概要
リナ・ボ・バルディ(1914-1992)は、イタリアに生まれブラジルで活動した建築家である。1946年に移住し、以後ブラジルで設計を行った。サンパウロ美術館(1968年)は、建物を4本の柱で持ち上げて地上を広場として開放する構成をとる。家具では、金属の枠に革を掛けたボウルチェアが知られる。
バイオグラフィー
1914年12月5日、イタリアのローマにアキリーナ・ボと呼ばれる名で生まれた。ローマ大学で建築を学び、1939年に修了している。
ミラノでジオ・ポンティの事務所に勤め、雑誌『Domus』の編集にも携わった。第二次世界大戦中はミラノで活動している。
1946年、美術批評家ピエトロ・マリア・バルディと結婚し、ブラジルへ移住した。1951年にブラジル国籍を取得している。
1951年に自邸「ガラスの家」を完成させ、同年ボウルチェアを設計した。1968年にサンパウロ美術館、1986年にSESCポンペイアを完成させている。1992年3月20日、サンパウロで没した。
デザインの思想と方法
ボ・バルディが扱ったのは、建物が地上をどう占めるかという問題である。通常、建物は地面を塞ぐ。彼女は構造を上に持ち上げることで、建物の下に公共の空間を残す構成をとった。
建物を持ち上げて地上を開ける
サンパウロ美術館は、4本の柱で梁を支え、展示室をその上に載せる。柱の間隔は約74メートルで、地上には柱以外に何もない。この空間は市民に開放され、集会や市が開かれる。美術館という用途に、地上を空けるという条件を加えた構成にあたる。
既存の建物を用途を変えて使う
SESCポンペイアは、1930年代のドラム缶工場を文化施設に転用したものである。既存の煉瓦造の建屋を残し、新設のコンクリートの塔を渡り廊下で結ぶ。取り壊して建て直すのではなく、既存の構造を使い続けるという方向をとる。
展示の見せ方を組み替える
サンパウロ美術館では、絵画をガラスの板に挟んでコンクリートの台に立てる展示方式を用いた。壁に掛けないため、来場者は絵の裏側にも回れる。年代順の配列という前提も外している。
ブラジルの材料と工法を用いる
家具では、現地で調達できる材料と工法を前提とした。ボウルチェアは金属の枠に半球の殻を載せる構成で、殻は枠の中で自由に傾く。座る人が姿勢を決められる。
代表作にみる方法
ガラスの家(1951年、サンパウロ)
自邸として設計した住宅である。前面を細い柱で持ち上げてガラス張りとし、背後は地形に沿って地面に接する。周囲の樹木を残したまま建てられた。
ボウルチェア(1951年)
金属の環状の枠に、半球の殻を載せた椅子である。殻は枠の中で自由に傾き、座る人が姿勢を決められる。固定されていないため、椅子としての形が一つに定まらない。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号135.2016)。→ボウルチェア
サンパウロ美術館(1968年)
4本の柱で梁を支え、展示室をその上に載せた美術館である。柱の間隔は約74メートルで、地上には何もない。この空間は市民に開放される。展示は絵画をガラスの板に挟んで立てる方式をとり、来場者が絵の裏側に回れる。
SESCポンペイア(1977-1986年)
1930年代のドラム缶工場を文化施設に転用したものである。既存の煉瓦造の建屋を残し、新設のコンクリートの塔を渡り廊下で結ぶ。取り壊さずに使い続けるという方向をとる。
フレイ・エジディオ チェア(1986年頃)
木の板を組み合わせた椅子である。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号137.2016)。
評価と影響
ボ・バルディは一般に、20世紀ブラジルの建築を代表する設計者の一人と評価されている。イタリアで教育を受け、ブラジルで活動したという経歴が、その仕事の前提にある。
サンパウロ美術館の構成は、美術館という用途に「地上を空ける」という条件を加えた例として繰り返し言及される。展示方式もあわせて、当時としては例外的だった。
SESCポンペイアは、既存の産業建築を転用した早い例にあたる。2000年代以降に国外での評価が高まり、複数の回顧展が開かれている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。
- MoMA パウリスタ農業博展のポスター(1951年) 収蔵番号 575.1951
- MoMA トリペ・ジ・フェロ チェア(1950-58年) 収蔵番号 134.2016
- MoMA ボウルチェア(1951年) 収蔵番号 135.2016
- MoMA ジラフ チェア&テーブル(1986年頃) 収蔵番号 136.2016.1-2
- MoMA フレイ・エジディオ チェア(1986年頃) 収蔵番号 137.2016
- MoMA SESCポンペイアの写真(2008年) 収蔵番号 685.2013
V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。ブラジル国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1951年 | 建築 | ガラスの家(自邸) | サンパウロ、ブラジル |
| 1951年 | 椅子 | ボウルチェア | Arper |
| 1950-58年 | 椅子 | トリペ・ジ・フェロ | — |
| 1968年 | 建築 | サンパウロ美術館(MASP) | サンパウロ、ブラジル |
| 1977-1986年 | 建築 | SESCポンペイア | サンパウロ、ブラジル |
| 1986年頃 | 椅子 | フレイ・エジディオ チェア | — |
| 1986年頃 | 家具 | ジラフ チェア&テーブル | — |
| 1940-90年代 | 建築・展示 | 住宅、文化施設、展示の設計 | ブラジル各地 |
プロフィール
| 生没年 | 1914年12月5日〜1992年3月20日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・ローマ |
| 国籍 | イタリア(のちブラジル) |
| 活動拠点 | サンパウロ、サルヴァドール |
| 分野 | 建築、家具、展示 |
| 主な協働ブランド | Arper |
Reference
- Instituto Bardi / Casa de Vidro
- https://institutobardi.org/
- MASP - Museu de Arte de São Paulo
- https://masp.org.br/en
- SESC Pompeia
- https://www.sescsp.org.br/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325