サンバースト・ウォール・スカルプチャー

サンバースト・ウォール・スカルプチャーは、20世紀アメリカを代表する金属工芸家ポール・エヴァンスが1960年代初頭に制作したウォールマウント型の彫刻作品である。鍛造と溶接による金属加工技術を駆使し、太陽光を放射状に表現した躍動的なフォルムは、スタジオクラフト運動における金属彫刻の新たな可能性を示した作品として評価されている。

概要

サンバースト・ウォール・スカルプチャーは、溶接・穿孔・彩色を施したスチール、真鍮、金箔を素材とする壁面彫刻作品である。1960年頃に制作されたこの作品は、エヴァンスが家具デザイナーとして本格的な活動を開始する以前、金属工芸家として彫刻制作に専念していた時期の代表作のひとつである。放射状に広がる金属片の構成は、まさに太陽の光芒を彷彿とさせ、空間に力強いエネルギーと視覚的インパクトをもたらす。

作品の寸法は高さ約30インチ(76cm)、幅・奥行約8インチ(20cm)程度のものが知られており、壁面に設置することで立体的な陰影効果を生み出す。金属の素材感を活かしながら、金箔による装飾的要素を加えることで、インダストリアルな力強さと工芸的な繊細さを両立させている。

特徴とコンセプト

サンバースト・ウォール・スカルプチャーの最大の特徴は、鍛造(forging)と溶接(welding)という二つの金属加工技術を組み合わせた制作手法にある。鍛造によって金属に立体的な表情を与え、溶接によって複数の金属パーツを統合することで、有機的でありながら力強い造形を実現している。

作品の表面処理には、パティナ(酸化被膜)による色彩効果、重油性顔料の熱処理、そして部分的な金箔装飾が施されている。これらの技法により、金属表面に粗い質感と多層的な色彩変化が生まれ、光の当たり方によって表情を変える動的な作品となっている。エヴァンスは意図的に「制御された偶然性」を取り入れ、工業的な精密さよりも手仕事の痕跡と素材の自然な反応を重視した。

デザイン哲学としては、戦後アメリカのスタジオクラフト運動の影響が顕著である。大量生産に対抗し、個人の創造性と手仕事の価値を重視する姿勢は、エヴァンスがクランブルック美術アカデミーで学んだジョン・プリップやハリー・ベルトイアといった教師たちから受け継いだものである。特にベルトイアの彫刻的スクリーンは、金属を用いた抽象的な壁面装飾という点でエヴァンスに直接的な影響を与えたと考えられる。

エピソード

エヴァンスは1952年にエレン・S・ブース奨学金を得てクランブルック美術アカデミーに進学し、そこで金属工芸の基礎を学んだ。卒業後はマサチューセッツ州スタージブリッジ・ヴィレッジの歴史博物館で実演工芸家として働き、訪問者の前で銀細工の技術を披露していた。この時期の経験が、後の彫刻制作における金属加工技術の礎となった。

1955年にペンシルベニア州ニューホープに移住したエヴァンスは、木工家フィリップ・ロイド・パウエルとショールームを共有し、創造的なパートナーシップを築いた。パウエルが木材を扱い、エヴァンスが金属を扱うという役割分担のなかで、エヴァンスは壁面彫刻や噴水彫刻など、建築空間を彩る金属作品の制作に注力した。サンバースト・ウォール・スカルプチャーはこの時期の実験的な創作活動から生まれた作品である。

1952年からエヴァンスはニューヨークの影響力あるギャラリー「アメリカハウス」で作品を発表し続け、金属工芸家としての評価を確立していった。これらの初期作品で培われた金属加工技術と彫刻的思考は、1960年代半ば以降の家具デザインにおいても一貫して活かされることとなる。

評価

サンバースト・ウォール・スカルプチャーは、エヴァンスのキャリア初期における重要な作品として、美術史的に高く評価されている。アメリカンスタジオクラフト運動の文脈において、金属という工業的素材を芸術表現の媒体として昇華させた先駆的作品とみなされている。

2024年のRagoオークションでは、類似の初期ウォール・スカルプチャーが推定価格1,000〜2,000ドルに対して5,670ドルで落札されるなど、コレクター市場でも安定した評価を得ている。ジェームズ・A・ミッシェナー美術館が所蔵する1970年制作のウォール・コラージュ作品は、同館の常設展示において、エヴァンスの彫刻的アプローチと金属加工技術の到達点を示す重要作品として紹介されている。

美術評論家や研究者たちは、エヴァンスの壁面彫刻作品において、抽象表現主義彫刻家ルイーズ・ネヴェルソンのアッサンブラージュ手法との類似性を指摘している。格子状の区画に様々な金属造形を配置する構成は、ネヴェルソンの木彫作品との対話的関係を示唆するものである。

影響と意義

サンバースト・ウォール・スカルプチャーは、エヴァンスが後に展開する「スカルプチャーフロント・キャビネット」シリーズの原型となった作品である。壁面彫刻で培われた金属の鍛造技術、溶接技術、表面処理技術は、1964年以降の家具デザインにおいて、装飾的要素として統合されていった。

エヴァンスの作品は、家具と彫刻の境界を曖昧にし、実用的な家具を抽象的な造形作品として提示するという革新的なアプローチを確立した。この姿勢は、1960年代から70年代のアメリカンブルータリズムデザインにおいて重要な潮流となり、素材の物質性と制作プロセスの可視化を重視する美学を形成した。

現代のコレクターやインテリアデザイナーの間で、エヴァンスの初期彫刻作品は、家具作品とは異なる純粋な造形美を持つ作品として再評価されている。壁面彫刻は家具よりも希少であり、エヴァンスの芸術家としての本質的な創造性を直接的に体験できる作品として、特別な価値を認められている。

基本情報

デザイナー ポール・エヴァンス(Paul Evans)
制作年 1960年頃
分類 ウォールスカルプチャー(壁面彫刻)
素材 溶接・穿孔・彩色スチール、真鍮、金箔
技法 鍛造(Forged)、溶接(Welded)、パティナ処理
サイズ 約H 76cm × W 20cm × D 20cm(個体により異なる)
制作地 アメリカ・ペンシルベニア州ニューホープ
様式 アメリカンスタジオクラフト、ブルータリズム