、建築と木工の道へと進む。パリの国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)で建築を学んだ後、建築の実務に携わりながら家具デザインへの情熱を深めていった。1940年代後半から1950年代にかけて、南米やスカンジナビア諸国を広く旅し、各地の伝統的な木工技術と現代建築の融合を探求。この経験が後の作品に大きな影響を与えることとなる。

1958年、パリに自身のショールームを開設し、本格的に家具制作を開始。1967年には南フランス・プロヴァンス地方のゴルド村に工房を構え、以後この地で創作活動を続けた。職人たちとともに、伝統的な木工技術を継承しながらも現代の生活様式に適応した家具を生み出し続けた。1987年、60歳で逝去。その遺志は現在もシャポー家によって継承され、オリジナルの製法に忠実な家具制作が続けられている。

デザイン哲学

シャポーの設計思想の根幹には、「素材への誠実さ」という揺るぎない信念がある。彼は工業的な大量生産を拒み、一本一本の木が持つ固有の性質——木目の流れ、色調の変化、経年による深まり——を最大限に活かすことを追求した。「木は生きている」という彼の言葉は、素材を単なる原材料としてではなく、対話すべきパートナーとして捉える姿勢を端的に示している。

また、シャポーは日本の木工技術、とりわけ伝統的な組木技法に深い敬意を払っていた。釘や金属部品に頼らず、木と木の精緻な接合によって構造的強度と美しさを同時に実現する手法は、彼の作品の際立った特徴となっている。機能性と詩情の融合、すなわち日常の道具でありながら芸術作品としての存在感を放つ家具の創造——これがシャポーが生涯を通じて追い求めた理想であった。

作品の特徴

シャポーの家具における最も顕著な特徴は、その彫刻的な造形美にある。直線と曲線が織りなす有機的なフォルムは、ブルータリズム建築の力強さと北欧デザインの温かみを独自の感性で融合させたものといえる。特に、厚みのある無垢材を大胆に用いた構成は、見る者に素材の存在感を強く印象づける。

素材選びにおいては、フランス産のニレ(エルム)材を好んで使用した。ニレ材特有の複雑な木目と、使い込むほどに深まる飴色の艶は、シャポー作品を象徴する視覚的特徴となっている。また、構造面では伝統的な組木技法を応用した独自のジョイントシステムを開発し、部材同士が美しく噛み合う様子がそのまま装飾的要素として機能するよう設計されている。

さらに、多くの作品において「モジュラー」という概念が重視されている。ベンチ、テーブル、シェルフなどが同一の設計言語で展開され、組み合わせることで空間に統一感をもたらすよう意図されている。これは、個々の家具を超えて「住まい全体」を視野に入れた建築家ならではの発想であった。

主な代表作

S11 チェア(1960年代)

シャポーを代表するダイニングチェア。厚みのある無垢材の座面と、構造を兼ねた力強い脚部が特徴。背もたれの緩やかなカーブは人間工学的な配慮に基づきつつも、彫刻的な美しさを湛えている。シンプルながらも存在感のあるフォルムは、現代のインテリアにも自然に溶け込む普遍性を持つ。

T21 ダイニングテーブル(1960年代)

シャポーの代表作として最も広く知られる作品のひとつ。円形または楕円形の天板を、彫刻的な造形の脚部が支える構成。天板と脚部を接続する独自のジョイントは、構造的必然性と装飾的美しさを両立させた傑作とされる。サイズ展開も豊富で、二人用から大人数用まで様々な生活シーンに対応できるよう設計された。

S46 チェア「スファックス」(1970年代)

チュニジアの都市名を冠したラウンジチェア。低く深い座面と、ゆったりとした背もたれが特徴で、読書や寛ぎの時間に最適な設計となっている。複数の無垢材パーツが精緻に組み合わされた構造は、シャポーの木工技術の集大成ともいえる。藁や革を用いた座面のバリエーションも存在する。

B10 ベンチ/シェルフ(1960年代)

ベンチとしても、低いシェルフとしても使用可能なモジュラー家具。厚みのある座面/棚板と、特徴的なX型の脚部から構成される。壁際に置いても、部屋の中央に配しても美しく、その汎用性の高さから多くの建築家やインテリアデザイナーに愛用された。

R07 デスク(1960年代)

大ぶりな天板と、引き出しを備えた堂々たる書斎机。天板の縁に施された面取り加工と、引き出し前板の木目のマッチングに、シャポーの素材への深い理解が表れている。作業用デスクでありながら、空間の主役となりうる造形的な強さを備えている。

功績と業績

シャポーは、20世紀後半のフランスにおいて、職人仕事(アルティザナ)と現代デザインの橋渡しを果たした稀有な存在であった。工業化が進む時代にあって、手仕事の価値を守り続けただけでなく、それを現代の美意識と生活様式に適合させることに成功した。彼の工房からは多くの優れた職人が育ち、フランスの木工文化の継承に貢献した。

また、建築家としての素養を活かし、家具単体ではなく空間全体を視野に入れた設計アプローチは、同時代のデザイナーたちに大きな影響を与えた。シャルロット・ペリアンとの交流をはじめ、当時の建築・デザイン界の革新者たちとの相互影響関係も、彼の作品に深みを与えている。

評価と後世への影響

シャポーの作品は、生前は一部のコレクターや建築家の間でのみ知られる存在であったが、21世紀に入り国際的な再評価が急速に進んでいる。2017年にはパリ装飾芸術美術館において大規模な回顧展が開催され、その芸術的価値が改めて確認された。オークション市場においても、主要作品は年々評価を高めており、現代の家具コレクターにとって必須のアイテムとなっている。

現代のデザインシーンにおいても、シャポーの影響は色濃く見られる。素材の誠実な扱い、職人技術の尊重、そしてタイムレスなデザインという彼の理念は、サステナビリティや手仕事回帰が叫ばれる今日において、ますますその重要性を増している。新世代のデザイナーたちにとって、シャポーは「本物」の家具づくりを体現する存在として、変わらぬ指針であり続けている。

没後もシャポー家によって工房は継続され、オリジナルの図面と製法に基づく家具制作が今なお行われている。この「生きた遺産」としての在り方は、創作者の意志と技術を次世代に伝える稀有なモデルとして、デザイン史においても特筆すべき事例といえよう。

作品一覧

年月 区分 作品名 ブランド
1960年代 椅子 S11 Chair Chapo Création
1960年代 椅子 S14 Chair Chapo Création
1960年代 椅子 S28 Chair Chapo Création
1960年代 椅子 S34 Chair Chapo Création
1960年代 椅子 S45 Chair "Dromadaire" Chapo Création
1970年代 椅子 S46 Chair "Sfax" Chapo Création
1960年代 ベンチ B10 Bench Chapo Création
1960年代 ベンチ B17 Bench Chapo Création
1960年代 ベンチ B19 Bench Chapo Création
1960年代 テーブル T02 Coffee Table Chapo Création
1960年代 テーブル T05 Coffee Table Chapo Création
1960年代 テーブル T07 Coffee Table Chapo Création
1960年代 テーブル T08 Coffee Table Chapo Création
1960年代 テーブル T14 Dining Table Chapo Création
1960年代 テーブル T20 Dining Table Chapo Création
1960年代 テーブル T21 Dining Table Chapo Création
1960年代 テーブル T22 Dining Table Chapo Création
1960年代 テーブル T23 Dining Table Chapo Création
1960年代 デスク R07 Desk Chapo Création
1960年代 デスク R08 Desk Chapo Création
1960年代 シェルフ E20 Shelf Chapo Création
1960年代 シェルフ E22 Shelf Chapo Création
1960年代 シェルフ B05 Shelving Unit Chapo Création
1960年代 キャビネット R09 Sideboard Chapo Création
1960年代 キャビネット R10 Cabinet Chapo Création
1960年代 ベッド L01 Bed Chapo Création
1960年代 ベッド L06 Daybed Chapo Création
1960年代 ミラー M01 Mirror Chapo Création
1960年代 ミラー M02 Mirror Chapo Création
1960年代 ランプ Table Lamp Chapo Création

Reference

Chapo Création - Official Website
https://www.yourchapocreation.com/
Pierre Chapo - 1stDibs
https://www.1stdibs.com/creators/pierre-chapo/furniture/
Pierre Chapo - Pamono
https://www.pamono.com/designers/pierre-chapo
Pierre Chapo at Musée des Arts Décoratifs, Paris
https://madparis.fr/
Pierre Chapo - Galerie Patrick Seguin
https://www.patrickseguin.com/designers/pierre-chapo/
Pierre Chapo - Jousse Entreprise
https://www.jousse-entreprise.com/