LEFF Amsterdam / レフ・アムステルダム:「誰も時計を必要としない時代」に挑むダッチデザインの旗手
誰もがスマートフォンで時刻を確認できる現代において、あえて時計をつくる意味とは何か。LEFF Amsterdam(レフ・アムステルダム)は、その根源的な問いを出発点に、2011年にオランダ・アムステルダムで誕生したデザインブランドである。ブランド名の「LEFF」はオランダ語で「勇気」を意味し、他者がなし得ないことに挑む精神を体現している。
創業者であるアルノ・ライゼナールスとデニス・ライゼナールス兄弟、そしてデザイナーのエルウィン・テルマートの三者が結集し、「機能的な美」の追求を掲げて設立された同ブランドは、インテリアクロックの領域で瞬く間に国際的な評価を獲得した。その後、活動領域は腕時計やBluetoothスピーカーへと拡張され、ピート・ヘイン・イーク、セバスチャン・ヘルクナー、リチャード・ハッテンといった世界的デザイナーとのコラボレーションを通じて、唯一無二のプロダクトを世に送り出し続けている。
「我々はアーティストではない。しかし、機能的な美の追求に生涯を捧げている」——この創業理念のもと、LEFF Amsterdamは伝統を尊重しながらも既成概念に挑戦し、時を刻むという行為そのものに新たな価値を与え続けている。
ブランドの特徴・コンセプト
LEFF Amsterdamのデザイン哲学は、「コンセプト・イズ・キング(概念こそが王である)」という信条に集約される。オランダのデザイン伝統を受け継ぎ、あらゆるプロダクトにおいて最高水準の品質を追求しつつ、従来の在り方を変革することを恐れない姿勢がブランドの核心をなしている。
「誰も必要としないもの」への挑戦
LEFF Amsterdamの出発点は、逆説的な発想にある。デジタルデバイスが普及し、時計という道具が実用的な必需品ではなくなった時代において、なおも人々が手元に置きたいと思える「美しい何か」を創造すること。この哲学は、単なる時間表示器としてではなく、空間を彩るアートピースとしての時計のあり方を再定義するものである。
インダストリアルかつ洗練された美学
同ブランドのプロダクトに通底するのは、工業的な力強さと繊細な美しさの共存である。ステンレススティール、真鍮、銅といった金属素材を主軸に、手作業による溶接やブラッシング仕上げを施すことで、量産品でありながら工芸品のような質感を実現している。素材の選定においては、信頼性の高い責任ある調達先からの高品質な素材のみを使用し、すべてのプロダクトが一点ずつ検品される徹底した品質管理体制を敷いている。
世界的デザイナーとの協働
LEFF Amsterdamの大きな特徴は、世界各国の著名デザイナーとのコラボレーションを通じてコレクションを構築している点にある。各デザイナーがそれぞれの署名的スタイルをコレクションに加えることで、ブランドの個性が多面的に形成されている。この協働体制により、一つのブランドでありながら多様な表現を内包する稀有なポートフォリオが生み出されている。
「Less of the same, more of the different」
ブランドのモットーである「同じものは少なく、異なるものをより多く」は、市場における差別化戦略であると同時に、デザインに対する根本的な態度の表明でもある。商業的な妥協を排し、真に革新的なプロダクトのみを世に送り出すという創業時からの決意が、このフレーズに凝縮されている。
ブランドヒストリー
創業:時計への情熱から生まれたブランド(2011年)
LEFF Amsterdamは2011年、アルノ・ライゼナールスを中心に、弟のデニス・ライゼナールスとデザイナーのエルウィン・テルマートの三名によってオランダ・アムステルダムで設立された。創業の動機は、商業的な制約に縛られることなく、純粋にデザインの質を追求できるブランドを立ち上げたいという強い意志にあった。
設立と同時に発表されたのが、テルマートがデザインした「Brick(ブリック)」クロックである。ヴィンテージのフリップクロックを現代的に再解釈したこのプロダクトは、手溶接・手磨きのステンレススティールケースに日本製精密ムーブメントを搭載し、デスク上にも壁掛けにも対応する汎用性を備えていた。その革新的なデザインと卓越した品質は、デザイン業界に即座に注目された。
ピート・ヘイン・イークとの出会い:Tubeシリーズの誕生(2013〜2014年)
2013年、壁紙ブランドNLXLとの仕事を通じてピート・ヘイン・イークの存在を知ったアルノは、このオランダを代表するデザイナーにコラボレーションを持ちかけた。アイントホーフェンのデザインアカデミー出身で、廃材を用いた家具で世界的名声を得ていたイークは、当初は自社以外との協業に慎重であったが、押し出し成形のリングをモチーフにした時計という着想を得て、プロジェクトへの参加を決意した。
こうして誕生した「Tube(チューブ)」シリーズは、真鍮、銅、ステンレススティールの円筒形クロックとBluetoothスピーカー、さらに天然木のベースを組み合わせた「Tube Wood」で構成される。2014年のダッチデザインウィークにおいてイークのスタジオで発表されたこのコレクションは、LEFF Amsterdamの国際的認知を決定的なものとした。
コレクションの拡充と腕時計への展開(2015年〜)
2015年のミラノデザインウィークでは、リチャード・ハッテンとのコラボレーションによる「Inverse(インバース)」ミラークロックと、ピート・ヘイン・イークによる「Tube Watch」腕時計を同時発表。これにより、LEFF Amsterdamはインテリアクロックの枠を超え、ウォッチメーカーとしての新たな領域を開拓した。
Tubeウォッチシリーズは、D38、S42、T40、T32といったサイズ展開を持ち、イークのデザイン哲学を腕時計のスケールに凝縮した。サファイアガラスや日本製ムーブメント(Miyota、Seika)を搭載し、100m防水対応のモデルも擁するなど、実用性においても高い水準を維持している。
現在:アムステルダムから世界へ
現在、LEFF Amsterdamはアムステルダム市内中心部のスタジオを拠点に、腕時計を主軸としながらクロックやスピーカーの展開も継続している。法人としてはVanMokum BV(アムステルダム)が運営母体となり、世界各国の正規販売店およびオンラインストアを通じてグローバルに製品を提供している。創業以来一貫して「コンセプト・イズ・キング」の理念を堅持しながら、国際的なデザイナーとの協働を通じて、時を刻む行為に新たな意味を付与し続けている。
主なインテリアプロダクト
Brick(ブリック)クロック — デザイン:エルウィン・テルマート(2011年)
LEFF Amsterdam創業と同時に発表された、ブランドの原点ともいうべきフリップクロックである。1960年代に一世を風靡したフリップ式時計の機構を、現代の素材とグラフィックの組み合わせによって再解釈した。ステンレススティールのケースは手作業で溶接・ブラッシングされ、工芸品のような品格を湛えている。日本製精密ムーブメントを搭載し、毎分フリップが静かにめくれる様は、デジタル時代にあっても見る者の視線を釘付けにする。デスク置きと壁掛けの両方に対応し、12時間表示と24時間表示のモデルが用意されている。仕上げはステンレススティール、マットブラック、コッパーの各バリエーションが展開されており、5年間のメーカー保証が付属する。
Tube(チューブ)クロック — デザイン:ピート・ヘイン・イーク(2014年)
Tubeクロックは、LEFF Amsterdamとオランダの巨匠ピート・ヘイン・イークとの協働から生まれた、ブランドを代表するアイコニックなプロダクトである。押し出し成形の金型からインスピレーションを得たイークは、クロックの文字盤に押し出しリングのモチーフを採用するという、時計の歴史上前例のない手法を用いた。金属を金型に通すことで形成される円筒形のフォルムは、ミニマルでありながら強い存在感を放つ。真鍮、銅、ステンレススティールの3色展開に加え、ブラックアッシュ、ナチュラルヘヴェア、ブラウンオークの天然木ベースに組み込んだ「Tube Wood」も用意されている。3針クォーツムーブメントを搭載し、LR44電池で駆動する。クリーニングクロスと取扱説明書が付属し、5年間のメーカー保証が提供される。
Tube Alarm Clock(チューブ・アラームクロック)— デザイン:ピート・ヘイン・イーク(2021年)
Tubeシリーズの設計思想を卓上アラームクロックへと昇華させたプロダクトである。チューブクロックと同じ押し出しリングの文字盤デザインを継承しつつ、背面にアラームとスヌーズ機能を配置することで、デザインの純粋性を損なわない巧みな設計がなされている。イーク自身が語るように、「良いアイデアは驚くほどシンプルであり得る」というLEFF Amsterdamの哲学を体現する一品である。
Tube Audio(チューブ・オーディオ)スピーカー — デザイン:ピート・ヘイン・イーク
Tubeクロックの開発過程で偶然生まれたBluetoothスピーカーである。クロックと同じ円筒形のフォルムを共有しながら、内部には高品質なオーディオコンポーネントを搭載。LEFF Amsterdamのチームは、多くのスピーカーが技術的に優れているか、デザイン的に優れているかのいずれか一方であることに着目し、その両者を高次に統合することを目指した。スマートフォン、タブレット、コンピュータとBluetooth接続し、小型ながら驚くべき音響品質を実現している。
Felt(フェルト)ウォールクロック — デザイン:セバスチャン・ヘルクナー(2012年)
ドイツの新星デザイナー、セバスチャン・ヘルクナーが手がけた壁掛け時計である。60%リサイクルPET素材のフェルトを文字盤に使用し、サステナビリティをデザインの核心に据えた先駆的なプロダクトとなった。フェルト素材は吸音性を有するため、静音性にも優れている。直径25cm、35cm、45cmの3サイズ展開で、グレーのフェルトボディにコーティングされた針を組み合わせた、控えめでありながら個性的な佇まいが特徴である。日本製クォーツムーブメントを搭載する。ヘルクナーはオッフェンバッハ造形大学でプロダクトデザインを学び、素材と色彩への深い理解に基づくデザインで国際的に高い評価を受けている。
Inverse(インバース)ミラークロック — デザイン:リチャード・ハッテン(2015年)
オランダで最も国際的に成功したデザイナーの一人、リチャード・ハッテンによる、ミラーと時計のハイブリッド作品である。高さ180cm、幅50cmのソリッドオーク材フレームにミラーガラスを嵌め込み、円形の透過部分から文字盤と針が見える構造を持つ。文字盤のダイヤルを回転させることで12時の位置を変更できるため、縦置き、横置き、壁に立てかけるなど、多様な設置方法に対応する。ドイツ製UTSムーブメントを搭載し、ナチュラルオークとブラックオークの2色展開。2015年のミラノデザインウィークで発表され、LEFF Amsterdamにとって初の家具的プロダクトとなった。ハッテン自身が「単一の機能に限定されないオブジェクト」を志向する姿勢が、このプロダクトに結実している。
Block(ブロック)アラームクロック — デザイン:エルウィン・テルマート(2013年)
テルマートがデザインしたコンパクトなベッドサイドクロック。ステンレススティールとABSのケースにシンプルな矩形フォルムを与え、文字盤はブラックとホワイトの大胆なコントラストで視認性を最大化している。蓄光針とダイヤルライトにより暗所でも時刻を容易に確認でき、スヌーズ機能も搭載する。ホワイト、ブラック、コッパーのカラーバリエーションが用意されており、アラビア数字タイプ(Block Arabic)もラインナップされている。
One(ワン)ウォールクロック — デザイン:ヴィーベ・テールトストラ
オランダ人デザイナー、ヴィーベ・テールトストラによるウォールクロックシリーズ。最高級のステンレススティールを用いたブラッシュ仕上げのケースに、日本製クォーツムーブメントを搭載した、LEFF Amsterdamの定番的プロダクトである。直径25cm、35cm、45cmの3サイズ展開で、技術的精密さとミニマルな美学を高次に統合している。
Tone(トーン)ウォールクロック — デザイン:ヴィーベ・テールトストラ
同じくテールトストラによるモノクロームのウォールクロック。装飾を徹底的に排したミニマルなデザインで、文字盤にグロスコート紙を使用するという独自のアプローチにより、静謐で上品な存在感を実現している。直径35cm、ステンレススティール、ガラス、ABS素材で構成される。
主なデザイナー
エルウィン・テルマート(Erwin Termaat)
1986年、オランダ・プッテン生まれ。ズヴォレのウィンデスハイム応用科学大学にてデザイン・エンジニアリングの学位を取得。2011年、ライゼナールス兄弟とともにLEFF Amsterdamを共同設立し、インハウスデザイナーとして活動。エンジニアリングのバックグラウンドを活かし、工業的な質実さとコンテンポラリーなデザインを融合させたプロダクトを生み出している。代表作にBrick(ブリック)クロック、Block(ブロック)アラームクロックがある。
ピート・ヘイン・イーク(Piet Hein Eek)
1967年生まれ。1990年にアイントホーフェンのデザインアカデミーを卒業。卒業制作の廃材家具コレクションで世界的注目を集め、以来、サステナブルデザインの先駆者として活躍。パートナーのノブ・ライグロクとともにEek en Ruijgrokスタジオを運営し、家具、照明、眼鏡からカスタムメイドのインテリア、バケーションハウスまで幅広い領域を手がける。LEFF Amsterdamとは2013年より協働を開始し、Tubeシリーズ(クロック、オーディオ、ウォッチ)を展開。素材、技術、職人技を一貫したテーマとする彼のデザインは、LEFF Amsterdamのブランドアイデンティティを決定づけるものとなった。
セバスチャン・ヘルクナー(Sebastian Herkner)
1981年生まれ。ドイツ・オッフェンバッハ造形大学でプロダクトデザインを学び、在学中にはステラ・マッカートニーのもとでインターンを経験。2006年に自身のスタジオを設立し、Moroso、ClassiConなどの著名ブランドとの協業を展開。素材、色彩、テクスチュアに対する深い理解と、伝統的な工芸技術と先端技術の融合を特徴とする。LEFF Amsterdamではリサイクルフェルトを用いたFelt(フェルト)ウォールクロックをデザインし、サステナビリティとデザインの美的融合を示した。
リチャード・ハッテン(Richard Hutten)
オランダで最も国際的に成功したデザイナーの一人として知られ、「ダッチデザイン」の概念と密接に結びついた存在である。単一の機能に限定されない多機能的なオブジェクトを追求する姿勢が特徴で、LEFF Amsterdamでは2015年にInverse(インバース)ミラークロックをデザイン。ミラーとクロックのハイブリッドという前例のないコンセプトは、ブランド初の家具的プロダクトとして大きな反響を呼んだ。
ヴィーベ・テールトストラ(Wiebe Teertstra)
オランダ人デザイナー。LEFF AmsterdamのOne(ワン)ウォールクロック、Tone(トーン)ウォールクロックなど、技術的精密さとミニマルな美学を融合させたプロダクトを手がけている。ブラッシュドステンレススティールと日本製クォーツムーブメントを組み合わせた彼の作品群は、LEFF Amsterdamのラインナップに端正な定番的存在を加えている。
基本情報
| ブランド正式名称 | LEFF amsterdam(レフ・アムステルダム) |
|---|---|
| 設立 | 2011年 |
| 創業者 | アルノ・ライゼナールス(Arno Ruijzenaars)、デニス・ライゼナールス(Dennis Ruijzenaars)、エルウィン・テルマート(Erwin Termaat) |
| 所在地 | Vijzelstraat 68-78, 1017 HL Amsterdam, The Netherlands(オフィス)/Damsluisweg 15, 1332EA Almere, The Netherlands(スタジオ) |
| 運営法人 | VanMokum BV(Herengracht 180, 1016 BR Amsterdam) |
| 主な製品カテゴリ | 腕時計、インテリアクロック(壁掛け・卓上)、Bluetoothスピーカー |
| 主なコラボレーター | ピート・ヘイン・イーク、セバスチャン・ヘルクナー、リチャード・ハッテン、ヴィーベ・テールトストラ |
| 公式サイト | https://leffamsterdam.com/ |