概要

ヘラ・ヨンゲリウス(1963年生まれ)は、オランダのデザイナーである。1993年にヨンゲリウスラボを設立し、量産の工程に手作業の不揃いを組み込む方法をとってきた。2007年からヴィトラの色と素材の責任者を務め、既存の製品群の配色を体系として設計し直している。テキスタイルの分野でも、マハラムなどのために織組織の設計を継続している。

バイオグラフィー

1963年5月30日、オランダのデ・メールンに生まれた。アイントホーフェン・デザイン・アカデミーで学び、1993年に修了している。

同年、ロッテルダムにヨンゲリウスラボを設立した。初期には樹脂を用いた花器や、陶と樹脂を組み合わせた器物を発表している。1990年代後半からドローグ・デザインの一員として作品を発表した。

2000年代に入り、マハラムのためのテキスタイル、ヴィトラのためのポルダーソファなどを手がけた。2007年からヴィトラの色と素材の責任者を務めている。

2009年にベルリンへ拠点を移した。2016年から2018年にかけては、国際連合本部の信託統治理事会議場の改修に関わっている。

デザインの思想と方法

ヨンゲリウスが問題としたのは、量産が均質さを目的とすることである。同じ物を大量につくる工程では、ばらつきは不良として排除される。しかし手仕事にはばらつきが必ず生じ、それが物の性格を決めてもいる。両者をどう組み合わせるかが、彼女の仕事の主題にあたる。

工程に不揃いを組み込む

陶器では、釉薬の流れや焼成時の歪みを整えずに残す。テキスタイルでは、織組織を場所ごとに変えて表面の均一さを崩す。いずれも工程の側に変動の余地を設ける操作で、結果として同じ設計から異なる個体が出る。

色を体系として設計する

ヴィトラでの仕事は、個々の製品の色を決めるのではなく、製品群全体で使える色の体系をつくることにあたる。異なる時期の製品を並べたときに調和するかどうかが条件になるため、色は単独ではなく相互の関係で選ばれる。素材ごとに発色が違うため、同じ色名でも布・樹脂・塗装で調整が要る。

織組織で表情をつくる

テキスタイルでは、色ではなく織り方の側で表情を変える方法をとる。糸の太さと組織の密度を場所ごとに変えると、単色でも光の当たり方で模様が現れる。染色に頼らずに変化をつくるという構成である。

異なる材料を一つの物に同居させる

ポルダーソファでは、座面を複数の布地に分けて張り、ボタンで留める。布地は色も織りも異なり、通常は一つのソファに混在させない組み合わせになる。素材の混在を欠陥ではなく構成として扱う例にあたる。

代表作にみる方法

ソフト・ヴェース(1994年)

樹脂を型に流してつくる花器である。硬い陶器の形式を柔らかい材料で成形するため、置いたときに自重でわずかに変形する。型は同じでも個体ごとに歪み方が違い、量産と不揃いを両立させた初期の例にあたる。

リピート(2002年、マハラム)

織組織を一定の周期で変化させたテキスタイルの系列である。模様は染めではなく織りの変化によって現れるため、裏面にも同じ構造が現れる。クラシック、ドット、ハウンドトゥースなど複数の型が展開された。

ポルダーソファ(2005年、ヴィトラ)

低く長い座面を持つソファである。座面と背もたれを複数の布地に分けて張り、色と織りの異なる面を隣接させる。留めに用いるボタンも素材と大きさが揃っておらず、統一しないことが構成になっている。→ポルダーソファ

ヴィトラの色と素材の設計(2007年〜)

同社の製品群に用いる色と素材の体系を設計する役割である。過去の製品と新作を並べたときの整合を条件とし、材料ごとの発色の差を調整する。個別の製品の設計ではなく、選択肢そのものを設計する仕事にあたる。

国連 信託統治理事会議場の改修(2016-18年)

1952年にフィン・ユールが内装を設計した議場の改修である。既存の空間構成を保ったうえで、座席の張り地と大型の織物を新たに設計した。テキスタイルによって空間の音と光の条件を調整している。

評価と影響

ヨンゲリウスは一般に、量産の工程に手作業の性質を持ち込む方向を確立したオランダの設計者と評価されている。1990年代のドローグ・デザインの活動から出発し、以後この主題を継続してきた。

ヴィトラでの色と素材の設計は、製品単体ではなく製品群の選択肢を設計するという職能の例として言及される。既存の製品を含めて配色を組み直すという仕事は、通常の製品設計とは範囲が異なる。

テキスタイルの分野では、染色ではなく織組織で表情をつくる方法を継続している。V&Aは2024年に彼女のテキスタイルを多数収蔵した。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、AIC=シカゴ美術館)。

  • MoMA ソフト・ヴェース(1994年) 収蔵番号 429.1996.4
  • MoMA リピート クラシック(2001年) 収蔵番号 155.2005
  • MoMA リピート ドット(2001年) 収蔵番号 157.2005
  • MoMA レイヤーズ 張り地(2005-06年) 収蔵番号 449.2006
  • MoMA UN ラウンジチェア(2013年) 収蔵番号 392.2022
  • V&A デルフト・ブルー Bジャグ(2001年) 収蔵番号 C.5-2013
  • V&A リピート クラシック(2002年) 収蔵番号 T.16-2024
  • V&A リピート ドット(2002年) 収蔵番号 T.15-2024
  • V&A レイヤーズ パーク(2008年) 収蔵番号 T.13:1-2024
  • V&A アワーズ(2011年) 収蔵番号 T.12:1-2024
  • V&A コンフェッティ(2013年) 収蔵番号 T.7:1-2024
  • V&A カラーフィールド(2015年) 収蔵番号 T.11-2024
  • V&A リーフ(2016年) 収蔵番号 T.17:1-2024
  • V&A グレイズ(2019年) 収蔵番号 T.10:1-2024
  • AIC 刺繍のテーブルクロス(2000年) 収蔵番号 2009.12
  • AIC フェルト スツール(2000年) 収蔵番号 2007.283
  • AIC リピート テキスタイル(2002年) 収蔵番号 2007.114.1-4
  • AIC ヨンスベリ ヴェース(2005年) 収蔵番号 2008.694
  • AIC スネイル コーヒーテーブル(2009年) 収蔵番号 2018.539
  • AIC スフィア テーブル(2013年) 収蔵番号 2015.6

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1994年 花器 ソフト・ヴェース Droog Design
2000年 スツール フェルト スツール Jongeriuslab
2001年 器物 デルフト・ブルー Bジャグ Royal Tichelaar Makkum
2002年 テキスタイル リピート Maharam
2005年 ソファ ポルダーソファ Vitra
2005年 花器 ヨンスベリ ヴェース IKEA
2007年〜 色彩設計 ヴィトラの色と素材の体系 Vitra
2008年 テキスタイル レイヤーズ Maharam
2013年 椅子 UN ラウンジチェア Vitra
2016-18年 内装 国連 信託統治理事会議場 改修 ニューヨーク、アメリカ

プロフィール

生年 1963年5月30日
出身地 オランダ・デ・メールン
国籍 オランダ
活動拠点 ベルリン
分野 家具、テキスタイル、陶器、色彩設計
主な協働ブランド Vitra、Maharam、Magis、IKEA、Royal Tichelaar Makkum

Reference

Jongeriuslab(公式)
https://www.jongeriuslab.com/
Hella Jongerius | Vitra
https://www.vitra.com/en-us/product/designer/hella-jongerius
Hella Jongerius | Maharam
https://www.maharam.com/designers/hella-jongerius
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Art Institute of Chicago Collection
https://www.artic.edu/collection