概要

フェルナンド・カンパーナ(1961-2022)は、ブラジルのデザイナーである。建築を学んだのち、1983年に兄のウンベルト・カンパーナとサンパウロでエストゥディオ・カンパーナを設立し、没するまで共同で設計を行った。作品はすべて二人の共同名義で発表されている。設計の専門教育を受けたのは兄弟のうちフェルナンドのみで、構造と製品化の側を担ったとされる。

バイオグラフィー

1961年5月19日、ブラジル・サンパウロ州ブリに生まれた。サンパウロのファアプ大学(FAAP)で建築を学び、学位を得ている。

1983年、兄のウンベルトとサンパウロでエストゥディオ・カンパーナを設立した。ウンベルトは法学を修めており、設計の課程を経ていない。

1989年のサンパウロでの展示を経て、1990年代に入ると、以後の代表作にあたる一連の椅子が生まれた。1998年にニューヨーク近代美術館で展示が組まれ、同年からイタリアのエドラが製品化を開始している。

2000年代以降は、家具に加えて店舗の内装、公共空間の設置物、装身具にも仕事を広げた。2022年11月16日、サンパウロで61歳で没している。

デザインの思想と方法

エストゥディオ・カンパーナの設計は、手作業の反復から形が現れることを前提とする。この方法をとる限り、同じ設計から同じ形は出ない。製品として流通させるには、どこまでのばらつきを許すかを決める必要がある——フェルナンドが担ったのは、主にこの側面だった。

ばらつきの範囲を決める

縄を巻く椅子を量産に載せる場合、枠の寸法と縄の総量は固定できるが、巻きの経路は職人ごとに変わる。座り心地と強度を一定に保ちつつ、外観の差を許容する——この線引きが製品規格になる。工程を機械化せずに製品化するという選択は、この設定が成り立つかどうかにかかっている。

構造と表面を別に確保する

ヴェルメーリャやコラーロでは、外から見えるのは縄や線材だが、荷重の大半は金属の枠が受ける。絡み合った材料は座面の形と触感を担い、支持は別に確保されている。役割を分離することで、表面に使える材料の範囲が広がるという関係にある。

既製品の寸法に設計を合わせる

ぬいぐるみ、ホース、カーペットの帯といった既製品は、寸法も材質も設計側で決められない。そのまま部材にするには、数量でばらつきを吸収するか、切断して断面を見せるかのいずれかになる。バンケッチとスシは、この二つの解き方にあたる。

供給網に依存しない

用いる材料はサンパウロの市街で流通する安価な物が多く、家具材料の専門的な供給網を前提としない。ブラジルで設計と製作を続けるうえでの制約が、そのまま方法の条件になっている。

代表作にみる方法

ファヴェーラ(1991年)

木の端材を一片ずつ釘打ちし、接着して構成した椅子である。部材が小さいほど手数は増えるが、材料は身近な物で足りる。この交換関係が構成の前提にあり、板の長さと向きが揃わないため表面は不規則な凹凸になる。2003年からエドラが生産している。→ファベーラチェア

ヴェルメーリャ(1993年)

金属の枠に長い縄を手で巻きつけた椅子である。エドラが製品化するにあたっては、縄の総量と枠の寸法を固定したうえで、巻きの経路は職人に委ねるという形をとった。外観の差を許容しながら座り心地と強度を一定に保つ、という規格の設定が前提になっている。

スシ(2002年)

カーペット、ゴム、布の帯を巻いて円筒にし、それを並べて座面とする椅子である。既製品の厚みは選べないため、円筒の径は材料の側で決まる。設計で決められるのは並べる本数と全体の輪郭だけになる。

バンケッチ(2002年)

市販のぬいぐるみを鋼の枠に縫い付けて構成した椅子である。使う品は入荷によって変わるため、二脚として同じものはない。製品としての同一性は、外形の寸法と縫い付ける密度の指定だけで担保されている。

コラーロ(2004年)

細い鋼線を手で曲げ、交差する点を溶接して椅子の形にしたものである。溶接によって形が固定されるため、縄を用いた椅子では成立しない屋外での使用に耐える。同じ構成の考え方を、要求条件に応じて別の材料で実現した例にあたる。

評価と影響

兄弟のうち設計の課程を経たのはフェルナンドのみであり、建築の訓練が製品化の局面で働いたとする見方がある。ただし作品はすべて共同名義で発表され、個々の担当は公表されていないため、分担を確定的に述べることはできない。

スタジオの仕事は、産業の供給網に依存しない材料選択と、機械化しない工程を製品として流通させた点で論じられてきた。日用品や廃材を家具の構造に用いる試みは以後も各地で行われているが、それを製品規格に載せた例は少ない。

2022年11月の没後、スタジオはウンベルトのもとで活動を続けている。生前の設計は現在もエドラとカッペリーニが生産する。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。いずれもウンベルト・カンパーナとの共同名義で登録されている。

  • MoMA ヴェルメーリャ チェア(1993年) 収蔵番号 290.1999
  • MoMA インフレーティング テーブル(1996年) 収蔵番号 288.1999
  • MoMA コーン チェア(1997年) 収蔵番号 287.1999
  • MoMA オットマン(1998年) 収蔵番号 289.1999
  • MoMA コラーロ アームチェア(2004年) 収蔵番号 495.2005
  • Met ファヴェーラ チェア(1991年) 収蔵番号 2013.579(登録上の筆頭者はウンベルト・カンパーナ)
  • AIC スシ チェア(2002年) 収蔵番号 2007.110
  • AIC コラーロ チェア(2006年) 収蔵番号 2006.277

作品一覧

スタジオ全体の作品一覧はウンベルト・カンパーナのページに掲げている。以下は主要な設計の抜粋である。

発表年 区分 作品名 ブランド
1991年 椅子 ファベーラチェア Edra
1993年 椅子 ヴェルメーリャ Edra
2002年 椅子 スシ Edra
2002年 椅子 バンケッチ Edra
2004年 椅子 コラーロ Edra

プロフィール

生没年 1961年5月19日〜2022年11月16日
出身地 ブラジル・ブリ
国籍 ブラジル
活動拠点 サンパウロ
分野 家具、インテリア
主な協働ブランド Edra、Cappellini、Alessi

Reference

Estudio Campana(公式)
https://campanas.com.br/
Campana Brothers | Edra
https://www.edra.com/en/designers/fernando-humberto-campana
Campana Brothers | Cappellini
https://www.cappellini.com/ww/en/designers/campana-brothers.html
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Metropolitan Museum of Art Collection
https://www.metmuseum.org/art/collection