概要
マックス・ビル(1908-1994)は、スイスの建築家・デザイナー・美術家である。バウハウスで学んだのち、絵画、彫刻、グラフィック、製品設計、建築を並行して手がけた。1953年にウルム造形大学の設立に加わり、初代学長を務めている。ユンハンスのために設計した時計は、目盛りと針の関係を読み取りの条件だけで決めた例にあたる。
バイオグラフィー
1908年12月22日、スイスのヴィンタートゥールに生まれた。チューリッヒの美術工芸学校で銀細工を学んだのち、1927年から1929年までバウハウスデッサウに在籍している。
1929年にチューリッヒへ戻り、建築、グラフィック、絵画を並行して手がけた。1930年代から抽象絵画と彫刻の制作を続けている。
1953年、ウルム造形大学の設立に加わり、校舎の設計も担当した。1953年から1956年まで初代学長を務めている。
1956年から1957年にかけて、ユンハンスのために時計を設計した。1961年から1968年までチューリッヒ市議会議員、1967年から1971年まで国会議員も務めている。1994年12月9日に没した。
デザインの思想と方法
ビルの活動は絵画、彫刻、グラフィック、製品、建築にまたがる。共通するのは、形を感覚で決めず、数学的な規則から導くという進め方である。規則を先に決めれば、個々の判断は不要になる。
読み取りの条件から目盛りを決める
時計の文字盤では、時刻を読み取るために必要な情報だけを残す。数字を置くか目盛りだけにするか、線の太さと長さをどうするかは、視認の条件から決まる。装飾の要素は入らない。
規則から形を導く
絵画と彫刻では、色の配列や立体の分割を数式や数列で決める。制作の途中で感覚的に調整しない。この方法は「具体芸術」と呼ばれる立場にあたる。
教育の課程として組み立てる
ウルム造形大学では、バウハウスの基礎教育を戦後の条件で組み直そうとした。数学と科学を課程に組み込む方向をとり、この点で後任の教員たちと対立して1956年に離れている。
分野を限定しない
絵画、彫刻、グラフィック、製品、建築、そして政治と、活動の範囲は広い。いずれも規則から形を導くという同じ方法で扱われている。
ユンハンスの歴史や他の製品について詳しくはユンハンス ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ウルム造形大学 校舎(1953年)
同校の設立に加わり、校舎の設計も担当した。斜面に沿って建物を配し、工房と教室を分棟とする。1953年から1956年まで初代学長を務めた。
ユンハンス 壁掛け時計(1956-57年)
目盛りと針の関係を読み取りの条件だけで決めた時計である。数字を持たず、時と分の目盛りを線の長さで区別する。装飾の要素を含まない。→ユンハンス マックス・ビル ウォールクロック
ユンハンス キッチンクロック(1956-57年)
調理用のタイマーを併せ持つ時計である。時刻と残り時間という二つの情報を、同じ面の上で区別できるようにする。→キッチンクロック・ウィズ・タイマー
ユンハンス 置き時計(1956-57年)
卓上に置く時計である。壁掛けとは視距離が異なるため、目盛りと針の寸法もそれに応じて決まる。→ユンハンス マックス・ビル テーブルクロック
絵画・彫刻(1930年代〜)
色の配列や立体の分割を数式や数列で決める作品を制作した。制作の途中で感覚的に調整しないという立場をとる。「無限の輪」の系列などがある。
評価と影響
ビルは一般に、20世紀スイスの美術とデザインを代表する人物と評価されている。形を規則から導くという方法を、絵画から製品まで一貫して用いた点が挙げられる。
1953年のウルム造形大学の設立と初代学長としての活動は、戦後のデザイン教育に影響を残した。数学と科学を課程に組み込む方向をとったが、1956年に離れている。
ユンハンスの時計は1956年から57年の設計で、現在も生産が続いている。読み取りの条件だけで文字盤を構成するという方向は、以後の時計にも見られる。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、絵画・版画・ポスターを含めて計79件が確認できた。以下は主要なものの抜粋である。
- MoMA ポスター「ヨーゼフ・アルバース」(1957年) 収蔵番号 323.1961
- MoMA ポスター(1977年) 収蔵番号 407.1994
- V&A 版画「さまざまな構成」(1941年) 収蔵番号 E.901-1978 ほか計10点
- V&A 版画(1976年) 収蔵番号 E.841-1976
- AIC 「立方体を伴う構成」(1945年) 収蔵番号 1967.389
- AIC 「コンポジション」(1964年) 収蔵番号 1978.595
- AIC 版画集「11 x 4 : 4」(1970年) 収蔵番号 1978.594
Met では該当する収蔵は確認できなかった。時計そのものの収蔵は4館では確認できなかった。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1930年代〜 | 絵画・彫刻 | 規則から導いた構成の作品 | — |
| 1953年 | 建築 | ウルム造形大学 校舎 | ウルム、ドイツ |
| 1953-56年 | 教育 | ウルム造形大学 初代学長 | ウルム、ドイツ |
| 1956-57年 | 時計 | ユンハンス マックス・ビル ウォールクロック | Junghans |
| 1956-57年 | 時計 | ユンハンス マックス・ビル テーブルクロック | Junghans |
| 1956-57年 | 時計 | キッチンクロック・ウィズ・タイマー | Junghans |
| 1930-90年代 | グラフィック | ポスター・書籍の設計 | — |
| 1930-90年代 | 建築 | 住宅・公共建築 | スイス、ドイツ |
プロフィール
| 生没年 | 1908年12月22日〜1994年12月9日 |
|---|---|
| 出身地 | スイス・ヴィンタートゥール |
| 国籍 | スイス |
| 活動拠点 | チューリッヒ、ウルム |
| 分野 | 時計、グラフィック、建築、絵画、彫刻、教育 |
| 主な協働ブランド | Junghans |
Reference
- max bill | Junghans
- https://www.junghans.de/en/
- HfG-Archiv Ulm
- https://hfg-archiv.museumulm.de/en/
- The Art Institute of Chicago Collection
- https://www.artic.edu/collection
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/