概要
ティアス・エクホフ(1926-2016)は、ノルウェーの工業デザイナーである。オスロの国立工芸美術学校で陶芸を学び、1949年からポルスグルン磁器工場のデザイナーを務めた。磁器の食器のほか、銀とステンレス鋼のカトラリー、プラスチック製の椅子を設計している。製品の数は多くないが、マヤやデット・リフレテなど、長く定番として扱われるものが多い。
バイオグラフィー
1926年6月25日、ノルウェー内陸のヴェストレ・スリドレ(当時のオップラン県)に生まれた。1945年から国立工芸美術学校(SHKS)の陶芸クラスで学び、1949年に修了した。在学中にデンマークで陶工の実習も経験している。
1947年にポルスグルン磁器工場が同校の陶芸クラスの生徒を対象に花瓶のコンペを開き、エクホフは入賞した。これが同工場との接点となり、1949年にデザイナーとして入社した。卒業制作のティーカップを量産用の食器セットに発展させたのが、デット・リフレテである。1953年には同工場の芸術部門の責任者(kunstnerisk leder)となり、その後は芸術顧問として同社との関係を続けた。
1953年にはゲオルグ・イェンセンのためにカトラリー「サイプレス」の設計を始め、1959年にはオスロで自分の事務所を開いてフリーランスで活動した。クライアントには、デンマークのダンスク・クニーヴ工場、ベルゲンのノルスク・スタルプレス、トリオ、ハルデン・アルミニウム工場などがある。1978年からはプラスチックの研究に取り組み、自身の会社アナ・トミ社から成形のスタッキングチェア「アナ」「トミ」を出した。2016年1月30日に没している。
デザインの思想と方法
ノルウェーの事典類は、エクホフの製品の背後に、素材・生産工程・使い方についての綿密な準備があると記している。目標は、美しく単純で機能的な解決に至ることだった。生産コストも常に考慮していた。
素材・工程・使い方を先に調べる
新しい型の開発には長い時間をかけた。デット・リフレテの各部の形は、材料、製造工程、使い方について、見た目と強度・耐久性の両面から分析したうえで決められている。
部品を減らし、用途を広げる
とくに関心が強かったのは、業務用の厨房でも家庭でも使え、洗いやすく、積み重ねて片付けやすい食器である。部品の数を減らし、一つの部品の使い道を増やすことを目指した。グロハーネは、部品が少なく、装飾がなく、積み重ねられる食器である。
研究機関と組む
グロハーネの開発では、研究機関や教育機関と協力し、技術面と生理学面の最新の調査結果を製品に取り入れた。
ジョージ ジェンセンの歴史や他の製品について詳しくはジョージ ジェンセン ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
デット・リフレテ(1952年、ポルスグルン)
卒業制作の薄手の磁器のティーカップを、縦方向の浮き彫りの装飾を残したまま、茶・コーヒー用の食器セットに広げた。V&Aの記録では設計は1949年、製造は1952年からである。Store norske leksikonは、第二次大戦後のノルウェーを代表するデザインの一つに数えている。
グロハーネ(1955年、ポルスグルン)
耐熱性を備えた磁器の食器で、部品が少なく、装飾がなく、積み重ねられる。開発では研究・教育機関と協力した。1957年のミラノ・トリエンナーレでは、コーヒーポットとシュガー、クリーマーのセットが金賞を受けた。
サイプレス(1954年、ゲオルグ・イェンセン)
銀のカトラリーである。1953年に設計を始め、同社の創業50周年のコンペで一位となった。生産は1954年に始まっている。Norsk biografisk leksikonは、のちの多くの現代的なカトラリーの手本になったと記している。
リージェント(1961年、ポルスグルン)
白い磁器の食器セットで、1961年に生産が始まった。1965年にノルウェーのデザイン賞(Designprisen)を受けている。
マヤ(ノルスク・スタルプレス)
ステンレス鋼のカトラリーで、ベルゲンのノルスク・スタルプレスが製造した。柄はわずかに三角形で、表面はつや消しである。1961年にデザイン賞(Designprisen)を受け、現在も生産が続いており、製造元はデンマークのステルトンに移っている。→マヤ カトラリー
評価と影響
Norsk biografisk leksikonは、エクホフの製品は活動期間の長さに比べて数が少ないが、ほとんどが定番になったと述べている。
受賞・収蔵
受賞
- 1953年 ルニング賞
- 1954年、1957年、1960年 ミラノ・トリエンナーレ 金賞
- 1961年 デザイン賞(Designprisen)マヤ
- 1965年 デザイン賞(Designprisen)リージェント
- 1974年 ヤコブ賞
収蔵
V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)に計10件の収蔵が確認できた。
- V&A デット・リフレテ 収蔵番号 CIRC.136&A-1960、CIRC.137&A-1960、CIRC.142-1960、CIRC.143&A-1960
- V&A グロハーネ 収蔵番号 CIRC.141&A-1960
- V&A リージェント 収蔵番号 C.151&A-1987、C.151B&C-1987、C.151D-1987、C.151E-1987、C.151F-1987
MoMA、Met、AICでは該当する収蔵は確認できなかった。ほかの館の収蔵は照合できないため記載しない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1952年 | 磁器 | デット・リフレテ | Porsgrund |
| 1954年 | カトラリー | サイプレス | Georg Jensen |
| 1954年 | カトラリー | エクホフ | Dansk Knivfabrik |
| 1955年 | 磁器 | グロハーネ | Porsgrund |
| 1957年 | 金物 | ドアの鍵 | Trio |
| 1959年 | カトラリー | オプス | Dansk Knivfabrik |
| カトラリー | マヤ カトラリー | Norsk Stålpress | |
| 1961年 | 磁器 | リージェント | Porsgrund |
| 1964年 | アルミ調理器具 | コーヒーケトル(モデル941) | Halden Aluminiumvarefabrik |
| 1973年 | カトラリー | ウナ | Norsk Stålpress |
| 1980年 | 椅子 | アナ | Ana Tomi |
| 1983年 | 椅子 | トミ | Ana Tomi |
プロフィール
| 生没年 | 1926年6月25日〜2016年1月30日 |
|---|---|
| 出身地 | ノルウェー・ヴェストレ・スリドレ |
| 国籍 | ノルウェー |
| 活動拠点 | オスロ |
| 分野 | 磁器、カトラリー、椅子 |
| 主な協働ブランド | Porsgrund、Georg Jensen、Dansk Knivfabrik、Norsk Stålpress |
Reference
- Norsk biografisk leksikon「Tias Eckhoff」
- https://nbl.snl.no/Tias_Eckhoff
- Norsk kunstnerleksikon「Tias Eckhoff」
- https://nkl.snl.no/Tias_Eckhoff
- Store norske leksikon「Tias Eckhoff」
- https://snl.no/Tias_Eckhoff
- Nasjonalmuseet「Maya」
- https://www.nasjonalmuseet.no/en/collection/object/OK-1998-0089
- V&A「Det Riflete」
- https://collections.vam.ac.uk/item/O168121/
- V&A「Glohane」
- https://collections.vam.ac.uk/item/O168141/
- V&A「Regent」
- https://collections.vam.ac.uk/item/O168231/