ペブルコーヒーテーブルは、1956年にルシアン・R・エルコラーニが英国の家具メーカー、エーコール社のためにデザインした名作テーブルである。その名が示すとおり、川底で長い年月をかけて水流に磨かれた小石(ペブル)を想起させる有機的な形状が最大の特徴であり、英国ミッドセンチュリー・モダンを代表する作品として、今日なお世界中の愛好家から高い評価を受けている。

本作品は、伝統的な英国家具製作の技術と北欧デザインの影響を融合させたエーコール社の哲学を体現するものであり、戦後英国における「良質なデザインを手頃な価格で」という時代の要請に応えた重要な一作である。

特徴・コンセプト

有機的フォルム

ペブルコーヒーテーブルの最も際立った特徴は、自然界の造形美を取り入れた有機的な天板の形状にある。幾何学的な直線や角を排し、滑らかな曲線で構成されたシルエットは、1950年代に隆盛を極めたオーガニック・モダニズムの潮流を反映している。この柔和な形状は、当時の英国の家庭に温かみと親密さをもたらすことを意図したものであった。

素材と製法

天板にはイングリッシュエルム(英国楡)の無垢材が用いられ、その美しい木目と堅牢性がテーブルの品格を高めている。エーコール社は、当時英国で豊富に産出されていたエルム材の活用に先駆的に取り組み、蒸気曲げ木の技術を駆使して優美な曲線を実現した。脚部は同社の象徴的な技法であるウィンザーチェア由来のスピンドル構造を応用し、軽快でありながら構造的に安定した設計となっている。

スカンジナビアン・モダンとの融合

1950年代の英国家具デザイン界は、デンマークやスウェーデンをはじめとする北欧諸国のモダニズムから大きな影響を受けていた。エルコラーニは、その洗練された美学を英国の職人技術と融合させることで、独自の「ブリティッシュ・モダン」を確立した。ペブルコーヒーテーブルは、この融合の成果を如実に示す作例である。

エピソード

ユーティリティ・ファニチャーからの脱却

第二次世界大戦中から戦後にかけて、英国政府は「ユーティリティ・スキーム」と呼ばれる規制のもと、資材節約のため装飾を排した実用本位の家具のみの生産を許可していた。1952年にこの制限が撤廃されると、エルコラーニは待ち望んでいた自由な創造性を発揮し、ペブルコーヒーテーブルをはじめとする有機的デザインの家具を次々と発表した。本作品は、抑圧からの解放と新時代への希望を体現する象徴的存在となった。

ネスティングテーブルへの展開

ペブルコーヒーテーブルのデザイン・コンセプトは、後にネスティングテーブル(入れ子式テーブル)として発展した。大中小三つのテーブルが美しく重なり合うこのバリエーションは、英国の住宅事情に配慮した実用性と、オーガニックな美学を両立させたものとして、特に人気を博した。

評価

ペブルコーヒーテーブルは、発表以来半世紀以上にわたり生産が継続されており、英国家具デザイン史における古典としての地位を確立している。ヴィンテージ市場においては、1950年代から1960年代にかけて製造されたオリジナル品が高値で取引されており、その人気は衰えることを知らない。

美術史家や批評家からは、本作品がミッドセンチュリー・モダンの理念—すなわち、良質なデザインを大衆に届けるという民主的な志向—を体現した傑作として評価されている。また、自然素材と有機的形態の調和は、現代のサステナブルデザインの先駆けとしても再評価されている。

デザイナー:ルシアン・R・エルコラーニ

ルシアン・ランドルフォ・エルコラーニ(1888年-1976年)は、イタリア・ペルージャ近郊に生まれ、幼少期に英国へ移住した家具デザイナー・製造業者である。1920年、家具産業の中心地として知られるバッキンガムシャー州ハイウィカムにエーコール社を設立し、伝統的なウィンザーチェアの製法を近代化することで、英国家具産業に革新をもたらした。

彼の功績は、職人技術の継承と工業生産の効率性を両立させた点にある。蒸気曲げ木の技術を完成させ、美しい曲線を持つ家具を量産することに成功したエルコラーニは、1964年にデザインへの貢献を認められOBE(大英帝国勲章オフィサー)を授与された。

基本情報

作品名 ペブルコーヒーテーブル / Pebble Coffee Table
デザイナー ルシアン・R・エルコラーニ / Lucian R. Ercolani
発表年 1956年
メーカー エーコール / Ercol
生産国 イギリス
主要素材 イングリッシュエルム(英国楡)無垢材、ビーチ(ブナ)材
仕上げ オイルフィニッシュ、ラッカー仕上げ(時代・バージョンにより異なる)
生産状況 現行品(復刻版として継続生産中)