概要
ゲルト・A・ミュラー(1932-1991)は、ドイツのインダストリアルデザイナーである。1955年から1960年までブラウンに在籍し、キッチンマシンKM 3などの台所用家電や電気シェーバーを担当した。独立後の1966年にラミーのために設計したラミー2000は、ポリカーボネート(マクロロン)とステンレス鋼を組み合わせた万年筆で、現在も生産が続いている。
バイオグラフィー
1932年、フランクフルト・アム・マインに生まれた。ヴィースバーデンの工芸学校(Werkkunstschule Wiesbaden)でインテリアを学ぶには手工業の修業が入学の条件だったため、フランクフルトの修復家のもとで指物師の修業を積み、のちに同校で学んでいる。
1955年、ブラウンに加わった。キッチンマシンの改良にあたって石膏模型の製作者として招かれたのが始まりで、1956年半ばに設計部門が組織されると、ディーター・ラムスらとともにその一員となった。1960年まで在籍している。
1960年に独立し、「Innovation und Design – Atelier 8」の名で活動した。ラミーの筆記具のほか、ヴェガのテレビとレコードプレーヤーのシリーズ「System 3000」も手がけている。1991年に没した。
デザインの思想と方法
ミュラーは自らの仕事を「目立たず、従属し、溶け込むデザイン」と述べている。使う場面の中で道具が主張しすぎないことを目標とした。
模型で形を決める
ブラウン時代のミュラーは、木材と石膏で模型をつくりながら形を詰めた。簡単なスケッチを描くとすぐに模型に取りかかり、キッチンマシンKM 3でも、台座やボウル、撹拌アームの木製模型から石膏模型へと進めている。
異なる材料をひとつの面にまとめる
ラミー2000では、ポリカーボネートの胴とステンレス鋼の部品を、境目が目立たないように組み合わせている。胴のポリカーボネート、ステンレス鋼の部品とも、つや消しのヘアライン仕上げである。
代表作にみる方法
キッチンマシン KM 3(1957年)
1957年4月に発売された台所用のキッチンマシンである。ミュラーが木製・石膏の模型を重ねて形を決めた。ニューヨーク近代美術館が収蔵するKM 32は、同館の記録ではミュラーとロベルト・オーバーハイムの共同設計である。
マルチプレス ジューサー(モデルMP 3、1957年)
果汁を絞る台所用の家電で、ニューヨーク近代美術館の記録ではミュラー単独の設計とされている。
コンビ 電気シェーバー(1957年)
ディーター・ラムスとの共同設計による電気シェーバーである。ヘッドの片側に固定式のトリマーを備えたことが「コンビ」の名の由来となった。
シクスタント SM 31(1962年)
ハンス・グゲロットとの共同設計による電気シェーバーである。ポンピドゥー・センターなどがミュラーとグゲロットの名で記録している。
ラミー2000(1966年)
マンフレート・ラミーとともに開発した万年筆である。ポリカーボネートとステンレス鋼という性質の異なる材料を、継ぎ目が見えないように組み合わせている。→ラミー 2000 万年筆
評価と影響
ブラウン時代の設計について、ミュラーが設計者として名前を挙げられるようになったのは1980年代以降である。2021年にはルチア・ホルンフィッシャーによる評伝『Gerd A. Müller. Der unbekannte Designer / The Designer Who Got Forgotten』(av edition)が刊行された。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。計4件が確認できた。
- MoMA コンビ 電気シェーバー(1957年、ディーター・ラムスと共同) 収蔵番号 2283.2001.a-f
- MoMA マルチプレス ジューサー(モデルMP 3、1957年) 収蔵番号 354.1960.a-i
- MoMA キッチンマシン(モデルKM 32、1957年、ロベルト・オーバーハイムと共同) 収蔵番号 561.1964.a-e
- MoMA 携帯用ミキサー(モデルM121、1964年) 収蔵番号 554.1964.a-g
V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1957年 | 家電 | キッチンマシン KM 3 | Braun |
| 1957年 | 家電 | マルチプレス ジューサー MP 3 | Braun |
| 1957年 | 家電 | コンビ 電気シェーバー(ラムスと共同) | Braun |
| 1962年 | 家電 | シクスタント SM 31(グゲロットと共同) | Braun |
| 1964年 | 家電 | 携帯用ミキサー M121 | Braun |
| 1965〜1966年 | 家電 | System 3000(テレビ・レコードプレーヤー) | Wega |
| 1966年 | 筆記具 | ラミー 2000 万年筆 | LAMY |
| 1984年 | 筆記具 | ラミー ユニック | LAMY |
プロフィール
| 生没年 | 1932年〜1991年 |
|---|---|
| 出身地 | ドイツ、フランクフルト・アム・マイン |
| 国籍 | ドイツ |
| 分野 | 家電、筆記具 |
| 主な協働ブランド | Braun、LAMY、Wega |
Reference
- LAMY – 55 years of Lamy design(LAMY 2000とゲルト・A・ミュラー)
- https://lamy.com/en/lamy-2000-brown
- German Design Council – Design that is subordinate and blends in(Thomas Wagner, 2021)
- https://www.german-design-council.de/en/design-perspectives/article-detail/design-that-is-subordinate-and-blends-in
- designundtext – Artur Braun and Müller: Developing the Braun KM 3
- https://www.designundtext.com/en/design-und-design-zero/1.4_artur-braun-km3-pbddzero.php
- Centre Pompidou – Rasoir Sixtant SM 31
- https://centrepompidou.fr/en/ressources/oeuvre/cBAARdE
- The Museum of Modern Art – Multipress Juice Extractor (model MP 3)
- https://www.moma.org/collection/works/3397
- The Museum of Modern Art – Combi Electric Shaver
- https://www.moma.org/collection/works/1157