概要
ウンベルト・カンパーナ(1953年生まれ)は、ブラジルのデザイナーである。弟のフェルナンド・カンパーナと1983年にサンパウロでエストゥディオ・カンパーナを設立し、2022年に弟が没するまで共同で設計を行った。縄、端布、木片、ぬいぐるみといった、家具の材料として想定されていない物を大量に集めて構成する方法をとる。作品はいずれも二人の共同名義で発表されている。
バイオグラフィー
1953年3月17日、ブラジル・サンパウロ州リオ・クラロに生まれた。サンパウロ大学で法学を学び、学位を得ている。設計の専門教育は受けていない。
1983年、建築を学んだ弟のフェルナンドとサンパウロでエストゥディオ・カンパーナを設立した。初期は金属の彫刻的な物を制作し、家具として販売する形をとっている。
1989年、サンパウロで「Desconfortáveis(座り心地の悪いもの)」と題した展示を行った。1990年代に入ると、ヴェルメーリャ、ファヴェーラといった以後の代表作にあたる設計が生まれている。
1998年、ニューヨーク近代美術館の「Project 66: Campana/Ingo Maurer」展に出品した。1998年からイタリアのエドラが製品化を開始している。2022年11月、弟フェルナンドが没した後も、スタジオの活動を続けている。
デザインの思想と方法
カンパーナ兄弟が扱ったのは、家具の材料として認められていない物を、そのまま構造に使えるかという問題である。一本の縄、一片の木、一つのぬいぐるみは、単体では椅子を支えられない。しかし数を集めて相互に絡ませれば、全体として荷重を受ける面ができる。
単体では弱いものを大量に集める
ヴェルメーリャは、約500メートルの縄を金属の枠に手作業で巻きつけてつくる。縄は一本では張力しか受けないが、絡み合った塊になると圧縮にも耐える。巻き方は職人の手に委ねられ、同じ設計から同じ形は出ない。工程が形を決めるという構成である。
製作の手順を設計する
この方法では、部材の寸法を指定しても意味がない。設計者が決めるのは、材料の種類と量、支持する枠の形、そして巻く・積む・縛るといった手順である。結果の形は手順の反復から現れる。図面ではなく製作の規則を設計するという点で、通常の家具設計と順序が異なる。
手に入る材料から出発する
用いる材料は、サンパウロの市街で流通している安価な物が多い。縄、板材の端材、ホース、ぬいぐるみ、竹といった、専門の家具材料店にはない物である。材料の入手経路が設計の前提にあり、産業の供給網に依存しない構成をとっている。
手作業を量産に載せる
1998年からエドラが製品化した際も、縄を巻く工程は手作業のまま残された。同一の製品として流通しながら個体差が残るため、通常の量産品とは異なる位置づけになる。工程を機械化せずに製品化する形式にあたる。
エドラの歴史や他の製品について詳しくはエドラ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ヴェルメーリャ(1993年)
金属の枠に約500メートルの縄を手作業で巻きつけた椅子である。縄の絡み合いが座面と背もたれを形成するため、クッションも張り地も持たない。ポルトガル語で「赤」を意味する名のとおり、初期は赤い縄が用いられた。1998年からエドラが生産している。
ファヴェーラ(1991年)
木の端材を一片ずつ手で釘打ちし、接着して構成した椅子である。板の向きと長さが揃わないため、表面は不規則な凹凸になる。名称はブラジルの都市部の住宅密集地に由来し、限られた材料で構造をつくるという方法を参照している。→ファベーラチェア
コラーロ(2004年)
塗装した細い鋼線を手で曲げ、絡ませて椅子の形にしたものである。線材同士が交差する点で溶接され、全体として面になる。開口が多いため軽く、屋外でも使える。ヴェルメーリャの縄を金属線に置き換えた構成にあたる。
スシ(2002年)
カーペットやゴム、布の帯を巻いて円筒状にし、それを並べて座面とした椅子である。断面が層になって見えるため名称が付いた。材料の切り口をそのまま表面として扱う構成である。
バンケッチ(2002年)
市販のぬいぐるみを鋼の枠に縫い付けて構成した椅子である。ぬいぐるみは詰め物としても表面としても働く。既製品を材料として大量に用いるという方法が、最も直接に現れた例にあたる。
評価と影響
カンパーナ兄弟は一般に、ブラジルのデザインを国際的な文脈に置いた設計者と評価されている。ヨーロッパや北米の産業を前提としない材料と工程から出発した点が、繰り返し論じられる。
1998年のニューヨーク近代美術館での展示が、国外での評価の起点となった。同館は「Project 66」としてイタリアの照明デザイナー、インゴ・マウラーとの二人展を組んでいる。
手作業の工程を残したまま製品として流通させる形式は、その後の限定生産の家具にも影響している。すべての作品が兄弟の共同名義で発表されており、個々の担当を分けて記すことはされていない。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。いずれもフェルナンド・カンパーナとの共同名義で登録されている。
- MoMA ヴェルメーリャ チェア(1993年) 収蔵番号 290.1999
- MoMA インフレーティング テーブル(1996年) 収蔵番号 288.1999
- MoMA コーン チェア(1997年) 収蔵番号 287.1999
- MoMA オットマン(1998年) 収蔵番号 289.1999
- MoMA コラーロ アームチェア(2004年) 収蔵番号 495.2005
- Met ファヴェーラ チェア(1991年) 収蔵番号 2013.579
- AIC スシ チェア(2002年) 収蔵番号 2007.110
- AIC コラーロ チェア(2006年) 収蔵番号 2006.277
作品一覧
いずれもフェルナンド・カンパーナとの共同設計による。
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1991年 | 椅子 | ファベーラチェア | Edra |
| 1993年 | 椅子 | ヴェルメーリャ | Edra |
| 1996年 | テーブル | インフレーティング テーブル | — |
| 1997年 | 椅子 | コーン チェア | — |
| 2002年 | 椅子 | スシ | Edra |
| 2002年 | 椅子 | バンケッチ | Edra |
| 2004年 | 椅子 | コラーロ | Edra |
| 2007年 | 椅子 | セラ ペレイラ | Edra |
| 2008年 | 椅子 | カンパーナ×カッペリーニ シリーズ | Cappellini |
プロフィール
| 生年 | 1953年3月17日 |
|---|---|
| 出身地 | ブラジル・リオ・クラロ |
| 国籍 | ブラジル |
| 活動拠点 | サンパウロ |
| 分野 | 家具、インテリア |
| 主な協働ブランド | Edra、Cappellini、Alessi |
Reference
- Estudio Campana(公式)
- https://campanas.com.br/
- Campana Brothers | Edra
- https://www.edra.com/en/designers/fernando-humberto-campana
- Project 66: Campana/Ingo Maurer | The Museum of Modern Art
- https://www.moma.org/calendar/exhibitions/history
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection