Audo Copenhagen|オード コペンハーゲン

Audo Copenhagen(オード コペンハーゲン)は、2023年に誕生したデンマークの新世代インテリアブランドである。デンマークを代表する二つのデザインブランド、MENU(メニュー)とby Lassen(バイ ラッセン)が統合し、コペンハーゲンの複合施設「The Audo(ジ・オドー)」のコンセプトから着想を得て創設された。一世紀にわたるデンマークデザインの伝統と、進化する現代的かつグローバルな視点を融合させ、「ソフト・ミニマリズム」という独自の美学を確立している。家具、照明、インテリアアクセサリーから空間デザインまで、包括的なライフスタイル提案を展開する稀有な存在として、国際的な注目を集めている。

ブランドの成り立ちと理念

二つの名門ブランドの統合

Audo Copenhagenの誕生は、デンマークデザイン界における画期的な出来事であった。1979年に創業し、モダンなホームアクセサリーとテーブルウェアで世界的な評価を確立したMENU。そして、デンマーク機能主義の先駆者である建築家、モーエンス・ラッセンとフレミング・ラッセン兄弟の遺産を継承するby Lassen。この二つのブランドが2023年に統合し、新たな次元のデザインブランドとして再出発したのである。

MENUは設立以来、「実用的で洗練されたデザインの製品を人々の生活に提案する」というコンセプトを掲げ、デンマーク王室との深い関わりを持ってきた。2006年のフレデリック皇太子の結婚式でパレードのプロデュースを手掛け、ヘンリック王子の70歳の誕生日には王室刻印入りのロイヤルディキャンティングポーラーが製作されるなど、王室御用達ブランドとしての地位を築いてきた。一方、by Lassenは1962年にデザインされた象徴的なKubus(キューバス)シリーズを始めとする、タイムレスなデザインアイテムで知られ、デンマークの家庭に広く愛されてきた。

The Audoのフィジカル体験から生まれたコンセプト

ブランド名の由来となった「The Audo」は、コペンハーゲンのノアハウン地区に位置する複合施設である。1918年に建設されたネオバロック様式の歴史的建築物を、Norm Architects(ノーム・アーキテクツ)が緻密に改修し、カフェ、レストラン、コンセプトストア、コワーキングスペース、そして宿泊施設を統合した革新的な空間として生まれ変わった。

この施設の名称は、ラテン語の「Ab Uno Disce Omnes(一人から、すべてを学ぶ)」に由来し、デザインを通じた知識の共有と協働の精神を体現している。単なるショールームではなく、訪れる人々が製品に触れ、空間を体験し、デザインの本質を五感で理解できる場として機能している。このフィジカルな体験こそが、Audo Copenhagenのブランド哲学の核心となっている。

デザイン哲学:ソフト・ミニマリズムの追求

Audo Copenhagenが提唱する「ソフト・ミニマリズム」とは、従来のミニマリズムが持つ冷たく無機質な印象とは一線を画す美学である。シンプルさと機能性を保ちながらも、素材の質感、手触り、使い心地といった人間的な温かみを大切にしている。柔らかな曲線、自然素材の風合い、アースカラーを基調とした色彩、そして職人技が光る細部のディテールが、洗練されながらも居心地の良い空間を創出する。

このデザイン哲学は、スカンジナビアデザインの伝統である機能性、シンプルさ、高品質なクラフツマンシップを継承しながら、現代のグローバルな視点と新しい素材の可能性を取り入れることで進化している。素材特有の美しさを最大限に引き出し、時を経るごとに深まる魅力を持つ製品を生み出すことに注力している。

ブランドディレクター兼デザインディレクターのヨアキム・コーンベク・エンゲル=ハンセンは、「祖父や父から引き継いできた人と人との繋がりや連帯感、すなわち『センス・オブ・コミュニティ』というマインドが、このブランドの根幹を成している」と語る。デザインを通じて人々を結びつけ、より豊かな生活体験を提供することが、Audo Copenhagenの使命なのである。

主要デザイナーとコラボレーション

Norm Architects|ノーム・アーキテクツ

Audo Copenhagenの製品開発と空間デザインにおいて最も重要な役割を果たしているのが、Norm Architectsである。2008年にヨナス・ビエール=ポールセンとキャスパー・ロンによってコペンハーゲンに設立されたこのデザインスタジオは、住宅建築、商業インテリア、インダストリアルデザイン、写真撮影、アートディレクションと多岐にわたる分野で活動している。

スタジオ名が示す通り、建築とデザインにおける「規範(Norm)」や伝統からインスピレーションを得ることを重視している。特にスカンジナビアデザインのタイムレスな美学と自然素材、そしてモダニズムの抑制と洗練の価値観を大切にしている。彼らが生み出すデザインは、素材と職人技を融合させながら、美しさ、歴史性、そして何よりもタイムレスなシンプリシティを体現している。加えることも引くこともできない完璧なバランスが、Norm Architectsの真骨頂である。

Audo Copenhagenとの長年にわたるパートナーシップにより、数多くの代表的製品が誕生している。Plinth(プリンス)コレクションは、天然石の美しさを際立たせる多機能なポディウムシリーズとして、家庭からオフィス、ショールームまで幅広く愛用されている。Co Chairシリーズは、Els Van Hoorebeeckとの協働により生まれた、輪郭のある優美なフォルムと温かみのある素材が特徴の椅子コレクションである。Bath Seriesは、柔らかく丸みを帯びた外観と力強いグラフィカルな表現を併せ持つバスルームアクセサリーとして、高い評価を受けている。

歴史的デザイナーの遺産

By Lassenの統合により、Audo Copenhagenはデンマークデザインの歴史的巨匠たちの作品も継承している。モーエンス・ラッセン(1901-1987)とフレミング・ラッセン(1902-1984)兄弟は、デンマーク機能主義の先駆者として、ユニークなデザインと象徴的な建築作品で数々の賞を受賞した建築家である。

特に1962年にモーエンス・ラッセンがデザインしたKubus(キューバス)シリーズは、50年以上経た現在でも色褪せない普遍性を持つ名作として、世界中で愛され続けている。ドイツ語で立方体を意味するKubusという名の通り、直線と直角で構成されたシンプルで美しいスチール製のキャンドルホルダーやボウルは、デンマークの家庭において必需品とも言える存在となっている。ポール・ケアホルムの自邸でも使用されていたことが知られており、巨匠のデザインと見事に調和する普遍性を証明している。

製品の特徴とコレクション

トータルインテリアとしての展開

Audo Copenhagenの最大の強みは、家具から照明、テーブルウェア、フラワーベース、ミラーといった小物まで、空間を構成するあらゆる要素を包括的に提供できることにある。大型家具の重厚感と、インテリア雑貨の繊細さを同じデザイン哲学の下で統一することで、調和のとれた空間づくりが可能となる。

特に北欧モダンやミニマルスタイルのインテリアにおいて、「あと一つ足りないピース」を満たす存在として、デザイナーやインテリアコーディネーターから高い支持を得ている。素材の組み合わせの妙、異素材の調和、計算された色彩のバランスが、空間に洗練された雰囲気をもたらす。

素材へのこだわり

大理石、真鍮、銅、コンクリート、ガラス、木材、スチール、テキスタイルなど、多様な素材を巧みに組み合わせることで、視覚的にも触覚的にも豊かな製品を生み出している。特に天然石の持つ独特の表情や、金属の経年変化による味わい、木材の温もりなど、素材本来の美しさを尊重したデザインが特徴的である。

ファブリック製品においても、デンマークの伝統的な織物技術と現代的なデザインを融合させ、機能性と美しさを兼ね備えたテキスタイルを展開している。耐久性に優れながらも柔らかな質感を持つ素材選びが、長く愛用できる製品づくりの基盤となっている。

代表的製品

Plinthシリーズは、幾何学的なフォルムと天然石の重厚感が特徴のポディウムコレクションであり、サイドテーブル、ディスプレイ台、ベンチなど多様な用途で使用できる。大理石やトラバーチンの美しい表情が、モダンな空間に彫刻的なアクセントをもたらす。

Kubusシリーズは、前述の通りby Lassenの代表作として継承されており、キャンドルホルダー、フラワーベース、ボウルなど、スチール製の幾何学的なデザインが凛とした佇まいを演出する。モノトーンからカラーバリエーションまで、インテリアのテイストに合わせて選べる多様性も魅力である。

Echasse Vase(エシャス ベース)は、細い脚で支えられたガラスのフラワーベースで、その浮遊感のある佇まいが空間に軽やかさをもたらす。シンプルながらも存在感のあるデザインは、花を生けることでさらにその美しさを増す。

ブランドの現在と未来

グローバル展開とデザイン・ホールディング

Audo Copenhagenは、ヨーロッパを起源とする9つのプレミアムブランドを展開するデザイン・ホールディングの一員である。B&B Italia、Flos、FENDI Casa、Louis Poulsenなどと肩を並べ、「美しい生活のためにデザインする」という共通理念の下で、地球、人々、文化のためのデザイン活動を推進している。

日本市場においては、長年の実績を持つルイスポールセン・ジャパンがブランドオペレーションを担当しており、2024年2月には東京・六本木のAXISビル3階に日本初のショールームをオープンした。デザイン・ホールディング傘下という強固な基盤と、日本市場への深い理解を持つ運営体制により、本格的な展開が加速している。

スカンジナビアと日本の共鳴

Norm Architectsのパートナーでありデザイナーのフレゼリク・ヴァーナは、東京ショールームオープンに際して次のように語っている。「訪日中に感じたことは、日本人の『こだわり』でした。視覚的に魅惑的なデザインを手掛けるだけでなく、時の試練に耐えるためには、デザインは私たち自身との深いつながりを築かなければなりません」。

スカンジナビアと日本のインテリアデザインは、伝統的な美学、モダンなデザイン理念、機能性、シンプルさ、質の高いクラフツマンシップにおいて多くの共通点を持つ。ヨアキム・コーンベク・エンゲル=ハンセンも、「日本は最も重要な発展市場の一つ」と位置づけており、両国のデザイン文化の共鳴が、新たな創造性を生み出すことが期待されている。

持続可能性への取り組み

タイムレスなデザインを追求することは、本質的に持続可能性への貢献でもある。流行に左右されず、長く愛用できる製品を生み出すことで、消費のサイクルを緩やかにし、環境への負荷を軽減する。高品質な素材と丁寧な製造プロセスは、製品の耐久性を保証し、世代を超えて受け継がれる価値を創出する。

Audo Copenhagenは、デザインの力で人々の生活を豊かにするという使命と、地球環境への責任を両立させながら、新しい時代のライフスタイルブランドとしての道を歩んでいる。

基本情報

ブランド名 Audo Copenhagen(オード コペンハーゲン)
設立 2023年6月(MENU: 1979年設立、by Lassen: 建築家モーエンス・ラッセンとフレミング・ラッセンの遺産を継承)
創業者/ブランドディレクター ヨアキム・コーンベク・エンゲル=ハンセン(Joachim Kornbek Engell-Hansen)
本社所在地 デンマーク・コペンハーゲン
主要デザインパートナー Norm Architects(ノーム・アーキテクツ)、Els Van Hoorebeeck、歴史的デザイナー:モーエンス・ラッセン、フレミング・ラッセン
製品カテゴリー 家具、照明、インテリアアクセサリー、テーブルウェア、テキスタイル
親会社 Design Holding(デザイン・ホールディング)
日本総代理店 ルイスポールセン・ジャパン
日本ショールーム 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F(2024年2月開設)
デザインコンセプト ソフト・ミニマリズム
公式サイト https://audocph.com (グローバル)
https://audocph.jp (日本)