別表記:ミッシャー・トラクスラー、ミシャートラクスラー、mischer traxler、カタリーナ・ミシャー、トーマス・トラクスラー

概要

ミシャー・トラクスラー(mischer'traxler)は、カタリーナ・ミシャー(1982年生まれ)とトーマス・トラクスラー(1981年生まれ)がウィーンで主宰するデザインスタジオである。2009年に設立された。日照の量や見る人の視線といった外部の条件によって出来上がる形が変わる製造の仕組みを設計し、その結果として腰掛け、照明、器、インスタレーションを生み出してきた。手作業と技術の釣り合いを方法の軸とし、実験と文脈の検討を重ねて仕事を進める。

バイオグラフィー

二人は、オーストリアのザンクト・ペルテンにあるNDCとロンドンのキングストン大学でプロダクトと家具のデザインを学び、学士課程を修めた。その後、アイントホーフェン・デザインアカデミーの修士課程(IM-masters)で出会い、2008年6月にともに修了している。

修了の翌年、2009年にウィーンでスタジオを設立した。同年にオーストリアの実験的デザインの振興賞を受け、2011年にはデザイン・マイアミ/バーゼルとWホテルズが主催する「デザイナー・オブ・ザ・フューチャー」に選ばれた。教育では、2014年から2015年にマドリードのIEDで修士課程を共同で指導し、2016年にウィーン応用美術大学、2017年にカッセル美術大学で客員として教えている。

デザインの思想と方法

ミシャー・トラクスラーの仕事の多くは、完成した形を描くことから始まらない。設計の対象は、材料をどう送り、何を合図に動き、いつ止まるかという製造の仕組みのほうにある。仕組みが同じでも、その日の天候や周囲の人の振る舞いが違えば、出来上がる物は一点ごとに変わる。

製造の条件を形に残す

彼らは、太陽電池で動く装置や、人の接近を感知する装置を自ら組み立て、糸や突板を接着剤に通して型に巻きつけるといった単純な工程を機械に任せる。出来上がった物の高さや色の濃淡は、その工程が動いた時間と条件の記録になる。スタジオはこれを、地域の素材や手仕事ではなく、その土地の気候が製品に現れる「工業化された地域性」として説明している。

既にある物と技術を組み合わせる

新しい部品を一から起こすのではなく、廃棄された照明器具や、ガラス工房の吹きガラスといった既存の物と技術を、新しい光源や電子制御と組み合わせる仕事もある。手で作られた部分と、センサーや回路で制御される部分を一つの物のなかで分担させる点は、装置を用いる仕事と共通している。

代表作にみる方法

代表作は、太陽光で動く装置による「the idea of a tree」、二つの古い照明を一つにした「relumine」、見る人の注目で製造が進む「collective works」、ペリエ ジュエのためのインスタレーション「curiosity cloud」である。

the idea of a tree(2008年〜)

太陽電池だけで動く装置「レコーダー・ワン」が、日の出から日没までのあいだに一日一点の物をつくる自主制作の仕事である。糸を着色装置と接着剤の槽に通して型に巻きつけていき、日照の続いた時間が物の長さや高さを、日照の強さが層の厚さと色を決める。日が強ければ層は厚く色は淡く、曇れば薄く暗くなるため、雲や影の通過までが帯として残る。腰掛けや照明として仕上げられ、どの日にどこでつくられたかの記録を兼ねる。

relumine(2010年)

廃棄された二つの照明器具を分解して研磨・再塗装し、蛍光管を収めたガラスの管でつないで一つの照明にした仕事である。白熱電球から省電力の光源へ移る時期に、古い器具を捨てずに新しい光源へ載せ替えることを主題とした。二台を一台にまとめることで、それぞれが以前に使っていた電力より少なくて済む。ウィーン・デザインウィーク2010で発表され、30点の限定で製作された。

collective works(2011年)

デザイン・マイアミとWホテルズの依頼で、デザイン・マイアミ/バーゼル2011で発表した製造の仕組みである。枠に組み込んだセンサーが見る人を感知したときだけ、突板の帯が接着剤に通されて台の上に巻き重ねられていく。見る人が増えるほど着色の筆記具が加わって帯の色が濃くなり、誰も見ていなければ製造は止まる。出来上がる籠の高さと色は、その場で集まった関心の量をそのまま示す。

curiosity cloud(2015年)

シャンパーニュのメゾン、ペリエ ジュエの依頼で、ロンドン・デザイン・フェスティバル2015の会期中にヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で発表したインスタレーションである。ロブマイヤーが吹いた264個のガラス球に、実在する25種をもとに手作業でつくった虫が一匹ずつ収められている。来場者が近づくと赤外線センサーが反応してガラス球が灯り、虫が動いてガラスに触れ、音を立てる。虫の種は、絶滅または絶滅が危ぶまれるもの、ごく一般的なもの、新たに見つかったものの三つの群から選ばれている。

評価と影響

作品は美術館の企画展で継続して紹介されている。2011年にシカゴ美術館の「hyperlinks: Architecture and Design」に出品し、2014年から2018年にかけてはヴィトラ・デザイン・ミュージアムの巡回展「Lightopia」に加わった。2017年にはウィーンのMAKで「LeveL – the fragile balance of utopia」を展示し、2019年にはニューヨークのクーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン博物館で「curiosity cloud」をその会場に合わせて組み直している。2025年から2026年にかけては、ボンのドイツ連邦美術展示館でヨーロッパの昆虫による版が展示された。

受賞・収蔵

受賞

  • 2009年 オーストリア実験的デザイン振興賞
  • 2011年 デザイナー・オブ・ザ・フューチャー(デザイン・マイアミ/バーゼル、Wホテルズ)
  • 2014年 ヤング・タレント・アワード(ビー・オープン財団)
  • 2016年 スワロフスキー・デザイン・メダル(スワロフスキー、ウィーン・デザインウィーク)

収蔵

以下の収蔵が確認できる(AIC=シカゴ美術館)。MoMA、V&A、Met では該当する収蔵は確認できなかった。

  • AIC The Idea of a Tree Bench(2009年) 収蔵番号 2011.273
  • AIC The Idea of a Tree Lamp(2009年) 収蔵番号 2011.274
  • AIC The Idea of a Tree Lamp(2009年) 収蔵番号 2011.1168
  • AIC The Idea of a Tree Animation(2009年) 収蔵番号 2011.785

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
2008年〜 製造の仕組み・家具・照明 the idea of a tree 自主制作
2008年〜 棚 realLimited fungi shelf 自主制作
2010年 照明 relumine 自主制作(限定30点)
2011年 製造の仕組み・器 collective works Design Miami / W Hotels の依頼
2014年 インスタレーション ephemerā Perrier-Jouët の依頼
2015年 インスタレーション curiosity cloud Perrier-Jouët の依頼
2017年 インスタレーション LeveL – the fragile balance of utopia MAK(ウィーン)での展示

プロフィール

構成 カタリーナ・ミシャー(1982年生まれ)、トーマス・トラクスラー(1981年生まれ)
設立 2009年
国籍 オーストリア
活動拠点 ウィーン
分野 家具、照明、器、インスタレーション、製造装置
主な依頼主 Perrier-Jouët、Design Miami、Hermès、Kvadrat

Reference

mischer'traxler studio - about
https://mischertraxler.com/?p=1973
mischer'traxler studio - the idea of a tree
https://mischertraxler.com/projects/the-idea-of-a-tree-process/
mischer'traxler studio - relumine
https://mischertraxler.com/projects/relumine/
mischer'traxler studio - collective works
https://mischertraxler.com/projects/collective-works/
mischer'traxler studio - curiosity cloud
https://mischertraxler.com/projects/curiosity-cloud/
Art Institute of Chicago - The Idea of a Tree Bench
https://www.artic.edu/artworks/206762
Kontejner - mischer'traxler / Katharina Mischer & Thomas Traxler
https://kontejner.org/en/osobe/mischertraxler-katharina-mischer-thomas-traxler-at