J.L. Møllers Møbelfabrik(J.L.モラー・モーブゥファブリック)
J.L. Møllers Møbelfabrikは、1944年にデンマーク・オーフスで創業した、80年以上の歴史を誇る家族経営の家具メーカーです。創業者であり卓越したキャビネットメーカーであったニールス・オットー・モラーは、デンマーク・モダニズムを代表するダイニングチェアの傑作を数多く生み出し、その名を世界に知らしめました。
同社の製品は、洗練されたデザインと妥協なき職人技の融合により、発表から半世紀以上を経た現在も色褪せることなく、世界中のコレクターやデザイン愛好家から高い評価を受け続けています。すべての製品はオーフスの自社工場において、伝統的な手作業と最新のテクノロジーを融合させながら、100%デンマーク製造というこだわりのもとで生み出されています。
ブランドの特徴・コンセプト
時を超えるデザイン哲学
J.L. Møllers Møbelfabrikのデザイン哲学は、創業者ニールス・オットー・モラーが掲げた「時代や流行を超越した家具づくり」という信念に根ざしています。1974年にデンマーク家具製造協会から贈られた言葉にあるように、モラーは「時代やファッショントレンドを超えて常に仕事をしてきた」デザイナーであり、その美学は今日まで受け継がれています。
同社の製品には、不必要な要素を一切排除し、真に必要なものだけに集中するというデザイン原則が貫かれています。この哲学は、各チェアの接合部や表面処理に至るまで反映され、構造の美しさそのものがデザインの核となっています。脚部間にストレッチャー(補強材)を必要としない堅牢な構造は、伝統的なほぞ接ぎ技法と高品質な接着技術によって実現されており、クリーンで流麗なシルエットを可能にしています。
100%デンマーク製造へのこだわり
J.L. Møllers Møbelfabrikは、創業以来一貫して自社工場での完全生産体制を維持してきました。原材料の選定から、切断、蒸気曲げ加工、組み立て、研磨、ペーパーコード編み、張り地仕上げ、そして最終品質検査に至るまで、すべての工程がオーフスの工場内で行われています。
熟練した職人たちは、50年以上使用されてきた旋盤機械や、創業当時から受け継がれる木工用接着剤と刷毛を用いながら、一脚一脚に真心を込めて製作を行います。特にペーパーコード編みの工程では、数百メートルにも及ぶリサイクルペーパーコードを、伝統的な平織り技法で何時間もかけて丁寧に編み込んでいきます。最長のベンチでは、この編み込み作業に7時間以上を要することもあります。
ブランドヒストリー
創業期(1944年〜1950年代)
1944年、デンマーク人のキャビネットメーカーであるニールス・オットー・モラーは、妻キルステンと共にオーフス市中心部にあった50平方メートルの元自転車小屋を改装し、小さな家具工房を開設しました。当初はダイニングルームやリビングルームの家具をオーダーメイドで製作し、ニールス・オットーが一点一点を自ら手掛け、キルステンが高品質な素材の調達と顧客対応を担当していました。
1950年代初頭、モラー夫妻は受注生産から量産チェアの製造へと事業を転換します。ニールス・オットーは自らデザインと製造を行い、これがモラー・コレクションの公式な始まりとなりました。1951年、彼は初のダイニングチェアとしてModel 71とModel 55を発表。その優美なデザインと卓越した職人技は直ちに高い評価を受け、巨匠フランク・ロイド・ライトのサンフランシスコにおける「ハナ・ハウス」プロジェクトに採用されるという栄誉に浴しました。この出来事は、同社の国際的な名声を確立する重要な転機となりました。
発展期(1960年代〜1970年代)
1961年、生産施設は150平方メートルから3,000平方メートルへと大幅に拡張され、オーフス郊外にデンマーク最大級の家具工場が誕生しました。この新工場により、職人技術と先進的なテクノロジーを融合させた高品質な生産体制が確立されます。ニールス・オットー・モラーは、美学、機能性、高品質生産を統合するこの包括的なデザインアプローチにより、デンマーク・モダニズムを代表する人物の一人として認知されるようになりました。
1960年代には、Model 62、Model 78(1962年)、Model 79、Model 64(1966年)、Model 80、Model 65(1968年)など、数多くの新作が発表されました。特にModel 79はロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館およびウィーンの応用美術館の永久コレクションに収蔵され、Model 65はデンマーク女王の王室ヨット「Kongeskibet」に採用されるという栄誉を得ました。
1970年代には工場がさらに7,000平方メートルに拡張され、世界各国の大使館で広く採用されたことから「エンバシーチェア(大使館チェア)」の愛称で親しまれるModel 82が誕生しました。1974年には、その優れた業績に対してデンマーク家具製造協会から表彰を受けています。同年には、製作の複雑さにおいて卓越した技術を示すModel 83とModel 66も発表されました。また、この時期に日本への輸出も開始されています。
継承と発展(1980年代〜現在)
1975年、ニールス・オットーの次男ヨルゲン・ヘンリック・モラーは、建築学位の卒業制作としてModel 401、402、404を発表しました。特にModel 404は世界各国の教会、大聖堂、シナゴーグに納入され、高い評価を得ています。1981年にニールス・オットーは最後の作品となるModel 85とModel 68を発表し、同年にデンマーク製造協会から「最高の職人技の伝統と現代的な家具製造を融合させる能力」を称える二度目の表彰を受けました。翌1982年、ニールス・オットーはオーフスの自宅で静かに息を引き取り、妻キルステンと二人の息子、ヨルゲン・ヘンリックとイェンス・オーレに事業が引き継がれました。
1994年にイェンス・オーレが50歳の若さで逝去した後、ヨルゲン・ヘンリックが経営を引き継ぎ、父が確立した卓越した生産水準を維持しながら、2000年代には世界中のレストランとのパートナーシップを拡大しました。
2016年、ヨルゲン・ヘンリックの娘であるキルステン・アン・モラーが26歳でJ.L. Møllers Møbelfabrikの経営を継承しました。アメリカで育ち、会社との接点が限られていた彼女は、工場と事業のあらゆる側面に深く関わりながら、謙虚かつ決意をもってこの責任を引き受けました。2020年にはミッケル・ブルーン・スンドフトが加わり、二人で次世代の経営チームを形成。工場の近代化、新規機械への投資、チームの拡大、そして成長のための基盤づくりを進めています。2025年には、1950年代のアーカイブデザインにインスピレーションを得た同社初のダイニングテーブルModel 14を発表しました。
主なインテリアとその特徴
Model 71(1951年)
モラー・コレクションの記念すべき第一作として1951年に発表されたModel 71は、デンマークの職人技術と洗練されたデザインの結晶です。無垢材のフレームに、8層の成形ベニアで作られた背もたれを組み合わせた独創的な構造が特徴で、この彫刻的な曲線は美しさだけでなく、長時間の着座でも快適な人間工学的サポートを提供します。コレクション中で最も労働集約的な製造工程を要するモデルの一つであり、細部にまで行き渡る丁寧な仕上げが、この椅子を不朽の名作たらしめています。
Model 77(1959年)
1959年に発表されたModel 77は、コンパクトなキュービック・シルエットと、伝統的なスチームベンディング技法で形成された優美に湾曲した背もたれが特徴です。この蒸気曲げ技術により、約60cmの長さと7cm以上の厚みを持つ木材を柔軟に加工し、人間工学に基づいた緩やかなカーブを生み出しています。住宅からホスピタリティ施設まで幅広い空間に調和する汎用性の高さと、控えめでありながら存在感のあるデザインが、時を超えて愛され続ける理由です。
Model 79(1966年)
1966年に発表されたModel 79は、モラー・コレクションの中でも特に高い評価を得ている作品です。その芸術的価値は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館およびウィーンの応用美術館の永久コレクションに収蔵されるという形で認められています。洗練されたプロポーションと精緻な職人技が融合したこのチェアは、デンマーク・モダニズムの精神を体現する象徴的存在として、世界中の美術館やコレクターに珍重されています。
Model 82(1970年)
1970年に発表されたModel 82は、世界各国のデンマーク大使館で広く採用されたことから「エンバシーチェア(大使館チェア)」という愛称で親しまれています。公式な場にふさわしい格調高い佇まいと、長時間の会議にも耐えうる快適性を兼ね備え、外交の舞台を彩る存在として国際的な評価を確立しました。
Model 65(1968年)
1968年に発表されたModel 65は、その優美なデザインが認められ、デンマーク女王の王室ヨット「Kongeskibet」のために選ばれるという栄誉を得ました。王室御用達という最高峰の品質基準を満たすこのチェアは、モラーの卓越した職人技術と美的感覚を象徴する作品として、特別な地位を占めています。
Model 404(1975年)
創業者の次男ヨルゲン・ヘンリック・モラーが建築学位の卒業制作としてデザインしたModel 404は、発表以来、日本からアメリカまで世界各地の教会、大聖堂、シナゴーグに納入されてきました。宗教建築という厳粛な空間にふさわしい静謐な美しさと、普遍的なデザイン言語を備えたこのチェアは、二代目デザイナーの才能を証明する記念碑的作品です。
主なデザイナー
ニールス・オットー・モラー(Niels Otto Møller, 1920-1982)
J.L. Møllers Møbelfabrikの創業者であり、モラー・コレクションの主要デザイナー。1920年にオーフスで生まれ、父の家具工房で伝統的な職人技術を習得しました。キャビネットメーカーとしての修業を経て1944年に自らの工房を設立し、1951年以降、40年近くにわたってダイニングチェアとアームチェアのデザインに専心しました。各モデルに5年もの歳月をかけて入念な研究開発を行うその姿勢は、職人技術と体系的な生産プロセスを融合させる先駆的なアプローチとして評価され、デンマーク・モダニズムを代表するデザイナー・製造者の一人として確固たる地位を築きました。
ヨルゲン・ヘンリック・モラー(Jørgen Henrik Møller)
ニールス・オットーの次男で建築家。1975年に建築学位の卒業制作としてModel 401、402、404を発表し、その才能を証明しました。父の死後、アメリカとカナダでの事業拡大を担当し、後に経営責任者として同社を率いました。2016年に娘のキルステン・アンに経営を引き継ぐまで、父が確立した品質基準を守り続けました。
キルステン・アン・モラー&ミッケル・ブルーン・スンドフト
モラー家の第三世代として2016年から経営を担うキルステン・アン・モラーと、2020年に加わった共同経営者ミッケル・ブルーン・スンドフトは、ビジネスのバックグラウンドと会社の遺産への深い敬意を共有しながら、工場の近代化と次世代への発展に取り組んでいます。2025年には数十年ぶりの新製品となるダイニングテーブルModel 14を発表し、伝統と革新の両立を体現しています。
基本情報
| ブランド名 | J.L. Møllers Møbelfabrik(J.L.モラー・モーブゥファブリック) |
|---|---|
| 設立 | 1944年 |
| 創業者 | ニールス・オットー・モラー(Niels Otto Møller)、キルステン・モラー(Kirsten Møller) |
| 所在地 | デンマーク・オーフス(Aarhus, Denmark) |
| 現経営者 | キルステン・アン・モラー(Kirsten Ann Møller)、ミッケル・ブルーン・スンドフト(Mikkel Bruun Sundtoft) |
| 主な製品 | ダイニングチェア、アームチェア、ベンチ、スツール、ダイニングテーブル |
| 公式サイト | https://www.jlm.dk/ |