概要

PK9は、ポール・ケアホルムが1960年に発表したサイドチェアである。3枚のステンレススチールが支柱と脚を兼ね、座面のシェルを直接支える。3本の脚が花弁のように広がる形から「チューリップチェア」の愛称で呼ばれる。当初はE.コルド・クリステンセンが製造し、1982年からフリッツ・ハンセンが「ケアホルム・コレクション」の一台として生産している。

特徴・コンセプト

3枚のスチールで支える

サテン仕上げのステンレススチール3枚が、座面から床へ緩やかな弧を描いて広がる。脚と支柱を別部材にせず、1枚が両方を兼ねることで、接合部が座面下の1か所だけで済む。4本脚に比べて床との接点が減り、脚が外へ開くぶん安定も得られる。工業素材に曲面を与えることで、強度を保ちながら脚まわりが軽く見える。

座面の構造

座面はグラスファイバーとナイロンによるインナーシェルにレザーを張り込んだ構造で、緩やかな曲面が身体を受け止める。硬いフレームに対して座面だけが柔らかい面になっており、詰め物を厚くせずに身体の当たりを和らげている。

スチールという選択

木材を主素材とする同時代のデンマークの設計者のなかで、ケアホルムはスチールを構造材に選び続けた。サテン仕上げの面は鏡のように映り込むのではなく、角度によって明るさが移り変わる。この扱いはPK22 ラウンジチェアなど他の作品にも共通する。

エピソード

座面の形は、砂浜に残った妻ハンネ・ケアホルムの座り跡から着想を得たと伝えられている。設計の過程では、ハンネが粘土を詰めた箱に座り、座り心地のよい形を探ったという逸話が知られる。

ケアホルムは1955年に家具製造業者エイヴィンド・コルド・クリステンセンとの協働を始め、1980年に世を去るまで続けた。PK9もこの時期の設計である。1982年、フリッツ・ハンセンが1951年から1967年までに設計された「ケアホルム・コレクション」の製造と販売を引き継いだ。

評価と影響

木を中心とする北欧家具の流れのなかで、スチールとレザーによる構成を確立した点が、ケアホルムの仕事を語るうえで挙げられる。住宅のダイニングチェアのほか、ラウンジや待合でも用いられる。同じケアホルムのPK54 ダイニングテーブルと組み合わせて置かれることが多い。

基本情報

名称 PK9 チェア(チューリップチェア)/ PK9 Chair
デザイナー ポール・ケアホルム(Poul Kjærholm)
ブランド フリッツ・ハンセン(1982年〜)/E.コルド・クリステンセン(当初)
発表年 1960年
デザインの成立国 デンマーク
分類 ダイニングチェア/サイドチェア
フレーム サテン仕上げステンレススチール(3枚構成、脚と支柱を兼ねる)
座面 グラスファイバー・ナイロンのインナーシェルにレザー張り
サイズ 幅約58cm × 奥行約58cm × 高さ約77cm、座面高約43cm

Reference