ステーションクロックは、アルネ・ヤコブセンが1941年頃に描いた文字盤である。電気機器メーカーのラウリッツ・クヌーセン(LK)社のために設計されたもので、同社が数年前にヤコブセンへ依頼していたLKテーブルクロックの文字盤を置き換えるものとして構想された。駅舎を含むあらゆる建物に用いられる汎用的な時計を求めた依頼に応えたことが、この名の由来である。
特徴・デザインコンセプト
アラビア数字の文字盤
ヤコブセンの4種の文字盤のうち、アラビア数字を用いるのはステーションだけである。数字は肉付きを抑えた簡潔な形で、白地から明瞭に立ち上がる。同時期のヨーロッパの機能主義的なタイポグラフィと通じるが、ヤコブセンの手による数字は角を丸めず、線の太さを一定に保っている。遠方からの判読を前提とした設計であり、シリーズのなかでは最も直感的に時刻を読み取れる。
グラフィックデザインとしての位置
ヤコブセンは建築や家具のほか、書体、包装、ポスター、パターンといったグラフィックの仕事も残している。ステーションはその初期の作例であり、のちのシティホール(1955年)やバンカーズ(1970年)へ続く文字盤設計の出発点にあたる。特定の建築のためではなく、汎用の製品として描かれた点も、他の3種と異なる。
構造と素材
現行のローゼンダール製品は、黒く仕上げたアルミニウムのリングが盤面を囲む。凹面の文字盤と凸面のミネラルガラスのレンズを組み合わせ、映り込みを抑えながら視認性を保つ。最大の48cmモデルはリングを持たず、盤面が壁面から浮いて見える構成をとっている。
エピソード
ヤコブセンとラウリッツ・クヌーセン社の関わりは、1939年に同社向けに設計したテーブルクロックに始まる。当時新素材であったプラスチックの成形技術を持つ同社の事情を反映した製品だった。1941年頃、ヤコブセンはこの時計の文字盤を差し替える新しい図案を描く。それがステーションである。
ヤコブセンの時計はその後長く生産が途絶えたが、2009年にローゼンダール社が製造権を取得し、オリジナルの図面をもとに復刻を行った。監修には、ヤコブセンの事務所で製品開発を率いた建築家テイト・ヴァイラントが関与している。現行品の文字盤には、ヤコブセン自身の書体で彼の名が記されている。
評価
ステーションは、ヤコブセンの文字盤群のなかで最も実用に近い位置にある。数字を残したことで、公共空間でも住宅でも同じように機能する。ローゼンダールは掛時計を4サイズで展開しており、16cmの卓上に近い寸法から、48cmの大型まで、当初の「あらゆる建物のための汎用時計」という前提が現在の品揃えにも残っている。
この文字盤には、のちの作品に現れる抽象化への傾向はまだ見られない。それでも装飾を持たず、数字と針だけで成立する構成は、ヤコブセンが後年まで手放さなかった原則をすでに示している。
基本情報
| 名称 | Station Clock(ステーションクロック) |
|---|---|
| デザイナー | アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen) |
| デザイン年 | 1941年頃 |
| メーカー | ローゼンダール コペンハーゲン(Rosendahl Copenhagen) |
| 原産国 | デンマーク |
| 設計の背景 | ラウリッツ・クヌーセン(LK)社のための汎用時計の文字盤として設計 |
| カテゴリー | 掛時計(置時計モデルもあり) |
| 文字盤 | 白地にアラビア数字。ヤコブセンによるオリジナル書体 |
| 素材 | アルミニウムケース、ミネラルガラスレンズ |
| サイズ展開(掛時計) | φ160 / 210 / 290 / 480mm |
| ムーブメント | クォーツ式(日本製) |
| 現行生産 | 2009年よりローゼンダール社が製造 |