概要

グレーテ・ヤルク(1920-2006)は、デンマークの家具デザイナーである。コーア・クリントに学び、成形合板による家具を手がけた。1963年のGJボウチェアは、2枚の合板を折り曲げただけで構成される椅子で、部材の数を最小にした例にあたる。設計と並行して雑誌の編集にも携わり、デンマーク家具工匠組合展の作品集を編纂している。

バイオグラフィー

1920年6月18日、コペンハーゲンに生まれた。家具職人の訓練を受けたのち、デンマーク王立芸術アカデミーでコーア・クリントに学び、1946年に修了している。

1950年代から家具の設計を始め、複数のメーカーのために製品を手がけた。並行して雑誌『Mobilia』の編集にも携わっている。

1963年、イギリスの新聞『デイリー・メール』が主催した競技設計に応募し、GJボウチェアを発表した。ポウル・イェプセンが製作している。

1975年から1987年にかけて、デンマーク家具工匠組合展の作品を4巻の書籍にまとめた。2006年に没している。

デザインの思想と方法

ヤルクが扱ったのは、成形合板という材料でどこまで部材を減らせるかという問題である。合板は平面のまま曲げられるため、板を折ることで座面と脚を同時につくれる。この性質を極限まで使うと、椅子は2枚の板だけになる。

1枚の板で複数の部位を担わせる

GJボウチェアは、2枚の合板からなる。1枚が座面と脚を、もう1枚が背もたれと後脚を担う。それぞれが折れ曲がることで、部位の区別なく荷重を受ける。部材が2枚しかないため、接合も最小限で済む。

曲げの限界を形の条件とする

合板には曲げられる曲率の限界がある。GJボウチェアの緩やかな曲線は、この限界の内側で最も強い曲げを用いた結果にあたる。造形上の選択ではなく、材料の性質が輪郭を決めている。

木工の訓練を前提とする

家具職人の訓練を受けており、コーア・クリントのもとでは既存の家具の寸法を測って分析する方法を学んだ。材料と工程を知ったうえで設計するという立場にある。

記録の仕事

デンマーク家具工匠組合展は、1927年から続いた家具の展示会である。ヤルクはその作品を4巻にまとめ、設計と製作の記録を残した。設計者としての仕事と並行する活動にあたる。

代表作にみる方法

GJボウチェア(1963年)

2枚の成形合板を折り曲げて構成した椅子である。1枚が座面と脚を、もう1枚が背と後脚を担う。曲げの曲率は合板の限界の内側にあり、輪郭は材料の性質から決まっている。イギリスの競技設計への応募作にあたり、ポウル・イェプセンが製作した。当初の製造数は限られている。ニューヨーク近代美術館、V&A、メトロポリタン美術館が収蔵している。

クレデンザ モデル41

木の箱を脚が支える収納である。突板の木目を面ごとに合わせ、取っ手は面の切り欠きとする。合板の椅子とは異なり、木工の技術を前提とした構成にあたる。→グレーテ・ヤルク クレデンザ Model 41

ネストテーブル

大きさの異なる卓を入れ子にできる組である。同じ構成で寸法だけを変え、重ねて収納できる。

デンマーク家具工匠組合展の記録(1975-1987年)

1927年から続いた展示会の作品を4巻の書籍にまとめた。設計と製作の記録として、以後の研究の基礎資料になっている。

評価と影響

ヤルクは一般に、デンマークの家具設計において成形合板の可能性を追った設計者と評価されている。GJボウチェアは、部材を2枚にまで減らした例として繰り返し言及される。

当初の製造数は限られており、広く普及した製品ではない。1980年代以降に再生産され、現在も入手できる。

デンマーク家具工匠組合展の記録は、同展の作品を体系的にまとめた資料として扱われる。設計者としての活動と並行して、記録の側にも関わった例にあたる。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。いずれもGJボウチェア(1963年)にあたる。

  • MoMA ラウンジチェア(1963年) 収蔵番号 1427.2000
  • V&A 椅子(1963年) 収蔵番号 W.26-2016
  • Met ラウンジチェア(1963年) 収蔵番号 2001.125

AIC では該当する収蔵は確認できなかった。なお MoMA の収蔵は2000年であり、1963年ではない。

作品一覧

区分 作品名 ブランド
1963年 椅子 GJボウチェア Poul Jeppesen / Lange Production
1950-60年代 収納 グレーテ・ヤルク クレデンザ Model 41 Poul Jeppesen
1950-60年代 テーブル ネストテーブル Poul Jeppesen
1950-70年代 家具 各社のための椅子・卓・収納 France & Søn ほか
1975-1987年 書籍 デンマーク家具工匠組合展の記録(全4巻)

プロフィール

生没年 1920年6月18日〜2006年
出身地 デンマーク・コペンハーゲン
国籍 デンマーク
活動拠点 コペンハーゲン
分野 家具、編集
主な協働ブランド Fritz Hansen、Poul Jeppesen、Lange Production

Reference

Lange Production
https://www.langeproduction.com/
Designmuseum Danmark
https://designmuseum.dk/en/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Metropolitan Museum of Art Collection
https://www.metmuseum.org/art/collection