マリオ・ベリーニ:イタリアンデザインの革新者
マリオ・ベリーニ(1935年2月1日生まれ)は、イタリアを代表する建築家兼デザイナーであり、20世紀後半から現在に至るまで、デザイン界に多大な影響を及ぼし続けている巨匠である。70年近くに及ぶキャリアにおいて、家具デザイン、プロダクトデザイン、建築設計、都市計画に至るまで、その活動は多岐にわたり、有機的な美学と現代イタリアンデザインの言語を融合させた独自の作品群を生み出してきた。彼は8度にわたってコンパッソ・ドーロ賞を受賞し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)には25点の作品が永久収蔵されている。1987年、MoMAは存命するデザイナーとして初めて彼の個展を開催し、その功績を称えた。
生涯とキャリアの軌跡
初期の形成期(1935-1962年)
1935年2月1日、ミラノに生まれたマリオ・ベリーニは、1959年にミラノ工科大学建築学部を卒業した。在学中には、ジオ・ポンティ、ピエロ・ポルタルッピ、エルネスト・ナタン・ロジャースといった著名な建築家たちに師事し、イタリアモダニズムの精神を学んだ。1959年から1962年にかけて、彼はイタリアの高級デパート「ラ・リナシェンテ」のデザイン部門を統括し、商業デザインの実務経験を積んだ。この時期は、戦後イタリアの経済成長期にあたり、デザインが産業と文化の融合点として重要な役割を果たし始めた時代であった。
デザイナーとしての確立(1963-1980年代)
1963年、ベリーニは二つの重要な決断を下した。一つは自身のデザインスタジオ「スタジオ・ベリーニ」を開設したこと、もう一つはオリベッティ社のチーフデザインコンサルタントに就任したことである。この後者の役割は1993年まで続き、彼のキャリアにおける最も重要な協働関係の一つとなった。オリベッティでは、タイプライター、計算機、初期のコンピュータ端末など、革新的なオフィス機器のデザインを手掛けた。特に1965年の「プログラマ101」は、世界初のパーソナルコンピュータの先駆けとして知られ、そのエレガントなボディワークはベリーニによるものであった。
1960年代後半から1970年代にかけて、ベリーニは家具デザインの分野でも目覚ましい活躍を見せた。カッシーナ、B&Bイタリア(旧C&Bイタリア)、ヴィトラといった一流メーカーとの協働により、「アマンタチェア」(1966年)、「カマレオンダソファ」(1970年)、「レ・バンボレ」(1972年)、そして「カブチェア」(1977年)など、デザイン史に残る名作を次々と生み出した。1972年には、ニューヨークMoMAでの展覧会「イタリア:新しい家庭の風景」のために、移動式環境空間「カー・ア・スートラ」を制作し、国際的な注目を集めた。
この時期、ベリーニはまた、ブリオンヴェガのテレビやステレオ機器、ヤマハのハイファイシステムや電子オルガン、フロスやアルテミデの照明器具、そしてルノー、フィアット、ランチアといった自動車メーカーのデザインコンサルタントとしても活躍した。1985年から1991年までは、影響力ある建築・デザイン雑誌「ドムス」の編集長を務め、デザイン界の言論をリードした。
建築家としての展開(1980年代以降)
1980年代以降、ベリーニは建築設計に重心を移し、1987年には「マリオ・ベリーニ・アソシエイティ」(後の「マリオ・ベリーニ・アーキテクツ」)を設立した。ミラノに本拠を置く彼の建築事務所は、平均30〜35人の建築家を擁し、1999年にはISO9001品質認証を取得している。建築家としての彼の作品は、ヨーロッパ、日本、アメリカ、オーストラリア、アラブ首長国連邦にまたがり、その多様性と規模は驚異的である。
主要な建築プロジェクトには、ミラノのポルテッロ見本市地区、コモ湖畔のヴィラ・エルバ国際会議場(1986-1990年)、東京デザインセンター(1988-1992年)、メルボルンのビクトリア国立美術館拡張(1996-2003年)、フランクフルトのドイツ銀行本社、ボローニャの市歴史博物館(2012年完成)などが含まれる。中でも特筆すべきは、2005年にリュディ・リチオッティとの共同設計で国際コンペに勝利した、パリ・ルーヴル美術館のイスラム芸術部門である。これは、1989年のI.M.ペイによるピラミッド以来、ルーヴル美術館における初の重要な現代建築介入であり、「虹色の雲」と称される半透明の屋根が歴史的な中庭空間を覆っている。
近年のプロジェクトには、ローマ・フィウミチーノ空港の新国際ターミナルT3、ヨーロッパ最大規模となるミラノ・コンベンションセンター、トリエステのジェネラーリ本社などがあり、現在も精力的に新しいプロジェクトに取り組んでいる。
デザインの哲学とアプローチ
マリオ・ベリーニのデザイン哲学の中心には、有機的な形態への深い探求と、形態と機能の完璧な調和を追求する姿勢がある。建築家としての訓練を受けた彼は、家具や製品のデザインにおいても建築的な論理を適用し、構造の誠実さと美的な洗練を両立させることを目指した。
有機的形態言語
ベリーニは、自然界の形態から着想を得ることを好んだ。彼は粘土をモデル制作の素材として用いることで知られており、この手法により、彼のデザインには柔らかく、可塑的で、筋肉質な形態が生まれた。講演会において、彼はホオジロザメの写真を見せた後にオリベッティのタイプライターを示し、自然界の形態がいかに彼のデザインに影響を与えたかを説明している。この有機的アプローチは、機械的で硬直的なモダニズムの代替として、より人間的で親しみやすいデザインを生み出すことを可能にした。
素材と技術の探求
ベリーニは常に新しい素材と製造技術の可能性を探求し続けた。1960年代にはファイバーグラスとフォームクッションを組み合わせた「アマンタチェア」を制作し、1970年代にはジッパーで取り外し可能な革の「皮膚」を持つ「カブチェア」を開発した。彼は「素材について考えることは、形態について考えることである」と述べ、各素材の固有の特性を理解し、それを最大限に活用することの重要性を強調した。オリベッティでの仕事では、エンジニア、モデラー、画家たちとの協働を通じて、産業生産における技術的可能性と美的表現の融合を探求した。
境界を超えたデザイン
ベリーニはデザインの明確な境界線を信じなかった。彼にとってデザインとは、人間と環境の関係性を創造することであり、その実践は家具から建築、製品から都市計画に至るまで、あらゆるスケールに適用されるべきものであった。この全体論的なアプローチは、彼の作品の一貫性と深みを生み出している。彼は「椅子をデザインした椅子を見せてもらえば、あなたがどんな建築家かわかる」という言葉を残しており、小さなオブジェクトのデザインと大きな建築物のデザインが、同じ思想的基盤から生まれることを示唆している。
人間中心の思想
ベリーニのデザインは、常に人間の身体と経験を中心に据えている。彼の家具は単なる機能的なオブジェクトではなく、身体を拡張し、快適さを提供し、感情を呼び起こすものである。「カブチェア」を身体の延長として構想したように、彼のデザインは人間工学的な配慮と詩的な表現を統合している。また彼は、デザインは「単に機能するだけでなく」、時代、エロティシズム、本質、人間の感情、夢をも表現すべきだと述べており、この人間主義的な視点が彼の作品に深い共鳴をもたらしている。
作品の特徴
彫刻的フォルムと構造的明快さ
ベリーニの作品は、彫刻的な美しさと構造的な明快さを兼ね備えている。彼の家具は、一見すると単純に見えるが、その背後には精密な構造計算と素材の理解がある。「カブチェア」は、チューブ状のスチールフレームという最小限の骨格に、16枚の鞍革のパーツをジッパーで固定した「皮膚」を被せるという、建築的な発想から生まれた傑作である。また「カマレオンダソファ」の膨らんだモジュール形態は、無限の柔軟性を持ちながらも、視覚的に強い統一感を保っている。
革新的な素材使用
ベリーニは、従来の家具デザインの常識を覆す素材使用で知られている。「レ・バンボレ」シリーズは、従来の支持構造や張り地を持たず、フォームから成形された単一のピースを伸縮性のあるカバーに収めるという、革命的な構造を採用した。これにより、極めて自然な形態と、従来にない柔らかさと快適さを実現した。また「アマンタチェア」では、ファイバーグラスのフレームにフォームクッションを組み合わせ、当時としては先進的な素材の組み合わせを試みた。
モジュラー性と適応性
ベリーニの多くの家具デザインは、モジュラーシステムとして構想されており、使用者のニーズに応じて柔軟に構成を変えることができる。「カマレオンダソファ」は、その名が示すように(イタリア語でカメレオンと波を意味する)、正方形の座面モジュールを自由に組み合わせることで、無限の配置パターンを創造できる。ベリーニ自身が「私がデザインしたすべてのオブジェクトの中で、カマレオンダは自由という意味で最も優れているかもしれない」と述べているように、このモジュラー性は単なる実用性を超えて、使用者の創造性と自由を促進する哲学的な意味を持っている。
タイムレスなエレガンス
ベリーニのデザインは、一時的な流行に左右されない普遍的な美しさを持っている。彼の作品は、デザインされた時代を超越し、数十年後の今日でも新鮮で関連性を保っている。「カブチェア」は1977年の発表以来、カッシーナ社のベストセラーであり続け、40万脚以上が販売されている。この持続的な人気は、彼のデザインが本質的な美と機能を捉えているからこそ実現できるものである。
主な代表作品とそのエピソード
カブチェア(1977年)
カッシーナ社のために制作された「カブチェア」は、マリオ・ベリーニの最も象徴的な作品であり、家具デザイン史における画期的な発明である。このチェアは、身体の延長としての家具という彼の哲学を完璧に体現している。チューブ状のスチールフレームという最小限の「骨格」に、16枚の鞍革のパーツがジッパーで固定され、まるで皮膚のように椅子を覆っている。この革新的な構造により、座面カバーは取り外して交換することが可能で、メンテナンス性と持続可能性にも優れている。
MoMAとメトロポリタン美術館の両方のパーマネントコレクションに収蔵されているこの椅子は、1977年の発表以来、カッシーナ社のベストセラーであり続け、40万脚以上が世界中で販売されている。そのデザインは数え切れないほど模倣されており、現代の家具デザインに計り知れない影響を与えた。カブチェアは、モデル412(ダイニングチェア)、413(アームチェア)、414(ラウンジチェア)、そして410(スツール)として展開されている。
カマレオンダソファ(1970-1972年)
「カマレオンダ」は、イタリア語でカメレオンと波を意味する造語であり、この名前が示すように、無限に変化可能なモジュラーソファシステムである。1970年にB&Bイタリア(当時のC&Bイタリア)のために制作されたこのソファは、1972年のMoMA展覧会「イタリア:新しい家庭の風景」に出展され、展覧会の目玉作品の一つとなった。
正方形のモジュールは、膨らんだクッション形態と深いキャピトン(ボタン留め)が特徴で、ケーブルとフックの革新的なシステムによって接続されている。これにより、使用者は自由にモジュールを組み合わせ、直線的なソファから、L字型、U字型、さらには島状の座席配置まで、無限の可能性を創造できる。1979年に一度生産中止となったが、ヴィンテージ市場での圧倒的な人気を受けて、B&Bイタリアは2020年に、すべてリサイクル素材と交換可能なシートカバーを使用した持続可能なバージョンとして再発売した。
ベリーニ自身が「私がデザインしたすべてのオブジェクトの中で、カマレオンダは自由という意味で最も優れているかもしれない」と述べているように、このデザインは単なる家具を超えて、使用者の創造性と自由を促進する哲学的な宣言でもあった。
レ・バンボレ(1972年)
「レ・バンボレ」(イタリア語で「人形たち」の意味)は、1972年にB&Bイタリアのために制作された革命的なアップホルスターシリーズである。このコレクションは、従来の家具構造の概念を根本から覆した。支持構造も従来の張り地もなく、フォームから成形された単一のピースを伸縮性のあるカバーに収めるという、前例のない構造を採用している。
このデザインコンセプトの発端は、中身に合わせて形を変える袋というアイデアであり、B&Bイタリアの研究開発センターとの協働を通じて、大きなクッションのような形態へと進化した。その結果生まれたのは、極めて自然な形態と、従来にない柔らかさと快適さを持つ家具である。ベリーニは「レ・バンボレは布で覆われているのではなく、布で構築されている」と述べている。
マーケティングキャンペーンも伝説的であった。B&Bイタリアの創業者ピエロ・ブスネッリは、写真家オリヴィエーロ・トスカーニを起用し、アンディ・ウォーホルのミューズであったモデルのドナ・ジョーダンがトップレスで挑発的なポーズをとる広告を制作した。ミラノサローネの発表会の夜、会場の壁一面に掲示されたこの広告に、サローネの会長が激怒し、乳房を黒いテープで覆うよう命じたというエピソードが残っている。しかしこの論争はかえって注目を集め、レ・バンボレシリーズは大成功を収めた。1979年にはコンパッソ・ドーロ賞を受賞し、以来継続的に生産され続けている。
オリベッティ製品群(1963-1993年)
マリオ・ベリーニとオリベッティ社との30年にわたる協働関係は、20世紀のプロダクトデザイン史において最も重要なパートナーシップの一つである。1963年にチーフデザインコンサルタントに就任したベリーニは、タイプライター、計算機、コンピュータ端末など、数多くの革新的な製品をデザインした。
1965年の「プログラマ101」は、世界初のパーソナルコンピュータの先駆けとして知られ、ピエール・ジョルジオ・ペロットが率いるチームによって開発された革命的な製品に、ベリーニは直接的に未来的なボディワークを与えた。1967年の「TCV 250ビデオディスプレイ端末」はMoMAのパーマネントコレクションに収蔵されており、2025年のMoMA展覧会「ピルエット:デザインのターニングポイント」にも展示された。
1964年には「CMC7-7004磁気文字記入機」でコンパッソ・ドーロ賞を受賞し、1973年の「ディヴィスマ18電子計算機」、1981年には電動タイプライター「プラクシス35」で再びコンパッソ・ドーロ賞を、1984年には「メルカトール20レジスター」で三度目の受賞を果たした。これらの製品は、機能性と美的洗練を融合させたベリーニのデザイン哲学の結晶であり、オフィス機器デザインの基準を一新した。
カー・ア・スートラ(1972年)
1972年、ベリーニはMoMAの展覧会「イタリア:新しい家庭の風景」のために、「カー・ア・スートラ」と名付けられた移動環境空間をデザインした。この作品は、自動車に対する文化的な魅力を茶化しながらも、未来のビジョンを提示する衝撃的な作品であった。
シトロエンのために制作されたこのガラス張りのバンは、従来の個別シートを放棄し、乗員が柔らかなクッション張りのプラットフォーム上を自由に動き回れるよう設計されていた。キャビンは移動する家へと変容し、自動車が単なる移動手段を超えて、人間の生活と交流のための空間になり得るという、大胆な提案であった。この作品は、ベリーニが空間性、居住性、移動性という概念をいかに再考していたかを示す、彼のデザイン思想の重要な表現である。
ベリーニチェア(1998年)
1998年、ベリーニはアメリカの家具メーカー、ヘラー社のために「ベリーニチェア」をデザインした。この椅子は、ベリーニの有機的デザイン哲学を、射出成形プラスチックという大量生産可能な素材で実現した作品である。シンプルでエレガントなフォルムは、筋肉質でありながら軽やかで、スタッキング可能な実用性を持ちながらも、彫刻的な美しさを失っていない。
この椅子は2001年にコンパッソ・ドーロ賞を受賞し、ベリーニのキャリアにおける8度目の受賞となった。手頃な価格と優れたデザインの融合により、ベリーニチェアは広く普及し、彼のデザイン哲学が大衆にも届くことを証明した。
ルーヴル美術館イスラム芸術部門(2012年)
2005年、ベリーニはフランスの建築家リュディ・リチオッティと共に、パリのルーヴル美術館におけるイスラム芸術部門の新設計画の国際コンペに勝利した。これは、1989年のI.M.ペイによるガラスのピラミッド以来、ルーヴル美術館における初の重要な現代建築介入であった。
設計のコンセプトは、「ヴィスコンティ中庭は覆われるのではなく、実際には見えたままである」という建築的決断であり、歴史的な場所における現代建築の「穏やかで非暴力的な統合」を目指した。約3,500平方メートルの展示空間は2つのレベルに分かれ、コレクションを展示する。新しい美術館エリアは「虹色の雲」で覆われ、拡散した光を放ちながら、展示空間の上を軽やかに浮遊している。この半透明の覆いにより、美術館内部から中庭の外観のファサードを見ることができ、内部と外部、現代と歴史を対話させている。
このプロジェクトは、ベリーニの建築家としての成熟を示すとともに、彼が常に追求してきた空間、光、素材の詩的な統合を、最も権威ある文化的文脈において実現したものである。
功績と業績
コンパッソ・ドーロ賞:8度の受賞
マリオ・ベリーニは、イタリアで最も権威あるデザイン賞であるコンパッソ・ドーロ賞を、驚異的な8度にわたって受賞している。これは、彼のデザインの一貫した卓越性と革新性を示す記録である。
- 1964年:CMC7-7004磁気文字記入機(オリベッティ)
- 1979年:レ・バンボレシリーズ(B&Bイタリア)
- 1981年:プラクシス35電動タイプライター(オリベッティ)
- 1984年:メルカトール20レジスター(オリベッティ)
- 2001年:ベリーニチェア(ヘラー)
- その他3回(詳細年度不明)
MoMAでの展覧会と永久収蔵
1987年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、存命するデザイナーとして初めて、マリオ・ベリーニの個展「マリオ・ベリーニ:デザイナー」を開催した。この展覧会は、彼のキャリアにおける決定的な瞬間であり、デザイナーとしての国際的な地位を確固たるものにした。現在、MoMAのパーマネントデザインコレクションには、ベリーニの25作品が収蔵されており、その中にはオリベッティのタイプライターと計算機のシリーズ、カッシーナとB&Bイタリアのための家具、そしてヴィトラのためのオフィスチェアが含まれている。
2025年には、オリベッティTCV 250ビデオディスプレイ端末が、MoMAの展覧会「ピルエット:デザインのターニングポイント」に展示され、「デザイン史における重要な瞬間を強調する、広く認識されたデザインアイコン」として取り上げられた。
その他の栄誉と称号
- 1991年:英国王立芸術協会(RSA)よりRoyal Honorary Designerの称号
- 2004年:イタリア共和国大統領より金メダル授与
- 2011年:ミラノ市よりアンブロジーノ・ドーロ(市民功労金メダル)
- 2015年:ミラノトリエンナーレより建築分野での生涯功績に対する金メダル
- 2017年:ミラノトリエンナーレでの回顧展(その後モスクワなど世界巡回)
- 2019年:イタリア下院議長ロベルト・フィコより、イタリア建築・デザインへの貢献を認めてキャリアメダル授与
教育者・編集者としての貢献
ベリーニは、デザイナー・建築家としての実践に加えて、教育者および編集者としても重要な貢献をしている。1982-1983年にはウィーンで建築構成を教え、1983-1985年にはミラノのドムスアカデミーで新しい住宅モデルについて講義した。1995年にはジェノヴァ建築学校で客員教授を務めた。
1985年から1991年まで、彼は影響力ある建築・デザイン・芸術の月刊誌「ドムス」の編集長を務めた。この期間、彼は60以上の論説を執筆し、デザインと建築に関する彼の思想と批評を発信した。この役割は、彼がデザイン界の言論形成において重要な役割を果たしたことを示している。
展覧会の企画・キュレーション
ベリーニは芸術愛好家でもあり、多数の重要な芸術・デザイン・建築展覧会の企画とキュレーションを手掛けている。主要なものには以下が含まれる。
- 1984-1987年:「ヴェネツィアのサン・マルコの宝物」パリ・グラン・パレおよび世界の主要美術館
- 1989年:「20世紀のイタリア美術」ロンドン・王立芸術アカデミー
- 1994-1995年:「ルネサンス:ブルネレスキからミケランジェロまで、建築の表現」ヴェネツィア・パラッツォ・グラッシ、その後パリとベルリン
- 1999年:「バロックの勝利、1600-1750年のヨーロッパ建築」トリノ
- 2001年:「クリストファー・ドレッサー:ヴィクトリア女王の宮廷のデザイナー」ミラノ・トリエンナーレ
- 2007-2008年:「アンニセッタンタ」ミラノ・トリエンナーレ
- 2009年:「壮麗と計画」ミラノ・パラッツォ・レアーレ
- 2015年:「ジョット、イタリア」ミラノ・パラッツォ・レアーレ
評価と後世への影響
イタリアンデザインの革新者
マリオ・ベリーニは、1960年代にイタリアが重要なデザインの中心地として台頭する上で、中心的な役割を果たした人物の一人である。彼は、戦後イタリアの経済的繁栄期において、産業と文化の融合点としてのデザインの可能性を探求し、「良いイタリアンデザインを産業と文化の同義語にする」ことを目指した。彼の作品は、エットーレ・ソットサス、ジオ・ポンティ、アキッレ・カスティリオーニといった同時代の巨匠たちとともに、イタリアンデザインの黄金時代を築いた。
家具デザインへの永続的影響
ベリーニの家具デザインは、現代の家具デザインに計り知れない影響を与えている。「カブチェア」の着脱可能な革の「皮膚」という発想は、無数のデザイナーに模倣され、家具における素材と構造の関係性を再考させた。「カマレオンダソファ」のモジュラー性は、現代のモジュラーソファデザインの先駆けとなり、今日のインスタグラムで人気を博している多くのモジュラーソファの原型となっている。
彼の丸い脚を持つテーブルデザインは、フェイ・トゥーグッドの広く愛されている「ロリー・ポリー」ラインの先駆けとなり、彼のポストモダンな「スマ」アームチェアやエレガントな「キアラ」フロアランプは、今日もヴィンテージ家具ウェブサイトでコレクターを魅了し続けている。
プロダクトデザインの先駆者
オリベッティでの30年にわたる仕事を通じて、ベリーニは電子機器とオフィス機器のデザインに革命をもたらした。彼のタイプライターと計算機のデザインは、エルゴノミクス、美的洗練、技術革新を統合し、オフィス環境のデザイン基準を一新した。「プログラマ101」における彼の仕事は、パーソナルコンピュータの美学の基礎を築き、技術製品が単なる機能的な箱ではなく、デザインされた美しいオブジェクトになり得ることを示した。
建築における革新
建築家としてのベリーニは、大規模な公共建築から美術館、企業本社、都市計画に至るまで、その活動範囲は驚異的である。ルーヴル美術館のイスラム芸術部門における彼の仕事は、現代建築が歴史的文脈においていかに敬意を持って介入できるかを示す模範となっている。「虹色の雲」という詩的な概念は、技術的な洗練と美的な繊細さを融合させ、建築が単なる機能的なシェルターを超えて、光、空間、時間の経験を創造できることを実証している。
持続可能性への貢献
ベリーニのデザインは、その長寿性において持続可能性を体現している。彼の多くの作品は、50年以上経った今も生産され続けており、これはデザインの質が持続可能性の基盤であることを証明している。「カブチェア」の着脱可能な革カバーは、修理とメンテナンスを容易にし、製品寿命を延ばす。2020年の「カマレオンダ」再発売において、B&Bイタリアがすべてリサイクル素材を使用したことは、ベリーニのデザインが現代の持続可能性の要求にも適応できることを示している。
次世代デザイナーへの影響
現在90歳を迎えるベリーニは、今なお活動を続け、新しい世代のデザイナーや建築家に影響を与え続けている。彼の有機的フォルム言語、素材への深い理解、そして境界を超えたデザインアプローチは、世界中のデザインスクールで教えられ、研究されている。2017年のミラノトリエンナーレでの回顧展は、その後モスクワなど世界各地を巡回し、新しい世代に彼の遺産を伝えている。
彼の息子クラウディオ・ベリーニも建築家・デザイナーとなり、父との共同プロジェクトを手掛けるなど、ベリーニの影響は文字通り次世代に受け継がれている。マリオ・ベリーニのデザイン哲学——形態と機能の統合、素材への深い敬意、人間中心の思想、そして境界を超えた創造性——は、21世紀のデザイン界において、依然として重要な指針となっている。
作品一覧
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1962年 | テーブル | カルテシウステーブル | Pedretti |
| 1964年 | 椅子 | 932レザーアームチェア | Cassina |
| 1965年 | プロダクト | プログラマ101(コンピュータ) | Olivetti |
| 1966年 | 椅子 | アマンタチェア | C&B Italia |
| 1967年 | プロダクト | TCV 250ビデオディスプレイ端末 | Olivetti |
| 1968年 | プロダクト | GA45 POPラジオ | Minerva |
| 1968年 | プロダクト | RR130トーテムラジオグラム | Brionvega |
| 1969年 | テーブル | クアトロ・ガッティネスティングテーブル | C&B Italia |
| 1970年 | 照明 | アレアランプ | Artemide |
| 1970年 | ソファ | カマレオンダモジュラーソファ | C&B Italia / B&B Italia |
| 1970年 | テーブル | イル・コロナート(大理石テーブル) | Cassina |
| 1972年 | ソファ | レ・バンボレシリーズ | B&B Italia |
| 1972年 | コンセプト | カー・ア・スートラ(移動環境空間) | Citroën / MoMA |
| 1973年 | プロダクト | ディヴィスマ18電子計算機 | Olivetti |
| 1973年 | プロダクト | ロゴス50-60タイプライター | Olivetti |
| 1974年 | 照明 | ヌヴォラランプ | Flos / Nemo |
| 1974年 | オフィス家具 | ピアネタ・ウフィーチョ | Marcatrè |
| 1976年 | テーブル | イル・コロナート(再発売) | Cassina |
| 1977年 | 椅子 | カブチェア412(ダイニングチェア) | Cassina |
| 1977年 | 椅子 | カブチェア413(アームチェア) | Cassina |
| 1977年 | 椅子 | カブチェア414(ラウンジチェア) | Cassina |
| 1977年 | 椅子 | カブスツール410 | Cassina |
| 1977年 | テーブル | ラ・ロトンダテーブル | Cassina |
| 1979年 | プロダクト | ランチア・ベータ・トレヴィ(ダッシュボード) | Lancia |
| 1981年 | プロダクト | プラクシス35電動タイプライター | Olivetti |
| 1982年 | 椅子 | ヴィクトリアシリーズ | Cassina |
| 1982年 | ソファ | カブソファ | Cassina |
| 1984年 | プロダクト | メルカトール20レジスター | Olivetti |
| 1986年 | 食器 | ティー/コーヒーサービス | Rosenthal |
| 1990年代 | 食器 | クーポラティー/コーヒーセット | Rosenthal |
| 1998年 | 椅子 | ベリーニチェア | Heller |
| 1998年 | オフィスシステム | エクストラドライ | Tecno |
| 2000年代 | 椅子 | ヴォル・オ・ヴァンダイニングチェア | B&B Italia |
| 2007年 | ソファ | スターダスト | Meritalia |
| 2008年 | 椅子 | ブルチェア | Cassina |
| 2008年 | ソファ | ヴィア・ラッテア | Meritalia |
| 2009年 | トレイ | デューントレイ | Kartell |
| 2009年 | 椅子 | ストラディヴァーニ | Meritalia |
| 2010年 | 花瓶 | ムーン花瓶 | Kartell |
| 2012年 | テーブル | パンテオンテーブル | Cassina |
| 2012年 | 花瓶 | 上海花瓶 | Kartell |
| 2015年 | ベッド | カブベッド | Cassina |
| 2015年 | ラウンジチェア | カブラウンジ | Cassina |
| 2019年 | テーブル | オーシャンテーブル(再発売) | Mater |
| 2020年 | ソファ | カマレオンダ(再発売・持続可能版) | B&B Italia |
建築プロジェクト(主要)
| 年月 | 区分 | 作品名 | 所在地 |
|---|---|---|---|
| 1986-1990年 | 建築 | ヴィラ・エルバ国際会議場 | チェルノッビオ(コモ)、イタリア |
| 1988-1992年 | 建築 | 東京デザインセンター | 東京、日本 |
| 1993年 | 建築 | 五色台マリーナリゾート複合施設 | 日本 |
| 1994年 | 建築 | ドバイ・クリーク複合施設 | ドバイ、UAE |
| 1996年 | 建築 | ストリッツァ・タワーズ | モスクワ、ロシア |
| 1996-2003年 | 建築 | ビクトリア国立美術館拡張 | メルボルン、オーストラリア |
| 1998年 | 建築 | ナトゥッツィ・アメリカ本社 | ハイポイント、ノースカロライナ、アメリカ |
| 1998年 | 建築 | アルソア本社 | 山梨、日本 |
| 2001年 | 建築 | エッセン見本市拡張 | エッセン、ドイツ |
| 2002年 | 建築 | ドイツ銀行本社 | フランクフルト、ドイツ |
| 2003年 | 建築 | カッサ・ディ・リスパルミオ・ディ・フィレンツェ新本社 | フィレンツェ、イタリア |
| 2003年 | 建築 | チッタノーヴァ2000 | モデナ、イタリア |
| 2004年 | 建築 | 欧州特許庁 | ハーグ、オランダ |
| 2000年代 | 建築 | ポルテッロ見本市地区 | ミラノ、イタリア |
| 2000年代 | 建築 | ヴェローナ・フォーラム複合施設都市再開発 | ヴェローナ、イタリア |
| 2000年代 | 建築 | ミラノ・コンベンションセンター(MiCo) | ミラノ、イタリア |
| 2012年 | 建築 | ボローニャ市歴史博物館(パラッツォ・ペポリ) | ボローニャ、イタリア |
| 2012年 | 建築 | ルーヴル美術館イスラム芸術部門 | パリ、フランス |
| 2014-2017年 | 建築 | ローマ・フィウミチーノ空港国際ターミナルT3改修 | ローマ、イタリア |
| 2010年代 | 建築 | ジェネラーリ本社 | トリエステ、イタリア |
| 2009-継続中 | 建築 | ブレラ絵画館拡張計画 | ミラノ、イタリア |
| 2006-2020年 | 建築 | ジェノヴァ工科大学新校舎 | ジェノヴァ、イタリア |
オフィスチェアシリーズ(Vitra)
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1970年代後半 | オフィスチェア | フィグーラ | Vitra |
| 1970年代後半 | オフィスチェア | ペルソナ | Vitra |
| 1970年代後半 | オフィスチェア | イマーゴ | Vitra |
| 1970年代後半 | オフィスチェア | オンダ | Vitra |
| 1970年代後半 | オフィスチェア | スマ | Vitra |
| 1970年代後半 | オフィスチェア | フォルマ | Vitra |
Reference
- Mario Bellini - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Mario_Bellini
- Mario Bellini | Biography | Designer and architect | Cassina
- https://www.cassina.com/ww/en/contemporanei/mario-bellini.html
- Mario Bellini Biography | Casati Gallery
- https://www.casatigallery.com/designers/mario-bellini/
- Mario Bellini, Designer | Archiproducts
- https://www.archiproducts.com/en/designers/mario-bellini
- Mario Bellini design, works and Mario Bellini's biography - Domus
- https://www.domusweb.it/en/biographies/mario-bellini.html
- Mario Bellini | Artnet
- https://www.artnet.com/artists/mario-bellini/
- Mario Bellini | B&B Italia
- https://www.bebitalia.com/en-us/mario-bellini
- Mario Bellini | Context Gallery
- https://contextgallery.com/designers/mario-bellini
- Mario Bellini | Winner of Seven Compasso d'Oro Awards | Luminaire
- https://luminaire.com/blogs/designers/mario-bellini
- Mario Bellini Vintage Le Bambole Sofas by B&B Italia — Designitalia
- https://www.designitalia.com/mario-bellini-le-bambole-sofa-bb-italia-vintage
- Mario Bellini: Furniture, Machines & Objects | Phaidon
- https://www.phaidon.com/store/design/mario-bellini-9780714869452/
- Mario Bellini, a Design Icon - Italian Design Club
- https://www.italiandesignclub.com/2020/03/19/mario-bellini-a-design-icon/
- Mario Bellini - About him and his works – industrialkonzept
- https://industrialkonzept.com/blogs/editorial/mario-bellini
- Mario Bellini Architects
- https://bellini.it/mario-bellini/
- Department of Islamic Arts at the Louvre Museum | World-Architects
- https://www.world-architects.com/en/mario-bellini-architects-milano/project/department-of-islamic-arts-at-the-louvre-museum